死亡結果との因果関係の判断が困難な場合の自賠責保険の取り扱い その2

前回の続きです。

 

今回の被害者の方は,交通事故により,左上腕骨骨折の傷害を負って入院治療を要した結果,事故から約30日後に上部消化器官出血という死因でお亡くなりになりました。

 

ご相談を受けた際に,交通事故との直接の因果関係が認められることは困難と思われるが,医療記録を精査すれば,ご高齢であったことや事故から亡くなられた日の日が浅いことも踏まえて,事故と無関係とはいえないとの判断がなされる可能性があるのではないかと考えました。

 

結果的には,入院期間中のカルテなどの医療記録も取得して自賠責保険に請求したところ,こちらが期待していたとおり,因果関係の有無の判断が困難な場合にあたるとされました。

 

今回のご遺族の方は,関係者に損害保険会社の担当者の方がいらっしゃったので,ご自身でも非常によく調べておられる方でしたが,因果関係の有無の判断が困難な場合の自賠責保険の取り扱いに関しては,さすがにご存知ではありませんでした。

 

ご遺族の方からは,「予想外に良い結果となって驚いている,諦めることなく相談して良かった」とのお話をいただき,交通事故を専門的に取り扱っている弁護士として,非常に嬉しかったです。

 

交通事故の被害にお悩みの方は,1人で悩まずに,弁護士の大薄までご相談ください!

死亡結果との因果関係の判断が困難な場合の自賠責保険の取り扱い その1

東京で交通事故の被害者側の事件を多く取り扱っている弁護士の大薄です。

 

今回は,珍しい解決となった事例をご紹介いたします。

 

交通事故の被害に遭われた方の中には,事故から月日が経過した後に,亡くなってしまう方もいらっしゃいます。

 

特に,高齢の方が被害に遭われた場合には,抵抗力・免疫力の低下や持病の影響もあり,このような結果になってしまうことが少なくないです。

 

被害者の方が亡くなられた場合,病院は死亡診断書という書類を作成します。

 

死亡診断書には,死因と死因に寄与した原因を記載する欄があります。

 

交通事故から時間をおかずに亡くなられた方の場合は,交通事故の外傷による出血死など交通事故との関係が明白な記載となることが多いです。

 

しかしながら,交通事故から時間が経過して亡くなられた場合で,抵抗力・免疫力の低下の影響もあり,事故との関係が判然としない形で死亡診断書が作成されることもあります。

 

このような場合,裁判所の考え方からすると,交通事故と死亡結果との因果関係が立証できているとはいえず,死亡結果に関する請求が認められないこととなります。

 

もっとも,自賠責保険には,被害者救済の観点から,「受傷と死亡との間の因果関係の有無の判断が困難な場合の減額」という裁判所にはない独自の考え方があります。

 

これは,被害者の方が既往症等を有していたため,交通事故と死亡結果との因果関係の有無の判断が困難な場合は,自賠責基準により積算した金額の5割を支払うというものです。

 

それでは,今回ご相談に来られた方は,どのような結果となったのでしょうか。

 

続きは,次回といたします。

後遺障害2級1号 その4

前回の続きです。

 

今回のご案件は,訴訟をしなかった場合の総損害額は,約3360万円が想定されました。

 

これは,訴訟による獲得金額と比較すると,低い金額となることが想定されると判断したため,訴訟を提起して解決することにいたしました。

 

結論的には,

 

過失割合は,「被害者:加害者=60:40」であったものの,損害額合計は,約9800万円まで引きあがったため,獲得金額は,訴訟をしなかった場合と比較して,約6440万円増額することができました。

 

被害者の方のご年齢は,症状固定時において約75歳であり,ご高齢の部類に入る方でしたが,一般的な裁判例と比較して,将来介護費用の日額や保佐人・保佐監督人の費用などを多めに認定してもらえたことで大幅な増額結果に繋がりました。

 

今回のご報告は,以上となります。

 

非常に難しい内容だったかと思いますが,私が伝えたいことはひとつです。

 

交通事故被害にお悩みの方は,弁護士の大薄までご相談ください!

