一括対応⑵

今回は一括対応関するお話の続きです。

「保険会社から治療費の支払いを打ち切ると言われた。こちらは被害者なのにおかしいじゃないか」というご相談は、交通事故のご相談を受けた弁護士であれば比較的よく直面する問題かもしれません。

結論ですが、保険会社は治療費の支払いについて、(治療費発生の時点では)応じなくても違法ではない、ということになります。法律的なお話になりますが、理由について順番に解説していきます。

まず「治療費」というのは、病院や整骨院等から受けた治療、施術というサービスに対する対価として支払うものです。

では、この治療等のサービスを受けたのは誰かといえば、当然患者さんになりますね。交通事故であれば、けがをした当事者ということになります。

そうなると、治療の対価である治療費等を払うのは実際に治療等を受けた患者さんというのが本筋となります。そのため、法的には治療費等の支払義務はまず患者さんが負うことになります。

そのうえで、そもそもなんで今病院等に通う状況に陥っているかといえば事故でけがをした(させられた)からではないか、という話に進んでいきます。

ここまできて、治療費等、支出したマイナス分という「損害」について、過失責任ある相手方に賠償を求めるというプロセスに進むことになり、これを「損害賠償請求」といいます。

つまり、まず先に損害があり、そのあとに賠償となるのが法律上の順序です。

以上から、①医療サービス等を受けた当事者(=患者さん)がまず医療機関に治療費を支払い、②支払った治療費等(=損害)を賠償責任ある加害者に請求し、発声していたマイナス分を補填するという流れをたどるのが法律的には本来の流れということになります。

このことから、加害者側の保険会社による治療費の支払い(一括対応)は、法的観点からは被害者側の負担、請求を受けての賠償というプロセスを省略した例外的なものであり、治療費の支払いをストップすることは、上記の原則に戻るだけ、ということになります。

そのため、保険会社による支払いストップ(打ち切り)そのものについては法令違反等を問うことはできないわけです。

支払いを打ち切られた後の治療費については、一度自己負担した後、事故による損害として請求し、争っていかなければなりません。

法的には上記のとおりでして、特に無過失の被害者側からご相談をいただく際にはなかなか受け入れ難い説明をしなければならず心苦しいところです。。

一括対応

交通事故に遭った被害者に対し、加害者側の保険会社が事故後の治療費等の負担をすることを、「一括対応」等と呼ぶことがあります。

何と一括かといえば、自賠責保険と一括、ということを意味しています。

稀に無保険の方や保険が切れている、といったケースもありますが、自賠責保険の加入は車両を運転する方の義務となっているため、大多数の場合、車両がかかわる事故については、加害者側の自賠責保険の補償対象となってきます。

自賠責保険と同時に、多く方は任意保険にも加入しています。

実務で一括対応となっているケースが大多数となるためあまり意識されていませんが、任意保険会社は、本来的には自賠責保険の補償する範囲を超えた部分についての賠償を行う立場にあります。

例えば治療費や休業損害、慰謝料等の総損害額が150万円だとすると、過失のない被害者の場合、自賠責保険では最大120万円まで補償されますので、任意保険会社の負担はこれを超えた30万円ということになります。

そのため、極論すると、加害者側保険会社は、被害者側が自ら自賠責保険へ請求手続きをし、自賠責保険の範囲を超えた損害について請求を受けて初めて動き出してもよいということになります。実際、双方それなりに過失があると考えられる事故のでは(4:6、5:5等)、一括対応が行われない場合の方が多いです。それにもかかわらず、あえて自賠責保険の負担範囲分まで先行して支払いをしているのが一括対応ということになります。

被害者側の弁護士として動く際、治療費の対応についての交渉等を行うこともありますが、いつまで対応してくれるかについては、そもそもの一括対応の位置づけを踏まえて考えなければならないものといえます。

支払督促

支払督促という手続きがあります。

文字だけで見ると支払いを促す手続きであるということはわかるかと思います。

弁護士の業務分野としては、借金問題等が関係することが多いかもしれませんが、交通事故等その他の分野でかかわる場合もあります。

簡単に言ってしまえば、簡易裁判所を利用して債権の取り立てをするための手続きの1つで、法廷で行われる通常の裁判より簡便な手続きと位置付けられます。

借金などの返済が滞り、一定期間支払いをしない状態が続いていると、裁判所から債権者が申し立てた支払督促の手紙が届く場合があります。

内容としては、お金の支払いを求めるだけの簡単なものです。

よくわからないからとりあえず放置しておこう、というのは得策ではありません。

というのも、支払督促に対する対応には期限があるからです。

まず、届いてから2週間以内に異議を出さないと、仮執行宣言というものを申し立てることができるようになり、申立てが行われると、今度は仮執行宣言付支払督促が送達されます。

送達後、これを放置して2週間以内に異議の申立てをしないと、支払督促には「確定判決と同一の効力」が与えられます。

つまり、最短1か月程度放置しているだけで、裁判で全面敗訴したのとほぼ同じ状況になります。

その後は、給与や口座、不動産の差押え等強制執行ができる状況になりますので、予断を許さない状況になるといえるかなと思います。

安易に裁判所からの書類を放置するのは危険だと思いますのでご注意ください。

0%:90%?

