証拠と論破

主人公に追い詰められた犯人が「俺が犯人だという証拠がどこにある!」というのは、よくある最後の悪あがきかなと思います。

そして証拠を突き付けられてくずおれる犯人、というのはクライマックスの重要なシーンでしょうが、犯人側の立場に立てば、なかなか非情なとどめの一撃でしょう。

決定的な証拠がある、というのは心強いものですね。

弁護士実務においては、結局争点となるのはそういった決定的な証拠がないところとなることが多いかなと思います。

例えば交通事故で幸い骨折がなかった事故でお怪我をされた場合、大事に至らなかった、という観点からはよいのですが、治療の場面で揉めることになったりします。

残っているのは「痛み」だけ、でも外からは何もわからない、つまり痛みを証明する決定的な証拠がない状態ですね。

仮に証拠がある場合でも、その評価で争いになる場合もあります。

同じく交通事故だとイメージしやすいですが、ドライブレコーダーが残っており衝突の瞬間はばっちり残っていたような場合が挙げられます。

ドライブレコーダーがあるなら結論は見えているんじゃないか、といえば、実際は画面に映る事実をどう法的に評価するか、という争いに進みます。証拠がない場合に比べれば、素材はあるので主張すべきことの方向性は見えやすくはなりますが。

 当事者としては鮮明な記憶があるのに、証拠に基づかない主張はいわば「それってあなたの感想ですよね」となってしまうのはなかなか辛いところです。また、証拠があるから「はい論破」ともならないところで、事件の見通しを立てるのは難しいですね。

手帳

全国弁護士協同組合連合会というところで発行されている弁護士日誌というものがあります

仕事を始めてからのやり方が変わっていないため、今でもこちらの弁護士日誌を利用してスケジュール管理等を行っています。中身の縦線横線が使いやすいかどうか等は正直あまりよく分かっていません。薄い縦長の形状で、スーツの内ポケットにすんなり入ってくれる点は気に入っています。

中身はほとんど変わりませんが、毎年外側の色味や質感は変わっていたりします。

2019年はやや紫色よりの発色のよい青(色の和名ですと「紅掛空色」あたりが近いかもしれません。)にゴールドの文字で、けっこう挑戦的な色選びだなと感じた記憶があります。

2021年は深い緑色に銀の文字で、それ自体特筆すべきではないと思いますが、蛇をモチーフにした魔法学校のクラスカラーの印象しかなかったため個人的にはかなりのインパクトでした。

今年は桜色に銀の文字で、もらった直後はなかなかインパクトが強かったですが、ピンクといっても落ち着いた色であることもあり、だいぶ使い慣れてきたかなと思います。毎年11月頃を目安には来年を入手できる予定ではありますが、さて来年はどんな色になるでしょう。。

とはいえ、最近だとスマホやタブレット等を利用して、クラウド上でいつでもスケジュール確認できる、というような方の方がむしろ多数派になっていたりするんでしょうか?

結果の請け合い

未来は誰にもわからない、というと大げさな表現になってしまいますが、ある意味では真実かと思います。

そのため、ご相談の際に、「勝てますか?」と聞かれて「絶対勝てます!」と断言することはできません。これはどの弁護士でも同じはずです。

ご相談いただいた方には、もしかすると頼りないという印象に映ってしまう可能性がありますが、これには理由があります。

「弁護士職務基本規程」という、弁護士が守るべきルールが定められており、そのなかに、有利な結果の保証をしてはならない、というものがあります。

事件のすべての事実が証拠からはっきりと明らかになっている、ということはまずありません。そして、未確定の状況を前提に結論が断定されることは不可能といえます。

仮にすべての証拠がそろっていると仮定しても、揉めた事件は最終的に裁判になり、裁判での最終決着は判決です。

判決を出す裁判官という他人の行動を完璧にコントロールすることはできませんので、やはり結果のお約束はそもそもできないこととなります。

そうなると、過去の経験や裁判の傾向等からある程度の見通しを立てることはできますが、1件1件の事実関係は異なりますので、やはり予測の域は出ないということになってきます。