 

<お知らせ>

 

弁護士法人心千葉法律事務所がオープンしました。

 

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後遺障害2級1号 その3

前回の続きです。

 

早速ですが,前回の答えです。

 

交通事故の重度後遺障害のご案件に関して,過失割合が問題となる場合,訴訟移行する前に,人身傷害保険からの保険金を受領するか否かは,重要な問題です。

 

この問題にたどり着けるか否かが,交通事故を得意としている弁護士の中でも,交通事故を真に得意としている弁護士か否かが分かれてくる問題であると考えています。

 

どういうことでしょうか。

 

こちら側と相手方側の過失割合が「50:50」です。

 

人身傷害保険からの提示金額は,約3000万円です。

 

訴訟をした結果,総損害額が8000万円になったとします。

 

人身傷害保険からの保険金を先に受領していた場合,相手方から獲得できる金額は,約4000万円となります(総獲得金額7000万円)。これに対して,相手方から4000万円を獲得して,訴訟が終了した後に,人身傷害保険からの保険金を受領した場合,人身傷害保険からの保険金は,4000万円となります(総獲得金額8000万円)。

 

これは,本ブログでも何度か繰り返しお伝えしているところになりますが,人身傷害保険は,原則として,約款に従った金額が支払われるが,訴訟の判決または和解による金額がある場合には,当該金額を基準とした金額が支払われるという仕組みによります。

 

それでは,人身傷害保険金を受領した後に,訴訟をする場合には,何故,訴訟の基準との差額が支払われないのでしょうか。これは,通常,人身傷害保険金を受領する際に,人身傷害保険の会社と保険金受領者との間で,保険金を受け取ったことにより,人身傷害保険の会社と保険金受領者との間の保険金請求は終了するとの協定書が締結されるからです。

 

このように,一般的には,人身傷害保険を先に受領すれば,問題ないと考えられているところではありますが,賠償金額が数千万円単位の話となる場合などは,一概にそのような受け取り手順が獲得金額を最大化するための正しい選択肢とは言えないこともあります。

 

さて,それでは,今回のご案件は,どのような解決となったのでしょうか。

 

続きは,次回といたします。

四日市法律事務所がオープンしました!

こんにちは!東京で弁護士をしている大薄です。

 

今回は,当法人の新規事務所のお知らせです。

 

今月,四日市に新しく弁護士法人心四日市法律事務所がオープンしました。

 

四日市市は,三重県にあります。

 

三重県には,四日市法律事務所の他に,県庁所在地である津市にも事務所があります。

 

現在,当法人の本部は,名古屋にありますが,津市の事務所は,当法人の創業事務所です。

 

当法人は,現状,東海地方を中心に,関東にも数店舗を構える状況です。

 

東海地方では電車の中吊り広告なども実施しています。

 

私は東京の事務所に在籍しておりますが,東海地方にお住まいの経験がある方から,電車のつり革広告を見て知っていたなどのお話をいただいたこともあります。また,東京と東海をまたにかける案件のご相談をいただくこともあります。

 

四日市法律事務所でも,さまざまな法律問題でお悩みの方へ対応できるように,交通事故,借金問題,相続問題などを取り扱っております。

 

当然,各分野を得意分野とする弁護士が対応させていただきます。

 

四日市近郊で法律問題にお悩みの方がいらっしゃいましたら,当法人の四日市法律事務所まで,ぜひご相談ください。

 

弁護士法人心四日市法律事務所のサイトは,こちらをクリックお願いします。

後遺障害2級1号 その2

前回の続きです。

 

仮に,こちら側と相手方側の過失割合が「50:50」であったとします。

 

相手方からの提示金額は,約1200万円です。

 

人身傷害保険からの提示金額は,約3000万円です。

 

このようなケースでやってはならないことは,相手方からの提示金額を先に受領することです。

 

(人身傷害保険の有無の調査を失念することは,それ以上にやってはいけませんが…)

 

交通事故を得意としている弁護士であれば,人身傷害保険からの提示額を先に受領することを検討します。

 

訴訟前の時点での相手方提示の総損害額は,約3360万円でした。

 

