交通事故によってうつ病となった場合の後遺障害認定
1 うつ病と非器質性精神障害について
非器質性精神障害とは、脳挫傷、脳内出血といった脳の損傷が生じていない状態で生じた精神障害のことをいいます。
うつ病は、脳の損傷により生じるものではないので、非器質性精神障害に当たります。
これに対し、脳の損傷により生じる精神障害として、代表的なものが高次脳機能障害となります。
2 うつ病と事故との因果関係の問題
高次脳機能障害の場合は、その原因となる脳の損傷(脳挫傷や脳内出血など)について、CT検査などで確認することができます。
このため、事故により高次脳機能障害が生じたことについて、争いとなることは、通常はありません。
しかし、うつ病においては、高次脳機能障害と異なり、CT検査などの画像検査での異常はありません。
このため、被害者の精神状態について、事故前と事故後の状態を比較したり、事故が被害者の精神状態に影響を及ぼすような重大な事故であるかについて検討するなどして、「事故により、うつ病が生じたこと」を確認する必要があります。
また、うつ病は、事故以外の原因(事故以外のストレスとなる要因。例えば、親族の死亡によるストレス、仕事上の悩みなど)によっても生じるため、事故後に生じたうつ病が、真に事故により生じたものか、事故以外の原因により生じたものではないかについても検討が必要となります。
3 認定前に長期の治療期間が必要であること
うつ病を含む非器質性精神障害について、「治療や時間の経過とともに改善していく」ことが原則とされています。
このため、症状固定と判断されるまでの治療期間は1年以上の長期間が必要とされています。
これより短い治療期間で症状固定として後遺障害の申請を行っても、「将来回復する可能性があること」を理由に、後遺障害の認定はされないことになってしまいます。
被害者は、治療の長期化に対する対策をすることが必要になります。
4 医師の意見書
非器質性精神障害による後遺障害を認定してもらうためには、精神科医による意見書作成と提出が必要となります。
意見書の記載事項は、事故状況、発症後の治療の経過、事故と症状との因果関係、今後の症状改善の見込みの有無など、多数の項目を記載する必要があります。
また、精神症状の状態、能力低下の状態についての記載欄もあります。
画像で確認することができないこと、事故以外の他の原因でも発症する可能性があるという、非器質性精神障害について様々な方向から検討するため、通常の後遺障害診断書に比べ、多数の記載項目が必要となっています。
5 認定される後遺障害等級
事故によりうつ病となり、これが将来にわたり回復する見込みがないとされた場合に後遺障害として認定されます。
後遺障害の程度が重い順に、「うつ病のため、日常生活に著しい支障が生じる場合」が9級10号、「日常生活に頻繁に支障が生じる場合」が12級13号、「日常生活において時々支障が生じる場合」が14級9号となります。
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