交通事故における紛争処理センターの利用

交通事故の示談解決にあたり,任意交渉で示談できない場合に利用を検討する第三者機関として,紛争処理センターという機関があります。

交渉で示談できなければすぐ裁判,というわけではなく,紛争処理センターの利用が適している,という場合もあります。

紛争処理センターを利用する場合,切手や印紙代のような裁判のときにかかるような,利用のための費用はかかりません。

申立て書類も,当法人にご依頼いただいて既に示談交渉をしている場合は,主張や請求も固まっていることが多いので,新たに準備していただくものは,委任状と印鑑証明書だけ,ということが多いです。

センターでは,被害者側,加害者保険会社側の双方の意見を聞き,通常3回前後の期日を経て,担当弁護士が斡旋案を出してくれます。

その斡旋案に双方合意となれば,晴れて解決,ということになります。

他方,斡旋案について合意ならず,という場合には,審査申し立てを行い受理されれば,センター内で審査会が開かれます。

審査会には,斡旋案を提示してくれた担当弁護士と,審査員,当事者双方が出席することができ,審査員から改めて争点や当該交通事故に関する説明,主張の場が設けられます。

その結果,審査会の裁定結果が出て,申立てを行った被害者側がこれに同意する場合には,加害者保険会社側はこの裁定に拘束され,この段階で解決となります。

もっとも,申立人側も裁定に納得できないというような場合には,紛争処理センターでの解決ならず,ということで裁判所の利用などを検討する必要がありますが,多くの場合,この裁定案に保険会社側が拘束されることから適切な事案解決が図られていると言えます。

過失割合に大きな隔たりがあり事故状況を示す資料が不足する,交通事故と受傷の因果関係に争いがあり高度な医学的判断を要する,といった裁判での解決が適切な類型では,紛争処理センターの利用が適さないこともありますが,こうした争点のないケースであれば,紛争処理センターの利用は,任意交渉ではいまいちだが裁判をするほど期間や費用がかかるのは嫌だ,という方に非常に便利な手続だと思います。