交通事故と受傷の因果関係(ミラー接触)

先日ご相談をいただいたので,ミラー接触で交通事故と怪我の因果関係が否定された件について記載したいと思います。

ミラー接触事故の場合,文字どおりミラー同士が接触する事故のため,ミラー自体が衝撃を吸収し車両本体には衝撃が及ばないと考えられ,事故と怪我の因果関係はまず否定されてしまいます。

これは,自賠責保険でも任意保険でも裁判でも,同様の結論になることが通常です。

実際にこうした事故で怪我をされた方の相談を受けたことは複数ありますし,現実として怪我をしていないとは思えませんが,因果関係が認められない以上,「交通事故で怪我をした」と言えないため,治療費も払ってもらえなければ,慰謝料も払ってもらえません。

交通事故で車両を損傷した,ということが認められれば,車両の修理費等は支払ってもらえます。

 

交通事故で被害者側としては,できるだけ早く加害者に保険会社に連絡を取ってもらい,治療を受けられるよう段取りを組みますが,ミラー接触の場合などは,この時点で医療機関に連絡を取ってもらえず,事故調査を行う,自賠責保険に確認する,といった流れになってしまいます。

事故調査を行ったところで裁判でもミラー接触の事故と怪我の因果関係は否定されていますし,自賠責保険も事故状況や車両損傷の大小で事故と怪我の因果関係を判断しますから,この流れに乗ってしまえば,時間だけかかって結局賠償してもらえない,となってしまいます。

もし,自分の任意保険に人身傷害保険などをつけているのであれば,この時点で加害者に請求することは諦め,自分の人身傷害保険を利用するのが無難です。

もちろん,自分の保険会社も,最終的には加害者の自賠責保険から回収できるに越したことはないのですが,自賠責保険ですでに因果関係なしと判断されているわけではないため,任意保険会社が認められる範囲で治療費などを支払ってもらい,任意保険会社が自賠責から後日頑張って回収する,という流れに乗せることができるかもしれません。

人身傷害特約を利用することで等級が上がるということは通常ありませんので,誰からも治療費等を回収できないより,この時点で潔く自分の保険を利用しましょう。

 

こうしたミラー接触事案では,裁判所でも受傷を否定されてしまうのが落ちですので,弁護士の出番はあまりありませんが,交通事故に詳しい弁護士にご相談いただければ,適切な初動対応についてアドバイスできることもあります。

人身傷害特約がない,利用できない場合には,労災利用や被害者請求での自賠責保険請求を考えますが,いずれも通らない覚悟で治療をせざるを得ないのが実状です。

回収できなかったときは治療費が自腹になることを考慮にいれ,医療機関には請求の保留や認められなかったときの健康保険価格への変更などを依頼しておくと,自己負担が最小限になるでしょう。

怪我はしたのに因果関係が認められない,治療費も認められない,というのはなかなか納得がいきませんが,自己負担額が大きくなるのも困りものですから,こういったケースでは諦め時も重要ですね。