そして,仮に,今回のケースで,人身傷害保険からの提示額を相手方からの提示額より先に受領したとすると,最高裁判所のいわゆる訴訟基準差額説に関する判例の前提議論をベースとした場合,人身傷害保険からの受領金額を自己の過失分に優先的に充当した結果,相手方からの獲得金額は,約360万円となります(なお,ここで紹介した最高裁判所のいわゆる訴訟基準差額説に関する判例の前提議論をベースとする交渉は,相手方保険会社との当事者間での話合いでは,解決できないことが多く,裁判所などの第三者機関を間にいれなければ,当該議論が通らないことが通常です。このような保険会社の運用自体も非常に問題と考えていますが,当該問題は,別の機会にブログに書きたいと思います)。

 

もっとも,当事者間の話し合いによる解決では,そもそもの総損害の金額が低いことが通常です。特に,後遺障害2級1号のように数千万円単位での賠償金額が問題となる事案では,当事者間の話し合いでは,適切な金額に引きあがることは極めて稀です。

 

そのため,このようなケースでは,訴訟に移行することを検討する必要があります。

 

ここで,交通事故を得意としている弁護士でも,交通事故を真に得意としている弁護士か否かで,検討を要すべき事柄が出てきます。

 

それは,どのような事柄でしょうか。

 

長くなりましたので,続きは,次回といたします。

後遺障害2級1号 その1

先日,困難な案件が無事に解決いたしましたので,ご報告いたします。

 

ご相談の経緯は,以下のような流れでした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ご親族の方が,交通事故の被害に遭った。

 

後遺障害2級1号が認定された。

 

弁護士に今後の賠償交渉を依頼することを考えている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

後遺障害2級1号となると,賠償金額は,数千万円単位の話となります。

 

もっとも,今回のケースは,過失割合も問題となることが想定されました。

 

具体的には,相手方は,こちら側の赤信号による横断を主張していました。

 

こちら側は,相手方の赤信号無視を主張していました。

 

刑事記録などの証拠関係を精査しても,いずれにも決定的な証拠はない状況でした。

 

このような状況の中,相手方からの提示金額は,約1200万円でした。

 

ただし,今回のケースでは,同居のご親族の方が人身傷害保険にご加入であったため,当該ご親族の方の人身傷害保険が適用できる状況にありました(人身傷害保険とは,平たくいうと,ご自身の過失分の損害を填補する保険となります)。

 

人身傷害保険からの提示額は,約3000万円でした。

 

ここからが交通事故を得意としている弁護士か否かで差が出るところなのですが,かなり複雑な話となりますので,続きは次回といたします。

前年度の年収が「0円」の場合における後遺障害逸失利益 その2

前回の続きです。

 

前年度の収入が「0」の場合は,基礎収入も「0」となり,

 

ひいては後遺障害逸失利益も「0」となるのでしょうか。

 

今回の依頼者の方は,ご結婚されており,お子様もいらっしゃいました。

 

奥様は,専業主婦であり,家賃の支払いも依頼者の方が行っていました。

 

また,依頼者の方の口座には,一定名義から定期的に一定の金額が振り込まれていました。

 

そのため,これらの事情を基礎として,基礎収入を証明していく方針としました。

 

当事者間での交渉(保険会社との交渉)では,これらの事情があるにもかかわらず,

 

基礎収入は,「0」であるとの主張を固持されました。

 

それゆえ,民事調停での解決に移行することとしました。

 

民事調停は,裁判官や調停委員を交えた話し合いによる解決となります。

 

民事調停は裁判所の手続きであるため,相手方の担当者も保険会社から弁護士に移行することが通常です。

 

今回のケースは,先述の事情を前提とすれば,裁判所の傾向からすると,基礎収入が「0」ということは考えにくい状況であったといえます。

 

相手方の弁護士もそのような状況を把握していたようで,

 

保険会社の担当者をうまく説得いただき,比較的スムーズな解決となりました。

 

具体的には,当事者間での話し合いによる提示金額は,約300万円であったのに対し,

 

民事調停の結果,約760万円での解決となりました。

 

(自賠責保険からの後遺障害分を含めると約984万円となります)

 

依頼者の方は,「0円」でも仕方がないと思っていたようで,非常に喜んでいただきました。

 

今後も,困難な事案であっても諦めることなく,その時々の状況における最善を尽くして行きたいと思います。

前年度の年収が「0円」の場合における後遺障害逸失利益 その1

先日,困難な案件が無事に解決しましたので,ご報告いたします。

 

