弁護士と司法書士の権限の違い
弁護士の「専門分野」の表記 自分でもできる手続きを弁護士に依頼する理由
弁護士と司法書士の違い
1 権限の違い
弁護士と司法書士のどちらに依頼をすべきか、迷っているという方もいらっしゃるかと思います。
どのような違いがあるかというと、弁護士と司法書士とでは、取り扱うことができる法律事務の範囲に違いがあります。
弁護士は、原則として、あらゆる法律事務の代理をすることができますが、司法書士は、一定の法律事務の代理に制限されています。
2 140万円の壁
弁護士と司法書士との大きな違いの一つとして、訴額140万円を超える案件の代理権限があるか否かということが挙げられます。
訴額140万円を超える案件の場合、弁護士は代理人になることができますが、司法書士は代理人になることができません。
なお、140万円以下の案件でも、代理人になることができるのは一部の「認定司法書士」に限られます。
司法書士に依頼をした後で、訴額が140万円を超えてしまったなどの場合には、代理人を変更しなければならず、改めて弁護士を探して依頼することになりますので、当初から弁護士に依頼をしておくと安心です。
3 代理権の消失
認定司法書士は、簡易裁判所での訴訟代理権しか有しておらず、案件が上訴審に移行すると代理人を続けることができなくなります。
弁護士であれば、上訴審に移行しても代理人を続けられますので、弁護士に依頼をしている場合には、そのような心配をする必要はありません。
4 弁護士に依頼するか、司法書士に依頼するか
このように、司法書士には代理人になるにあたって法律上の制限があります。
司法書士へ代理人の依頼を考えている場合には、そのような制限についてもしっかりと検討したうえで、司法書士に依頼をするのがいいのか、あるいは最初から弁護士に依頼をするのがよいのかを決定されるとよいかと思います。
どちらに依頼すればよいのか自分では判断できない等とお困りの際には、当法人までお気軽にご相談ください。
専門家選びの注意点
1 示談交渉や裁判等を本人の代わりにできるのは…
弁護士や司法書士など様々な専門家がいる中で、どのような専門家を選ぶべきかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
他人の代理人として示談交渉や裁判を行うことができるのは、原則として弁護士だけです(弁護士法72条)。
弁護士は、厳格な資格要件のもと、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命として、職務を行うものとされています。
弁護士は、適正・誠実に職務を遂行するために、弁護士職務基本規程等、必要な規律に服すべきものともされており、依頼者の権利・利益の実現のための仕組みが整えられています。
このような規律や仕組みがなければ、能力が不十分な者が不適切な事件処理をしてしまう、依頼者に対して不当に高額な報酬を請求する者が現れてしまう、違法な方法による事件解決が行われてしまうなど、様々な問題が起こるおそれがあります。
そのようなことがないよう、代理人として交渉や裁判をおこなえる地位は、一部の例外を除いて弁護士に限定されているのです。
2 弁護士以外の者に依頼することにご注意
弁護士でない者が「手続き代行」などの名目で、弁護士しかできない業務を行っている場合があります。
こうした行為をする者は、違法であることに加えて、いい加減な処理をしていたり、不当に高額な報酬を請求していたりすることもあるようですので、注意が必要です。
例えば、司法書士は、140万円以下の事件までは代理権を認められていますが、140万円を超える場合については、弁護士でなければ行えません。
そのため、司法書士に依頼をしていた場合には、代理人を途中で変更しなければならなくなります。
しかし、140万円を超える事件であるにもかかわらず、「書面作成代理」などという名目で、実質的な代理行為を行うようなケースもあります。
このような行為は、いわゆる非弁行為(本来弁護士でなければ行い得ないことを弁護士でないものが行うこと)である可能性もありますので、併せてご注意ください。