一括対応

交通事故に遭った被害者に対し、加害者側の保険会社が事故後の治療費等の負担をすることを、「一括対応」等と呼ぶことがあります。

何と一括かといえば、自賠責保険と一括、ということを意味しています。

稀に無保険の方や保険が切れている、といったケースもありますが、自賠責保険の加入は車両を運転する方の義務となっているため、大多数の場合、車両がかかわる事故については、加害者側の自賠責保険の補償対象となってきます。

自賠責保険と同時に、多く方は任意保険にも加入しています。

実務で一括対応となっているケースが大多数となるためあまり意識されていませんが、任意保険会社は、本来的には自賠責保険の補償する範囲を超えた部分についての賠償を行う立場にあります。

例えば治療費や休業損害、慰謝料等の総損害額が150万円だとすると、過失のない被害者の場合、自賠責保険では最大120万円まで補償されますので、任意保険会社の負担はこれを超えた30万円ということになります。

そのため、極論すると、加害者側保険会社は、被害者側が自ら自賠責保険へ請求手続きをし、自賠責保険の範囲を超えた損害について請求を受けて初めて動き出してもよいということになります。実際、双方それなりに過失があると考えられる事故のでは(4:6、5:5等)、一括対応が行われない場合の方が多いです。それにもかかわらず、あえて自賠責保険の負担範囲分まで先行して支払いをしているのが一括対応ということになります。

被害者側の弁護士として動く際、治療費の対応についての交渉等を行うこともありますが、いつまで対応してくれるかについては、そもそもの一括対応の位置づけを踏まえて考えなければならないものといえます。