ご依頼者の方は,東京近郊にて,仕事中に,追突事故の被害に遭われました。

 

そして,当該事故により,耳鳴りの後遺障害(12級相当)を残しました。

 

現場仕事をされている方であるため,耳鳴りの症状により,

 

他の作業員からの指示が聞き取りにくくなるなどの支障がありました。

 

危険な作業場であるため,耳鳴りによる支障は少なくないことが容易に想像できました。

 

このように後遺障害が残存することで仕事に生じる支障に伴う損害は,

 

後遺障害逸失利益を相手方に請求することで填補されます。

 

後遺障害逸失利益の計算方法は,

 

「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)」となります。

 

基礎収入は,事故前の年収などから認定することとなります。

 

しかしながら,今回のご依頼者の方は,事故前年度の年収が「0円」でした。

 

これは,さまざまな事情によるものですが,「0」にどのような数字を乗じても「0」です。

 

このような場合には,基礎収入は「0円」であり,後遺障害逸失利益も「0円」として諦めるしかないのでしょうか。

 

長くなりましたので,続きは次回とさせていただきます。

2019年の振り返り

皆さま,明けましておめでとうございます。

 

本年度もよろしくお願いいたします。

 

さて,新年に入るにあたり,毎年恒例の振り返りを実施したいと思います。

 

昨年も数多くの方々からご相談・ご依頼をいただきました。

 

私は,抽象的な話が好きではないので,具体的に数値で表したいと思います。

 

昨年度,私がご相談させていただいた件数は,481件でした。

 

(前年度と比較すると161件増加)

 

ご依頼いただいた件数は,238件でした。

 

(前年度と比較すると19件増加)

 

うち,私をご紹介いただいたことによるご依頼は,144件でした。

 

(前年度と比較すると14件増加)

 

以上が昨年度の実績になります。

 

一昨年と比較して,

 

ご相談件数が大幅増加となりました。

 

一昨年に引き続き,

 

「時間あたりの提供できる価値が増加したこと」

 

が大きな要因と考えております。

 

時間は有限です。

 

短い時間に,より高い価値を提供できるよう引き続き精進して参ります。

 

他方,実際にご対応させていただいたご案件は,微増という結果となりました。

 

交通事故の被害に遭われた方を中心に,数多くのご相談をいただいている立場からすると,

 

ご相談の内容をご対応できるか否かが,弁護士費用特約や人身傷害保険のご加入の有無によってくることが少なくありません。

 

本ブログでも繰り返し重要性をお伝えしておりますが,弁護士費用特約と人身傷害保険へのご加入は強くお勧めいたします。

 

本年度もより良いリーガルサービスを提供できるよう,弁護士・スタッフともに精進して参りますので,どうぞよろしくお願いいたします。

後遺障害12級13号(他覚的所見に基づく疼痛障害)

先日,非常に良い示談が成立しましたので,ご報告いたします。

 

ご依頼者の方は,自転車を運転中,左折してきた乗用車に巻き込まれて負傷しました。

 

特に,膝の症状が重く,手術を数回繰り返しました。

 

懸命なリハビリの結果,可動域の制限は軽減しましたが,疼痛(痛み)の症状は残ってしまいました。

 

後遺障害申請の結果,12級13号(他覚的所見に基づく疼痛障害)が認定されました。

 

12級以上の後遺障害が認定されている場合,賠償金額が高額となるため,保険会社との交渉が難航する傾向にあります。

 

今回の保険会社も,初回の提示額は,130万円程度でした。

 

このような場合には,保険会社との交渉を継続しても,スピーディーな解決が見込めない場合が多いです。

 

そのため,第三者を間に入れた手続き(交通事故相談センター)の利用を申し立てることとしました。

 

紛争処理センターと同様に,交通事故相談センターも中立的な弁護士を間に入れて解決を図る手続きとなります。

 

その結果,約1400万円での示談斡旋が成立することとなりました。

 

(自賠責保険からの後遺障害分を含めると約1624万円でした)

 

期間も,初回の期日から2か月でのスピード解決となりました。

 

今回は,斡旋担当の弁護士の方が,こちら側の事情を十分に汲んだ上で,説得的な内容の斡旋案を提示いただけたと思います。

 

