履行テスト

今回は履行テストについてのお話です。

「テスト」という単語にアレルギーがある方もいらっしゃるかもしれませんが,個人再生手続において重要な位置付けのものとなりますので悪しからずご容赦ください。

 

個人再生手続というのは,一定の条件にしたがって債務を減額し,減額された分の債務を数年間計画通り返済すれば,残っていた債務の支払義務を免れることができる手続きです。

自己破産の場合と違って,手続終了後も債権者への返済があるということになります。

そのため,一度裁判手続を離れた後も,しっかりと返済の継続が期待できなければなりません。

この返済継続ができるかどうか(「履行可能性」といいます。)を確認するのが,履行テストです。

「テスト」といっても,要するに毎月きちんと返済継続ができることを示すために,毎月返済予定額の積立ができれば問題ありません。

期間はおおむね半年程度です。

東京地裁の運用では,全件個人再生委員が選任されますので,個人再生の申立て後,個人再生が開設した口座に積み立てるかたちでテストします。

個人再生委員が選任されない場合(他の地方裁判所の多くの案件では個人再生委員が選任されない場合の方が多いようです。),申立代理人の弁護士事務所の口座への積み立てによってテストするのが基本かと思います。

うまくいけばマイホームを残すことができる場合があることや,ご依頼前の毎月の返済額より積立額の方が少なくなることが多いためか,履行テストで躓いてしまう方はあまりいないのではないかと思います。

 

私個人の経験では,ご依頼いただいた方が履行テストに失敗したことはありませんので,合格率100%,といえなくもありません。一応。。

可動域制限

さて,今回は後遺障害の話です。

取り扱っている後遺障害案件の中で,頚椎捻挫(むちうち),腰椎捻挫に次いで多い印象があるのが,腕や肘などの骨折の後遺障害です。

腕や肘が以前よりも曲がらなくなってしまった,という場合に,曲がらなくなった角度に応じて等級が認定されます。

可動域制限の後遺障害というものです。

ヒトの身体には個体差があるので,けがをしていない方の腕や脚がどのくらい曲げ伸ばしできるかを測り,それと比較してけがをした方の腕や脚がどれくらい曲がらなくなったのかを計測します。

腕であれば,手首,肘,肩が三大関節となりますが,このうち1つについて,3/4以下となれば12級,1/2以下となれば10級とされています。

角度は後遺障害診断書を作成する際にお医者様が測定します。

角度の測定について,もしかしたら「ごまかしがきくのではないか」と考えられる方がいるかもしれませんが,そう簡単にはいきません。

というのも,測定する際には,「自動」ではなく「他動」での可動域が基本的な判断材料とされます。言い換えると,「自分でどこまで曲げられるか」ではなく,「医師が手を添えてどこまで曲げられるか」で後遺障害が決まってくるということですね。

 

そのほか,変形障害などが絡むと併合等級といって,等級が上がるようなこともあります。

詳しいことは個別の案件について弁護士にご相談いただいた際にということになってしまいますが。。

ドラレコ

車を乗っていらっしゃる方,ドライブレコーダーは搭載しているでしょうか?

もしかしたらそもそも「ドライブレコーダーって何?」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

たまに交通事故のニュースなどで衝突の瞬間を捉えた映像が流れることがあるかと思います。この衝突前後の様子を映像として記録している装置がドライブレコーダーです。

 

弁護士のブログでなぜそんな話が出てくるかといえば,交通事故の事件で証拠として出てくることがあるからです。

証拠として出てくると,何十回も,場合によっては100回以上かもしれませんが,問題となる場面を停止して再生して確認します。少しでもこちら側に有利なものが映っていないかくまなく確認する必要があるためですね。

 

ドライブレコーダーは,良くも悪くも事故当時の状況を映像として記録しています。

一見すると不利に見えた事故状況と思われたものが,ドライブレコーダーの映像により,実は相手方の方に重大な交通ルール違反があったことがわかったりすることがあります。

逆に,こちら側にとって不利な映像として映ってしまっていることもないわけではありません。

映像が鮮明でなかったり,見たいところが運悪く映っていなかったりということも少なくないのですが,ドライブレコーダーの映像が結論に決定的な影響を与えることもあります。

 

