遺留分の生前放棄

もう12月も終わりますね。

今年もあっという間に終わってしまいました。

東京も冬の寒さを感じます。

インフルエンザが流行っているようですので,気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,相続における香典や弔慰金の扱いについて書いてみました。

今回は,遺留分を生前に放棄してもらうことができるかどうかについて書いてみたいと思います。

 

遺留分とは,相続人のうちの一部の方について,相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺留分は,これまで被相続人の財産を頼りにして生活していた遺族に対する生活保障と,被相続人の財産形成に貢献した遺族には潜在的持分があるという考えから認められています。

 

このように,遺留分は,相続人に一定の割合を認めるものですが,相続人なら誰でも認められているものではありません。

遺留分を有する方は,兄弟姉妹以外の相続人です。

具体的には,子(その代襲相続人を含む),直系尊属(父母,祖父母等),配偶者です。

ただし,相続欠格,廃除,相続放棄により相続権を失った者には遺留分はありません。

相続開始時点で胎児だった子は,生きて生まれてきた場合には,子として遺留分減殺請求もしくは遺留分侵害額請求をすることができます。

兄弟姉妹には遺留分はないことに,特に注意が必要です。

 

遺留分の割合は,以下のように定められています。

① 配偶者だけが相続人であるときは,2分の1

② 直系卑属だけが相続人であるときは,2分の1

③ 配偶者と直系卑属が相続人であるときは,2分の1

④ 直系尊属だけが相続人であるときは,3分の1

⑤ 直系尊属と配偶者が相続人であるときは,2分の1

⑥ 配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者は2分の1,兄弟姉妹には遺留分がない

 

実際に,それぞれの遺留分減殺請求権者もしくは遺留分侵害額請求権者が取得する遺留分は,上記の遺留分の割合に,それぞれの相続人の相続分を掛けたものとなります。

例えば,配偶者と子ども3人が遺留分減殺請求権者である場合では,

① 配偶者の相続分は,2分の1

② 子ども一人ひとりの相続分は,6分の1

となります。

よって,それぞれの相続人の遺留分は,

① 配偶者 2分の1×2分の1=4分の1

② 子ども一人ひとりの相続分 2分の1×6分の1=12分の1

となります。

 

相続人に一定の割合で認められる遺留分を放棄することを遺留分放棄といいます。

通常,遺留分放棄は,法定相続分どおりに均等に相続することによって,農業や自営業の方の資産が細分化されるのを防ぐなど,相続財産の多くを事業の後継者に残す必要があるため,事前に遺留分を放棄することが認められています。

もっとも,遺留分放棄は,放棄するタイミングの違い,すなわち,相続開始前か相続開始後かで手続が変わってきます。

 

 

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には,被相続人となる方の住所地を管轄する家庭裁判所に,遺留分の放棄についての許可審判の申立てをし,家庭裁判所の許可が必要となります。

家庭裁判所の許可が必要な理由としては,仮に無制限に遺留分放棄を認めると,被相続人が威圧したり脅すなどして遺留分権利者に放棄を強要し,本人は放棄したくないと思っているのに,無理やり放棄させられる可能性があることから,これを防止するためになります。

 

家庭裁判所は,①遺留分の放棄が本人の自由意思に基づくものであるかどうか,②遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるかどうか,③遺留分放棄と引き換えの代償の有無などを考慮して遺留分放棄を許可するかどうかを判断し,相当と認めるときは,許可の審判をします。

許可された事例としては,

① 死後に遺産争いが起きることを懸念して,婚外子に財産を贈与する代わりに遺留分を放棄させる場合

② 高齢な親を扶養するために,その親と同居する子以外が遺留分を放棄する場合

などがあります。

 

相続開始後は,自由に遺留分を放棄することができます。

生前の遺留分放棄と異なり,家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分放棄の意思表示は,遺留分減殺請求の相手方に対してするとよいでしょう。

 

以上のとおり,遺留分を生前に放棄する場合は,家庭裁判所に許可の審判を申し立てる必要があります。

各ご家庭の事情によって主張する内容や提出する書類は変わってきます。

相続に関する手続に不安をお持ちの方は,相続に詳しい弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

以上