所在等不明共有者持分取得手続について

今年もあと残すところ3日です。

東京は気温が安定しませんね。

乾燥がひどく、喉をやられている人が多いようですので気をつけて年末年始を過ごしたいところです。

今年は相続の紛争案件だけでなく、たくさんの相続税申告のご依頼をいただきました。

ありがとうございました。

前回は、相続税申告と相続時精算課税の関係について書きましたが、今回は、所在等不明共有者持分取得手続について書いてみようと思います。

この手続は、令和3年の民法改正でできたもので、共有状態にある土地や建物といった不動産について、共有者が、他の共有者が誰か分からない場合や、どこに住んでいるか所在が分からない場合に、裁判所に対し、この他の共有者(「所在等不明共有者」といいます。)の持分を申立人に取得させる旨の裁判を求める手続です。

所在等不明共有者がいる場合、不動産の管理や変更の意思決定ができなくなってしまいます。

そうすると、所在等不明共有者以外の共有者はこの共有不動産を塩漬けにすることになりかねず、非常に困った事態になってしまいます。

そこで、裁判所の決定によって、共有不動産の管理や変更の意思決定ができるようにする手続が作られました。

また、このような場合に、強制的に所在等不明共有者の共有持分を他の共有者が買い取ることができる手続もできました。

ただし、相続によって、所在等不明共有者の持分が共同相続人の間で遺産分割の対象となる相続財産に属する場合(これを「遺産共有」といいます。)、相続開始から10年経過していることが必要ですので、注意が必要です。

この手続において、裁判所は、所在等不明共有者の持分の時価相当額を考慮して供託金の額を定めて、申立人がこの金額を供託する必要があります。

申立人側に負担もあるのですが、上手に利用すれば、不動産が塩漬けになることを避ける有用な手段となると思います。

まだ新しい制度ですが、徐々に裁判所の運用も固まってくるかと思います。

相続税の申告期限について

2023年が始まって、あっという間に1か月が経ってしまいました。

東京も雪がちらつく日があったり、気温差が激しいので体調管理に気をつけたいところです。

前回は、遺言書作成のすすめについて書きましたが、今回は、相続税の期限が迫ってきたらどうするかについて書いてみようと思います。

亡くなった方の相続財産の金額によっては、相続税が発生する場合があります。

相続税には基礎控除が定められているので、相続財産が基礎控除の額の範囲内かどうかで判断します。

基礎控除額を超える相続財産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。

相続税の申告と納税には、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という期限があります。

なお、申告期限にあたる日が土日祝日の場合は、これらの日の翌日が申告期限になります。

相続人が複数いる場合で、被相続人が死亡した時期が異なる場合は、申告期限も別々になります。

相続税の申告期限が迫ってくると、非常に焦る方も多いと思います。

相続税の申告期限を過ぎてしまうと、相続税の軽減ができる特例が使えなくなったり、追徴課税がされるリスクが生じるなど、様々なデメリットがあります。

しかし、相続税の申告期限の延長はできないのが原則ですので、とにかく早めに準備することが重要ですが、ご事情によっては難しいこともあるでしょう。

そのような場合は、とにかく1回目の当初申告が期限内に間に合うように、相続税の概算額を申告して多めに相続税を支払っておくのが良いでしょう。

また、さしあたり未分割申告をして、申告書に3年内の分割見込書を添付しておく必要があります。

申告書に3年内の分割見込書を添付しておくことで、申告期限から3年以内に遺産分割協議がまとまった場合、修正申告をする際に、小規模宅地の特例や配偶者控除の特例といった相続税額を軽減できる特例の適用が可能になります。

