自賠責基準が裁判所基準を上回る場合?! その2

前回の続きです。

 

先ほど、仮に、死亡との因果関係が認められるとすれば、総損害額の概算は3000万円程度の試算となり、その1割は、300万円となり、仮に、死亡との因果関係が認められないとすれば、総損害額の概算は、200万円程度の試算となり、その1割は、20万円となるとご案内させていただきました。

 

これは、あくまでも裁判を念頭においた法律的な説明となります。

「裁判以外に念頭に置くべき話があるのか?」と思われるかもしれませんが、あります。

それは、自賠責保険の運用実態です。

 

自賠責保険は、交通事故における強制加入の保険です。

自賠責保険の制度趣旨は、交通事故における最低限の補償にあります。

そのため、裁判基準と比較すると、慰謝料の基準などが低額です。

しかしながら、最低補償という制度上、裁判と比較すると、優位に働く場合もあります。

 

まず、今回のケースは、被害者の基本過失が、90%です。

そのため、裁判であれば、総損害額の1割が相手方から獲得できる金額となります。

 

ところが、自賠責保険によれば、被害者の基本過失が90%であっても、傷害分は、自賠責保険が認定する損害額の8割、死亡分・後遺障害分は、自賠責保険が認定する損害額の5割となります。

 

今回のケースにおける自賠責保険の認定する傷害分の損害額は120万円であり、その8割は、96万円でした。それゆえ、仮に、死亡結果との因果関係が否定されたとしても、自賠責保険からの獲得金額が裁判の場合における相手方からの獲得金額を上回ることが想定されました。そして、当該金額は、医療調査費用や弁護士費用を賄うに十分と判断しました。

 

以上のような理由により、着手金や預り金を頂戴することなく、対応することとしました。

 

最終的には、死亡との因果関係は認められなかったものの、後遺障害10級が認定されたため、傷害分とあわせて、418万7000円を獲得することができました。

 

鋭い方は、なぜ418万7000円であるか疑問を持たれたかもしれません。

 

すなわち、基本過失を90%とすると、傷害分(120万円)の8割、後遺障害分(10級:461万円)の5割となるため、96万円と230万5000円の合計である326万5000円が獲得金額となるはずであるからです。

 

実は、過失割合が8割以上9割未満の場合、死亡・後遺障害分は、自賠責保険が認定する損害額の7割となります(9割以上10割未満と比較して、2割増となります)。

 

そして、本件は、相手方からの物的損害の請求に関する訴訟において、過失割合が「85:15」として、和解を成立させていました。

 

自賠責保険は、裁判所の判断を尊重する傾向にありますので、裁判所の判断における過失割合を基本過失割合から5分(ごぶ)修正したことが、自賠責保険からの後遺障害分における獲得金額を2割増額させる結果となったということになります。

 

私は、交通事故の専門家です。依頼者の方が真に望んでいたであろう死亡結果との因果関係が肯定されることはありませんでしたが、最善の結果を目指して尽力する反面、次善の策として、準備できることも周到に準備することがプロとしての姿と考えています。

 

困難な案件に関しては、必ずしも依頼者の方が思うような結果が付いてくることばかりではありません。困難な案件であっても、困難を理由に諦めることなく、かつ、依頼者の方に過度な負担を求める結果とならないように、日々研鑽に励んでいきたいと思います。

自賠責基準が裁判所基準を上回る場合?! その1

先日,非常に難しいご案件が無事に解決したので,ご紹介いたします。

 

事案の概要は,以下のとおりです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

信号のない交差点における自動車同士の衝突事故

 

被害者は,非優先道路から優先道路を横断する際に,相手方車両と衝突

 

被害者は,事故により数か月間入院治療をした後,退院

 

その後,数か月後に肺炎を直接死因として死亡

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ご遺族の方から,事故と死亡結果との因果関係を検討して欲しいとの相談でした。

 

事故からお亡くなりになるまで相当期間が経過していること,入院期間中ではなく退院後に亡くなっていること,直接死因は事故と無関係の肺炎であることなどのご事情からすると,死亡結果との因果関係を立証することは難しいということが私の見通しでした。

 

また,今回の事故状況からすると,基本的な過失割合は,「被害者:相手方」=「90:10」となります。すなわち,相手方へ請求できる金額は,総損害額の1割です。

 

このように基本的な過失割合が9割ある方を「被害者」と呼ぶことに疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが,事故による被害を被ってお悩みである以上,私は,このような方も「被害者」であると考えています。

 

さて,私は,被害者自身の保険,同居の家族の保険なども検討しましたが,人身傷害補償保険や弁護士費用特約の附帯はありませんでした。

 

人身傷害補償保険が附帯されていれば,裁判を行うことで,自己が負担すべき総損害額の9割に相当する金額を人身傷害補償保険から回収する方法が考えられます。

 

弁護士費用特約が附帯されていれば,事故と死亡結果との因果関係に関する医療調査費用や弁護士費用などを弁護士費用特約から回収する方法が考えられます。

 

先にも述べたように,今回のケースでは,いずれの特約も附帯がありませんでした。

 

そのため,回収できる金額は,総損害額の1割が基本となりますし,医療調査費用や弁護士費用も,依頼者の方の自己負担となります。

 

仮に,死亡との因果関係が認められるとすれば,本件における総損害額の概算は3000万円程度となり,その1割は,300万円となります。仮に,死亡との因果関係が認められないとすれば,総損害額の概算は,200万円程度となり,その1割は,20万円となります。

 

今回は,事故から死亡まで相当の期間が経過していること,この間,複数の病院を受診していることなどの事情により,カルテなどの医療記録が膨大で,医療調査機関における調査費用は,60万円ほどを要するものでした。

 