ドライブレコーダーに映像が残ることから,普段の運転でも安全運転を心がけるようになる,といった心理的な効果もあるようです。安全運転のためにご自身のお車に搭載するのもありかもしれません。

個人再生委員

今日は個人再生のお話です。

 

個人再生手続きには,「個人再生委員」という立場で弁護士が裁判所から選任され,手続きに関与するケースがあります。

基本的には複雑な案件などの場合に選任される,ということになりますが,東京地裁の運用では全件個人再生委員が選任されることになっています。

個人再生委員の視点からも,財産の隠匿などがないか,借金の圧縮を認めてよいか,適切に今後の返済を継続できるか等を審査するわけです。

 

難しい案件の場合,個人再生委員の先生と協働して進めていけるのはとても心強いです。

以前,特に難しい案件で,倒産分野でご活躍されている先生に再生委員としてご担当いただいたことがあります。

方針についてアドバイスをいただいたりしつつ,協力しながら手続きを進めました。

かなり四苦八苦しながらも,最終的には何とか認可決定を得ることができました。

 

その案件で先生が取られた方針や処理の仕方などは,今ご依頼いただいている案件処理でもとても参考になっています。

難しい案件を処理できた,ということも,今後の案件処理の自信になります。

経験は力になりますね。

まあ,本当に大変だったので,そういう事件ばっかりだと自分自身が疲弊してしまいそうですが。。

健康管理に注意して滞りなく仕事を進めていきたいと思います。

ブラックリストその2

先月に続きましてブラックリストについてのお話です。

 

ブラックリストに載る,つまり事故情報の登録をされると,クレジットカードの新規作成や,車のローン,住宅のローンの組む際の審査等に影響が出ます。

ヤミ金のような例外を除き,貸付を行っている銀行等の金融機関は基本的に登録を行っているので,どこの金融機関でも借り入れをすることは難しくなるといえます。

そのため,「別に車のローンも住宅ローンも組む予定がない」,という方でも注意は必要です。

昨今では,携帯電話(主にスマートフォン)はもはや生活必需品といえますが,本体料金の分割にも事故情報の影響が出て,分割払いができない可能性があります。

最新機種等は高額ですので,機種変更の際に本体代金の分割払いができなくるというのは,困る方もいるかもしれないです。

 

もっとも,最近ではデビットカードをクレジットカードの代わりに利用することができますし,「○○ペイ」のような新しい支払方法も浸透してきました。

スマホについても,いわゆる格安スマホのスペックも徐々に上がってきているようですので,分割払いができなかった場合でも,格安スマホを一括払いで購入すればそこまで支障にはならないようにも思います。

 

新たな借り入れが厳しくなるというのはたしかに大きなデメリットですが,見方を変えれば借入れに頼らない家計改善のよい機会,と捉えることもできます。

また,基本的に,事故情報が登録されているという事実が友人,知人等に知られる可能性も高くありません。

 

弁護士に債務整理の相談をする際,ブラックリストの問題は避けて通れませんが,ご相談の前の参考にしていただけましたら幸いです。

 

なお,「ブラックリスト」という言葉の起源は清教徒革命までさかのぼるらしいですね。

諸説あり,というところかもしれませんが。。

 

P.S. 当法人の千葉法律事務所が開設されました。柏に続き千葉県は2か所となりましたのでアクセスがよりよくなったと思います。

ブラックリスト

借金問題と切り離せない問題として,いわゆるブラックリストの問題があります。

借金問題に関するご相談の中でも,比較的多くの方がこの点を気にされているように思います。

 

借入れ等の情報は,CIC,JICC,KSCといった信用情報機関に登録されます。

クレジットカードの作成や住宅ローンを組む際等にこの情報が利用され,申込者の信用(返済を続けられる収入があるか,他に借金がないか等です)について審査されるわけです。

携帯電話の割賦支払い等も登録されますので,信用情報機関に登録されていることそれ自体は必ずしも大きな問題となるわけではありません。

弁護士による借金問題の処理は,「債務整理」と呼ばれますが,この債務整理を行った場合には,「事故情報」として登録されることになります。

「当初の契約通りの返済がされなかった」という事実は,今後の借入れを行うにあたって厳しく審査される事情となります。

弁護士介入の際,「受任通知」という書面を発送しますが,基本的にはこの通知の時点で債権者にとっては不利益となる可能性(当初の契約通りの返済がされない可能性)が出ることから,事故情報として登録されることになります。

 

「ブラックリストに載る」という言葉の意味としては,上記の「事故情報が信用情報機関に登録されること」,とご理解いただくのが一般的なイメージに近いかなと思います。

 

P.S.

