立証責任

立証責任。裁判におけるルールの1つとなります。

証明責任、挙証責任等とも呼ばれます。

法律には所定の要件が定められており、要件を満たしているとその効果が発生する、という構造になっているものが多いです。

やや物騒ですがわかりやすいのは刑法199条で、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と規定されています。

「人を殺した者は、」というのが要件、「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」というのが効果ですので、条文だけみると非常にシンプルですね。

要件を満たしているかどうかを根拠づけるのが各種証拠で、刑事事件であれば検察側が立証責任を負っており、証拠をそろえ、「人を殺した者は」という要件を満たしているという主張を行うわけです。

これに対して被告人側で反論する弁護士は、要件を満たしていないことを証明するのか、といえばそうではなく、要件を満たしている「と裁判所が判断するには疑いが残る」ところまで持っていくことになります。

裁判所は要するに「白黒つける場」ですので、裁判官は最終的に白か黒かの判断を下さなければなりません。

双方の主張立証を尽くしたところで灰色にしかならないので判断しません、というわけにはいかないのが裁判官の立場として難しいところだなと思います。立証責任こういった場面で機能するもので、「黒と言い切れなければ白と判断するルール」と言い換えることができるかもしれません。

上記の例でいうと、「真っ黒だ!」と証明しなければならない立場にあるのが検察側、「黒とまでは言い切れない!」反論し、裁判官に疑いを持たせるのが弁護側ということになります。

ルールだけでみれば、黒とは限らないというだけだから弁護側有利、ということになりますが、昔ドラマのタイトルにもなっていたように、刑事事件では起訴された事件の9割以上が有罪となっているところですから、実務はそう単純でないということなのかなと思います。

同時廃止

同時廃止というのは、手続が開始と同時に廃止されますという、自己破産手続における用語の1つです。

破産法216条1項には「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」という規定があります。

条文を見ると急に難しい話のように感じられますが、誤解を恐れずごく簡単に言い換えると、「裁判所が申立人にめぼしい財産がないと判断したときは、自己破産の開始と終了の決定を同時に出さないといけませんよ」ということになってきます。

自己破産の手続きは、申立人の手持ち財産を調査し、現金化して債権者に分配するという側面も持っています。

調査等を行うのは、裁判所が選任する「破産管財人」となります。

破産管財人は通常弁護士が選任されますが、選任された弁護士も、無償で仕事はできません。

自己破産手続は、裁判所ごとに微妙に実務の運用が異なっていたりしますが、おおむね最低20万円の管財費用はかかるとされているかなと思います。

そして、20万円の管財費用も捻出できない状況であるならば、お金をかけて管財人を選任したところで債権者に分配できるものはないのだから、手続を廃止してしまおう、というのは理にかなっているとも思います。

さて、そうだとすると、めぼしい財産がなければ誰でも同時廃止になるかといえば、実務上はそう単純でもありません。

というのも、自己破産はいわば合法的に借金を踏み倒す手続きであり、裁判所としても、安易に債務の支払義務の免除をする決定を出してしまうと、債権者を害する結果を招きかねません。

通常は、申立て時の資料等から、免責の決定を出しても問題ないと判断できるかどうかも重要な要素となっています。

売り上げや経費の関係等がはっきりしないことが多い個人事業主の自己破産の場合、原則として同時廃止にしない運用をしている裁判所も多いですが、背景には、上記のような実務上の観点がかかわっていたりします。

誠実義務、真実義務

倫理というのは簡単そうで難しいですね。

「弁護士倫理を遵守する」といっても、倫理という言葉は条文の規定以上に抽象的です。

日本弁護士連合会で「弁護士職務基本規程」というものが定められ、弁護士倫理の一応の目安となって運用されています。

ルールが定められているから何も問題ないじゃないかといえば、そう簡単でもない問題があります。

刑事弁護人として、接見をした際、被疑者(被告人)から「先生だから話すけど」ということで、有罪認定の有力な証言を聞くことになった、「でも物的証拠はないだろうから無罪という主張を続けたい」という意向を示している、といった場合等が典型事例として問題提起されます。

弁護士は守秘義務を負っており、情報を安易に口外してよいわけではありません。守秘義務を負っているからこそ話していただいている、という側面も当然あるはずで、「先生だから話すけど」と言って話してもらった内容を外に出してしまうことは重大な裏切りとなってしまいます。

