自由財産

自分の財産を自由に使えるのは当然のことじゃないか、というところですが、何事にも例外はあります。

自由財産というのは自己破産にかかわる用語となってきます。

自己破産といえば、「借金がなくなる手続」と捉えられていることが多い印象ですが、自己破産手続には「財産を債権者に分配する手続」という側面もあります。

財産の分配は、「破産管財人」という弁護士が裁判所から選任されて行うことになり、これに関連して、申立人(破産者)の財産の管理処分権は一時的に破産管財人の手に委ねられます。

この権限があることにより、例えば本来自由に売買できるはずである申立人名義の不動産を売却し、現金化して、債権者に分配することができるわけです。他方、破産者は、自分の財産だった不動産が売られてしまうのを止めることができないことになります。

破産者の財産のうち、破産者本人の手元に残る財産等を自由財産と呼びます。

具体例としては、新得財産と呼ばれる、自己破産手続開始決定後の財産です。

日本の破産法は「固定主義」というルールを採用しており、自己破産手続開始決定後の給与等は手続きの対象外となっていますので、問題なく受け取ることができます。

また、開始決定前の時点に有していた財産についても、一定の範囲では自由財産と認められることも少なくありません。

裁判所ごとに運用には若干の違いがありますが、おおむね99万円程度までの範囲であれば、申立ての経緯等にもよりますが、認めてもらえる場合が多いといえ、99万円を超えると、特別の事情がないと自由財産と認められない場合が多いというのが一般的な傾向と言ってよいかなと思います。

官報

官報というものをご存知でしょうか?

官民等で使う場合の官とは国家機関という意味合いで、その報告というわけで、官報というのは、国家機関からの公報、ということになるわけですね。

国立印刷局のサイトによると、明治16年に創刊し、現在では行政機関の休日を除き内閣府が毎日発行しているものだそうです。

そもそも官報の存在自体知らない方も少なくないかもしれませんが。。

弁護士業務で比較的かかわりがあるところは、借金問題関係です。

自己破産や個人再生といった法的整理手続きを利用する際には、官報に申立ての事実等が掲載されることになります。

官報は、広く国民に公示する目的も持っているので、30日分は誰でも無料で閲覧できますので、自己破産した事実等が公開された状態になります。

そもそも官報の存在自体知らない、といえる側面があることから、日常生活が激変する、ということは少ない場合が多いかと思いますが、何かのきっかけで自己破産の事実が発覚するリスクを完全に払しょくすることは難しいといえます。

幸い、私が経験した限りで官報に載ったことで大きな問題となった、といったお話しをうかがったことはありませんが、手続を進めるにあたって皆様に必ずご説明するようにはしております。

自己破産後の生活

自己破産をした後の生活がどのようなものになるかについて不安があり、自己破産に踏み切れない方もいるかもしれません。

実際のところは、あまり影響がない方が多いかなと思います。

まず、自己破産の事実は官報という国の公報で公告されます。とはいえ、官報情報を逐一見ている方はあまりいません。官報自体、知らない方も少なくないといえます。官報に載る以上、誰にも知られずに自己破産できる、と断言することはできませんが、周囲に大々的に知られてしまうことは少ないといえます。

次に、一定期間信用情報機関に登録される、という問題です。いわゆる「ブラックリストに載る」と言われているものと考えていただいてよいと思います。この状態ですと、通常新規の借り入れ等は審査が通らなくなりますので、登録がなくなるまでは住宅やお車のローンは組めないといえるでしょう。

また、クレジットカード利用もできないことが通常です。

ただ、自己破産直後に住宅ローンを組む方は多くないでしょうし、ローンが組めないだけですので、貯金して安い車を一括購入すること等は可能です。

クレジットカード利用の制限も、最近は「○○ペイ」等の電子決済の普及が進んでいますし、デビットカードであれば使用可能ですので、日常生活ではあまり大きな支障にはならないともいえます。

もちろん、自己破産を積極的に進めているというわけではありませんが、不必要におびえる必要まではないのではないでしょうか?