仙台という遠方での対応となりましたが,出張に値する結果となったことで,ご依頼者の方にも大変喜んでいただきました。

 

交渉は相手方がいるため,必ずしも,こちらが思うように進むことばかりではありません。

 

しかしながら,その時々における事情の変化に対し,臨機応変に対応することで,

 

その状況における最善の提案ができるよう,日々精進して参りたいと思います。

私事ですが

先日,第2子が誕生いたしました。

 

少し小さめであったため,NICU(新生児集中治療室)の可能性もありましたが,幸いすくすく成長してくれています。

 

より一層精進して参りますので,今後ともよろしくお願いいたします。

ひき逃げの被害に遭ったらどうする? その2

前回の続きです。

 

今回のケースでは,人身傷害保険はなかったため,政府補償事業制度により,傷害分の補償と後遺障害の認定を求めることとしました。

 

その結果,手指の骨折に関し,14級6号(欠損障害)の認定を受けることができました。

 

被害者の方は,無保険者特約にご加入であったため,後遺障害の認定を受けた後,保険会社と後遺障害分に関する示談交渉を行いました。

 

被害者の方と被害者の方がご加入の保険会社との交渉は,被害者の方と保険会社の方に契約関係があるため,原則として,契約内容である約款に従って,一定の金額が支払われます。

 

しかしながら,無保険者特約の約款には,「原則として,約款に従って一定の金額を支払うが,裁判所の判断を受けて決定した金額がある場合には,その金額を支払う」という趣旨の例外的な記載があることが通常です。そして,約款に従って算定された金額よりも,裁判所の判断を受けて決定した金額の方が,高額となることが通常です。

 

今回も,裁判所の判断を受けて決定した金額がある場合には,その金額を支払う旨の記載が約款にありました。また,想定される裁判所の判断を受けて決定される金額は,約款に従って提示された金額よりも高額となることが想定されました。

 

それゆえ,被害者の方と協議して,被害者の方がご加入の保険会社を相手とする裁判を提起することとしました(なお,ご自身の保険会社に対する裁判には,弁護士費用特約は使えませんので,弁護士費用は,獲得金額からの精算などでご自身の負担となります)。

 

結果的には,約款に従って算定された金額の5倍程度である280万円ほどでの解決となりました(当該金額は,政府補償事業から被害者の方が受領済みである195万円を除いたものとなります)。

 

依頼者の方からは,「このような解決方法があるなんて思いもよらなかった。自分ひとりではどうにもならなかったと思うので,大変感謝している。」とのお言葉をいただきました。

 

専門家へ相談することで道が開けることは多々あります。

ひとりで悩まずに,交通事故被害のご相談は,弁護士の大薄までご連絡ください。

ひき逃げの被害に遭ったらどうする? その1

東京で弁護士をしている大薄(おおすき)です。

 

先日,ひき逃げの被害に遭われた方のご案件が無事に解決したので,ご紹介いたします。

 

事案の概要は,以下のとおりです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明方,バイクで停車中に,後方より,乗用車に追突される

 

乗用車は,そのまま逃走

 

警察の捜査が行われるも,未だに犯人は不明

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ご相談者の方は,手指の骨折を伴うなどの傷害を負っていました。

 

このように,ひき逃げの被害に遭った場合,どのような制度があるのでしょうか。

 

ひとつは,政府補償事業制度というものがあります。

 

ひき逃げや無保険者の事故に遭った場合,自賠責保険と同程度の補償を行う国の制度です。

 

健康保険などその他の社会保障制度の使用が義務的となる点で自賠責保険と異なりますが,大まかな補償内容は,自賠責保険と同様です。

 

もうひとつは,被害者側の任意保険があり得ます。

 

任意保険として,人身傷害保険がある場合は,傷害分と後遺障害分のいずれも人身傷害保険から補償を受けることができます。

 

また,人身傷害保険がない場合にも,無保険者特約により,後遺障害分の補償を受けることができます。

 

無保険者特約とは,ひき逃げや加害者が無保険者の事故の被害に遭った場合,後遺障害分に限り,補償をすることを内容とする保険となります。

 