他方で、弁護士職務基本規程には、真実義務であるとか、誠実義務といった義務があるともされています。つまり、真実有罪だというのならその事実を追求するべきではないのか、という方向からの問題です。

この典型事例では、弁護士はどうすべきか。

有罪の証言を聞いたから罪を認めます、とすることは、無罪を望む被疑者(被告人)との関係で誠実に弁護活動しているとはいえず、誠実義務や守秘義務に反することになるでしょう。

他方、証言により有罪であろうことがわかっているのに無罪を主張することは真実義務に反してしまうのではないか、ということになります。

色々な視点から様々な考え方ができると思います。「真犯人のくせに罪を認めないのはけしからん」とか、「証明するのは検察側だし、被告人には黙秘権はあるわけだから」とか。

息子と娘、どちらかしか助けられない、どうするか、というほどには究極の選択ではないかもしれませんが、正解は出せないけれど選択を迫られる場面ではあるはずで、やはり難しいと感じます。

「沈黙が正しい答え」とは言い切れない問題だなと思います。

後遺障害認定手続と弁護士法人心

交通事故で負傷後、治療を続けたものの後遺症が残存した場合、後遺障害認定の手続きを行う流れになるのが一般的です。

交通事故における後遺障害の等級認定は、損害保険料率算出機構、下部組織の自賠責調査事務所という組織が担っており、認定された結果を踏まえてその後の交渉等が進みます。

後遺障害認定の調査にあたっては、治療中に撮影した画像資料等を病院から取り寄せる必要等もあるため、ある程度期間を要します。

後遺障害の内容、程度などにもよりますが、おおむね2~3か月程度で結果が出る場合が多いかなと思います。高次脳機能障害の場合には、複数等級の可能性があることや、審査それ自体の難易度が高いこと等から、結果が出るまで半年かかるようなこともありました。

後遺障害の認定結果に対しては、不服を申し立て、再度の審査を求めることが可能です。

一度出た決定をひっくり返すことになるため、やや難易度はあがりますが、不服申し立ての結果、一度は後遺障害ではないと判断されたものに対して後遺障害の等級認定を獲得できる場合や、既に認められた等級より上位の等級が認められる場合等もあります。

そもそもの等級認定の妥当性の判断や、異議申立て等になってくると、かなり専門性を要求されてくるかなと思います。このあたりについて、損害保険料率算出機構の元職員等の後遺障害認定の専門スタッフがいることは弁護士法人心としての強みかなあと実感しています。

自由財産

自分の財産を自由に使えるのは当然のことじゃないか、というところですが、何事にも例外はあります。

自由財産というのは自己破産にかかわる用語となってきます。

自己破産といえば、「借金がなくなる手続」と捉えられていることが多い印象ですが、自己破産手続には「財産を債権者に分配する手続」という側面もあります。

財産の分配は、「破産管財人」という弁護士が裁判所から選任されて行うことになり、これに関連して、申立人(破産者)の財産の管理処分権は一時的に破産管財人の手に委ねられます。

この権限があることにより、例えば本来自由に売買できるはずである申立人名義の不動産を売却し、現金化して、債権者に分配することができるわけです。他方、破産者は、自分の財産だった不動産が売られてしまうのを止めることができないことになります。

破産者の財産のうち、破産者本人の手元に残る財産等を自由財産と呼びます。

具体例としては、新得財産と呼ばれる、自己破産手続開始決定後の財産です。

日本の破産法は「固定主義」というルールを採用しており、自己破産手続開始決定後の給与等は手続きの対象外となっていますので、問題なく受け取ることができます。

また、開始決定前の時点に有していた財産についても、一定の範囲では自由財産と認められることも少なくありません。

裁判所ごとに運用には若干の違いがありますが、おおむね99万円程度までの範囲であれば、申立ての経緯等にもよりますが、認めてもらえる場合が多いといえ、99万円を超えると、特別の事情がないと自由財産と認められない場合が多いというのが一般的な傾向と言ってよいかなと思います。

