ウェブ期日

新型コロナウイルスの影響で「リモートワーク」という単語が随分浸透したのではないかと思います。

 お仕事次第で影響は様々かと思いますが、リモートワークを導入した方がうまくいっている、というところもあるかもしれません。

 ウイルスの蔓延それ自体は社会的大問題ではありますが、ワクチン開発等々、人類の適応力というか、対応力というのはすごいなと感じます。

 

さて、もともとは新型コロナウイルスとは関係なく、民事訴訟のIT化というのは順次進んでいまして、その1つとして、ウェブ期日の導入というものがあります。

 いつかのブログで書いていたかもしれませんが、民事訴訟の期日は双方弁護士が出廷して提出書類を確認、次回期日の調整等で、場合によっては数分で終わってしまうこともあります。これをリモートで行うことができることによる手続きの簡易化、迅速化の効果は大きいです。

 現状は基本となる裁判期日の準備手続きとしての位置づけであることによる若干の制約等があったり、直接対面でないため裁判官、相手の反応などをとらえにくかったりという側面はありますが、制度しては有効に機能しているのではないかなと。

 特に新型コロナウイルス蔓延以降、結果的には裁判手続きにおいてかなり重要な役割を果たしていたようにも思います。

 なんでもIT化が正解、とは思いませんが、上手に利用していけるとよいですね。

尋問

「異議あり!」。

ドラマ等法廷でのワンシーンで見たことがある方もいるかもしれません。

人差し指を勢いよく突き出しているゲームのパッケージも目に浮かびます。

証人尋問は、裁判のイメージとしてかなり象徴的なものかもしれませんね。

ただ、実際のところ、特に民事裁判ではあまり見かけないことの方が多いかと思います。

紛争が生じたとしても、そこから話し合いでの解決ができずに訴訟(裁判)に発展する事案自体割合としてかなり少ないといえますが、さらに裁判手続が進む中で、比較的多くの案件が裁判上の和解等で終結するため、尋問手続きを行う事案の割合もかなり少ないといえます。

そのため、尋問を期待して民事の裁判傍聴に行く場合には期待を裏切られてしまうかもしれません。

また、実際に民事の証人尋問を傍聴する機会があったとしても、異議を出す場面は比較的限られていると思われます。

明らかに尋問のやり方に問題があるケースもあり、その場合には積極的に異議を出して正していく必要もあります。

他方で、裁判官に対してこちらに有利な印象が残るよう、不適切な尋問をあえて続けさせることもあります。

逆に、戦略的に積極的に異議を出して尋問をリズムを崩すようなこともないわけではありません。

数としては多くありませんが、実際に尋問が飛び交う場面に出くわすことがあったら、そのあたりの弁護士の駆け引きを傍聴することができるかもしれませんね。

なお、異議は、担当裁判官に対して意見をし、相手方に是正を求めるものですので、大声で相手を指さして「異議アリッ!!」とやるのはかえって裁判官からの印象が悪くなるかなと考えており、私個人としてはやることには躊躇を覚えます。

裁判の期間

裁判をしたらどれくらい時間がかかるのか、という疑問を持つ方もいるかと思います。

このあたりの見通しがあまりよくわからないため、裁判に進むことを躊躇される方もいるのではないでしょうか?

当事者間による話し合いの結果、交渉が決裂したために裁判に進む、というプロセスをたどることが多いので、話し合いでの解決よりは時間がかかるのはある種当然かな、というところになります。

では、具体的にどの程度の期間を要するかといえば、「事案による」としか言えないのですが、、ある程度事案ごとの傾向はあるといえます。

例えば、過払金請求訴訟の場合、事実関係についての争いはあまりなく、取引の経過等に対する評価が争われることが多いです。

そのため、他の案件と比較すると数回程度の期日で和解等による解決に至る場合が多いといえます。

期日はおおむね1か月程度ごとに1回入りますので、半年以内には解決のめどが立つ事案が多いかなと思います。

一方、相続等の争いになると、そもそもの事実関係から争われる場合があったり、複数の相続人との間で争いが生じる等、争いが複雑化する傾向にあるといえますので、数年単位となることも少なくありません。

それでも相続関係の調停等がそれなりにあるのは、比較的大きな金額の争いとなる場合が多いことや、法律ではない、感情的な側面も関わってくる傾向が強いところがあるからかと思います。

弁護士は通常裁判所に行く機会が多いのであまり気になりませんが、裁判所に出頭すること自体に抵抗を持たれる方もいるかもしれません。

事案によってはほとんど当事者が出頭せずに案件が終結する場合も多いです。

このあたりは分野によっても変わってきますので、裁判をされる前にご確認いただくとよいかと思います。

裁判傍聴

裁判傍聴をしたことはあるでしょうか?