より細かいお話などは弁護士にご相談ください。

飲酒運転

飲酒運転はダメです、ということは皆さま言われなくともわかっていることかと思います。

悲惨な事故等が起きた経緯等から、刑事罰の厳罰化されたこと等についてご存知の方もいるかもしれません。

弁護士としては、刑事だけでなく民事でもかかわる可能性がありますが、民事の場面でも、飲酒の事実は過失割合等を決めるにあたり、当然不利な方向で影響を受けます。

さらに、慰謝料の増額といった不利益が生じることもあります。

そんな高額の支払いできないから自己破産するしかない、という状況になるかもしれませんが、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は、非免責債権といって、自己破産をしても支払義務がなくならないものとされています(破産法253条1項3号)。

意図的に飲酒運転をして暴走してやろう、ということはないかと思いますので、車両に関する損害等については支払義務が免除される可能性もないわけではありませんが、「人の生命又は身体を害する」ことにより生じた治療費、慰謝料等について、飲酒運転は「重大な過失」があると認定される可能性が高いため、支払義務がなくならない、という可能性が高いです。

時勢柄、大々的な忘年会等はないかもしれませんが、年の瀬はお酒を飲む機会が多くなる方もいるかと思います。

ただ、飲酒運転となると、「羽目を外す」といった言葉では済まされない事態となりますので、十分ご注意いただき、よいお年をお迎えください。

方針選択

借金問題と聞くと、自己破産手続きをイメージされる方もいるかと思います。

それも方針選択の1つではありますが、各社と交渉して分割弁済していく任意整理と呼ばれる方法や、自己破産と同じく裁判所を利用した手続きとして、個人再生というものもあります。

それぞれメリット・デメリットがありますので、ご相談の際にはよく弁護士とご相談されるとよいと思います。

必ずしも経済的に見てベスト、というだけでなく、ご相談者様のお気持ちの面を重視して方針を決める場合もあります。

例えば、自己破産と個人再生とでデメリットに大きな差がないように思われる場合、自己破産の場合には手続きが終わればたいていの債務の支払義務はなくなるわけですので、一定額の返済が残る個人再生より自己破産がよいのではないか、とご提案をすることがあります。

しかし、「自分で作った借金なので、いくらかでも返せるなら返していきたい」というご意向のもと、個人再生を選択される方もいらっしゃいます。

そういった場合には、お気持ちを優先して方針を決めることになります。

どう考えても客観的に見て返済を続けられるような状態ではない方の場合には、自己破産しか選択しようがないとご説明するしかないこともあります。

正解、というのは、必ずしも客観的に決まるものではないと思います。ご相談いただく状況により方針は様々ですので、まずはご相談ください。

会社の元代表者の破産

過去会社の代表者だった方から破産のご依頼をいただくことがあります。

その際、「会社はもう動いていないから放置して、自分だけ破産できないか」といったご相談をいただくこともあります。

実際そのような方法がとれるかといえば、「不可能とはいえないが原則としてはできない」という回答になろうかと思います。

というのも、代表者が破産しようとすると、破産手続開始決定のタイミングで代表取締役としての地位が一時的にせよ失われることになります。

そうなると、では誰が会社を運営していくのか、という問題が出ます。

動いていない会社であっても、それを清算等するのであれば、そのための人員は必要になり、通常はその会社の代表者になります。

また、動いていない法人を放置されてしまうと、法人の債権者も困ってしまいます。

こういった理由から、裁判所によっては、元代表者の自己破産申立ては原則法人と一緒でないと受け付けていないという運用のところもあります。結果として、過去の会社についての倒産と合わせてでないと、現在給与所得者等で会社経営を行っていないとしても、個人だけの自己破産ができない、ということになる場合があります。