死亡結果との因果関係が認められない可能性も十分にあったため,調査費用や弁護士費用が,獲得金額からの精算では足りなくなる可能性もありました。

 

ご相談者の方は,それでも構わないため,調査をして欲しいとのことでした。

 

医療調査機関は,通常,一般の方からの直接の依頼を受け付けていません。また,被害者の治療を行っていた各医師も,通常,他の病院のカルテを分析して検討することはしません。

 

ご相談者の方は,いずれの方法も検討してみたがかなわず,途方に暮れている状況でした。

 

このような場合,通常であれば,ご依頼を受けるとしても,事案の難易度を考慮して,着手金または預り金を一定程度いただいた上で,対応することとなります。

 

しかしながら,私は,獲得金額からの精算で医療調査費用や弁護士報酬などの費用を対応できると判断して,着手金や預り金をいただくことなく,事件を進めることとしました。

 

なぜ,私は,獲得金額からの精算で対応できると判断したのでしょうか。

 

長くなりましたので,続きは,次回といたします。

 

集合写真を変更しました

交通事故紛争処理センターの審査会とは?

先日,交通事故紛争処理センターの審査会という制度を利用しました。

 

交通事故紛争処理センターとは,交通事故に精通する第三者を入れて,相手方保険会社との交通事故に関する紛争を解決する手続きとなります。

 

紛争処理センターの手続きは,2段構えとなっています。

 

第1段階は,中立的な弁護士を1名入れて,話し合いを進める手続きとなります。

 

話し合いの機が熟すと,弁護士から斡旋案(裁判でいう和解案)の提示がなされます。

 

双方が斡旋案を受け入れるという結論になると,手続きは,終了となります。

 

いずれかが斡旋案を受け入れることができないとなると,双方の同意を条件に,審査会という手続きに移行します(第2段階)。

 

審査会は,3名の有識者(弁護士,学者など)が双方の言い分を聞いた上で,裁定(裁判でいう判決)という形で,結論を示します。

 

被害者側は,裁定の結果に対して異議を申し立てて,訴訟に移行することができますが,保険会社側は,裁定の結果に異議を申し立てることができない点が特徴的となります。

 

紛争処理センター東京本部での審査会は,即日裁定が原則的な運用となります。

 

審査会の有識者(主に学者)から当日に矢継ぎ早に質問が来るため,それに対して,必要なことに答え,不必要なことを答えないなどの的確な対応をすることが求められます。

 

先日解決したご案件は,当初の保険会社提示額が約45万円であったところ,審査会による裁定の結果,約410万円での解決となりました(後遺障害14級6号)。

 

交通事故は,裁判以外の解決手続きが充実しているため,適切な解決を導くためには,各手続に精通している必要があります。

 

交通事故の被害にお悩みの方は,弁護士の大薄(おおすき)まで,ご相談ください。

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その4

こんにちは。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の最終章となります。

 

前回までに,

 

①9か月程度の通院対応が相当と見込まれる事案であるにもかかわらず,3か月程度で相手方保険会社による対応が終了となったこと,

 

②自賠責保険の上限である120万円を優に超過していたため,被害者請求による対応はできず,a休業損害は,貯金の切り崩し等により,b治療費は,接骨院の先生がツケ払いとする形により,進めていくこととなったことまでお伝えいたしました。

 

今回は,当該事案の結論となります。

 

結論として,この方には,14級9号の後遺障害が認定されました。

 

治療期間は,概ね9か月程度でした。

 

一括対応による治療費や休業損害も含めた総損害額は,約830万円となりました。

 

一括対応分を除いた獲得金額は,約520万円でした。

 

一般的に,14級9号が認定される案件の獲得金額は,約300万円となります。

 

今回は,220万円ほど,相場と比較して獲得できた金額が高かったこととなります。

 

また,約半年ほどの治療期間をツケ払いで対応していただいた接骨院の先生にも,80万円ほどの施術費を支払うことができました。

 

追い詰められた状況でしたが,被害者の方のみならず,周囲の方の協力により,粘り強く対応することで,良い解決を導くことができました。

 

今後も,どのような状況であっても,諦めることなく対応していきたいと思います。

 

交通事故にお悩みの方は,弁護士法人心の大薄(おおすき)までご相談ください!

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その3

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の続きとなります。

 

前回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了されたことにより,

 

休業補償を受けることができず,

 

治療費も自己負担となる状況に追い込まれたことまでご説明しました。

 

それでは,このような状況をどのように乗り切っていったのでしょうか。

 

まず,休業損害についてです。

 

こちらは,やむを得ず,貯金や家族からの借り入れによる対応となりました。

 

次に,治療費についてです。

 

被害者の方は,医師の指示のもとに,接骨院をメインに治療を受けていました。

 

こちらの接骨院の先生が非常に男気のある方でした。

 

接骨院の先生に事情を説明したところ,

 

①被害者の方に窓口負担を求めないツケ払いでの対応で構わない

 

②交渉で獲得できなかった施術費は,被害者の方に自己負担を求めずに放棄する

 

との方針で対応することとなりました。

 

未払の施術費が溜まっていくため,接骨院の先生には,非常にリスクのある決断です。

 

しかしながら,接骨院の先生も,今回の相手方保険会社の対応はあまりに酷いとして,強い憤りを感じているようでした。

 

それでは,このような方針のもと,どのように事件が解決したのでしょうか。

 

続きは,次回といたします。

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その2

こんばんは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案の続きとなります。

 

前回は,肋骨骨折を伴うバイク転倒事故であったにもかかわらず,

 

事故から3か月程度で相手方保険会社からの一括対応を打ち切られたこと

 

一括対応の既払金は,自賠責保険の上限である120万円を超過していたため,

 

