再度の自己破産

 自己破産を一度してしまったら二度とできないのかといえば、そういうわけではありません。とはいえまったく無条件というわけでもありません。

 有名なところだと、トランプ大統領は各複数回の破産申請をしているんだとか(日本国外なので法制度は当然異なるかと思います。)。

 日本の破産法でも、破産は一度しかできない、という規定はありませんが、免責許可決定が確定した日から7年間以内の破産申立ては免責不許可事由と定められています(破産法252条1項10号イ)。

 「免責不許可事由」というのは要するに自己破産が認められない条件のことで、例えばギャンブルによる借金であることや、財産隠し等が典型例です。この免責不許可事由の1つに7年以内の再度の破産申立てであることも規定されています。制度の趣旨は、簡単に言えば短期間に何度も破産することは認めませんよ、ということかと思います。

 とはいえ、実務的には、実際に7年以内に再度破産の申立てを行うというのはあまり多くはないのかなと思います。

 まず、自己破産をした場合、原則として一定期間多くの貸金業者が新たな借入れに応じてくれません。そうなると、親族や知人友人等からの借入れとなっていきますが、その場合そこまで債務が高額となるケースはやはり少なく、申立てに至らない可能性が高いです。

 仮に少なからず借金が増えていったとしても、原則として再度の破産は認められない見込みなわけですから、相談を受けた弁護士としては、任意整理や個人再生等他の方針での解決を案内する場合が多くなってきます。

 再度の自己破産をする場合に想定される事情としては、例えば自己破産後比較的短期のうちに病気等によって収入が得られなくなってしまい、何とか知人等からお金を借りて生活していたが、もはやその少額の返済ですら困難となってしまった、というようなやむにやまれぬ状況、という感じになってくるのかな、と思います。

 なお、7年以上後に破産申立てをすることはそれなりにありますが、一般的には破産の際、「今後はこのようなことにならないようにする」というかたちで裁判所から免責許可を得ている手前、免責の判断は厳しくなる傾向にあります。

iDeCoと自己破産

「貯蓄から投資へ」というスローガンのようなものが打ち出されて随分たったように感じます。

個人的にはNISA、iDeCo、新NISA制度あたりの印象が強かったのですが、調べてみると2001年くらいから提言されていたんだとか。

制度を利用されている方、利用されていない方いるかと思いますが、順調に財産を増やしていたのに、状況が変わって自己破産をしなければならなくなった場合等、積み上げた財産はどうなってしまうのか、というのが今回のお話です。

自己破産をしても、必ずしも身ぐるみ全部はがされる、というわけではありません。

例えば99万円以下の現金等は手元に残すことができる場合があります(事案内容にもよります)。

これを「自由財産」と呼びますが、自由財産と呼ばれれるもののなかに、「差押禁止財産」というものがあり、差押禁止財産は自己破産手続きをしても通常手元に残すことができるものとされています。

そして、iDeCoについては、確定拠出年金法により差押禁止財産とされていますので、自己破産をしても失われないということになります。

「iDeCoについては」、というとおり、NISAに関しては現状差押禁止等の規定はないため、自己破産手続においては債権者への配当等に充てられる対象になるのが通常です。

金額等により自由財産拡張が認められる可能性はありうるかと思いますが、こればかりは事案によって判断が分かれるところですので、弁護士とよくご相談されるとよいかなと思います。

投資は余剰資金で、等と言われるところですから、将来の自己破産に備えて無理をして目一杯iDeCoの積立をすればよいというわけではないかと思いますのでご注意ください。

財団組み入れと放棄

自己破産手続開始決定時点で破産を申立てた人の持っている財産は、「破産財団」を形成し、債権者へ分配することになります。

財産性のあるものをすべて含みますので、現金預貯金のほか、所有するお車等も分配することが基本です。

例えば解約返戻金が30万円戻ってくる生命保険も財産性がありますので、解約して現金化し債権者に分配するのが基本になります。

自己破産の手続きには自由財産の拡張というものがあり、手元に一部の財産を残せる場合がありますので、これが認められれば財産を残せることもあります。

このあたりは事案によりけり、ということになってきますが、上記の生命保険の例でいえば、「病気にかかってしまったことから、今生命保険を解約してしまうと新たに生命保険に加入することが難しい」といった事情等は、自由財産拡張が認められうる事情の典型例の1つとして挙げられます。

裁判所の運用等にもよりますが、そのような事情が認められない場合、生命保険契約を維持する必要性がないとして、自由財産の拡張が認められないこともあります。

そうなると解約するしかないのか、というところで出てくるのが財団組み入れと放棄です。

これは、生命保険の例でいえば、解約返戻金相当額を現金で財団に入れる代わりに、生命保険契約を財団から手放してもらう方法となります。

債権者との関係では、生命保険を解約した30万円か、申立人等が用意した30万円かは大きな意味はなく、債権者に不利益を与えてしまうことはありません。解約の手間や時間などを考えると、むしろすぐに現金を用意できれば手続きも早く終わるというメリットもあります。

「自分の場合はどうなのか?」となると事案による、という言葉に尽きてしまいますので、気になる方は弁護士にご相談いただければと思います。