証拠と論破

主人公に追い詰められた犯人が「俺が犯人だという証拠がどこにある!」というのは、よくある最後の悪あがきかなと思います。

そして証拠を突き付けられてくずおれる犯人、というのはクライマックスの重要なシーンでしょうが、犯人側の立場に立てば、なかなか非情なとどめの一撃でしょう。

決定的な証拠がある、というのは心強いものですね。

弁護士実務においては、結局争点となるのはそういった決定的な証拠がないところとなることが多いかなと思います。

例えば交通事故で幸い骨折がなかった事故でお怪我をされた場合、大事に至らなかった、という観点からはよいのですが、治療の場面で揉めることになったりします。

残っているのは「痛み」だけ、でも外からは何もわからない、つまり痛みを証明する決定的な証拠がない状態ですね。

仮に証拠がある場合でも、その評価で争いになる場合もあります。

同じく交通事故だとイメージしやすいですが、ドライブレコーダーが残っており衝突の瞬間はばっちり残っていたような場合が挙げられます。

ドライブレコーダーがあるなら結論は見えているんじゃないか、といえば、実際は画面に映る事実をどう法的に評価するか、という争いに進みます。証拠がない場合に比べれば、素材はあるので主張すべきことの方向性は見えやすくはなりますが。

 当事者としては鮮明な記憶があるのに、証拠に基づかない主張はいわば「それってあなたの感想ですよね」となってしまうのはなかなか辛いところです。また、証拠があるから「はい論破」ともならないところで、事件の見通しを立てるのは難しいですね。

司法試験の受験中には、憲法、刑事訴訟法等、各分野の専門書籍を多数読んで勉強していたわけですが、書籍内では様々な仮定事案を設定して説明がされており、理解を深められたように思います。

簡単な事例や極端な事例等、わかりやすい複数の事例の比較をすることで法解釈を進めていくにあたっての問題点が浮かび上がってくることがあります。

例えば、当事者Xが人を殺すつもりでターゲットAが寝ているはずのベッドに向けて銃弾を何発も打ち込んだが、実はターゲットAはたまたまその日そのベッドで寝ておらず、布団を被ったぬいぐるみBだけが破損した、というような事例です。

主観的にはAに対する殺人罪のつもりで行動していたが、客観的にはBという物品に対する器物損壊罪でした、という問題で、刑法の書籍だとわりとメジャーな論点だったりしますので、法学部の授業でも取り扱われていることも多いかなと思われます。

設定された事例だけを見れば、問題点はなるほどそういうものか、と思ってしまうんですが、弁護士になって実務に出た後だと無駄に、余計に考えすぎてしまうところもあります。

もともと殺すつもりだったということは証明できるのか、とか、「人だろうとぬいぐるみだろうと破壊するつもりでした」なんて供述調書をとられて器物損壊罪もしっかり罪に問われることもあるかな、とかあれこれ考えると収集がつかなくなってきます。

そのため、メインの問題だけが問題となるように整理された過程事案の設定は結構重要なんだな、と今更ながら思います。

想定外の事情が発生する場合として、雷に打たれて人が亡くなったり家が焼け落ちたりしたりというかたちで雷様が大活躍していましたが、一歩引いてみるとしょっちゅう雷落ちるなあと思います。。

ただ、たしかに予期せぬ自体、というものは起こることがあるわけで、あり得ないかもしれない事例まで想定しておく、ということが重要なのかもしれません。

雪道

雪道では安全運転を心がけましょう。

至極当たり前のお話かもしれませんが、通常の道路の場合よりもスリップ等による事故の発生があるためです。思いのほか大きな事故になってしまうこともあります。

雪がどの程度降るかはお住まいの地域によってだいぶ差があるかと思います。横浜含む関東圏ですと、年末年始にかけて雪が降ることはほとんどないかなという印象です。北関東の北部は積もることもあるかもしれませんが、、

日本でも、北海道等地域によっては10月頃から雪が降り始めるところもありますし、そういった地域では12月にはしっかり降り積もっています。

環境だけでみると、積雪のある地域の方だけ注意していればよいのかと考えがちですが、実情はやや違ってきます。というのも、積雪が当然の地域にお住まいの方は、雪に対する対策がしっかりできているのに対し、積雪の少ない地域にお住まいの方の場合、対策が十分でなく、さらに慣れない環境下に置かれることで事故を起こしてしまうということがあるからです。

以前年始に北海道に行った際には、一面真っ白で、歩道と車道の境目もわからないことに驚きましたが、スタッドレスタイヤ等、すれ違う車の対策は万全だったと思います。

弁護士としては、天気にかかわらず、日々安全運転を、と呼びかけるべきかもしれませんが、雪道での運転には十分ご注意ください。

よいお年を。

ウェブ期日

新型コロナウイルスの影響で「リモートワーク」という単語が随分浸透したのではないかと思います。

 お仕事次第で影響は様々かと思いますが、リモートワークを導入した方がうまくいっている、というところもあるかもしれません。

 ウイルスの蔓延それ自体は社会的大問題ではありますが、ワクチン開発等々、人類の適応力というか、対応力というのはすごいなと感じます。

 