当法人の事務所が四日市にオープンしました。

債務整理に関する弁護士法人心 四日市法律事務所のサイトはこちらです。

 

 

司法試験延期

新型コロナウイルス関係の記事が続いてしまうのも心苦しいものがありますね。

終息の目途がなかなか立っていないところもありますし,影響は様々なところに派生しているようです。

 

先日,司法試験延期が発表されニュースになっていました。

各種試験も延期や中止となっているようですね。

 

制度変更後の司法試験は,毎年5月中旬頃,中1日を含む5日間かけて行われています。たしかに大人数が何日にもわたって長時間試験会場で受験するわけですので,現状で試験を実施することは難しいでしょう。影響の大きさを痛感するニュースの1つでした。

 

4年に1回のオリンピックに向けて準備をすすめていた各競技の選手たちとは比べられないかもしれませんが,受験生たちも文字通り人生をかけて毎年1回きりの試験に向けて準備をしています。タイミングを狂わされてしまい実力をうまく発揮しきれないというのは悔しいものだろうと思いますが,頑張っていただければなと思います。外出制限はありますが,試験直前の受験生の多くは自宅にこもって勉強,という生活でしょうから,大きな変化はないかもしれません。。

 

裁判官も検察官も弁護士もやりがいのある仕事ができるかと思います。

そのためにはまず試験を突破しなければなりません。月並みではありますが皆さん条件は同じです。現時点では実施時期さえ未定ですが。法曹を目指す皆様のご武運をお祈りします。

厚労省発表

厚生労働省からの発表で,生活福祉資金の特例貸付制度が3月25日から開始しているようです。「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の拡大について」というものです。

社会福祉協議会が窓口となっており,減収,失業した方向けに無利子での貸付を行っているとのことです。

新型コロナウイルス等の影響で減収,失業されたという方でもしご存じない方がいらっしゃいましたらご参考にしていただければと思います。

※現時点での情報を基に書いているため,内容に変更等があるかもしれません。あらかじめご了承ください。詳細は厚労省のサイト等をご確認いただければと思います。

 

当法人へは,近時債務整理(自己破産や任意整理といった借金問題)に関するご相談が少しずつ増えてきています。

「残業ができなくなって収入が減ったため返済継続が難しくなった」というお話,影響が大きいものですと「働いているお店が今月いっぱいで閉まってしまう」といったお話もありました。

 

トイレットペーパー,マスクが買えない等,日常生活にも少なからず影響が出てきているところですが,きちんと対処すれば感染力自体はそこまで大きくないとも言われていますので,皆さんで気をつけていければと。

新型コロナウイルスの影響で社会,経済に各種影響が出ているところかと思います。

一弁護士としてお役に立てることは限られておりますが,微力ながら貢献できればと思います。

六法全書

「六法全書を全部暗記しているの?」

司法試験を受験していたころからこのような質問を受けることがあります。

司法試験に合格すると,裁判官,検察官,弁護士になることができますが,どの立場の方でも,六法全書をすべて暗記している,という方はほとんどいないのではないかと思います。

 

そもそも,司法試験受験の際には試験時間中,法令集を読んでよい(大学内部の試験での「持ち込み可」みたいなものです)ので,わざわざ暗記する必要がありません。

問われるのは条文をどのように事案の中で活用していくか,といえばよいでしょうか。

 

とはいえ,限られた試験時間の中で第1条から順番に関係する法律を探す時間はありませんので,大まかに何条くらいに問題に関係しそうな条文があるか,くらいは把握していたりします。

 

では実際に弁護士になったら法律を覚え始めるか,といえばそういうわけでもありません。読む必要があればいつでも六法開けますからね。

ではでは覚えることなんて何もないのか,ということになりますが,受験中はかなりの数の過去の裁判例と向き合ってきました(概要だけのものも含むと1000件くらいになってしまうかもしれません)。重要な最高裁判決に関しては判決文を何回も読みましたし,その最高裁判決には各裁判官の補足意見等もつきますのでそこまで読んだり,さらに判決についての解説を教授や実務家等がしているのでそれを読み込んだり。。