被害者請求による対応は困難であったことをお伝えいたしました。

 

私の見立てとしては,

 

①今回の事故態様や受傷状況からすると,

 

6か月から1年程度の治療期間を裁判所が認定してもおかしくないこと

 

②被害者の方の労働内容に鑑みると,

 

休業補償も治療期間に対応したある程度の期間は認められてしかるべきであること

 

③事故状況や被害者の方のご年齢からすると,

 

後遺障害(14級9号)が認定されてもおかしくないこと

 

から,戦う態勢を整えることができれば,十分に勝機があると踏んでいました。

 

しかしながら,問題は,戦う態勢をどのように整えるのか?でした。

 

一括対応の終了により,

 

職場復帰もできない状況で生活の糧もなく,

 

治療費も自己負担となります。

 

果たして絶対絶命とも思われる状況をどのように乗り切っていったのでしょうか。

 

続きは次回といたします。

保険会社が早期に一括対応を終了してきた場合の対応方法とは? その1

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,相手方保険会社から早期に一括対応が終了された事案をご紹介いたします。

 

一括対応とは,平たく言うと,相手方保険会社が治療費や休業損害の対応を行うことです。

 

事案の概要は,以下のとおりです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

トラック(加害者)とバイク(被害者)の事故

 

トラックが交通規制を見誤り,センターラインオーバー

 

バイクは,トラックと衝突しそうになるも間一髪で衝突を回避

 

しかしながら,バイクは転倒し,被害者の方は肋骨を複数骨折するなどの傷害を負った

 

被害者の方は,肉体労働であったため,事故後,お仕事を完全休業していたが,

 

事故から3か月経過後に,相手方保険会社より,突然,一括対応終了の連絡

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

休業補償および治療費に関して,どのように進めればよいかというご相談でした。

 

さっそく相手方保険会社と交渉したものの,交渉に応じる気配は一切ありませんでした。

 

自賠責保険への被害者請求も検討しましたが,すでに相手方保険会社の一括対応が自賠責保険の上限である120万円を超えていたため,被害者請求もできない状況でした。

 

非常に難しい状況でしたが,どのような方針で進めることとしたのでしょうか。

 

続きは次回といたします。

紛争処理センター

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

先日,紛争処理センターにて,示談が成立いたしましたので,ご報告いたします。

 

紛争処理センターとは,被害者の方が,相手方の保険会社に対し,第三者である弁護士を介在させて,紛争の解決を求める手続きとなります。

 

争点が複雑でない場合には,裁判手続きと比較すると非常に迅速な解決が見込めます。

 

また,紛争処理センターの利用手数料は,無料となります。

 

今回解決したご案件は,被害者の方が亡くなられた死亡事故に関するものでした。

 

当初の相手方保険会社の提示金額は,約2000万円でしたが,

 

紛争処理センターを利用した結果,約2900万円での解決となりました。

 

今回の手続きは,非常にスムーズに進んだため,紛争処理センターに申立てを行ってから合意が成立するまでの期間は,約2か月というスピード解決にもなりました。

 

ある程度賠償金額が大きくなるご案件に関しては,相手方の保険会社も第三者機関を通した判断でなければ,決裁がおりない傾向にあると感じています。

 

当事者間で話し合いをしても芳しい結果が見込めない場合には,早期に紛争処理センターなどの第三者を介在させた手続きに移行することが迅速・適切な解決につながります。

 

各案件に関してどのような手続きを選択して進めるべきかについては,交通事故に関する豊富な経験が要求されます。

 

交通事故の示談交渉にお悩みの方は,弁護士の大薄まで,ご相談ください!

東京ビジネスクリニック

遅くなりましたが,あけましておめでとうございます。

 

本年度も,よろしくお願いいたします。

 

今年は,全国的に,インフルエンザが猛威を振るっております。

 

予防接種を受けていたため,インフルエンザには罹患しなかったのですが,

 

今月は,どうにも調子のすぐれない日が続きました。

 

交通事故も体調管理も初期対応が重要です。

 

東京駅法律事務所付近の「東京ビジネスクリニック」は,私のかかりつけです。

 

東京ビジネスクリニックのキャッチコピーは,

 

「働く人のためのコンビニクリニック」とのことです。

 

年末年始も休むことなく,毎日9時から21時まで営業しています。

 

また,東京ビジネスクリニックは,ウェブ予約によるファストパス制度も導入しています。

 

そのため,空いている時間帯であれば,事務所を出てから30分ほどで,医師による診察を受けて,かつ,薬剤師による薬を受け取って,事務所に戻ることができます。

 

体調の異変を感じたらすぐに対応してもらえるため,非常に重宝しております。

 

スポーツの世界では,「心・技・体」という考え方があります。

 

良きリーガルサービスを提供するためには,心身の健康が不可欠です。

 

今後も心身の健康を維持しながら,よりよいリーガルサービスの提供に努めてまいります。

2018年の振り返り

年の瀬となりました。

 

こんばんは。

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

年の瀬ということで,本日は,昨年に引き続き,今年度の振り返りを書きたいと思います。

 

今年も数多くの方々からご相談・ご依頼をいただきました。

 

私は,抽象的な話が好きではないので,具体的に数値で表したいと思います。

 

今年度,私がご相談させていただいた件数は,320件でした。

 

(前年度と比較すると104件増加)

 

ご依頼いただいた件数は,219件でした。

 

(前年度と比較すると81件増加)

 

うち,私をご紹介いただいたことによるご依頼は,130件でした。

 

(前年度と比較すると83件増加)

 

以上が今年度の実績になります。

 

昨年度と比較して,ご相談件数,ご依頼件数,ご紹介件数ともに,大幅な増加となりました。

 