裁判期日は、公開の法廷で行うとされています。

憲法82条1項に「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と明記されています。

裁判所での手続きが公平・適正に行われていることを国民にも確認できるように、というのがその趣旨だったりします。

とはいえ、例えば民事裁判における裁判期日の大半は、極めて短時間で終わってしまっているのが実情です。

というのも、双方の主張は書面で整理され、期日当日はその確認程度で終わってしまうためです。

もちろん、尋問手続等もありますが、多くの裁判では、尋問までに進む前に和解成立等によって終結しています。

テレビドラマ等でイメージするような尋問の場面は、刑事事件の方が多いかなと思いますので、もし膨張されるのであれば、まずは刑事事件からの方がよいかもしれません。

刑事事件では、たいていの場合被告人質問を行います。

さらに、事件の内容によっては、目撃者や被害者等の尋問が行われることもありますので、ドラマのイメージに近いものを傍聴できるかなと思います。

なお、たまにドラマ内でヒートアップした弁護士等の登場人物が証言台に立っている人の近くまで行って怒鳴りつけるような描写がありますが、威嚇的な尋問は認められていませんから、実務でそういった場面に遭遇する可能性は少ないと思います。

強制執行

皆様は「強制執行」という言葉を聞いてどのような印象を持たれるでしょうか。

個人的にはそれなりに物騒な印象を受けます。

実際には適法な法的手続なわけですが。。

「強制」といっても,民事執行法に基づく手続きです。

 

弁護士の仕事というと,法廷で裁判,というイメージが強いかもしれません。

そして,状況により最終的に判決まで進みますが,何となく「判決まで出れば紛争が終結する」とイメージされる方のほうが多いようにも思います。

しかし,実際には,裁判所から判決が出ても,相手方がこの判決に従わない場合もあります。その場合には,強制的に金銭等支払わせること,立ち退きをさせること等が必要となってきます。そのような場合に行われるのが強制執行です。

 

例えば,金銭賠償等の強制執行については,通常「差押え」をすることが多いと思います。

差押えの対象は,不動産であったり,給与口座であったり,給料の差押えといったものもあります。

 

交通事故等であれば,多くの案件は加害者が任意保険に加入しているため,あまり強制執行に至ることは多くありませんが,任意保険の加入をしておらず,かつ加害者側に支払いを拒否される場合もあります。そうなると被害者の方が泣き寝入りせず,被った損害の賠償を受けるため,差押えまで行って賠償を求める場合があります。

 

探偵

真実はいつも1つ!と言い切れるほど単純ではないのが現実です。

また,裁判官も神様ではありませんので,過去のある時点に起こった出来事を認定するにあたり,どんなに慎重に判断をしても,真実と異なる判断となってしまうことはあり得ます。冤罪事件などはその典型でしょう。

 

有利にも不利にも働くものですので,必ずしも「証拠がすべて」,というわけではありませんが,やはり紛争に関し,証拠が重要とされることは否定できません。

特に目撃証言等の「人的証拠」よりも,契約書や写真,動画等の「物的証拠」が重視されるといえます。

しかし,弁護士,あるいは事務だけでも調査に限界はあるわけです。そこで,ときに専門家である探偵さんに調査依頼を行うことがあります。

よくあるところとしては,不倫調査等が挙げられるかなと思います。

もちろん,相手方から探偵による調査結果が証拠として提出されることもあります。

 

証拠写真等は,実際にどの程度遠いところからから撮影しているのかわかりませんが,けっこう鮮明に映っているなあと思います。

具体的な調査方法の詳細まではわからないところがありますが(企業秘密という部分もあるでしょう),その1枚の写真のために何時間も張り込みをしたりすること等を想像すると,なかなか大変だろうなと思います。

 

おっちゃんを麻酔銃で眠らせ,変声器を使って華麗に凶悪殺人事件の犯人を追い詰める,というのが探偵稼業のすべてではないようです。「事実は小説よりも奇なり」等といいますが,どんなお仕事も,現実は思っているより地味なものなのかもしれません。

日本語意識

日本語に対する意識,こだわりは,仕事柄強い方かもしれません。

遡れば司法試験受験中からになると思いますが,主語述語の対応関係,「てにをは」,細かいところを言えば,どこに句読点を打つかといったところも気になります。

 

裁判所に対して,原告側も被告側も,「準備書面」という形式で書面を提出し,主張反論を行っていきます。

裁判は,突き詰めると第三者の立場である裁判官に対して争いある問題について判断してもらう手続,ということになります。そうなると,手続きの性質上,裁判官にこちらの言い分をわかってもらう,ということが肝心になってきます。

わかりやすい文章であれば,案件を多く抱えて忙しくしている裁判官でも,短時間ですんなり言い分を理解してもらえると思います。そのため,わかりやすい文章になるよう常に心掛けているところではあります。

 

もっとも,法律用語は,弁護士,裁判官(刑事事件の場合には検察官もですね)の間での共通言語であるため,いちいち法律用語をかみ砕いて書面化するわけではありません。そのため,「法曹(裁判官,検察官,弁護士のことです)の間でわかりやすい文章」というのは,前提知識がない方から見ると逆に何を言っているのかわからない文章かもしれません。

 

この点は,前提知識のない相談者の方に対するご相談の言葉選びとはまた違った配慮が求められます。日本語TPOとでも呼んだらよいでしょうか?