さて、もともとは新型コロナウイルスとは関係なく、民事訴訟のIT化というのは順次進んでいまして、その1つとして、ウェブ期日の導入というものがあります。

 いつかのブログで書いていたかもしれませんが、民事訴訟の期日は双方弁護士が出廷して提出書類を確認、次回期日の調整等で、場合によっては数分で終わってしまうこともあります。これをリモートで行うことができることによる手続きの簡易化、迅速化の効果は大きいです。

 現状は基本となる裁判期日の準備手続きとしての位置づけであることによる若干の制約等があったり、直接対面でないため裁判官、相手の反応などをとらえにくかったりという側面はありますが、制度しては有効に機能しているのではないかなと。

 特に新型コロナウイルス蔓延以降、結果的には裁判手続きにおいてかなり重要な役割を果たしていたようにも思います。

 なんでもIT化が正解、とは思いませんが、上手に利用していけるとよいですね。

手帳

全国弁護士協同組合連合会というところで発行されている弁護士日誌というものがあります

仕事を始めてからのやり方が変わっていないため、今でもこちらの弁護士日誌を利用してスケジュール管理等を行っています。中身の縦線横線が使いやすいかどうか等は正直あまりよく分かっていません。薄い縦長の形状で、スーツの内ポケットにすんなり入ってくれる点は気に入っています。

中身はほとんど変わりませんが、毎年外側の色味や質感は変わっていたりします。

2019年はやや紫色よりの発色のよい青(色の和名ですと「紅掛空色」あたりが近いかもしれません。)にゴールドの文字で、けっこう挑戦的な色選びだなと感じた記憶があります。

2021年は深い緑色に銀の文字で、それ自体特筆すべきではないと思いますが、蛇をモチーフにした魔法学校のクラスカラーの印象しかなかったため個人的にはかなりのインパクトでした。

今年は桜色に銀の文字で、もらった直後はなかなかインパクトが強かったですが、ピンクといっても落ち着いた色であることもあり、だいぶ使い慣れてきたかなと思います。毎年11月頃を目安には来年を入手できる予定ではありますが、さて来年はどんな色になるでしょう。。

とはいえ、最近だとスマホやタブレット等を利用して、クラウド上でいつでもスケジュール確認できる、というような方の方がむしろ多数派になっていたりするんでしょうか?

官報

官報というものをご存知でしょうか?

官民等で使う場合の官とは国家機関という意味合いで、その報告というわけで、官報というのは、国家機関からの公報、ということになるわけですね。

国立印刷局のサイトによると、明治16年に創刊し、現在では行政機関の休日を除き内閣府が毎日発行しているものだそうです。

そもそも官報の存在自体知らない方も少なくないかもしれませんが。。

弁護士業務で比較的かかわりがあるところは、借金問題関係です。

自己破産や個人再生といった法的整理手続きを利用する際には、官報に申立ての事実等が掲載されることになります。

官報は、広く国民に公示する目的も持っているので、30日分は誰でも無料で閲覧できますので、自己破産した事実等が公開された状態になります。

そもそも官報の存在自体知らない、といえる側面があることから、日常生活が激変する、ということは少ない場合が多いかと思いますが、何かのきっかけで自己破産の事実が発覚するリスクを完全に払しょくすることは難しいといえます。

幸い、私が経験した限りで官報に載ったことで大きな問題となった、といったお話しをうかがったことはありませんが、手続を進めるにあたって皆様に必ずご説明するようにはしております。

後遺障害

交通事故の賠償等で、後遺障害にかかわる損害が問題となる場合があります。

何らかの症状が残れば追加で賠償金を受け取れる、といった単純なものではなく、基本的には後遺障害として等級認定された場合に、その等級に応じて賠償を受けることができるものとなっています。

裁判等で争った場合には、後遺障害認定機関の認定を上回る判断がされる場合や、逆に後遺障害と認定されているのに後遺障害と認めないと判断されることもあるので、実務上は認定を受けているから結論も決まっている、とは言い切れません。

