加害者の任意保険会社に治療費を支払ってもらえないこともある

交通事故被害に遭った場合,加害者の加入している任意保険会社が,

直接被害者の通院等にかかる治療費を医療機関に支払ってくれることがあります。

これを一括払いということがありますが,治療費をまとめて払ってくれるから,というわけではありません。

本来の保険の立て付けからすると,被害者が,

加害者の加入している自賠責保険に対して治療費や慰謝料等の請求を行い(これを被害者請求といいます),

その後,自賠責保険では補填できなかった損害を任意保険会社に対して請求する,という二階建ての請求になります。

この自賠責に対する請求と,任意保険会社に対する請求とを,

任意保険会社がまとめて行うことが通例となっていて,このことを一括払い,一括対応,などと呼んでいます。

 

しかし,自分が被害者だからといって,100%加害者の任意保険会社が治療費を支払ってくれるというわけではありません。

任意保険会社として対応しないと言われてしまうこともあり,そういう場合には,

①被害者側も過失割合が小さくないケースや,②車の破損状況などから受傷まではしないのではないかと思われるケース,

③初診までの期間が空いてしまったり事故状況との整合性がなかったり等,何らかの理由で事故と怪我の因果関係が怪しいケースなどが多いです。

いずれの場合でも,自分の保険で人身傷害補償保険に入っていれば,

多くの場合,治療費支払のほか慰謝料等を補填してもらうことも可能ですから,まずは,自分の保険の利用を検討します。

②③の場合には,もちろん自分の保険会社も独自に判断をすることになりますが,

相手方の保険会社よりはまだ緩やかな判断になることが多いように思います。

他にも,定額であったり損害補填という意味合いは少ないですが,搭乗者傷害保険なども利用することで自己負担額が減ります。

もしこうした保険がなければ,相手方の自賠責保険に対して被害者請求を行うことを検討しますが,

①の場合には,過失割合次第で自賠責保険の上限額が減額されることに注意が必要ですし,

②③の場合には,そもそも怪我と治療の因果関係に問題があるケースのため,自賠責保険でも補償されない可能性を含んでおく必要があります。

実際にこうしたケースの判断は微妙な場合が多いので,交通事故の経験豊富な弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

他にも,賠償としては対応はするものの,治療費に関しては労災や健康保険を使ってほしいと言われるケース,

医療機関側の問題で一括対応をしていないので一旦立て替えてほしいと言われるケースなどもあります。

これらの場合には,一括対応をされていないというだけで最終的な賠償の際に問題となることはまずありませんが,

初動でどのように対応すべきか迷った場合にも,交通事故に詳しい弁護士に相談しておいた方が,賠償の際にも安心です。