もちろん、見通しが厳しい事件で裁判を選択し、結果としてこちらに有利な解決となることもあります。

ただ、弁護士の目からみて、勝ち目のない事件と思っているのに「勝てますよ」といって契約に誘導し、報酬を受け取ってしまうような場合が想定される典型的な問題と思われます。

そのため、はっきり勝てると言えないことが頼りないのではなく、安易に勝てますと言ってしまうことに問題がある、とご理解いただければと思います。

利益相反

四文字熟語になっていると難解な印象が出てきてしまう、というのは専門用語のよくないところなのかもしれません。

ただ、弁護士がご依頼をいただくにあたって、利益相反というのはとても重要な問題となってあらわれてきます。

利益、というのはご相談いただく方の利益であり、相反というのは文字通り「あいはんする」ということです。

どの範囲で相反になるのか、となるとやや踏み込んだ問題となってきますが、わかりやすいのは当事者双方から相談を受けてしまうようなケースです。

具体例として、離婚で揉めているご夫婦のうち、先に奥様から相談を受けてご依頼をいただくことになった後、相手方となる旦那様の方からも相談を受けてしまった、という場合が典型的かと思います。

弁護士というのは、ご依頼いただく方の利益のために行動をしなければならない立場にあるわけですので、まずはご相談いただいた奥様のために行動しなければ、という立場におかれます。

そこで旦那様からご相談を受けた弁護士は、旦那様からのご相談に対して、旦那様の利益のために行動できるでしょうか。

例えば、お子様がいて、双方親権を主張していたとします。

ここで旦那様に有利なアドバイスをすることは、ご依頼をいただく奥様にとっては不利になるということは明らかです。

まさに夫婦の利益が相反しているので、弁護士としては、旦那様からの相談をお受けできなくなってしまう、ということです。

また、ここで旦那様に対し、「奥様からご依頼をいただいていますお答えできません」ということもできません。

これは、対立当事者が弁護士に依頼をしている、という情報を与えること自体に問題が生じるからで、結果、旦那様からのご相談をお断りするうえ、お断りする理由の詳細もお伝えできない(お伝えすべきでない)ということになってしまいます。

上記の例では旦那様に対してずいぶん酷な対応となってしまうのですが、上記のような問題があるということで、ご理解いただけますと幸いです。

相殺

「相殺」と書いて「そうさい」と読みます。

「相」という字は互いにという意味があり、そうなると「互いに殺す」というなかなかにおぞましい感じの言葉になってしまいます。

相殺についてインターネットで調べてみると、民法上の相殺のことを指す用語として説明されているようでしたが、ゲームやファンタジーの世界等でも出てくる用語だったりするので、なじみのある方も多いかもしれません。

お互いの効力を打ち消しあう、といった意味合いで使われていることが多いかなと思います。

弁護士実務では、わりと出番の多い言葉かもしれません。

例えば、過払金を100万円請求をする際、請求する相手の業者に対して別に30万円の債務が残っているとした場合、過払金返還請求権という債権と、貸金業者の有する30万円の貸金返還請求権という債権を相殺し、差引70万円を支払ってもらう、といった具合です。

これは民法上に規定されている相殺の場面ですね。

あとは、交通事故や労働災害等の損害賠償の場面で、過失相殺というものが問題となることもあります。

例えば、青信号を直進したA車と、青信号で右折しようとしたB車がぶつかって生じた交通事故で、2:8でそれぞれ落ち度(過失)があったとします。

A車の修理費が20万円、B車の修理費が10万円だったとすると、A車側は2割の過失があるので修理費の8割である16万円までしか請求が認められない、というのが過失相殺です。