増加の要因は,種々考えられますが,以下,私が分析する代表的な要因を1つずつ付記したいと思います。

 

① ご相談件数の増加

 

「時間あたりの提供できる価値が増加したこと」

 

時間は有限です。

 

前年度と比較して,短い時間に,より高い価値を提供できるようになったことがご相談件数の増加につながったものと考えます。

 

② ご依頼件数の増加

 

「質・量ともに,スタッフの能力が向上したこと」

 

弁護士の仕事は,弁護士だけでは対応できません。

 

前年度と比較して,スタッフの人数が増加し,その能力も向上したことで,より多くの方からのご依頼への対応が可能になったものと考えます。

 

③ ご紹介件数の増加

 

「より多くの方にご満足いただける結果を提供できたこと」

 

ご満足・ご納得いただける結果を継続的に提供できるよう,私を含めたスタッフ一同が1つ1つのご案件に尽力できたことが,ご紹介件数の大幅増加へつながったものと考えます。

 

以上が今年度の振り返りとなります。

 

来年度もより良いリーガルサービスを提供できるよう,スタッフとともに精進して参りますので,今後ともよろしくお願いいたします。

迅速対応に向けて日々研鑽

スピードは重要な価値だと思っております。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

先日,後遺障害14級9号の示談交渉がスピード解決いたしました。

 

ご依頼者の方は,相手方保険会社から提示された示談金額が適切か否かを判断して欲しいとのことで,相談に来られました。

 

過失割合は,「20:80」とされており,相手方保険会社の提示金額は,約160万円でした。

 

お聴き取りした事故状況からすると,過失割合を修正することは困難と考えられたため,慰謝料や逸失利益に交渉対象を絞って行う方針で進めることとなりました。

 

交渉の結果,当初の提示金額から約100万円増額の約260万円での示談となりました。

 

ご依頼者の方が私のもとにご相談に来られてから,増額した金額がご依頼者の方のもとに届くまで,約1か月というスピード解決のご案件となりました。

 

弁護士業務に限らず,すべての業務には,相手方がいることが通常です。

 

そのため,必ずしも思うように進まないこともあります。

 

しかしながら,可能な限り,迅速な解決となるように,こちらで出来る事は迅速かつ正確に対応できるよう,日々の研鑽に取り組んでいきたいと思います。

脊柱の変形障害

こんにちは。

 

先日,嬉しい示談が成立しました。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今回は,脊柱の変形障害に関する示談のご報告です。

 

脊柱とは,平たく言うと,背骨をいいます。

 

脊柱の後遺障害は,頚部および体幹の支持機能・保持機能に着目したものとなります。

 

脊柱の変形障害とは,脊柱が圧迫骨折等により,曲がってしまうことをいいます。

 

脊柱の変形障害は,変形の程度に応じて,6級,8級,11級の後遺障害が認定されます。

 

労働能力喪失率は,6級が67%,8級が45%,11級が20%となります。

 

ただし,これらはあくまでも目安に過ぎず,具体的事情により,増減します。

 

殊に,脊柱の変形障害に関しては,労働能力喪失率が争われることが多く,11級の脊柱変形障害においては,20%を下回る数値を認定する裁判例も少なくありません。

 

今回の依頼者の方は,脊柱の変形障害の11級が認定されていました。

 

ご依頼前に,相手方から提示されていた金額は,約720万円でした。

 

労働能力喪失率は,9%という提示内容でした。

 

その後,丹念に交渉した結果,16%を前提とする条件を引き出すことができました。

 

示談金額も約1400万円での解決となりました。

 

後遺障害の示談交渉の際には,裁判による損得の判断が極めて重要となります。

 

当該判断を誤ると,示談前の金額を下回ることも当然にありえます。

 

裁判をすることにより得をする可能性が高いか損をする可能性が高いかの判断は,交通事故の事件に対する豊富な経験が不可欠です。

 

特に,等級の高い後遺障害は,そもそも取り扱ったことのない弁護士も多いです。

 

脊柱変形の後遺障害に関するご相談は,弁護士の大薄までお任せください。

 

脊柱の変形障害についてはこちらもご覧ください。

自賠責で因果関係が否定された場合の対処方法とは? その4

こんばんは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

クリープ現象による追突事故の和解に関する最終回です。

 

前回までのお話で,裁判所から以下の内容の和解案が提示されたこと,

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

被害者の方が事故で受傷した事実は認められる。

 

治療費は,相手方保険会社が対応した期間である6か月分は認める。

 

慰謝料は,通院期間3か月程度の範囲で認める。

 

調整金として,9か月分までの治療費に相当する金額を認める。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

また,当該内容の和解が良案であったことをお伝えしました。

 

最後に,今回の案件に関するより良い解決策についてお話したいと思います。

 

まず,話を整理します。依頼者の方が私のもとへ来たのは,以下の経緯でした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

相手方保険会社は,約6か月間,治療費の支払いを行っていました。

 

その後,被害者の方は,約9か月まで治療を継続して,自賠責保険に被害者請求を行いました。

 

すると,自賠責保険は,因果関係否定の判断をしてきました。

 

その後,被害者の方は,相手方保険会社にすでに支払った治療費の返還を求められるなどの訴えを起こされました。

 

このように訴訟提起された後,被害者の方は,私のもとに来ました。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

仮に,被害者の方が自賠責保険へ被害者請求をする前に,私のもとに来ていれば,私は以下のようなアドバイスをしたと思います。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今回の事故は,クリープ現象による事故であるため,事故態様としては,軽微なものととられる傾向にある。

 

自賠責保険への被害者請求は因果関係否定のリスクが高い。

 

反面,相手方保険会社による約6か月間の治療費の対応は,今回の事故態様を前提とすると,比較的長い。

 