無保険者特約にご加入か否かを自覚している方は少ないですが,無保険者特約は,自動附帯であることが多いため,人身傷害保険と比較して,ご加入されていることが多いです。

 

以上の制度を前提に,今回のケースでは,どのように解決に導いたのでしょうか。

 

長くなりましたので,続きは次回といたします。

自賠責基準が裁判所基準を上回る場合?! その2

前回の続きです。

 

先ほど、仮に、死亡との因果関係が認められるとすれば、総損害額の概算は3000万円程度の試算となり、その1割は、300万円となり、仮に、死亡との因果関係が認められないとすれば、総損害額の概算は、200万円程度の試算となり、その1割は、20万円となるとご案内させていただきました。

 

これは、あくまでも裁判を念頭においた法律的な説明となります。

「裁判以外に念頭に置くべき話があるのか?」と思われるかもしれませんが、あります。

それは、自賠責保険の運用実態です。

 

自賠責保険は、交通事故における強制加入の保険です。

自賠責保険の制度趣旨は、交通事故における最低限の補償にあります。

そのため、裁判基準と比較すると、慰謝料の基準などが低額です。

しかしながら、最低補償という制度上、裁判と比較すると、優位に働く場合もあります。

 

まず、今回のケースは、被害者の基本過失が、90%です。

そのため、裁判であれば、総損害額の1割が相手方から獲得できる金額となります。

 

ところが、自賠責保険によれば、被害者の基本過失が90%であっても、傷害分は、自賠責保険が認定する損害額の8割、死亡分・後遺障害分は、自賠責保険が認定する損害額の5割となります。

 

今回のケースにおける自賠責保険の認定する傷害分の損害額は120万円であり、その8割は、96万円でした。それゆえ、仮に、死亡結果との因果関係が否定されたとしても、自賠責保険からの獲得金額が裁判の場合における相手方からの獲得金額を上回ることが想定されました。そして、当該金額は、医療調査費用や弁護士費用を賄うに十分と判断しました。

 

以上のような理由により、着手金や預り金を頂戴することなく、対応することとしました。

 

最終的には、死亡との因果関係は認められなかったものの、後遺障害10級が認定されたため、傷害分とあわせて、418万7000円を獲得することができました。

 

鋭い方は、なぜ418万7000円であるか疑問を持たれたかもしれません。

 

すなわち、基本過失を90%とすると、傷害分(120万円)の8割、後遺障害分(10級:461万円)の5割となるため、96万円と230万5000円の合計である326万5000円が獲得金額となるはずであるからです。

 

実は、過失割合が8割以上9割未満の場合、死亡・後遺障害分は、自賠責保険が認定する損害額の7割となります(9割以上10割未満と比較して、2割増となります)。

 

そして、本件は、相手方からの物的損害の請求に関する訴訟において、過失割合が「85:15」として、和解を成立させていました。

 

自賠責保険は、裁判所の判断を尊重する傾向にありますので、裁判所の判断における過失割合を基本過失割合から5分(ごぶ)修正したことが、自賠責保険からの後遺障害分における獲得金額を2割増額させる結果となったということになります。

 

私は、交通事故の専門家です。依頼者の方が真に望んでいたであろう死亡結果との因果関係が肯定されることはありませんでしたが、最善の結果を目指して尽力する反面、次善の策として、準備できることも周到に準備することがプロとしての姿と考えています。

 

困難な案件に関しては、必ずしも依頼者の方が思うような結果が付いてくることばかりではありません。困難な案件であっても、困難を理由に諦めることなく、かつ、依頼者の方に過度な負担を求める結果とならないように、日々研鑽に励んでいきたいと思います。

自賠責基準が裁判所基準を上回る場合?! その1

先日,非常に難しいご案件が無事に解決したので,ご紹介いたします。

 

事案の概要は,以下のとおりです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

信号のない交差点における自動車同士の衝突事故

 

被害者は,非優先道路から優先道路を横断する際に,相手方車両と衝突

 

被害者は,事故により数か月間入院治療をした後,退院

 

その後,数か月後に肺炎を直接死因として死亡

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ご遺族の方から,事故と死亡結果との因果関係を検討して欲しいとの相談でした。

 