 

文章力の向上にゴールはないので日々精進するしかないですね。昔の自分よりは向上していると信じたいところですが,,

調停のお話~続き~

さて,先月に引き続いて調停のお話を。

 

調停の特徴として,「調停委員」の存在を挙げられると思います。

調停委員は,40歳以上70歳未満の方で,①弁護士,②民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する人③社会生活の上で豊富な知識経験を有する人が選ばれます。

そのため,調停委員は必ずしも弁護士に限られません。

調停委員は,調停手続において,双方当事者の意見を聞いたうえで,話し合い・和解のあっせんを行います。

通常は,裁判官よりも,調停委員と話を進めていくことが多いといえるでしょう。

調停委員の方とは円滑に話を進めていきたいところです。

 

さて,ここで,「どうせ裁判所を使って手続するなら普通の裁判でいいんじゃないの?」という疑問が出る方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん,そういう考え方もあります。

ただ,前回にもお話したとおり,双方の話合いでの決着となるという点にはメリットもあります。

かなり極端な事例をイメージしていただきますが,判決になったら0円になる確率が50%,100万円になる可能性が50%,話し合いの解決を前提に50万円でどうでしょう?という提案を受けた場合,皆さんは提案を受け入れますか?

価値観はそれぞれですので,判決を選ぶ方もいらっしゃるかと思いますが,調停による話し合いも悪くない結果ではないか,と考える方もいるのではないでしょうか。

選択,戦略の幅は多いに越したことはありません。

 

通常,裁判手続よりも期間が短いことが多いのも調停のメリットです。

調停のお話

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

令和最初の年越しですね。

ということで,今回は調停のお話です。

年越しにまったくちなんだお話になりませんがあらかじめご了承ください。

 

調停,というのは,簡単に言うと,裁判所を利用した話し合いの手続きとなります。

当事者同士で話し合いをしていてもらちがあかない,というときに,間に公平な立場の第三者を入れれば話し合いがまとまることがある,というのはイメージしやすいと思います。

その第三者の立場を裁判所が担う,というわけですね。

弁護士業務においては,お金の問題等と言った事案よりも,離婚や相続など,「家事事件」と呼ばれる分野で利用する機会が多い手続きと言えるかなと思います。

 

判決は,「一刀両断的判断」等と言われることがあります。

それは裁判官の責任ある判断で,重要なお仕事ということになるかと思いますが,適法な手続きを踏んでいるとはいえ,第三者によって「借りている部屋から出ていけ」であるとか,「○○円を払え」等と決められてしまうわけです。

家族の問題,親族の問題等は,そういう判断に必ずしもなじまない側面があります。

場合によっては最後まで話し合いがまとまらず,判決による判断に委ねざるを得ないことがありますが,できれば双方ある程度の譲歩,納得の上で合意できた方がいいことも少なくないように思います。

裁判の大まかな流れについて

弁護士業務といえば裁判をイメージされる方は少なくないと思います。実際,ご依頼の案件の中には,裁判に移行する事案もあります。

今回は,裁判がどのように進んでいくのかなどについて書いていきたいと思います。

地位を確認する裁判などもあるため,今回は,相手方に対してお金を請求する裁判を起こすケースを念頭に置きます。

 

裁判への移行は,通常,「訴状」という書面の提出から始まります。訴状では,こちらの主張の述べ,あわせて主張を根拠づける資料として証拠を提出します。

訴状に不備がなければ,裁判が行われる期日が決められ,裁判所を通じて相手方に訴状が送付されます。

訴状に対して,相手方は,「答弁書」という,こちらの主張に対する最初の反論書面を提出します。

それ以降は,準備書面(第1準備書面,準備書面⑵などと題名をつけることが一般的です。)で,双方の主張反論,証拠提出が行われます。相手方から出された証拠や主張を精査し,反論書面を作成することになるので,だいたい1か月くらいずつ期日が設定されます。

双方の主張反論が複数回行われると,ある程度争点に対する主張,証拠が出そってきます。そうすると,裁判所の方から和解案の提案がされることが多いです。和解案について双方が応じれば終了,いずれか一方でも応じられないという回答を出せば,基本的には判決まで進みます。判決前には一度双方当事者や関係者に対する「証人尋問」を行うことが多いです。テレビドラマなどでは取り上げられがちなシーンですね。

 

裁判というと,判決を下すところまで争うイメージが強いと思いますが,実は大多数が判決前の和解で終結しています。和解案というのが,ある程度判決を見越した裁判官の提案でもあるためです。案件にもよりますが,裁判をした場合の期間の目安は訴状を提出してから半年~1年くらいでしょうか。

 

裁判を検討されている方のご参考になれば。