そうであるとすれば,約6か月間の治療期間を前提に,示談交渉を行い,獲得した慰謝料を通院の治療費にあてるべきである。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

むちうちによる通院期間6か月の慰謝料は,89万円程度とされています。

 

示談交渉は,早期解決のため,双方に譲歩が要求されますので,約80%の解決としても,72万円程度です。

 

今回の和解が約60万円であったことからすると,このような解決の方が経済的にメリットがありました。

 

また,時間的にも,訴訟手続に掛かる時間を省略できるため,メリットがありました。

 

私は,交通事故のご案件を常時150件ほどご対応させていただいております。

 

そのときの状況に応じた最善の解決策に尽力することはできますが,時間を巻き戻すことはできません。

 

弁護士にもそれぞれ得意分野があります。

 

交通事故の問題は,交通事故を得意とする弁護士にお早めにご相談いただければと思います。

自賠責で因果関係が否定された場合の対処方法とは? その3

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

前々回,前回に引き続き,クリープ現象による追突事故の和解についてです。

 

前回までのお話で,裁判所から

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

被害者の方が事故で受傷した事実は認められる。

 

治療費は,相手方保険会社が対応した期間である6か月分は認める。

 

慰謝料は,通院期間3か月程度の範囲で認める。

 

調整金として,9か月分までの治療費に相当する金額を認める。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

という内容の和解案が提示されたこと及び当該内容で和解が成立したことをお伝えしました。

 

今回は,裁判所から提示された当該内容の和解案が良い内容であると感じた理由について解説いたします。

 

まず,こちら側の立場から当該和解案を分析します。

 

今回の事故は,クリープ現象による追突事故です。

 

必要な治療期間が個別的に異なるとはいえ,事故態様が極めて軽微であることからすると,相当な治療期間は3か月程度であると認定されてもおかしくない状況です。

 

そのため,慰謝料を3か月とする判断は,ある程度やむを得ないものであり,かえって,治療費が6か月分認められたことは,こちら側にとって非常に有利な内容といえます。

 

次に,相手側の立場から当該和解案を分析します。

 

今回,相手方がこちら側に訴えを先行してきた理由は,自賠責により因果関係否定の判断がなされたことにあります。

 

通常,相手方保険会社は,先行して支払った治療費などを自賠責保険に後から請求することとなります。

 

このように,自賠責保険に最終的な経済的負担をさせることで,任意保険会社は,自社の経済的損失を回避しようとします。

 

今回は,自賠責保険が因果関係否定の判断をしたため,相手方保険会社は,すでに支払った治療費等を自賠責保険に請求できなくなりました。

 

そのため,こちら側にすでに支払った治療費等の返還を求めてきたのです。

 

もっとも,相手方の立場からすると,任意保険会社が自社の経済的損失を回避できれば,訴訟の目的を達成できることとなります。

 

そして,裁判所の判断は,和解によるものであっても,自賠責保険は,その判断を尊重する傾向にあります。

 

それゆえ,裁判所が因果関係肯定の判断をすれば,その判断に従って,任意保険会社は,被害者に支払った金員を自賠責保険に請求できることとなります。

 

自賠責保険の限度額は,傷害部分に限定すると,120万円となります。

 

今回の和解は,すでに支払った治療費や新たに認められた慰謝料等を合計すると概ね120万円の支払いを相手方保険会社に命じるものとなっています。

 

従って,相手方保険会社の立場からしても,最終的に全額を自賠責保険に請求できるため,自社の経済的損失を回避するという目的を達成できたこととなります。

 

以上のように,対立当事者間の利益を調整する和解案を提示するには,裁判官としても,交通事故事件に関する深い理解が要求されます。

 

東京地方裁判所民事第27部の裁判官は,交通事故のみを取り扱う専門部です。

 

専門部ならではの双方の利益に配慮した和解案であったと考えます。

 

次回は,今回の案件に関するより良い解決策についてお話したいと思います。

自賠責で因果関係が否定された場合の対処方法とは? その2

こんばんは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

前回からの続きで,自賠責で因果関係が否定された案件の解決策と実際の解決結果のご報告となります。

 

前回は,自賠責への被害者請求で因果関係が否定された結果,相手方から治療費の返還等を求められた経緯をお伝えいたしました。

 

それでは,まず,どのような解決策があるのでしょうか。

 

ひとつの方法としては,自賠責の判断結果に対して,不服を申し立てることが考えられます。

 

もっとも,一度判断された因果関係否定という結果を同じ組織のもとで覆すことは,相当に困難なものといえます。

 

また,相手方から訴訟を提起されている場合は,自賠責も訴訟での一挙的解決を望むため,調査をしないという判断がされることもあります。

 

もうひとつの方法としては,裁判所に対して,訴訟を提起するということが考えられます。

 

自賠責は,裁判所の判断を尊重するため,通常,裁判所において因果関係肯定の判断がなされた場合は,自賠責の判断が覆ることとなります。

 

今回の案件に関しては,相手方からすでに訴訟を提起されていることもあり,裁判による解決を選択しました。

 

それでは,訴訟では,どのような主張・反論が交わされたのでしょうか。

 

今回の大きな争点(相手方との対立点)は,①今回の事故により被害者の方が怪我をしたか否か,②怪我をしたとしても,因果関係ある治療期間はどの程度かという2点です。

 

まず,①の争点についてです。

 

相手方は,今回のようなクリープ現象による事故では,受傷の事実は生じ得ないとの主張をしてきました。

 

また,その主張を根拠付ける資料として,工学鑑定による意見書を提出してきました。

 

今回提出された工学鑑定による意見書の内容は,今回の事故状況から推察される事実を前提にすると,同意見書が引用する論文によれば医学的・理工学的に受傷の事実は生じないとするものです。