事故からお亡くなりになるまで相当期間が経過していること,入院期間中ではなく退院後に亡くなっていること,直接死因は事故と無関係の肺炎であることなどのご事情からすると,死亡結果との因果関係を立証することは難しいということが私の見通しでした。

 

また,今回の事故状況からすると,基本的な過失割合は,「被害者:相手方」=「90:10」となります。すなわち,相手方へ請求できる金額は,総損害額の1割です。

 

このように基本的な過失割合が9割ある方を「被害者」と呼ぶことに疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが,事故による被害を被ってお悩みである以上,私は,このような方も「被害者」であると考えています。

 

さて,私は,被害者自身の保険,同居の家族の保険なども検討しましたが,人身傷害補償保険や弁護士費用特約の附帯はありませんでした。

 

人身傷害補償保険が附帯されていれば,裁判を行うことで,自己が負担すべき総損害額の9割に相当する金額を人身傷害補償保険から回収する方法が考えられます。

 

弁護士費用特約が附帯されていれば,事故と死亡結果との因果関係に関する医療調査費用や弁護士費用などを弁護士費用特約から回収する方法が考えられます。

 

先にも述べたように,今回のケースでは,いずれの特約も附帯がありませんでした。

 

そのため,回収できる金額は,総損害額の1割が基本となりますし,医療調査費用や弁護士費用も,依頼者の方の自己負担となります。

 

仮に,死亡との因果関係が認められるとすれば,本件における総損害額の概算は3000万円程度となり,その1割は,300万円となります。仮に,死亡との因果関係が認められないとすれば,総損害額の概算は,200万円程度となり,その1割は,20万円となります。

 

今回は,事故から死亡まで相当の期間が経過していること,この間,複数の病院を受診していることなどの事情により,カルテなどの医療記録が膨大で,医療調査機関における調査費用は,60万円ほどを要するものでした。

 

死亡結果との因果関係が認められない可能性も十分にあったため,調査費用や弁護士費用が,獲得金額からの精算では足りなくなる可能性もありました。

 

ご相談者の方は,それでも構わないため,調査をして欲しいとのことでした。

 

医療調査機関は,通常,一般の方からの直接の依頼を受け付けていません。また,被害者の治療を行っていた各医師も,通常,他の病院のカルテを分析して検討することはしません。

 

ご相談者の方は,いずれの方法も検討してみたがかなわず,途方に暮れている状況でした。

 

このような場合,通常であれば,ご依頼を受けるとしても,事案の難易度を考慮して,着手金または預り金を一定程度いただいた上で,対応することとなります。

 

しかしながら,私は,獲得金額からの精算で医療調査費用や弁護士報酬などの費用を対応できると判断して,着手金や預り金をいただくことなく,事件を進めることとしました。

 

なぜ,私は,獲得金額からの精算で対応できると判断したのでしょうか。

 

長くなりましたので,続きは,次回といたします。

 

集合写真を変更しました

交通事故紛争処理センターの審査会とは?

先日,交通事故紛争処理センターの審査会という制度を利用しました。

 

交通事故紛争処理センターとは,交通事故に精通する第三者を入れて,相手方保険会社との交通事故に関する紛争を解決する手続きとなります。

 

紛争処理センターの手続きは,2段構えとなっています。

 

第1段階は,中立的な弁護士を1名入れて,話し合いを進める手続きとなります。

 

話し合いの機が熟すと,弁護士から斡旋案(裁判でいう和解案)の提示がなされます。

 

双方が斡旋案を受け入れるという結論になると,手続きは,終了となります。

 

いずれかが斡旋案を受け入れることができないとなると,審査会という手続きに移行します(第2段階)。

 

審査会は,3名の有識者(弁護士,学者など)が双方の言い分を聞いた上で,裁定(裁判でいう判決)という形で,結論を示します。

 

被害者側は,裁定の結果に対して異議を申し立てて,訴訟に移行することができますが,保険会社側は,裁定の結果に異議を申し立てることができない点が特徴的となります。

 

紛争処理センター東京本部での審査会は,即日裁定が原則的な運用となります。

 

審査会の有識者(主に学者)から当日に矢継ぎ早に質問が来るため,それに対して,必要なことに答え,不必要なことを答えないなどの的確な対応をすることが求められます。

 

