過払い金返還請求における取引の分断について

年末ですね。今年もあと4日になりました。

東京もかなり寒くなってきてますね。体を冷やすといいことがないので、気を付けたいところです。

前回は、過払い金について書きましたが、今回は,過払い金返還請求における取引の分断について書いてみたいと思います。

 

過払い金とは、簡単にいうと、借主が貸金業者等の貸主に返済しすぎたお金です。

過払い金返還請求において、債権者からよく争われる問題が、取引の分断の問題です。

取引の一連性の問題と言われることもあります。

この取引の分断の主張が認められると、過払い金が返還されないことになるため、最も重要な問題とも言えます。

 

借金をいったん完済した後、再び同じ貸金業者から借入れをして取引を再開するということはよくあると思います。

この場合、最初の取引と次の取引が一つの取引であれば、両方の取引が連続しているものとして、一連で引き直し計算をすることになります。

しかし、この最初の取引と次の取引とが、まったく別個の取引として扱われた場合は、どのように引き直し計算をすべきでしょうか。

一連で計算する場合は、取引中断前に発生した過払い金を、取引中断後の借入金に充当して計算することができるため、取引が分断されたものとして各取引を個別に引き直し計算をする場合よりも、過払い金の金額が増えることが多くなります。

そのため、借主側からすれば、当然、一連で引き直し計算した結果を主張することになり、他方、貸主側は、2つの取引が別々のものとして取り扱うべきであるという主張をすることになります。

これが、いわゆる取引の分断と呼ばれる問題です。

 

分断した複数の取引を一連のものとして計算できるのかどうかを判断するにあたっては、債権者と債務者との間に過払金充当合意があるかどうかという点が問題となります。

過払金充当合意とは、取引中断前の取引で発生した過払い金を、取引中断後の借入金に充当させる旨の当事者間の合意のことをいいます。

もっとも、貸金業者が、契約締結の際に、もし過払いが発生した場合、取引中断後の借入金に充当することを認めるといった内容の契約をすることはないため、この過払金充当合意とは、あくまで裁判所が考え出した法的なフィクションのようなものです。

裁判所の考え方の根底には、取引が分断している以上、本来的には別々に計算をすべきだという考えがあります。

これに対して、分断した取引を一連で計算させるための理由づけとして、この過払金充当合意という擬制的な考え方を用いているのです。

 

取引の分断の問題は、空白期間があれば、債権者がほとんどの場合主張してくるため、多くの裁判例が積み重ねられ、最高裁判所の判例によって、一定の基準が定まってきています。

 

もし過払い金が発生していそうであって、ご自身の取引が分断している方は、過払い金の分断の問題に詳しい弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。