事実認定

 証拠があるのになぜ揉めるのか?

 弁護士実務においては日常茶飯事といっても過言ではないですが、一般的な感覚としてはむしろすんなり呑み込めないことの方が多いのかもしれません。

 事案、内容によるのですべてがそうだ、というわけではありませんが、争いとなる一例として、事実認定の問題が絡むことがあります。

 「証拠」という単語からはなんとなく決定的なものをイメージしてしまうかもしれませんが、紛争においては、どちらかといえば決定的でない証拠が多数提出されていることの方が多いです。決定的なものがあれば揉めない方向に傾くためですね。

 裁判で逆転無罪の判決が出てニュースになるようなことがあります。これも事案によるものではありますが、証拠の捉え方、評価の仕方が変わることで結論が変わっていることも多いです。

 例えば、海外旅行をして、現地で購入したお土産を持って帰国したところ、お土産の中に違法薬物が入っていた、というような事例があります。この場合、逮捕されるならば空港で現行犯逮捕となるでしょう。

 旅行中の情報はわからない部分が多いでしょうが、○○便に搭乗して帰国したこと、検査時点で逮捕された方のキャリーバッグに違法薬物があったこと等は証拠上あまり問題なく証明されていくと思います。

 「現地で購入したこと」について、これは突き詰めると簡単に証明できないと思われます。もらったものかもしれないし、現地で渡された「ブツ」を、中身をわかったうえでシラを切って運搬しようとしていたのかもしれません。

 その後追加でレシートが見つかり、対価を払って購入したもので、購入したお店まで特定できたとします。

 そのお店が、「観光旅行者が通常利用しないようなお店で、過去にもその店から違法薬物が運搬された記録がある」という事実を追加するとさらに判断が揺れることになるでしょう。

 「旅行者があまり行かないような店にわざわざ出向いていることから、違法薬物であるとの認識があったと推認される」という評価も考えられますし、「過去違法薬物摘発の事実があるお店であるからといって、本件被告人が購入した土産に違法薬物が秘匿されていたと認識していたとは認定できない」という判断だって別におかしくありません。

 事実認定の問題は思った以上に難しいです。

 刑事事件と向き合う際には、「刑事裁判の心」をもって取り組んでいけるとよいなと思っています。

因果関係

刑事事件や民事の不法行為事件などでは,特に因果関係が問題となることが少なくありません。

弁護士を目指すにあたって,司法試験では主に刑事事件科目で理解を深めていったように思います。

民事の不法行為分野では,実務上は「相当因果関係」という考え方がまだ今のところ主流かなと思います。「保護範囲論」という考え方も有力で,個人的にはしっくりくる部分もあります。あまり結論は大きく変わらない,という意見もあるようですが。

 

因果関係は,広く考えればどこまでも広がっていってしまいます。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話といいますか。。

そうなると刑事上,民事上の責任も際限なく広がってしまうわけですね。刑事責任にせよ,民事責任にせよ,「何でもかんでも全部加害者のせいだ」,ということにはならないというのはわかると思います。そのため,ある程度範囲が限定される必要が出てくるわけです。具体的にどこまで認められるのか,というのは事件の内容によって千差万別です。このあたりのところが攻防の中心となることも少なくありませんので,主張,立証は十分に行わなければなりません。

民事の分野ですと,被害者側の弁護士として活動することの方が多いため,個人的な感覚としては,「これは認められてもいいんじゃないか」と思うようなことも少なくありません。何とかあれこれ主張,立証を尽くすのですが,昔から裁判で認められていないようなものだったすると,なかなか認めてもらえないというのは心苦しい限りです。

被害を受けた側からすると納得ができない部分が出てくることもありますが,限界はある以上,難しいところです。