遺言書のご相談のすすめ

2022年12月ももう終わりですね。

1年はあっという間に過ぎていきます。

東京の気温も一桁になってきて、本当に寒いです。

前回は、相続財産が未分割の場合の相続税申告について書きましたが、今回は、今年のまとめについて書いてみようと思います。

今年もありがたいことに、たくさんの相続案件のご相談、ご依頼をいただくことができました。

やはり、遺産分割協議事件や遺留分侵害額請求事件が多くを占めますが、遺言無効確認請求事件、養子縁組無効確認請求事件なども少なくないところです。

また、遺言作成、相続税対策、相続税申告のご相談も数多くいただきました。

今年特に気になったこととしては、故人が生前に自筆証書遺言を作成しているのですが、その内容が不明確であったり、相続財産の一部だけしか書いていないケースが散見されたことです。

遺言書は故人の意思を尊重して、その記載内容を解釈していくのですが、不動産の登記ができなかったり、銀行に預金の解約を拒否されてしまったりすることが多い印象です。

また、一部遺言の残部の分け方でし烈な争いになるケースもあります。

せっかく自分の配偶者や子どもに財産を残そう、できるだけ紛争にならないようにしてほしいと考えて遺言書を書いたのに、結局故人の意思とかけ離れた状況に陥ってしまう相続人の方々は多いのではないでしょうか。

そのような事態を避けるために、遺言書を作りたいとお考えの方は、専門家にご相談いただければと思います。

今年もお世話になりました。

よいお年をお迎えください。

相続税と贈与税の関係について

2022年10月ももう終わりですね。

東京は肌寒くなってきましたね。

1日の気温差も大きくなってきてますので、体調管理に気をつけたいところです。

前回は、遺留分の生前放棄の可否について書きましたが、今回は、相続税と贈与税の関係について書いてみようと思います。

相続全般を扱っていると、相続税や生前対策としての贈与に関するご相談も多くいただきます。

相続税とは、相続により財産を取得した場合に、その取得した相続財産に課される税のことをいいます。

贈与税とは、個人から贈与により財産を取得した場合に、その取得した贈与財産に課される税のことをいいます。

相続税は原則として亡くなった時点における被相続人の相続財産に対して課税されますので、生前に自分の財産を贈与することで、相続税の課税逃れを防ぐという意味で、相続税を補完する役割を果たしています。

贈与税は、生前贈与による相続税の課税逃れを防止するため、相続税よりも基礎控除の枠が小さくなっており、税率も高くなっています。

相続税の対象となる生前贈与には、相続人や遺贈を受けた人への相続開始前3年以内の贈与が該当します。

この生前贈与には、本来贈与税がかからない年間110万円以下の贈与も含まるので注意が必要です。

被相続人が病気にかかるなどして、相続の開始が近いことを知った相続人が、被相続人から生前に贈与を受けることで相続税の負担を不当に軽減することを防止するために、相続開始前3年以内に贈与した財産については相続税の対象にすることになっています。

遺留分の放棄について

2022年9月ももう終わりですね。

東京は過ごしやすくなってきましたね。

前回は、遺言書の書き方と相続登記について書きましたが、今回は、遺留分の生前放棄の可否について書いてみようと思います。

相続全般を扱っていると、遺留分に関するご相談も多くいただきます。

遺留分侵害額を請求したい方、遺留分を侵害したとして請求されてしまった方、遺留分の放棄を迫られている方のご相談もございます。

遺留分とは、相続人のうちの一部の方について、相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺留分は、これまで被相続人の財産を頼りにして生活していた遺族に対する生活保障と、被相続人の財産形成に貢献した遺族には潜在的持分があるという考えから、法律上認められています。

遺留分を有する方は、兄弟姉妹以外の相続人です。

具体的には、子(その代襲相続人を含む)、直系尊属(父母、祖父母等)、配偶者です。

相続人に一定の割合で認められる遺留分を放棄することを遺留分放棄といいます。

遺留分放棄は、相続開始前か相続開始後かで手続が変わってきます。

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には、被相続人となる者の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺留分の放棄についての許可審判の申立てをし、家庭裁判所の許可が必要となります。

他方、相続開始後は、自由に遺留分を放棄することができます。

生前の遺留分放棄と異なり、家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分放棄の意思表示は、遺留分侵害額請求の相手方に対してするとよいでしょう。