なお、法人にかかわる破産手続は、全件破産管財事件となり、破産管財人弁護士が選任されることになりますので、20万円以上の予納金等も用意する必要があります。

債務整理の方針選択

個人の方の借金問題の解決にあたっては,いくつか選択肢があります。

通常は任意整理,個人再生,自己破産となるかなと思います。

個々の状況によりますが,この順番で選択肢を考えていくことが一応の基本となります。

 

ご依頼いただく内容としては,任意整理で対応可能な方の方が,相対的にやや多いかなと思われます。

自己破産,個人再生といった法的整理に抵抗を持たれる方も当然いらっしゃいますし,「借りたお金なのでできれば返したいと思っている」とお話される方もいらっしゃいます。

また,自己破産のつもりで相談にいらっしゃったけれども,説明を聞いて,「それなら任意整理でやれそうだ」と考える方もいらっしゃいます。

 

手続選択については,なかなか「これが正解」というものはないと思います。

例えば,金額的に任意整理で返済を続けることは難しいのではないか,と考えられるご相談があったときに,「家族に発覚するリスクはできる限り避けたい!」という強いご意向から,任意整理による比較的高額の分割返済を選択される方もいらっしゃいます。

逆に,任意整理で十分返済を続けていけるように思われる方であっても,「ここで破産して債務をきれいにし,生活再建を図りたい」と考える方もいらっしゃいます。

 

「先生にお任せします」と信頼して一任していただくことは弁護士としてとてもありがたいことではあります。ただ,上の例のように,ご相談いただく方それぞれに十人十色の考え方がありますし,ものの本でも言われることなのですが,あくまでも主役はご依頼者様になります。できる限り説明を尽くしたうえで,納得のいく案件の方針選択をしていただくのが,ご依頼様ご本人にとってもよいことかと思います。

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ブラックリストその2

先月に続きましてブラックリストについてのお話です。

 

ブラックリストに載る,つまり事故情報の登録をされると,クレジットカードの新規作成や,車のローン,住宅のローンの組む際の審査等に影響が出ます。

ヤミ金のような例外を除き,貸付を行っている銀行等の金融機関は基本的に登録を行っているので,どこの金融機関でも借り入れをすることは難しくなるといえます。

そのため,「別に車のローンも住宅ローンも組む予定がない」,という方でも注意は必要です。

昨今では,携帯電話(主にスマートフォン)はもはや生活必需品といえますが,本体料金の分割にも事故情報の影響が出て,分割払いができない可能性があります。

最新機種等は高額ですので,機種変更の際に本体代金の分割払いができなくるというのは,困る方もいるかもしれないです。

 

もっとも,最近ではデビットカードをクレジットカードの代わりに利用することができますし,「○○ペイ」のような新しい支払方法も浸透してきました。

スマホについても,いわゆる格安スマホのスペックも徐々に上がってきているようですので,分割払いができなかった場合でも,格安スマホを一括払いで購入すればそこまで支障にはならないようにも思います。

 

新たな借り入れが厳しくなるというのはたしかに大きなデメリットですが,見方を変えれば借入れに頼らない家計改善のよい機会,と捉えることもできます。

また,基本的に,事故情報が登録されているという事実が友人,知人等に知られる可能性も高くありません。

 

弁護士に債務整理の相談をする際,ブラックリストの問題は避けて通れませんが,ご相談の前の参考にしていただけましたら幸いです。

 

なお,「ブラックリスト」という言葉の起源は清教徒革命までさかのぼるらしいですね。

諸説あり,というところかもしれませんが。。

 

P.S. 当法人の千葉法律事務所が開設されました。柏に続き千葉県は2か所となりましたのでアクセスがよりよくなったと思います。

ブラックリスト

借金問題と切り離せない問題として,いわゆるブラックリストの問題があります。

借金問題に関するご相談の中でも,比較的多くの方がこの点を気にされているように思います。

 