さらにいえば、同じ等級に認定されても、同一の判断とならない、ということもあります。

例えば、腕や脚等を骨折して一定程度以上関節を十分に曲げられなくなると、12級の後遺障害と認められる場合があります。

通常、12級の後遺障害に該当するとされた場合、将来の収入について、14%程度影響が出るものと考えられています(逸失利益といいます)。

12級には、顔面醜状という、傷跡が残った場合の後遺障害等級も定められていますが、裁判等で逸失利益を争われることがあります。

建設現場での作業等をイメージしていただくと、確かに腕足を痛めていたら重いものを持てないだろうな、傷跡があっても作業に支障はないのかな、ということになるのかもしれません。

とはいえ、傷跡があることで顔を隠すようになりうまく職場でコミュニケーションが取れなくなる等といった可能性は払しょくできません。

また、例えばモデル等のお仕事であれば、傷跡による影響はダイレクトに出てくると思われます。

この辺りは、弁護士としては、個々の事情を踏まえてしっかり争っていく必要があるところとなります。

自己破産後の生活

自己破産をした後の生活がどのようなものになるかについて不安があり、自己破産に踏み切れない方もいるかもしれません。

実際のところは、あまり影響がない方が多いかなと思います。

まず、自己破産の事実は官報という国の公報で公告されます。とはいえ、官報情報を逐一見ている方はあまりいません。官報自体、知らない方も少なくないといえます。官報に載る以上、誰にも知られずに自己破産できる、と断言することはできませんが、周囲に大々的に知られてしまうことは少ないといえます。

次に、一定期間信用情報機関に登録される、という問題です。いわゆる「ブラックリストに載る」と言われているものと考えていただいてよいと思います。この状態ですと、通常新規の借り入れ等は審査が通らなくなりますので、登録がなくなるまでは住宅やお車のローンは組めないといえるでしょう。

また、クレジットカード利用もできないことが通常です。

ただ、自己破産直後に住宅ローンを組む方は多くないでしょうし、ローンが組めないだけですので、貯金して安い車を一括購入すること等は可能です。

クレジットカード利用の制限も、最近は「○○ペイ」等の電子決済の普及が進んでいますし、デビットカードであれば使用可能ですので、日常生活ではあまり大きな支障にはならないともいえます。

もちろん、自己破産を積極的に進めているというわけではありませんが、不必要におびえる必要まではないのではないでしょうか?

より細かいお話などは弁護士にご相談ください。

尋問

「異議あり!」。

ドラマ等法廷でのワンシーンで見たことがある方もいるかもしれません。

人差し指を勢いよく突き出しているゲームのパッケージも目に浮かびます。

証人尋問は、裁判のイメージとしてかなり象徴的なものかもしれませんね。

ただ、実際のところ、特に民事裁判ではあまり見かけないことの方が多いかと思います。

紛争が生じたとしても、そこから話し合いでの解決ができずに訴訟(裁判)に発展する事案自体割合としてかなり少ないといえますが、さらに裁判手続が進む中で、比較的多くの案件が裁判上の和解等で終結するため、尋問手続きを行う事案の割合もかなり少ないといえます。

そのため、尋問を期待して民事の裁判傍聴に行く場合には期待を裏切られてしまうかもしれません。

また、実際に民事の証人尋問を傍聴する機会があったとしても、異議を出す場面は比較的限られていると思われます。

明らかに尋問のやり方に問題があるケースもあり、その場合には積極的に異議を出して正していく必要もあります。

他方で、裁判官に対してこちらに有利な印象が残るよう、不適切な尋問をあえて続けさせることもあります。

逆に、戦略的に積極的に異議を出して尋問をリズムを崩すようなこともないわけではありません。

数としては多くありませんが、実際に尋問が飛び交う場面に出くわすことがあったら、そのあたりの弁護士の駆け引きを傍聴することができるかもしれませんね。

なお、異議は、担当裁判官に対して意見をし、相手方に是正を求めるものですので、大声で相手を指さして「異議アリッ!!」とやるのはかえって裁判官からの印象が悪くなるかなと考えており、私個人としてはやることには躊躇を覚えます。

