遺言を作る時の注意点

私は日々,相続事件を取り扱っておりますが,「遺言さえあればなぁ」というケースは数多くあります。

もちろん,遺留分等,遺言があっても紛争になることはありますが,遺言により不動産等の帰属は決まっており,あとは金銭の問題なので,

分け方や,割合等により劇的に揉めることは比較的少ないです。

ただ,反対に,遺言書のせいで過度に揉めるケースも少数ですが存在します。

今日は,特に遺言を作った方が良いと感じるケース と 特にこんな遺言は勘弁してください という例をちょっとだけ紹介します。

1 特に遺言を作った方が良いケース①

法定相続分で分けることが,明らかに不合理な時。

「明らかに不合理」かどうかは価値判断が入りますが,遺言がなければ,とにかく法定相続分が大きな力を持ってしまいますので,

法定相続分という平等の割合が,むしろ当事者間の不公平感を増してしまうようなケースは,特に,遺言を作ることで手当てしないと

悲惨です。

2 特に遺言を作った方が良いケース②

不動産が複雑な場合(土地は遺言者,建物の一部が遺言者所有,だけど建物の別の部分を相続人Aが所有していて,居住しているのは相続人 B・・・)には遺言書を作っとかないと,不動産について揉めたときにとにかく混沌とします。借地権が混ざったりしてるとさらに大変です。

3 特にこんな遺言書は注意すべき①

一部遺言。不動産だけの分け方を書く等の遺言は,基本的にはダメです。残部をどう分けたらいいのかで,揉めます。

特段の事情なきかぎり,一部遺言の場合,その一部を特別受益と解する判例がありますので,

残部が法定相続分どおりに分割されるわけではありません。

4 特にこんな遺言書は注意すべき②

あとで,遺言者が本当に遺したのか疑われやすいケース(認知症が進行している,又は,著しく内容が難しい遺言書)

せっかく遺言書を遺しても,遺言無効で紛争となってしまっては,元も子もありません。後から明らかに揉めそうであれば,医師の診断書を

取っておく,ビデオを取る,等の工夫が必要なケースもあります。