 

(意見書の分量は数百ページにも渡っていました。)

 

このような相手方の主張に対して,こちら側は,aそもそも推察される事実が正確性を欠くこと,b意見書に引用された論文が正確性を欠くとする論文があることを軸に反論を行いました。

 

次に,②の争点についてです。

 

これについても,相手方は,むちうちのように骨折・脱臼等の他覚的所見のない症状では,せいぜい3か月程度が相当な治療期間であると主張してきました。

 

また,その主張を根拠付ける資料として,むちうちの症状の大半が3か月以内に治療終了となっている統計データを提出してきました。

 

これに対しても,a統計データは一般論に過ぎないこと,b本件では6か月程度まで相手方保険会社も治療費の支払いに応じていたことなどを軸に反論を行いました。

 

以上のような主張・反論の結果,裁判所は以下のような和解案を提示しました。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

被害者の方が事故で受傷した事実は認められる。

 

治療費は,相手方保険会社が対応した期間である6か月分は認める。

 

慰謝料は,通院期間3か月程度の範囲で認める。

 

調整金として,9か月分までの治療費に相当する金額を認める。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

裁判所の提示した当該和解案にこちら側も相手側も応じることとなり,無事に和解による解決となりました。

 

具体的には,相手方からこちら側に約60万円が支払われるという内容でした。

 

一時は,何らの金員も支払われないおそれがあったばかりか,すでに支払われた金員の返還すら求められる状況にあったため,被害者の方も納得の解決となりました。

 

また,私は,今回裁判所から提示された和解案は,非常に双方にとって理解のある良い内容であると感じました。

 

次回は,私が今回の和解案が良い内容であると感じた理由について解説したいと思います。

自賠責で因果関係が否定された場合の対処方法とは? その1

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

先日,東京地方裁判所民事第27部で和解が成立したので,ご報告いたします。

 

事案の概要は,以下のとおりです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

停車中の追突事故。

 

被害者の方は,9か月程度通院。

 

相手方保険会社は,6か月間,治療費の支払いを対応。

 

その後,被害者の方は,3か月分の治療費等を自賠責保険へ請求するも,因果関係否定との判断がなされる。

 

当該判断を受けて,相手方保険会社は,すでに支払った治療費の返還などを求めて被害者を提訴。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

交通事故の被害にあったにもかかわらず,保険会社から逆に訴えられるという非常に特殊なご案件でした。

 

相談者の方も何が起きているのか理解できていないようでした。

 

まず,被害者の方が訴えられることとなった経緯をご説明します。

 

今回の事故は,停車中の追突事故でした。

 

過失割合としては,相手方が100%悪い事故となります。

 

ただし,今回の事故は,渋滞待ちで停車中の相手方車両が,ブレーキを緩めてしまった際に,被害者の方の車両に衝突してしまったというものでした。

 

いわゆる,クリープ現象による追突事故ということになります。

 

クリープ現象による追突事故は,衝突による衝撃が比較的小さいとされています。

 

そのため,①そもそも受傷するような事故態様ではない,②受傷したとしても必要な通院期間は1か月程度であるなどという主張が相手方からなされることも少なくありません。

 

今回の事案では,クリープ現象による事故であるにもかかわらず,相手方保険会社は,6か月間の治療費を支払っていました。

 

保険会社の担当者としては,6か月までであれば,自賠責の範囲内で治療費等を回収できるため問題ないと考えていたのだと思います。

 

もっとも,被害者の方の症状は,6か月経過後も続きました。

 

それゆえ,被害者の方は,被害者請求により,治療費の回収を試みました。

 

被害者請求とは,加害者の自賠責保険に対して,被害者の方が治療費や慰謝料等を直接請求する手続となります。

 

自賠責保険の上限額は,120万円です。そして,すでに保険会社が支払った治療費やその期間に対応する慰謝料は120万円から差し引かれます。

 

今回の被害者の方は,保険会社による6か月間の対応を考慮してもなお,自賠責保険の120万円の枠が余っていたため,治療費を回収すべく被害者請求を実施したとのことでした。

 

通常,このような状況で被害者請求を実施すると,保険会社が支払った6か月分の治療費やその期間に対応する自賠責基準の慰謝料を120万円から差し引いた残額が自賠責保険から支払われます。

 

ところが,今回の事案では,自賠責保険は,保険金を一切支払わないとの判断をしました。

 

理由は,今回の事故態様からすると,受傷の事実が生じるとは考えられないというものでした(因果関係否定)。

 

そのため,被害者の方は,3か月分の治療費及び自賠責基準による慰謝料を回収することができなくなってしまいました。

 

また,因果関係否定の判断は,被害者の方のみならず,相手方保険会社を当惑させる事態も招きました。

 

というのも,先ほど述べたように,相手方保険会社の担当者は,すでに支払った6か月分の治療費やそれに対応する慰謝料を,最終的に自賠責保険に請求するつもりであったと考えられます。

 

しかしながら,自賠責保険が因果関係否定の判断を下したため,保険会社としても,6か月分の治療費等を自賠責保険に回収できないこととなってしまいました。

 

それゆえ,このままの状態だと,すでに支払った6か月分の治療費は,保険会社の持ち出しとなります。

 

このような場合,多くの保険会社は,今まで支払った治療費の返還は求めない代わりに,慰謝料等を別途支払うことはしないとする内容での合意を被害者の方に求めることが少なくないです。

 

ところが,今回の保険会社は,①すでに支払った治療費の返還請求と②今回の事故に関して保険金を支払う義務がないことの確認を求める訴訟を被害者の方に提起してきました。

 

