交通事故における過失認定⑵

今回は前回に引き続いて交通事故の過失に関するお話です。

過失相殺の問題は、民法722条の2項からスタートします。

条文は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」となっていまして、要するに「裁判官は被害者の過失を織り込んだ損害額の認定を行うことができますよ」という内容です。

過失、というと、「落ち度」であったり、「不注意」であったりという日本語的なイメージかと思いますが、法解釈上も722条2項の過失はそう考えられているのが通常のようです(他の条文では異なる解釈になる場合がある、というのが法律学の厄介なところですが今は置いておきます。)。

道路標識にしたがって優先道路を車で走行中、小さなわき道から飛び出して進行していた車と交差点で衝突した場合、優先道路側1:相手方9というのが前回でも説明した抽象的な事故態様に応じた基本過失とされています。

 実務では基本的に5%刻みで過失割合が決まっています。弁護士になってから何百件とかかわってきたわけですが、中途半端な数字でまとまった経験は今のところありません。上記事案だと、15:85になったり、5:95になったりするわけです。

 そのため、「私の過失は53%です」ということはほとんどないと思ってよいかと思います。そんなに自信を持って主張できる割合でもないですけれども。