過去の判例について,「大切なことは覚えることではなく理解することだ!」などとよく言われますし,それはその通りです。ただ,理解しようとする過程で結局はかなりの部分を記憶することになりましたかね。結果的に。。

 

受験予定の方はそろそろ追い込みの時期に入ります。体に気をつけつつ,頑張ってください。

調停のお話~続き~

さて,先月に引き続いて調停のお話を。

 

調停の特徴として,「調停委員」の存在を挙げられると思います。

調停委員は,40歳以上70歳未満の方で,①弁護士,②民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する人③社会生活の上で豊富な知識経験を有する人が選ばれます。

そのため,調停委員は必ずしも弁護士に限られません。

調停委員は,調停手続において,双方当事者の意見を聞いたうえで,話し合い・和解のあっせんを行います。

通常は,裁判官よりも,調停委員と話を進めていくことが多いといえるでしょう。

調停委員の方とは円滑に話を進めていきたいところです。

 

さて,ここで,「どうせ裁判所を使って手続するなら普通の裁判でいいんじゃないの?」という疑問が出る方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん,そういう考え方もあります。

ただ,前回にもお話したとおり,双方の話合いでの決着となるという点にはメリットもあります。

かなり極端な事例をイメージしていただきますが,判決になったら0円になる確率が50%,100万円になる可能性が50%,話し合いの解決を前提に50万円でどうでしょう?という提案を受けた場合,皆さんは提案を受け入れますか?

価値観はそれぞれですので,判決を選ぶ方もいらっしゃるかと思いますが,調停による話し合いも悪くない結果ではないか,と考える方もいるのではないでしょうか。

選択,戦略の幅は多いに越したことはありません。

 

通常,裁判手続よりも期間が短いことが多いのも調停のメリットです。

調停のお話

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

令和最初の年越しですね。

ということで,今回は調停のお話です。

年越しにまったくちなんだお話になりませんがあらかじめご了承ください。

 

調停,というのは,簡単に言うと,裁判所を利用した話し合いの手続きとなります。

当事者同士で話し合いをしていてもらちがあかない,というときに,間に公平な立場の第三者を入れれば話し合いがまとまることがある,というのはイメージしやすいと思います。

その第三者の立場を裁判所が担う,というわけですね。

弁護士業務においては,お金の問題等と言った事案よりも,離婚や相続など,「家事事件」と呼ばれる分野で利用する機会が多い手続きと言えるかなと思います。

 

判決は,「一刀両断的判断」等と言われることがあります。

それは裁判官の責任ある判断で,重要なお仕事ということになるかと思いますが,適法な手続きを踏んでいるとはいえ,第三者によって「借りている部屋から出ていけ」であるとか,「○○円を払え」等と決められてしまうわけです。

家族の問題,親族の問題等は,そういう判断に必ずしもなじまない側面があります。

場合によっては最後まで話し合いがまとまらず,判決による判断に委ねざるを得ないことがありますが,できれば双方ある程度の譲歩,納得の上で合意できた方がいいことも少なくないように思います。

ETCカード

ETCカード,利用されていますか。

東京周辺だと電車移動を選択することが多いため,あまり高速道路を利用するタイミングがありません。

しかし,債務整理のご相談をいただく際に,ETCカードの利用についてご相談いただくことがけっこうあります。

 

多くの方は,クレジットカードの付帯機能としてETCカードを,利用されているかと思います。

ここで,債務整理を行った場合には,信用情報としてその事実が登録されます。

いわゆる「ブラックリストに載る」というヤツですね。

その結果,今まで使っていたクレジットカードがETCカードとして利用できなくなってしまう可能性があります。

別のカードを作ろうと思っても,すでにブラックリストに載っているため審査に通らない可能性が高いです。

そうすると,クレジットカードがなければETCが使えないのではないか,という問題にぶつかるわけです。

 

ここで登場するのが,「ETCパーソナルカード」です。

このカードは,高速道路会社が共同で発行しているカードで,一定額の保証金の用意と年会費の支払いが必要となりますが,審査なくETCカードとして利用することができます。

クレジットカードとしての機能のないETC専用のカードというわけですね。

 