借入れ等の情報は,CIC,JICC,KSCといった信用情報機関に登録されます。

クレジットカードの作成や住宅ローンを組む際等にこの情報が利用され,申込者の信用(返済を続けられる収入があるか,他に借金がないか等です)について審査されるわけです。

携帯電話の割賦支払い等も登録されますので,信用情報機関に登録されていることそれ自体は必ずしも大きな問題となるわけではありません。

弁護士による借金問題の処理は,「債務整理」と呼ばれますが,この債務整理を行った場合には,「事故情報」として登録されることになります。

「当初の契約通りの返済がされなかった」という事実は,今後の借入れを行うにあたって厳しく審査される事情となります。

弁護士介入の際,「受任通知」という書面を発送しますが,基本的にはこの通知の時点で債権者にとっては不利益となる可能性(当初の契約通りの返済がされない可能性)が出ることから,事故情報として登録されることになります。

 

「ブラックリストに載る」という言葉の意味としては,上記の「事故情報が信用情報機関に登録されること」,とご理解いただくのが一般的なイメージに近いかなと思います。

 

P.S.

当法人の事務所が四日市にオープンしました。

債務整理に関する弁護士法人心 四日市法律事務所のサイトはこちらです。

 

 

厚労省発表

厚生労働省からの発表で,生活福祉資金の特例貸付制度が3月25日から開始しているようです。「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の拡大について」というものです。

社会福祉協議会が窓口となっており,減収,失業した方向けに無利子での貸付を行っているとのことです。

新型コロナウイルス等の影響で減収,失業されたという方でもしご存じない方がいらっしゃいましたらご参考にしていただければと思います。

※現時点での情報を基に書いているため,内容に変更等があるかもしれません。あらかじめご了承ください。詳細は厚労省のサイト等をご確認いただければと思います。

 

当法人へは,近時債務整理(自己破産や任意整理といった借金問題)に関するご相談が少しずつ増えてきています。

「残業ができなくなって収入が減ったため返済継続が難しくなった」というお話,影響が大きいものですと「働いているお店が今月いっぱいで閉まってしまう」といったお話もありました。

 

トイレットペーパー,マスクが買えない等,日常生活にも少なからず影響が出てきているところですが,きちんと対処すれば感染力自体はそこまで大きくないとも言われていますので,皆さんで気をつけていければと。

新型コロナウイルスの影響で社会,経済に各種影響が出ているところかと思います。

一弁護士としてお役に立てることは限られておりますが,微力ながら貢献できればと思います。

ETCカード

ETCカード,利用されていますか。

東京周辺だと電車移動を選択することが多いため,あまり高速道路を利用するタイミングがありません。

しかし,債務整理のご相談をいただく際に,ETCカードの利用についてご相談いただくことがけっこうあります。

 

多くの方は,クレジットカードの付帯機能としてETCカードを,利用されているかと思います。

ここで,債務整理を行った場合には,信用情報としてその事実が登録されます。

いわゆる「ブラックリストに載る」というヤツですね。

その結果,今まで使っていたクレジットカードがETCカードとして利用できなくなってしまう可能性があります。

別のカードを作ろうと思っても,すでにブラックリストに載っているため審査に通らない可能性が高いです。

そうすると,クレジットカードがなければETCが使えないのではないか,という問題にぶつかるわけです。

 

ここで登場するのが,「ETCパーソナルカード」です。

このカードは,高速道路会社が共同で発行しているカードで,一定額の保証金の用意と年会費の支払いが必要となりますが,審査なくETCカードとして利用することができます。

クレジットカードとしての機能のないETC専用のカードというわけですね。

 

デスクワーカーの方でETCカードの利用継続のためだけに債務整理を断念する,というケースは多くありませんが,トラックの長距離運転手の方だったりすると死活問題だったりします。

こういったサービスの情報を知っていることも,ときには事件処理の方針を決めるために役立つことがあります。