先日解決したご案件は,当初の保険会社提示額が約45万円であったところ,審査会による裁定の結果,約410万円での解決となりました(後遺障害14級6号)。

 

交通事故は,裁判以外の解決手続きが充実しているため,適切な解決を導くためには,各手続に精通している必要があります。

 

交通事故の被害にお悩みの方は,弁護士の大薄(おおすき)まで,ご相談ください。

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その4

こんにちは。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の最終章となります。

 

前回までに,

 

①9か月程度の通院対応が相当と見込まれる事案であるにもかかわらず,3か月程度で相手方保険会社による対応が終了となったこと,

 

②自賠責保険の上限である120万円を優に超過していたため,被害者請求による対応はできず,a休業損害は,貯金の切り崩し等により,b治療費は,接骨院の先生がツケ払いとする形により,進めていくこととなったことまでお伝えいたしました。

 

今回は,当該事案の結論となります。

 

結論として,この方には,14級9号の後遺障害が認定されました。

 

治療期間は,概ね9か月程度でした。

 

一括対応による治療費や休業損害も含めた総損害額は,約830万円となりました。

 

一括対応分を除いた獲得金額は,約520万円でした。

 

一般的に,14級9号が認定される案件の獲得金額は,約300万円となります。

 

今回は,220万円ほど,相場と比較して獲得できた金額が高かったこととなります。

 

また,約半年ほどの治療期間をツケ払いで対応していただいた接骨院の先生にも,80万円ほどの施術費を支払うことができました。

 

追い詰められた状況でしたが,被害者の方のみならず,周囲の方の協力により,粘り強く対応することで,良い解決を導くことができました。

 

今後も,どのような状況であっても,諦めることなく対応していきたいと思います。

 

交通事故にお悩みの方は,弁護士法人心の大薄(おおすき)までご相談ください!

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その3

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の続きとなります。

 

前回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了されたことにより,

 

休業補償を受けることができず,

 

治療費も自己負担となる状況に追い込まれたことまでご説明しました。

 

それでは,このような状況をどのように乗り切っていったのでしょうか。

 

まず,休業損害についてです。

 

こちらは,やむを得ず,貯金や家族からの借り入れによる対応となりました。

 

次に,治療費についてです。

 

被害者の方は,医師の指示のもとに,接骨院をメインに治療を受けていました。

 

こちらの接骨院の先生が非常に男気のある方でした。

 

接骨院の先生に事情を説明したところ,

 

①被害者の方に窓口負担を求めないツケ払いでの対応で構わない

 

②交渉で獲得できなかった施術費は,被害者の方に自己負担を求めずに放棄する

 

との方針で対応することとなりました。

 

未払の施術費が溜まっていくため,接骨院の先生には,非常にリスクのある決断です。

 

しかしながら,接骨院の先生も,今回の相手方保険会社の対応はあまりに酷いとして,強い憤りを感じているようでした。

 

それでは,このような方針のもと,どのように事件が解決したのでしょうか。

 

続きは,次回といたします。

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その2

こんばんは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の続きとなります。

 

前回は,肋骨骨折を伴うバイク転倒事故であったにもかかわらず,

 

事故から3か月程度で相手方保険会社からの一括対応を打ち切られたこと

 

一括対応の既払金は,自賠責保険の上限である120万円を超過していたため,

 

被害者請求による対応は困難であったことをお伝えいたしました。

 

私の見立てとしては,

 

①今回の事故態様や受傷状況からすると,

 

6か月から1年程度の治療期間を裁判所が認定してもおかしくないこと

 

②被害者の方の労働内容に鑑みると,

 

休業補償も治療期間に対応したある程度の期間は認められてしかるべきであること

 

③事故状況や被害者の方のご年齢からすると,

 

後遺障害(14級9号)が認定されてもおかしくないこと

 

から,戦う態勢を整えることができれば,十分に勝機があると踏んでいました。

 

しかしながら,問題は,戦う態勢をどのように整えるのか?でした。

 

一括対応の終了により,

 

職場復帰もできない状況で生活の糧もなく,

 

治療費も自己負担となります。

 

果たして絶対絶命とも思われる状況をどのように乗り切っていったのでしょうか。

 

続きは次回といたします。