同様に、B車側は8割の過失があるので2割の2万円を請求できます。

この際、実務上は、上で説明した債権同士の相殺により、差引14万円をB車側からA車側へ支払うことになる、という処理をすることが多いです。

裁判外の活動

弁護士といったら裁判所に行って判決が出るまで戦う、というイメージを持たれている方も少なくないのかと思います。

しかし、実際のところ、大多数はそれ以外での解決となっていることが多いといえます。

例えば、交通事故事件などでは、裁判になる事件より裁判前の交渉で解決する事件の方が多い傾向にありますし、さらに裁判になった後であっても、裁判上での和解で解決する方が、判決まで進む場合より多いです。

また、裁判外紛争解決手続(ADR)等と呼ばれている、裁判所ではない第三者機関を利用した話し合いなどもあります。

交通事故紛争処理センター等が一例です。

相続、離婚等の家事事件では、裁判ではなく、調停という手続きでの解決となることが多いです。

離婚事件においては、調停前置主義という、離婚裁判をする前に調停をしなければならないという原則が法律で定められています。

そして、比較的多くの場合には、離婚裁判(訴訟)に至る前に調停で

離婚等が成立していることが多いというわけです。

刑事事件については、裁判となることも少なくありませんが、そもそも「不起訴処分」といって、検察が裁判にしないで終わらせたり、略式起訴といって、罰金刑にする軽微な手続きで終わる場合もあります。

略式の場合は弁護士が立ち会うケースは通常ないため、通常の起訴をされる可能性がある事件につき、軽微な略式で終えることを目指した弁護活動等をすることがありますが、このケースも、裁判以外の弁護士の活動場面といえるかと思います。

名刺

お仕事で名刺を利用されている方は比較的多いのではないかと思います。

 

弁護士同士,あるいは会社関係,ときにはご依頼者様より名刺をいただくことがありますが,やはりいろいろと個性が出るなと感じます。

 

当法人の弁護士は,二つ折りのほんのり薄い黄色みがかかった名刺を使っています。

当然ながらずいぶんな数のこの名刺をお渡ししてきましたので,自分からすれば見慣れた名刺なんですが,たまに「名刺2枚になってますよ」等と言われることがあります。

また,二つ折りになっていることに驚かれるようなこともあります。

それだけ珍しい名刺なんだろうなと思います。

何かお困りの際に思い出していただける名刺になっているとすれば,印象に残るという意味ではよいのかもしれません。

 

名刺というと,司法試験を受け,合格した後の司法修習生の時代に,自分で発注して名刺を作ったことを思い出します。

修習生バッジ(若葉マーク等と呼んだりもします。)のデザインを入れることだけにはこだわっていましたが,今思い返すとずいぶん安っぽい名刺だったなと思います。

お金をかけられる立場でもなかったのでやむを得ないのかもしれませんが。。。

 

皆さんはどのような名刺をお持ちでしょうか。

 

読書の秋

「ストレス社会」等という言葉も残念ながらすっかり定着してしまいましたね。

弁護士業務は,ストレスのかかりやすい仕事にあたるといわれたりしますので無縁ではありません。

紛争の間に立って仕事をするわけですので。。言い換えれば大変ですがやりがいのある仕事といえるかもしれません。

 

とはいえ根を詰めすぎるとやっぱりしんどいなあと思うことがあります。

ストレス解消はやはり大切ですね。

ゆっくり休む,適度に運動をする等,方法はいろいろあると思いますが,秋といえばやっぱり読書です。何となく去年も一昨年も読書をしていた記憶があります。

理由はよくわかりませんが,秋になると妙に活字に触れたくなるように思います。普段は全然読まないですが。。

10年以上新刊を待っていた本がようやく発刊されたというのも読書をしようと思った理由の1つではあります。

電車移動の合間等にせっせと読んでいます。久しぶりに読書をすると,やはり活字には映像作品や漫画等にはない魅力を感じます。

修習生時代にお世話になった元裁判官にも大変な読書家がいらっしゃいました。優れた文章に触れることも,業務の糧になるのかなと考えたりもします。

 

まあ,読んでいる間くらいは,細かいことを考えず作品を楽しむのがストレス解消という意味では一番よいのかもしれません。