デスクワーカーの方でETCカードの利用継続のためだけに債務整理を断念する,というケースは多くありませんが,トラックの長距離運転手の方だったりすると死活問題だったりします。

こういったサービスの情報を知っていることも,ときには事件処理の方針を決めるために役立つことがあります。

読書の秋

「ストレス社会」等という言葉も残念ながらすっかり定着してしまいましたね。

弁護士業務は,ストレスのかかりやすい仕事にあたるといわれたりしますので無縁ではありません。

紛争の間に立って仕事をするわけですので。。言い換えれば大変ですがやりがいのある仕事といえるかもしれません。

 

とはいえ根を詰めすぎるとやっぱりしんどいなあと思うことがあります。

ストレス解消はやはり大切ですね。

ゆっくり休む,適度に運動をする等,方法はいろいろあると思いますが,秋といえばやっぱり読書です。何となく去年も一昨年も読書をしていた記憶があります。

理由はよくわかりませんが,秋になると妙に活字に触れたくなるように思います。普段は全然読まないですが。。

10年以上新刊を待っていた本がようやく発刊されたというのも読書をしようと思った理由の1つではあります。

電車移動の合間等にせっせと読んでいます。久しぶりに読書をすると,やはり活字には映像作品や漫画等にはない魅力を感じます。

修習生時代にお世話になった元裁判官にも大変な読書家がいらっしゃいました。優れた文章に触れることも,業務の糧になるのかなと考えたりもします。

 

まあ,読んでいる間くらいは,細かいことを考えず作品を楽しむのがストレス解消という意味では一番よいのかもしれません。

裁判の大まかな流れについて

弁護士業務といえば裁判をイメージされる方は少なくないと思います。実際,ご依頼の案件の中には,裁判に移行する事案もあります。

今回は,裁判がどのように進んでいくのかなどについて書いていきたいと思います。

地位を確認する裁判などもあるため,今回は,相手方に対してお金を請求する裁判を起こすケースを念頭に置きます。

 

裁判への移行は,通常,「訴状」という書面の提出から始まります。訴状では,こちらの主張の述べ,あわせて主張を根拠づける資料として証拠を提出します。

訴状に不備がなければ,裁判が行われる期日が決められ,裁判所を通じて相手方に訴状が送付されます。

訴状に対して,相手方は,「答弁書」という,こちらの主張に対する最初の反論書面を提出します。

それ以降は,準備書面(第1準備書面,準備書面⑵などと題名をつけることが一般的です。)で,双方の主張反論,証拠提出が行われます。相手方から出された証拠や主張を精査し,反論書面を作成することになるので,だいたい1か月くらいずつ期日が設定されます。

双方の主張反論が複数回行われると,ある程度争点に対する主張,証拠が出そってきます。そうすると,裁判所の方から和解案の提案がされることが多いです。和解案について双方が応じれば終了,いずれか一方でも応じられないという回答を出せば,基本的には判決まで進みます。判決前には一度双方当事者や関係者に対する「証人尋問」を行うことが多いです。テレビドラマなどでは取り上げられがちなシーンですね。

 

裁判というと,判決を下すところまで争うイメージが強いと思いますが,実は大多数が判決前の和解で終結しています。和解案というのが,ある程度判決を見越した裁判官の提案でもあるためです。案件にもよりますが,裁判をした場合の期間の目安は訴状を提出してから半年~1年くらいでしょうか。

 

裁判を検討されている方のご参考になれば。

過払金のイメージ

過払金。ピーク時に比べるとややご相談の数は減っているところですが,今でも過払に関するご相談があります。

お金が戻ってくればそれでよしっ!というところもあるかもしれませんが,過払金発生の仕組みについて簡単にまとめてみたいと思います。

かなり簡略化しているため正確なところからははずれてしまうところもあるかと思いますが,イメージをつかんでいただければなと思います。

 

「過払金」というのは,読んで字のごとく「払い過ぎたお金」です。

なぜ払い過ぎが生じるのかについては2つの法律がかかわってきます。

1つは改正前の出資法,もう1つは利息制限法です。

利息制限法では10万円未満で年20%,これをこえて100万円未満まで18%,100万円以上は15%が上限となっていますが,改正前の出資法では,29.2%まで利息が認められていました。これの利息制限法の利率の上限と改正前の出資法の上限の間の金利がいわゆるグレーゾーン金利というやつです。