①を不当利得返還請求といいます。②を債務不存在確認請求といいます。

 

私が担当したのは,このように相手方から被害者の方が訴えられた後のこととなります。

 

それでは,このような案件に対しては,どのような解決方法があるのでしょうか。

 

また,実際にどのような解決となったのでしょうか。

 

長くなりましたので,続きは次回といたします。

 

交通事故の因果関係に関しては,こちらもご覧ください。

CRPS様(よう)の症状 その2

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

前回に引き続き,CRPSに関する和解のお話になります。

 

前回は,CRPSによる後遺障害が認定されると,後遺障害等級としては,7級,9級,12級のいずれかが認定されるが,自賠責保険が依頼者の方に認定した後遺障害は,14級9号であったこと

 

自賠責保険が14級9号の認定にとどめたことは,我々にとって,予想外の出来事ではなかったこと

 

までお話いたしました。

 

それでは,なぜ我々にとって,自賠責保険が14級9号の認定にとどめたことは,予想外の出来事ではなかったのでしょうか。

 

というのも,自賠責保険の後遺障害認定手続におけるCRPSと臨床医学の診断におけるCRPSは,同じCRPSという名称であっても,その認定要件が異なるからです。

 

具体的には,自賠責保険の後遺障害認定手続では,「骨萎縮」がCRPS該当性の要件となるのに対し,臨床医学上は,「骨萎縮」が要件とされません。

 

自賠責保険の後遺障害認定手続は,相手方に対する損害賠償責任の有無およびその程度を判断する手段のひとつです。

 

そのため,臨床医学よりも厳しい認定要件が設定されています。

 

また,交通事故事件は数多く発生しているため,自賠責保険の後遺障害認定機関も,非常に多くの事件を取り扱っています。

 

それゆえ,迅速な判断という観点からも,形式的・客観的な要件として,「骨萎縮」が要求されています。

 

ただし,裁判所は,良くも悪くも自賠責保険の判断に拘束されません。

 

従って,臨床医学上,CRPSと認定されていることを理由として,自賠責保険が認定した後遺障害等級以上の等級を求めて争われることが少なくありません。

 

もっとも,裁判所は自賠責保険の判断に拘束されないというものの,裁判所も医学的素人であるため,自賠責保険の判断は,裁判実務上,極めて尊重される傾向にあります。

 

具体的には,自賠責保険で後遺障害等級が認定された場合には,裁判所もその認定された等級であることを前提に,認定された等級を超える等級を求める側(場合によっては,認定された等級未満の等級を求める側)に立証を強く求めていきます。

 

これを法律用語では,事実上の推定が働くといいます。

 

それでは,今回の事件を見ていきましょう。

 

今回の依頼者の方に認定された自賠責保険における後遺障害等級は,14級9号でした。

 

そのため,裁判上も,14級9号であることに対する事実上の推定が働きます。

 

後遺障害が認定されますと,後遺障害が残存することによる将来の労務に対する不利益を考慮した賠償を受けることができます。

 

これを逸失利益といいます。

 

逸失利益は,原則として,①ご自身の事故前年度の年収に②認定された後遺障害等級に応じた労働能力喪失率を乗じたものへ③症状固定時から67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(将来の収入を先取りすることの利益を控除した係数)を乗じて算定されます。

 

14級9号が認定された場合の労働能力喪失率は,5%ですが,労働能力喪失期間は,通常,5年間に制限されます。

 

今回の裁判の主な目的は,依頼者の方の症状に鑑みると,①労働能力喪失率は5%にとどまらない,②労働能力喪失期間も5年間にとどまらないという訴えを裁判所に認めてもらうことでした。

 

自賠責保険で認定された後遺障害等級は,14級9号であるため,労働能力喪失率が5%,労働能力喪失期間が5年間という事実上の推定が働きます。

 

それゆえ,こちら側に強く立証が求められます。

 

また,前回もお話したように,東京地方裁判所の裁判官は,全国の裁判所と比較しても,群を抜いて交通事故の事件を多く取り扱っています。

 

日本の交通事故事件に関する裁判をリードする立場にあることもあってか,保守的な判断がなされることも少なくありません。

 

しかしながら,今回の裁判官からは,労働能力喪失率は5%であるものの,労働能力喪失期間を15年間とする和解案が提示されました。

 

依頼者の方がCRPSであることを正面から認めた内容ではないものの,通常の14級9号にとどまらない症状であることを十分に考慮いただいた結果の和解案であるといえます。

 

CRPSではないものの,CRPSと同様の症状が発症していることを,CRPS「様」(よう)の症状と呼んだりします。

 

先日,当該和解案を基礎とした和解が無事にまとまりました。

 

総損害の額としては,通常の14級9号であれば,350万円程度であるところ,1000万円を超える損害が発生したと認められました。

 

和解ですので,こちら側の主張がすべて認められた訳ではありませんが,和解が成立したことを依頼者の方にお伝えした際の安堵の表情と感謝のお言葉ですべてが報われた気がしました。

 

今後も,困難な事件であっても,結果に強くこだわって,粘り強く解決に向けて尽力していきたいと思います。

 

CRPSの後遺障害については,こちらもご覧ください。

CRPS様(よう)の症状 その1

先日,嬉しい和解がまとまりましたので,ご報告いたします。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

CRPSという傷病名をご存知でしょうか。

 

CRPSとは,複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome)の略称をいいます。

 

CRPSの特徴の1つとして,受傷機転と比較したときに,残存する症状が重いという点があげられます。

 

例えば,当初の診断名が打撲・捻挫であるにもかかわらず,通常であれば痛みが引いてくるような時期に至ってもなお,強い痛みが残存ないし痛みが増悪しているような場合をいいます。

 

