保険会社の治療費支払打切り

交通事故被害に遭われた方の通院の場合,通常,加害者の任意保険会社が直接医療機関に治療費を払ってくれます。

この場合,当初は特に何の問題もなく通院できることが多いのですが,事故状況や車の損傷の程度,症状の程度,治療の内容や経過などから,徐々に治療終了時期についての打診がくるようになったり,あるいは,治療を終了してほしいといった,打切りの話が出てくるようになります。

むちうちの場合だと,車両損傷が非常に軽微な場合ですと,事故から1か月程度で打切りの話が出てきますし,軽度から中程度であれば事故から3か月前後,重度であれば事故から5,6か月前後で打切りとなることが多いように思います。

被害に遭われた方からすれば,交通事故で症状がでて,その症状がなくなっていないのだから当然治療費は加害者(の保険会社)が支払うべき,というふうに思われると思いますが,実際には,このようにその事故から想定される相当な治療期間をもとに賠償の範囲が決まってきます。

ただ,事故状況や車の損傷の程度は変わらないにしても,症状が重い場合にはその原因となる客観的な所見がないか,それを改善するために治療方針や処方薬を変えるなど対症療法とならずに治療がなされているか,症状が改善傾向にあるのかそれとも一定なのか,といった総合考慮で打切り時期が変わってくることはあります。

ご相談に来られる方の中には,明らかに不当に早い打切りと思われるケースもありますので,そういった場合には,すぐに交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

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進路変更禁止と追い越し禁止

交通事故の相談を受けていてよく聞かれる誤解で,交差点の手前30メートル以内では車線変更をしてはいけない,というのがあります。

そもそも一般的には,よく車線変更という言葉を使いますが,道路交通法上は車線変更という言葉も存在していません。

道路交通法上は,進路変更という言葉で,「車両は,みだりにその進路を変更してはならない(26条の2第1項)」,「車両は,進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは,進路を変更してはならない(同条第2項)」,「車両は,車両通行帯を通行している場合において,その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によって区画されているときは,次に掲げる場合を除き,その道路標示を超えて進路を変更してはならない(同条第3項)」,次に掲げる場合として緊急車両を優先させる場合,道路の損壊,工事その他の障害により通行できない場合を挙げています。

他方,追い越しについては,追い越し禁止場所として,道交法30条に,道路のまがりかど附近,上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂,トンネルのほか,交差点・踏切・横断歩道又は自転車横断とこれらの手前の側端から前に30メートル以内の部分が列挙されています。

このように,厳密には,進路変更,追い越しという違いがあるほか,交差点手前30メートル以内で進路変更してはいけないというルールはないということになります。

ただ,当然のことながら必要のない進路変更はもちろんのこと,後方の車両を意識しない急な進路変更や,交通事故発生リスクの高い場所での進路変更はしないに越したことはありません。

被害者参加制度

被害者参加制度とは,被害者やご遺族の方が事件の当事者として刑事事件に直接関与し,意見陳述や質問等ができる制度です。

刑事事件は,捜査・訴追する国家権力側と,被告人という当事者構造で成り立ってきましたが,この制度ができたことによって,被害者やご遺族の方も当事者として刑事事件に関わることができるようになりました。

利用できる事件としては,故意の犯罪行為による殺傷事件,強制性交や強制わいせつ,逮捕監禁,過失運転致死傷などがあり,交通事故であっても被害者が亡くなったり重度の傷害を負った場合にも,この制度を利用することが可能です。

この制度を利用することによって,傍聴人としてではなく,当事者として法廷に着席し,検察官の訴訟活動に関して意見を述べたり,検察官に説明を求めたりすることができるほか,証人が情状について証言したときにその証明力を争うための尋問をすることができます。

ほかにも,意見を述べるために必要な場合,被告人に対して質問することもできますし,起訴された事実の範囲内で,事実または法律の適用について意見を述べることもできます。

たとえば,交通事故の場合,加害者の家族が情状証人となり,今後の監督などについて証言することがありますが,この証言の証明力を争うための質問ができるほか,加害者本人にも反省の有無などを聞くこともできるということです。

また,最終的な意見陳述において,処罰意思についてもきちんと伝えることができます。

加害者と会いたくないという被害者やご遺族の方も多いですが,刑事裁判において意見を伝えることができる重要な場ですので,ぜひ積極的に利用していただければと思います。