一括対応⑵

今回は一括対応関するお話の続きです。

「保険会社から治療費の支払いを打ち切ると言われた。こちらは被害者なのにおかしいじゃないか」というご相談は、交通事故のご相談を受けた弁護士であれば比較的よく直面する問題かもしれません。

結論ですが、保険会社は治療費の支払いについて、(治療費発生の時点では)応じなくても違法ではない、ということになります。法律的なお話になりますが、理由について順番に解説していきます。

まず「治療費」というのは、病院や整骨院等から受けた治療、施術というサービスに対する対価として支払うものです。

では、この治療等のサービスを受けたのは誰かといえば、当然患者さんになりますね。交通事故であれば、けがをした当事者ということになります。

そうなると、治療の対価である治療費等を払うのは実際に治療等を受けた患者さんというのが本筋となります。そのため、法的には治療費等の支払義務はまず患者さんが負うことになります。

そのうえで、そもそもなんで今病院等に通う状況に陥っているかといえば事故でけがをした(させられた)からではないか、という話に進んでいきます。

ここまできて、治療費等、支出したマイナス分という「損害」について、過失責任ある相手方に賠償を求めるというプロセスに進むことになり、これを「損害賠償請求」といいます。

つまり、まず先に損害があり、そのあとに賠償となるのが法律上の順序です。

以上から、①医療サービス等を受けた当事者(=患者さん)がまず医療機関に治療費を支払い、②支払った治療費等(=損害)を賠償責任ある加害者に請求し、発声していたマイナス分を補填するという流れをたどるのが法律的には本来の流れということになります。

このことから、加害者側の保険会社による治療費の支払い(一括対応)は、法的観点からは被害者側の負担、請求を受けての賠償というプロセスを省略した例外的なものであり、治療費の支払いをストップすることは、上記の原則に戻るだけ、ということになります。

そのため、保険会社による支払いストップ(打ち切り)そのものについては法令違反等を問うことはできないわけです。

支払いを打ち切られた後の治療費については、一度自己負担した後、事故による損害として請求し、争っていかなければなりません。

法的には上記のとおりでして、特に無過失の被害者側からご相談をいただく際にはなかなか受け入れ難い説明をしなければならず心苦しいところです。。