加害者の保険会社から提示された示談金のチェック項目

交通事故の被害者が通院を終了すると、加害者加入の保険会社が被害者の損害額を計算して、示談金を提示します。

示談金の内訳(損害賠償額の項目)は、通常、治療費、通院費、休業損害、傷害慰謝料となります。

後遺障害が認定された場合は、さらに、逸失利益、後遺症慰謝料が加わります。

示談金の提示を受けたら、損害項目ごとに適正な金額といえるかチェックする必要があります。

 

1 休業損害

休業損害とは、事故によるケガのため、医師から自宅静養を指示されたり、通院等の理由で仕事を休んで収入が減ったり、有給休暇を使う等した場合、受け取ることのできた収入を失ったことによる損害をいいます。

会社勤めの給与取得者であれば、勤務先が作成する休業損害証明書と源泉徴収票の記載から、ある程度、客観的に損害額を計算することが可能です。

しかし、事故前の収入日額の計算方法によって増額するケースがあります。

また、欠勤したことにより賞与が減額された場合、賞与減額分も賠償される可能性があります。

個人事業主、会社役員等の場合、休業して収入が減ったことを休業損害証明書によって明らかにすることができず、休業損害の有無や額について争われるケースが少なくありません。

そこで、確定申告書類、会社の決算書類等を精査することにより、保険会社の提示を上回る額が賠償される可能性があります。

専業主婦の方は、事故の負傷によって家事に支障が生じた場合、家事労働が制限されたことによる損害を請求することができます。

しかし、その損害額の算定は、日額や休業日数が客観的に定まりにくいので、保険会社の提示が低額にとどまることが少なくありません。

実際に支障が生じた程度に応じて、増額される可能性があります。

兼業主婦の方が、仕事をほとんど休まなかった場合、提示額はわずかな損害額にとどまるケースが多くみられます。

しかし、家事に支障が生じた場合、仕事の内容、勤務時間、収入等、個別の事情を検討することによって、家事労働が制約されたことを理由とする損害額が賠償される可能性があります。

事故当時、無職であった方は、原則として休業損害は発生しません。

しかし、例えば、次の職が決まっていた、退職したばかりだった等の個別の事情を検討することによって、賠償される可能性があります。

 

2 逸失利益

逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって、将来得られたはずの収入を失ったことによる損害をいいます。

保険会社の提示は、逸失利益の計算基準となる基礎収入が低すぎる、労働能力喪失期間が短すぎる等のケースがみられます。

 

3 傷害慰謝料・後遺症慰謝料

傷害慰謝料とは、事故で負傷して精神的苦痛を被ったことによる損害をいいます。

後遺症慰謝料とは、事故で後遺障害が残り精神的苦痛を被ったことによる損害をいいます。

傷害慰謝料と後遺症慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判基準があり、自賠責基準<任意保険会社基準<裁判基準の順で、高額になる傾向があります。

そのため、保険会社の提示額は、裁判基準と比較すると、低額にとどまることが一般的です。

 

このように、加害者加入の保険会社が提示する示談金額は、低額にとどまるケースが多いので、弁護士が交渉することによって増額される可能性があります。