 

計算が複雑になってしまうのでごくごく簡略化しますが,例えば100万円借りていて,毎月3万円払っていたとします。毎月払う3万円のうち,元々の契約では1万円が元本返済,2万円が利息の返済だったとしましょう。元本が1万円ずつ減りますので,完済まで100払いとなります。

ここで,実は利息制限法の利率に引き直して計算すると,本来利息は1万円までしか払う必要がなかったとします。利息名目で毎月1万円余分に払っていたということになりますね。そうすると,払い過ぎた分はすべて元本への返済に充てられるべきじゃないか,となるわけです。

 

さて,上記のケースで,返済を続けていたとすると,毎月3万円×100回=300万円返済しているはずです。

しかし,2万円は元本に対する返済であったならば,前半の50回,計150万円返済した時点で,2万円×50回=元本100万円の返済を終えていたはずです。

にもかかわらず,払い終わっていないと思って支払い続けていた後半50回分は,実は払い過ぎだった過払金,ということになります。

 

…なんとなくイメージはつかめたでしょうか?

実情はずっと複雑ですので,過払になっているか,請求できるのか,といった詳細は,あらためて弁護士にご相談ください。

 

事務所の集合写真更新されたようですので良ければご覧ください。

http://www.kokoro-tokyo.com/

個人再生のご検討にあたって~住宅との関係~

好評につき,,かどうかわかりませんが,個人再生手続きの誤解がある点について,前回に引き続きもう1つご紹介します。

住宅資金特別条項についてです。

 

…専門用語というものはなかなかとっつきにくいですね。個人再生手続きを調べれば割とすぐに出てくる話かなと思いますが,破産手続では家を手放さざるを得ない場合でも,個人再生手続きでは,ご自宅を残して,債務の圧縮ができる場合があります。

住宅資金特別条項というのは,返済計画に盛り込む住宅残存のための条項です。

厳しい条件というわけではないのですが,住宅を残すためにはそれなりの条件をクリアしなければなりません。住宅を残せると知って相談してみたら条件を満たしていなかった,という相談の経験があります

この点について,すぐにでも確認できる点として2つお示ししておきます。

 

①自分で居住しているかどうか

住宅資金特別条項で残せるのは自身が住んでいる住宅のみです。

例えば申立人の親や子供だけが住んでいるが,名義は申立人という住宅を残すことは個人再生手続きではできません。生活の本拠となっている住宅を残すわけではないためです。

 

②住宅に資産価値があるか否か

返済額を決めるにあたって,「清算価値」というものが問題となってきます。簡単に言うと,総財産以上は返済に充てる必要があります。

ローン完済済みの不動産を査定したら数千万円の価値があれば,債務の圧縮はまずできないでしょう。また,ローンが残っていても,ローンの残額と比較し,売却額がかなり高額になるのであれば,それは差額分の資産価値があるということになるため,同様の問題が生じます。

 

上記の2点は比較的すぐに確認できるため,弁護士にご相談される前に一度ご確認いただくとよいかと思います。

個人再生のご検討にあたって

今回は,個人再生について,よくある誤解についてまとめてみたいと思います。

インターネット上に情報があふれているご時世です。借金問題で悩んでいる方も,実際に弁護士に相談する前に,事前にご自身で情報収集されていらっしゃる方も少なくありません。

ただ,誤解があって思っていたとおりにならない,ということもあります。今回はそんなポイントについてご紹介いたします。

 

個人再生手続きについて調べると,今ある借金が圧縮され,それを返済すれば残りの返済を免れることができる,という大枠の説明が出てくるかと思います。

これは大枠としては間違っていません。しかし,「最低弁済額100万円」というもう1つのルールを見落とされている方がけっこういらっしゃいます。

細かく整理すると,総債務額500万円までは100万円,500万円以上1500万円までは1/5,1500万円以上3000万円までは300万円,3000万円以上5000万円までは1/5となっています。

 

例えば,300万円の1/5は60万円ですが,上記の個人再生のルールに従うと,少なくとも100万円以上は返済しなければならないこととなります。

 

