進路変更禁止と追い越し禁止

交通事故の相談を受けていてよく聞かれる誤解で,交差点の手前30メートル以内では車線変更をしてはいけない,というのがあります。

そもそも一般的には,よく車線変更という言葉を使いますが,道路交通法上は車線変更という言葉も存在していません。

道路交通法上は,進路変更という言葉で,「車両は,みだりにその進路を変更してはならない(26条の2第1項)」,「車両は,進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは,進路を変更してはならない(同条第2項)」,「車両は,車両通行帯を通行している場合において,その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によって区画されているときは,次に掲げる場合を除き,その道路標示を超えて進路を変更してはならない(同条第3項)」,次に掲げる場合として緊急車両を優先させる場合,道路の損壊,工事その他の障害により通行できない場合を挙げています。

他方,追い越しについては,追い越し禁止場所として,道交法30条に,道路のまがりかど附近,上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂,トンネルのほか,交差点・踏切・横断歩道又は自転車横断とこれらの手前の側端から前に30メートル以内の部分が列挙されています。

このように,厳密には,進路変更,追い越しという違いがあるほか,交差点手前30メートル以内で進路変更してはいけないというルールはないということになります。

ただ,当然のことながら必要のない進路変更はもちろんのこと,後方の車両を意識しない急な進路変更や,交通事故発生リスクの高い場所での進路変更はしないに越したことはありません。