損保会社の事情

交通事故の被害者が加害者の損保会社に不満を覚えることは,当然ながら多いです。

ただ、この間は良い意味で少し驚くことがありました。

いわゆるむち打ちの症状で後遺障害の14級が認められた場合、弁護士がついていると、労働能力喪失率5%、5年間の労働能力喪失期間が認められることが多いです。

しかし、この被害者の方は、身体の複数の箇所に14級が認められていたため、当方としては,それに応じて喪失率と喪失期間を長めにして、損保会社に主張を行いました。

通常、複数箇所に後遺障害が認められていても、労働能力喪失率や喪失期間が長くなるとはいえないとして損保会社が反論してくることが多いのですが、今回の損保会社は、労働能力喪失率こそ5%であるものの、労働能力喪失期間はこちらの主張よりもかなり長い期間を認め、結果としてほぼこちらの主張どおりの賠償額が存在することを認めました。

おそらく、損保会社の内部の問題で、喪失率は変えられなかったものの、どうにかこちらの請求に応じるために喪失期間を調整することにしたのだと思います。

損保会社の誠実な対応があったといえるのではないかなと思いました。

損保会社は営利企業なので,どうにかして賠償額を減らそうとしてくる,というのも事実かもしれませんが,

損保会社で働いている人たちも人間ですので,こうした取り扱いをしてくれることはありうるようです。

交通事故と労災

交通事故と労災が関係のあるものだということは,意外と知られていないかもしれません。

労災は,業務上の事故はもちろんですが,通勤中の事故も対象となるので,

業務中会社の車を運転していた際に起きた事故はもちろんですが,朝晩の会社への行き帰りで生じた事故についても

労災の対象となるのです。

 

交通事故の加害者と労災の両方から受け取れるからといって,受け取る金額が増えるわけではありませんが,

支払口が増えることになるので,事実上,より賠償を受けやすくなるといえます。

 

これはどういうことかというと,例えば加害者側保険会社に対して賠償を求めていたところ,

請求どおりには認めてもらえず,一部のみ認定されるというようなことがあります。

このとき,労災に請求してみたところ,請求どおりの金額が認められ,

結果的に請求先が複数あったことにより満足な賠償を受けられる,ということがあり得るのです。

 

また,加害者が任意保険会社に加入しておらず,支払いが滞るような場合にも

労災に請求を行うことで現実に賠償を受けられた,ということもあり得ます。

 

交通事故にあってしまった際には,事故の加害者に賠償を求めていくのは当然ですが,

業務中ないし通勤途中の事故ではないかということについても

一度確認してみることをお勧めします。