先日,CRPSに関する和解が東京地方裁判所民事第27部でまとまりました。

 

我々の業界では,東京地方裁判所民事第27部のことを通称,「27部(にじゅうななぶ)」と呼んでいます。

 

東京地方裁判所民事第27部における判断は,交通事故の弁護士業務において,非常に重要な位置付けとなっています。

 

それでは,東京地方裁判所民事第27部における和解であることがなぜ重要なのでしょうか。

 

交通事故は,民事事件の中でも非常に多い部類の事件にあたります。

 

そのため,裁判所によっては,交通事故を専門で取り扱う部署を設けているところもあります。

 

東京地方裁判所は,全国の裁判所の中で,最も多くの事件を取り扱っています。

 

東京以外の関東近郊の裁判所の事件数が3千件であるとすれば,東京地方裁判所の事件数は,3万件にのぼります。

 

当然,他の裁判所と比較すると,交通事故の事件数も群を抜いて多く取り扱っています。

 

東京地方裁判所の交通事故を専門的に取り扱う部署は,東京地方裁判所民事第27部になります。

 

東京地方裁判所民事第27部は,日本の交通事故事件に関する裁判を牽引している存在であると言えます。

 

それゆえ,東京地方裁判所民事第27部における判断は,他の地方裁判所における交通事故事件に関する判断と比較して,重みがあるものといえます。

 

さて,話を今回の事件に戻します。

 

今回の依頼者の方は,右腕に強い痛みを抱えていました。

 

事故発生から約5年が経過しようとする時点においてもなお,その痛みは継続している状態でした。

 

主治医の先生は,依頼者の方の症状をCRPSによるものであると診断していました。

 

我々も,CRPSであることを前提に,後遺障害申請を行いました。

 

CRPSによる後遺障害が認定されると,後遺障害等級としては,7級,9級,12級のいずれかが認定されます。

 

ところが,自賠責保険が依頼者の方に認定した後遺障害は,14級9号でした。

 

14級9号の認定にとどまったということは,むちうちなどの他覚的所見がない場合に認定される後遺障害と同様であることを意味します。

 

従って,自賠責保険は,依頼者の方に残存している症状が,CRPSによる後遺障害とは認められないと判断したことになります。

 

自賠責保険が依頼者の方の症状をCRPSと認定しなかったことは残念でしたが,14級9号の認定にとどめたことは,我々にとって,予想外の出来事ではありませんでした。

 

長くなりましたので,続きは次回といたします。

CRPSについて詳しくはこちら

移動時間をどのように過ごしていますか?

こんにちは。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

弁護士は移動時間が多いです。

 

東京の弁護士であれば、主な移動手段は、電車だと思います。

 

私も、裁判へ行ったり、病院へ行ったり、とにかくよく電車を利用しています。

 

弁護士の取り扱っている情報は、要保護性の高い個人情報が多いです。

 

そのため、電車に乗っている間に、個別事件の記録を読んだりすることはできません。

 

電車内でできることは、一般的な業務に限られます。

 

しかしながら,事務所にいる間は、個別的な業務に忙殺されますので、電車内での時間は一般的な業務をこなすための貴重な時間です。

 

一般的な業務とは、裁判例を検索・検討したり、法律関連書籍を読んだり、ブログを作成したり、ホームページ原稿を執筆したりと多岐に渡ります。

 

私は、学生時代から電車の移動中に勉強することが好きでした。

 

(勉強しながら、電車内で寝入ってしまう瞬間はもっと好きでした笑)

 

電車の中でやれることは限られています。

 

しかしながら、やれることが限られている環境であるゆえに、限られたことに集中できる環境ともいえます。

 

限られた時間であっても、有効に活用することで,より多くの方々により良いリーガルサービスを提供できればと思います。

 

東京で弁護士にご相談をお考えの方はこちら

最終準備書面

弁護士法人心東京駅法律事務所所属

 

弁護士の大薄(おおすき)です。

 

今月は、2件の事件で最終準備書面を提出してきました。

 

最終準備書面とは、裁判所に提出する最後の準備書面のことをいいます。

 

準備書面とは、こちら側の主張を裁判所へ伝える書面のことをいいます。

 

そのため,最終準備書面は、これまでの主張の総まとめの書面ということになります。

 

最終準備書面を提出するということは、通常、裁判が判決となるということを意味します。

 

判決とは、当該事件に対する裁判所の終局的な判断をいいます。

 

ひとくちに裁判といっても、判決に至る事件は極めてまれです。

 

裁判の過程では、互いに主張・立証をある程度尽くした後、裁判所から和解案が提出されます。

 

和解案とは、話し合いによる解決の余地を探る裁判所の提案です。

 

争いとなっているだけあり、裁判の原告・被告間は、相互に弱い部分があることは否定できません。

 

裁判所は、これまでの主張・立証を踏まえて、双方が折り合えるのではないかと考える案を提示してきます。

 

しかしながら、提示された和解案は、必ずしも、双方が折り合えるものとは限りません。

 

裁判所の提案する和解案を受け入れることができないとなれば、尋問、判決という過程をたどることになります。

 

尋問後に、再び和解案が提示されることもありますので、判決まで至るケースは極めて稀です。

 

最終準備書面は、裁判所へ提出する最後の書面です。

 

すなわち、依頼者の方の主張を当該裁判所へ伝える最後の機会となります。

 

弁護士の中には、尋問までで主張・立証は尽くされている以上、最終準備書面を提出することに特段の意義はないとして、最終準備書面を提出しない方もいます。

 

そのような考え方もあるかもしれませんが、私は、依頼者の方の気持ちが少しでも裁判所へ届くように、最終準備書面は必ず提出するようにしています。

 

弁護士を東京でお探しの方はこちら