相続手続と必要な戸籍謄本②

前回の記事にて,親子相続のケースで親の出生から死亡までの戸籍を取得しなければならない理由まではご説明いたしました。

次は相続人の現在戸籍を取る理由ですが・・これは簡単で、相続人が現在生きていることを証明するためです。ただ、簡単と申し上げたのは、相続人である子が全て生きているケースで、子が亡くなっていると、代襲相続と数次相続の有無の確認が必要になってきます。

代襲相続はご存じの方が多いと思います。親より先に子が亡くなっていた場合には、子の代わりに孫が引き継ぐって制度のことですね(兄弟相続の場合も一度に限り、代襲相続がありますね)。もし、親より先に子が亡くなっていて孫がいる場合には・・もうお分かりいただけると思いますが、この子に、孫が何人いるかを確認しなければいけませんから、今度は子の出生から死亡までの戸籍も全て必要になりますね。

次に、数次相続というのは、相続が繰り返し発生している場合のことです。

数次相続となれば、今度はその子の相続が普通に発生していると考えるわけです。令和2年9月5日に親が亡くなったとして、同年9月3日に子が亡くなっていれば代襲相続の問題、同年9月7日に子が亡くなっていれば数次相続の問題です。

 

具体例で考えてみましょう。

⑴親Aが9月5日に死亡 子はBCの2人で、Bには妻Dと子Eがおり、Cの他に腹違いの兄弟FGがいるケース

⑵親Aが9月5日に死亡 子はBCの2人で、Bには妻Dがおり子は無く、Cの他に腹違いの兄弟FGがいるケース

 

さて、⑴で9月3日にBが亡くなっていれば、代襲相続の問題ですから、Aの相続人は、CとEの2人です。

⑵で9月3日にBが亡くなっていれば、Bに子がいないため、相続人はCだけです。

 

そして、⑴で9月7日にBが亡くなっていると、数次相続の問題ですから、Aの相続分の2分の1を持ったBが死亡して、相続人であるDとEがBの相続分を2分の1ずつ相続することになります。要するに、Aの相続人は2分の1相続分のCと、4分の1ずつの相続分を有するDとEですね。

 

⑵のケースで9月7日にBが亡くなっていると、なかなか計算が大変です。2分の1の相続分を有する相続人Bが亡くなり、Bの相続割合は、妻が4分の3、Cが8分の1、FGが16分の1ずつです(半血兄弟)。

そうすると、Aの相続割合はCが16分の9、Dが16分の6、FGが32分の1ずつとなります。

 

このように、相続の発生した日がいつかにより、大きく相続割合が変わることはご存じない方が多く、ご説明すると驚かれる方がおられます。

代襲相続、数次相続が発生しているケースでは、戸籍の取得は大変ですね。

 

次回は、親子相続以外のケースで必要な戸籍と、その理由についてお話していきます。

東京で相続に関してお悩みの方はこちらをご覧ください。

相続手続に必要な戸籍謄本①

 

秋めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

東京の交通量は、コロナ前と変わらない程に増えてきましたし、だいぶ以前の日常が戻ってきているように感じます。

 

今日は金融機関や不動産の登記手続等、相続手続に必要な戸籍について「なぜ、大量の戸籍が必要になるのか」「どのような戸籍が必要になるのか」について解説していきます。

ちなみに,金融機関や不動産登記手続で使用する戸籍は原本の提出が必要になりますので,金融機関や不動産の数が多いと,提出しては還付を受け,提出しては還付を受け の繰り返しとなり,手続に時間がかかります。

近年,法定相続情報証明制度といって,戸籍の束と相続人関係図を作成して法務局へ提出すると,何枚発行をしても発行料金のかからない,1枚紙の法定相続情報を取得することができるようになりましたので,とても便利になりました。

相続が始まると、最低限、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍、原戸籍等と、相続人の現在戸籍が必要となります。そしてこの最低限の戸籍類の取得で済むのは、親が亡くなり、子(又は子と配偶者)が相続人のケースです。

まず、なぜ出生から死亡までのすべての戸籍を求められるのかといえば、親子相続のケースでいえば、亡くなられた方に子供が何人いるかを確認するためです。

亡くなられた方はもしかしたら、過去に別の人と結婚をして、子供をもうけているかもしれませんし、どこかで養子縁組をしたり、認知をしているかもしれません。

「親の相続だから、子が何人いるかくらい知っているよ!なのに戸籍を全部揃えるなんて面倒!」とおっしゃるお子様もおられますが、金融機関からすれば、相続人の全員を確認しなければ、怖くて預金解約に応じる気にはなれません。もし、遺産分割協議書が相続人全員でなされたものではないにもかかわらず、預金を解約してしまったら責任問題だからです。登記も同じくで、間違った登記を信用した人が出てきてしまっては大変ですから、万に一つも間違えるわけにはいきません。

しかも、弁護士として相続事件を担当していると、「知らない間に夫が認知していて、実は夫に別の子供がいた」とか、「親が知らないうちに知らない人と養子縁組している」というケースはそれなりにあります。認知や養子縁組というのは、秘密裏に行われるケースがありますし、なにより、日本の戸籍制度において、認知や養子縁組というのは、認知等をしたときの戸籍にしか乗らず、後の戸籍には表記されないので、分かりにくいのです。要するに「親の相続だから子が何人かくらい知っている」というのは、実はそうでもないケースが多いので、銀行や法務局からすれば信用できない、ということですね。

続きは②で書いていきます。