相続に関する期限の整理

2022年2月も最終日ですね。

1年のうち6分の1が終わりました。早いですね。

東京も暖かくなってきまして、花粉が飛び交ってますね。

前回は、どのような理由でも相続放棄は認められるのかについて書きましたが、今回は、被相続人が亡くなった後、相続税申告までの手続に関する期限にはどのようなものがあるか整理してみました。

相続が発生すると、葬儀を行い、相続財産を把握し、相続税を支払う必要があるかどうか調査するなど様々なことをしなければなりません。

この中には、期限が決められているものが多くあります。

相続が発生してから、慌てて確認すると誤った対応をしてしまう危険性がありますので、お早めに確認しておくことをお勧めします。

まず、死亡届は、死亡後7日以内に提出する必要があります。

死亡届は、医師に作成してもらう死亡診断書と一体になっています。

死亡届と火埋葬許可申請書を市区町村役場に提出し、火葬許可証をもらいます。

この火葬許可証を葬儀社に提出して葬儀の申込みをします。

相続が発生した場合、通常の流れとして、遺言の有無の調査、相続人調査、相続財産調査を行います。

もし遺産の中に借金が含まれている場合、その借金も相続の対象になります。

特にプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、相続人が借金を支払わなければならなくなってしまいますので、被相続人の借金を相続したくない場合は、相続放棄を検討することになります。

相続放棄には期限があります。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をするかどうか決めなければなりません。

次に、相続人が被相続人の遺産を相続した場合、被相続人の生前の所得税を申告する必要がある場合があります。

これを、所得税の準確定申告といいます。

所得税の準確定申告とは、被相続人が所得税の申告義務を負っていた場合に、相続人が被相続人の代わりに確定申告を行うものです。

通常の確定申告は、対象年度の翌年の2月16日から3月15日までですが、準確定申告は、被相続人の死亡後4か月以内となっています。

もし、遺言があり、自分が全く相続財産をもらえない場合などは、遺留分侵害額請求をするかどうか検討する必要があります。

遺留分とは、相続人のうちの一部の方について、相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺言や死因贈与などによって最低限の取得分である遺留分を侵害された場合、法定相続人は遺留分の侵害者に対し遺留分侵害額を請求することができます。

兄弟姉妹を除く法定相続人は、遺留分侵害額請求をできる場合がありますが、その期間は法律によって決められています。

遺留分侵害額請求をすることができるのは、被相続人の死亡と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内です。

また、被相続人の死亡から10年が経った場合には、たとえ遺言や死因贈与などによる遺留分侵害の事実を知らなくても、遺留分侵害額請求ができなくなるので注意が必要です。 

  

被相続人の遺産の金額によって相続税が発生する場合があります。

相続税には基礎控除が定められているので、基礎控除の額までであれば相続税を支払う必要はありません。

他方、基礎控除額を越える遺産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。

相続税の申告と納税には、相続開始10か月以内という期限があります。 申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わないといけない点に注意が必要です。

その他にも期限が定められているものがありますので、難しいな、わからないなという方は、相続を専門に扱っている弁護士や税理士に相談してみるとよいでしょう。

どのような理由でも相続放棄は認められるのか

2021年12月も終わりが近づいてきました。

そろそろ年末感が出てきましたね。

東京も乾燥がひどくなってきました。

風邪を引かないように注意したいですね。

前回は、相続人全員が相続放棄をするとどうなるかについて書きましたが、今回は、どのような理由でも相続放棄は認められるのかについて書いてみたいと思います。

被相続人が亡くなった後、相続人の方で相続放棄をするかどうか検討している方もおられるのではないでしょうか。

相続放棄は、相続人を最初から相続人ではなかったことにする手続です。

相続放棄をするにあたって、なぜ相続放棄をしたいと考えるのかは人それぞれではないかと思います。

相続放棄をするにあたって、自分が相続放棄をしたい理由によっては裁判所に認められないのではないかと心配されておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続放棄をする理由のうち典型的なものとしては、被相続人のプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い、被相続人の財産や借金が全くわからない、そもそも相続に関わりたくないというものが挙げられます。

