人身傷害保険

自動車事故によって死傷した被害者やその遺族は,通常,加害者や加害者の保険会社に対して損害賠償を請求することになります。

しかし,①事故の相手に過失がない場合,②被害者にも過失がある場合,③事故の相手が任意保険に入っていない場合等には,治療費,休業損害,逸失利益等,被害者に実際に生じた損害の全額について,事故の相手から支払いを受けることができません。

 

①②③のようなケースで,力を発揮するのが人身傷害保険です。

人身傷害保険とは,一般的に,交通事故によって死傷した被害者が,自ら保険会社と契約した保険契約に基づき,事故の相手の過失の有無及びその割合に関係なく,保険会社から,人身傷害保険に関する約款で定められている算定基準に基づいて算定された損害額相当の保険金の支払いを受けることができるという保険をいいます。

 

人身傷害保険は,従来の搭乗者保険,傷害保険等と異なり,実損てん補方式をとっていますから,実際の損害額を基礎として支払金額が算定される点も,大きな特徴です。

ただし,支払金額には上限が設けられています。

また,実損てん補方式といっても,損害額は,各保険会社が定めた基準に基づいて算定されます。

その結果,実際には,いわゆる弁護士基準,裁判基準(弁護士,裁判所が用いる損害額の算定基準)に基づいて算定された損害額に不足することが多いのも難点です。

 

人身傷害保険は,新しく登場した保険ということもあって,未解決の法的問題が多く,相手に対する損害賠償請求権と人身傷害保険に基づく保険金請求権との関係については,いろいろな見解が対立しています。

残された課題につきましても,被害者過失分の損害額もてん補することが人身傷害保険の本質的要素であるという出発点を忘れずに,解決されるべきだと思います。

 

最近は,人身傷害条項が付いている自動車保険が多くなっています。

契約車両に乗っている運転者が死傷した場合だけでなく,同乗者が死傷した場合にも使うことができます。

また,ご家族が歩行中に事故に遭った場合にも,支払い対象となるケースもあります。

保険の内容によって補償の範囲が異なりますから,ご自分の保険会社だけでなく,ご家族の保険会社にも,人身傷害保険が使えるかどうか,確認されるとよいでしょう。

 

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