弁済額については,他に清算価値(財産のことです)も検討しなければなりませんが,そのあたりになると個別のご相談の際に確認する必要があるかなと。

個人再生をするかご検討中の方のご参考になれば。

バレー・リュー症候群

前回頚椎捻挫,ムチウチのお話だったので,続きというか,今回は関連するお話です。

「バレー・リュー症候群」という言葉をご存じでしょうか。

交通事故等で頚部を受傷後,事故前にはなかった慢性的な頭痛やめまい,吐き気,などの症状を訴えるようになることがあります。

このバレー・リュー症候群も,ムチウチ同様,主に14級の等級認定で問題となることがあります。

 

後遺障害の等級は全部で14等級あり,手や足,目,耳など様々な後遺障害が規定されていますが,個人的な経験では,ムチウチで14級の等級を獲得することが最も難しいのではないか,と感じています。

 

当法人には保険料率算出機構出身の後遺障害専門スタッフが在籍しているため,手前みそではありますが,後遺障害等級認定のサポートについては数ある弁護士事務所の中でもトップクラスであると思っています。

しかし,細部を詰めて認定の可能性を少しでも上げようと尽力しても,後遺障害に該当しないこともあり,そういった結果が出ると悔しい思いをすることがあります。

 

特に,追突事故は,被害者の方に何の落ち度もありません。もちろん,痛みが残るよりは完全に治ってしまうことが一番です。

他方,一定程度症状が残ってしまうケースは存在します。

その場合に,どのように対応すべきか,ご相談の際に見通しなどお話しできればと思います。

 

なお,余談ですが,バレー・リュー症候群という名前はバレーさんとリュー(ルー)さんというお医者さんが由来だそうで。。

 

むち打ち損傷

頚椎捻挫,頸椎症,頚椎症候群。いわゆるムチウチです。

特に追突事故で受傷される方が多いと思います。

これまで弁護士として少なからず交通事故の案件にも関わってきましたが,世の中の追突事故の多さに驚かされました。あくまで体感ではありますが,3割くらいは追突事故の相談を受けてきたように思います。

 

無事に治療を終え,完治してしまえば後は慰謝料などの賠償の問題だけですが,症状が残存した場合には後遺障害の問題が出てきます。後遺障害は,通常,保険料率算出機構(下部組織となる自賠責保険調査事務所)に後遺障害の等級認定申請をし,後遺障害といえるかどうかを審査してもらいます。その結果を基本に交渉が進むのが一般的です。

後遺障害が認定された場合とされない場合とで賠償額は大きく変わってくるため,ムチウチの事案では重要なポイントとなってくるといっていいでしょう。

しかし,このムチウチの後遺障害の獲得というのが難問で,なかなか簡単にはいきません。

ムチウチに限った話ではありませんが,痛みやしびれといった症状自体が後遺障害認定の対象となっている場合(14級には「局部に神経症状を残すもの」という認定があります),基本的にその原因を直接的に証明できる物的証拠がありません。患者本人の訴えや症状の推移等から判断せざるを得ないわけです。この点が,ムチウチの後遺障害等級の獲得の難しいところです。

弁護士法人心のムチウチに関するサイトはこちら

当番弁護

当番弁護制度というものがあります。

刑事事件で身柄を拘束されてしまった方が早期に弁護士による弁護を受けられるよう,初回の接見を無料で行っている制度です。

弁護士には当番日が割り当てられており,その日に逮捕され身柄の拘束を受けた方のところへ出動します。

 

刑事事件では,基本的に早期の弁護活動が重要になってきます。

例えば,黙秘戦略といって,一切取り調べの際の質問に答えないような方針をとることがあります。その戦略をとる前に取り調べで黙っておくべきことを話してしまうかもしれませんし,そもそも捕まっている方はどういった方針をとるべきか否かの判断を仰ぐ必要があるでしょう。

当番弁護士として出動した後,そのまま勾留されて身柄拘束期間が延びる場合には,国選弁護人ないし私選の弁護人として引き続き刑事弁護を継続する場合もあります。

 

たしかに,逮捕されて身柄拘束を受ける場合にはそれ相応の理由があることが少なくありません。しかし,例えばお酒に酔って周囲のものを壊してしまった,痴漢に疑われたといった理由などで身柄拘束をされる可能性もあります。こういったことは,日常生活の中でいきなり降りかかってくる場合があります。

当番弁護制度という制度の存在については,頭の片隅に置いておいてもよいかもしれません。