結果の請け合い

未来は誰にもわからない、というと大げさな表現になってしまいますが、ある意味では真実かと思います。

そのため、ご相談の際に、「勝てますか?」と聞かれて「絶対勝てます!」と断言することはできません。これはどの弁護士でも同じはずです。

ご相談いただいた方には、もしかすると頼りないという印象に映ってしまう可能性がありますが、これには理由があります。

「弁護士職務基本規程」という、弁護士が守るべきルールが定められており、そのなかに、有利な結果の保証をしてはならない、というものがあります。

事件のすべての事実が証拠からはっきりと明らかになっている、ということはまずありません。そして、未確定の状況を前提に結論が断定されることは不可能といえます。

仮にすべての証拠がそろっていると仮定しても、揉めた事件は最終的に裁判になり、裁判での最終決着は判決です。

判決を出す裁判官という他人の行動を完璧にコントロールすることはできませんので、やはり結果のお約束はそもそもできないこととなります。

そうなると、過去の経験や裁判の傾向等からある程度の見通しを立てることはできますが、1件1件の事実関係は異なりますので、やはり予測の域は出ないということになってきます。

もちろん、見通しが厳しい事件で裁判を選択し、結果としてこちらに有利な解決となることもあります。

ただ、弁護士の目からみて、勝ち目のない事件と思っているのに「勝てますよ」といって契約に誘導し、報酬を受け取ってしまうような場合が想定される典型的な問題と思われます。

そのため、はっきり勝てると言えないことが頼りないのではなく、安易に勝てますと言ってしまうことに問題がある、とご理解いただければと思います。

法定利率

利息って何%かご存知でしょうか?

通常は、契約時に当事者間の合意によって定められるものとなります。

ですので、「契約次第」というのが1つの回答です。

じゃあ問題ないんではないか?とも考えられますが、当事者間の契約で利息について定めない場合もありますし、そもそも契約がない場合については当事者間で利息を定めようもありません。

弁護士実務上は、損害賠償、不当利得等、案外契約ではない場合のご相談もありますので、契約で定めていない場合の利息についても関わり合いは少なくありません。

さて、大学の法学部等で何年も前に民法の勉強をされた方の中には「年5%」と回答される方がいるかもしれません。さらに、商法を学んだ方は、「商事法定利率は年6%」と答えるかもしれません。

ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、民法については比較的大きな改正があり、2020年4月1日付で施行されておりまして、利息もその改正の1つとなっています。ですので、上記の回答は正しくない可能性があります。

まず、商法で規定されていた商事法定利率というものは今回の改正に伴い廃止されましたので、現在は商法が適用される取引か否かで法定利率についての違いはなくなりました。

他方、民法上の法定利率については、改正時に年3%に引き下げられ、その後については、3年を1期とし、1期ごとに変動することとなりました。

正しくない「可能性がある」というのは、変動の結果によっては5%や6%になる可能性があるのと、改正前の適用となる案件については改正前の利率で計算されることになるためです。ここまでくるとやや複雑な話になってくるかもしれませんが。。。

なお、先月、法定利率は変わらず3%となることが法務省より告示されております。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00317.html

経済的全損

自動車事故、特にお車、バイク等の物的損害について、争いとなることが多いのが経済的全損と呼ばれるケースに該当する場合です。

例えば、追突事故に遭って車が壊れた、修理費として60万円かかる、という見積もりだったとします。他方、事故車両は何年も乗ってきた車で、現在は30万円程度しか価値がなかった場合、賠償されるのはいくらか、という問題です。

この場合、例外的な事例を除き、基本的には時価額での賠償となる、つまり被害者の方は30万円程度しか賠償を受け取れない、というのが裁判実務となっています。

特に上記のような被害者無過失の事故ですと、なかなか被害者に酷な結論のようにも思われますが、不法行為法の考え方がその理由となっています。

交通事故も基本的に不法行為に基づく損害賠償請求となりますが、損害賠償は、「不法行為に遭う前の状態への回復」のために行われるものとされています。

「車を修理してもらうのが事故前の状態だ」という考え、お気持ちはごもっともです。が、事故に遭う時点で、被害者の方の手元には時価30万円の車があるわけですので、30万円分の賠償を行えば、その損害は補填されてしまうといえます。時価の評価が妥当であれば、事故車と同程度の車は30万円で購入できてしまいますので。

そうなると、「時価30万円の車は30万円では購入できない」という意見が出てくるかと思いますが、これは「買替諸費用」といって、別途賠償される可能性があります。

弁護士が介入する場合には通常確認するところですが、介入前ですと、買替諸費用については考慮されていない場合や、交渉段階では買替諸費用については認めてもらえない場合がありますのでご注意ください。

なお、時価額30万円程度、という前提で話を進めてきましたが、そもそも時価額の査定は妥当か、という点もよくご確認いただくとよいと思います。

裁判の期間

裁判をしたらどれくらい時間がかかるのか、という疑問を持つ方もいるかと思います。

このあたりの見通しがあまりよくわからないため、裁判に進むことを躊躇される方もいるのではないでしょうか?