結論からいうと、相続放棄をする理由や動機に限定はありません。

法律上も限定はありませんし、裁判実務上も相続放棄をする理由によって、相続放棄を認めたり、認めなかったりということはありません。

以下の場合は、相続放棄をするメリットが非常に大きいといえます。

・被相続人が生前に多額の借金を抱えており、被相続人のプラスの財産よりも借金の方が多い場合

・被相続人の生前に借金があったとは聞いていたものの、被相続人との関係が希薄だったため、被相続人が誰に対しどのくらいの負債を抱えているかがわからず、いつどのような請求をされるかわからないといった場合

また、他の相続人との関係性が良くなかったり、話し合いが難しい相続人がいるなどして遺産分割協議に関わりたくない場合や、被相続人の生前全く関わりがなかったため相続する意思が全く無い場合も、相続放棄をすることで、相続に関わらないという目的を達成することができます。

相続放棄をご検討されている方は、相続に詳しい専門家を探してみるとよいでしょう。

新型コロナウイルス感染症に関する対応について

もう3月も終わりが見えてきました。

年度末ですが,東京でのコロナウイルスの問題も深刻化しているように感じます。

特に,飲食業の方や個人事業主,音楽関連のイベント関係者やアーティストのみなさまへの影響が大きいようです。

前回は,民事信託・家族信託について書いてみましたが,今回は,新型コロナウイルス感染症に関する対応について現在わかっている範囲で整理しておきたいと思います。

情報は随時更新される可能性がございますので,ご注意ください。

 

 

・首相官邸

新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

 

・東京都

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tosei/news/2019-ncov.html

新型コロナウイルスに関する中小企業者等特別相談窓口の設置について

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/30/15.html

事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html

 

・東京弁護士会

新型コロナウイルスに関する生活トラブルQ&Aを公開しました

https://www.toben.or.jp/news/2020/03/post-542.html

 

・経済産業省,中小企業庁関係

新型コロナウイルス感染症に関する中小企業・小規模事業者の資金繰りについて中小企業金融相談窓口を開設します

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200311003/20200311003.html

 

・日本政策金融公庫

相談窓口・セーフティネット貸付 (経営環境変化対応資金)、新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付

新型コロナウイルスに関する相談窓口

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

 

 

上記の他,東京23区でも新型コロナウイルス感染症に関する中小企業支援のページがあるようです。

また,各区によって,オリジナルの融資制度がある場合もあるので,更新情報にご注意ください。

以上

 

 

 

 

民事信託・家族信託の活用法

もう7月も終わりますね。

東京もそろそろ梅雨が明けそうですね。

暑くなってきたので熱中症には気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,金融機関での相続手続で必要になる書類について書いてみました。

今回は,民事信託・家族信託について書いてみたいと思います。

 

昨今,民事信託や家族信託という言葉を聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。

テレビなどでも取り上げられており,気になっておられる方も多いと思います。

しかしながら,信託は分かりにくい仕組みであり,便利そうだがよくわからないという方が多いのではないかと思います。

 

信託の構造を理解するためには,まず信託の基本的要素を押さえるのがポイントです。

①当事者として,委託者,②受託者,③受益者

②客体として,信託財産

③法律行為としての信託契約

④信託の目的

これらを念頭に置きながら自分が作りたい信託をイメージされると良いのではないかと思います。

 

民事信託・家族信託については,高齢者や障害者のための財産管理及び財産承継のための制度と捉えると理解しやすいのではないかと思います。

委託者が受託者に財産権を移転することにより,受託者が委託者に代わって財産を管理することになります。

また,当初の受益者が亡くなるなどしてこの受益者の受益権が消滅するとともに,次順位の受益者が受益権を取得することによって,財産権の承継が行われることになります。

 

この説明だけですと難しい点もあると思いますので,信託契約に興味がおありの方は,詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

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