相続法改正とよくあるご質問

令和元年7月に改正された相続法について,周知されるようになり,よく質問を受けています。

今日は,特に質問,誤解の多い事項について,回答をしていきます。

1 特別寄与料

例えば地方在住お父様が亡くなり,子供が長男と長女の2人のケースで,お父様はご生前,一人では起居することができず,通常であれば24時間

介護施設に入るような状態でしたが,長女は東京に出てきている反面,お父様は長男夫婦と同居しており,長男の妻が,仕事を辞め,付きっきりで

介護をしていたことが原因で,遺産分割について長男と長女の意見が合わないとします。

このようなケースで,長男の奥様から「この7月から相続人以外でも介護等につき特別寄与料を請求できるようになると聞きましたので請求したい。長女よりも長男に多く渡して欲しいので。」というようなご相談を受けることがあります。

実は,ほとんどの場合,このようなケースで特別寄与料の制度を使う必要はありません。

相続人である長男の取り分を決める際に,長男の妻の寄与分を考慮して遺産分割をすることが制度上可能であり,長男が長女より多く遺産を受け取るという解決が可能であるからです。

特別寄与料の制度は,時効期間も短く,決して利用が容易い制度ではないため,このようなケースで使う必要はないのです。

では,特別寄与料はどのようなケースで使うのでしょうか。

それは,上記のケースで,お父様が亡くなる前に,既に長男が亡くなっており,相続人が長女一人であるようなケースです。

この場合には,長男の妻は,「相続人である長男の寄与とみなす」という扱いができないため,特別寄与料の請求をすることになります。

本制度の制定目的は,このように,相続による調整を図れない場合に利用するための制度なのです。