当事者間による話し合いの結果、交渉が決裂したために裁判に進む、というプロセスをたどることが多いので、話し合いでの解決よりは時間がかかるのはある種当然かな、というところになります。

では、具体的にどの程度の期間を要するかといえば、「事案による」としか言えないのですが、、ある程度事案ごとの傾向はあるといえます。

例えば、過払金請求訴訟の場合、事実関係についての争いはあまりなく、取引の経過等に対する評価が争われることが多いです。

そのため、他の案件と比較すると数回程度の期日で和解等による解決に至る場合が多いといえます。

期日はおおむね1か月程度ごとに1回入りますので、半年以内には解決のめどが立つ事案が多いかなと思います。

一方、相続等の争いになると、そもそもの事実関係から争われる場合があったり、複数の相続人との間で争いが生じる等、争いが複雑化する傾向にあるといえますので、数年単位となることも少なくありません。

それでも相続関係の調停等がそれなりにあるのは、比較的大きな金額の争いとなる場合が多いことや、法律ではない、感情的な側面も関わってくる傾向が強いところがあるからかと思います。

弁護士は通常裁判所に行く機会が多いのであまり気になりませんが、裁判所に出頭すること自体に抵抗を持たれる方もいるかもしれません。

事案によってはほとんど当事者が出頭せずに案件が終結する場合も多いです。

このあたりは分野によっても変わってきますので、裁判をされる前にご確認いただくとよいかと思います。

解決手続きあれこれ

交通事故についての解決手段は様々です。

実務上は、話し合いによる解決となっていることが割合としては多数になると思います。

話し合いによっての解決が難しい場合にはどのような手段があるでしょうか?

まずは裁判が浮かぶ方も多いと思います。

法廷で裁判所を間に向かい合って主張を展開する、いわゆる裁判のことですね。たいていの場合、双方ともに弁護士を依頼して行われているかと思いますが、本人訴訟といって、ご本人による裁判もあります。

同様に裁判所を利用した手続きとして「調停」というものもあります。

調停というのは、概要としては、裁判官を間に立って行われる話し合いの手続きです。「話し合いをして解決しなかったのに調停で解決できるのか」、という疑問もおありかと思いますが、必ずしも合意が成立しないわけではありません。

裁判所の方で和解内容の提案等を受けるため、ある程度双方の納得のいく解決が期待できるかなと思います。

もう少し柔軟な方法として、裁判外紛争解決手続きというものがあります。「ADR」等と呼称されることもありますが、この手続きは、主に弁護士等が双方の間に立って示談あっせん等を行う手続きです。

紛争処理センター、紛争解決センター等があります。

裁判手続きより相対的に早期解決が期待できます。

納得できなければ裁判に進むこともありますので、まずはADRで、ということもあります。

飲酒運転

飲酒運転はダメです、ということは皆さま言われなくともわかっていることかと思います。

悲惨な事故等が起きた経緯等から、刑事罰の厳罰化されたこと等についてご存知の方もいるかもしれません。

弁護士としては、刑事だけでなく民事でもかかわる可能性がありますが、民事の場面でも、飲酒の事実は過失割合等を決めるにあたり、当然不利な方向で影響を受けます。

さらに、慰謝料の増額といった不利益が生じることもあります。

そんな高額の支払いできないから自己破産するしかない、という状況になるかもしれませんが、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は、非免責債権といって、自己破産をしても支払義務がなくならないものとされています(破産法253条1項3号)。

意図的に飲酒運転をして暴走してやろう、ということはないかと思いますので、車両に関する損害等については支払義務が免除される可能性もないわけではありませんが、「人の生命又は身体を害する」ことにより生じた治療費、慰謝料等について、飲酒運転は「重大な過失」があると認定される可能性が高いため、支払義務がなくならない、という可能性が高いです。

時勢柄、大々的な忘年会等はないかもしれませんが、年の瀬はお酒を飲む機会が多くなる方もいるかと思います。

ただ、飲酒運転となると、「羽目を外す」といった言葉では済まされない事態となりますので、十分ご注意いただき、よいお年をお迎えください。