交通事故で主要な争点となる過失割合、100:0とか、3:7とかそういった合計100%、合計10割となる数字であることが通常かなと思います。

他方、実務においては、合計で100%でない合意の形が成立しているように思えることがあります。

このような過失割合での合意は、通常物的損害について行われていることが多い印象です。

たとえば、徒歩対バイクの事故で、徒歩側の損害が衣服等1万円、バイク側の修理費が5万円、過失割合は1:9と見込まれるとします。

徒歩側が相手に請求できるのは9割の9000円、バイク側が請求できるのは1割の5000円になります。

徒歩側からすると、差引4000円、半額以下しか物的損害の賠償を受けられないのは納得できない、という気持ちもわかります。他方、相対的な話ではありますが、バイクの修理費5万円のうち相手方に請求できる5000円は、そこまで高額でないともいえます。

そこで、バイク側の保険会社の方が、相手方に対する5000円の請求にこだわるくらいならば、5000円の請求を行わず、9000円を支払うことで紛争を終わらせよう、と判断する場合があります。

そうなると、この件では、徒歩側はほぼ満額の9000円を受け取れるわけですが、バイク側の修理費5000円に相当する負担はしなかったことから、0:9の解決、となります。

こういった解決はわりと柔軟に、弁護士が介入していない場合でも行われている場合があります。

事案によっては、相手方のいう1:9が適切でなく、5:95や0:10を目指すべき場合もありますが、割合が妥当であればこういった解決もありうるかなと思います。

過失と自賠責保険

日常的にお車を利用されている方は、自賠責保険についてもある程度知っている方が多いと思います。

自賠責保険について、国土交通省のサイトには、「自賠責保険(共済)は、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的としており、原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車に加入が義務付けられています。」と記載されています。

自賠責保険があることで、被害者の方について、基本的な対人賠償(治療費や慰謝料等の人的損害の賠償)が期待できるわけです。

「基本的な」とあるように、自賠責保険での保障以上の賠償が受けられることは想定されているところで、弁護士にご依頼いただくことで賠償額が変わること等がありますので、交通事故で示談をする前には一度ご相談をおすすめしています。

しかし、事案によっては、自賠責保険の賠償の方が裁判所の算定基準よりも高額になることがあります。

これは、自賠責保険の過失についての取扱いにかかわってきます。

自賠責保険は、7割以上の過失がなければ減額されないルールになっています。

実務では5%刻みで過失割合が決まることが多いですので、言い換えると、65:35までであれば、0:10(無過失の場合)と同じ計算で自賠責保険からの支払が受けられるということになります。

具体的に、治療費30万円、自賠責の計算での慰謝料が50万円、総損害額80万円だった場合、こちらの過失は6割でも、医療機関に支払われた治療費を除く50万円の慰謝料を受け取れます。

他方、弁護士が介入し、裁判所基準で慰謝料が仮に倍の100万円になったとしても、過失相殺により総損害額は130万円×40%=52万円、治療費は医療機関に支払済みだとすると52万円-30万円=22万円ですから、自賠責保険での計算の方が高くなる、ということになります。この場合、弁護士に依頼する場合よりも自賠責保険での計算の方が高くなるため、自賠責保険での賠償を受け取ればよい、ということになりますね。

何事にも例外はあるということかと思います。

例外の例外、なんてものもあるわけですのでなかなか難しいところではありますが。

主婦(主夫)の休業損害

「24時間戦えますか」昔のテレビCMで流れていましたのを覚えています。

以前は一つの価値観だったのかもしれませんが、令和の現在には通じないかと思います。

働くサラリーマン向けのCMだったでしょうが、立ち止まって考えると、主婦や主夫についてはどうなんだろう、と思ったりもします。

特に生まれたばかりの赤ちゃんがいるご家庭では夜泣き等もあるでしょうし、動き回り始めるとそれはそれで目を離せませんから、休む暇などないように思えます。

そう考えると、主婦(主夫)こそ24時間戦っているのではないか、とさえ思えてきます。

弁護士業務でこのあたりが問題になってくるのは、交通事故等の損害賠償の場面です。

損害項目として休業損害というものがあります。

お勤めの方の場合、仕事を休めば給与は減るわけで、何日休んでいくら減ったかは勤務先に確認ができますから(なお、有給休暇の消費も通常損害の対象とされています。)、勤務先がその損害を証明してくれるわけです。

ところが、主婦(主夫)の方が日ごろ行っている家事労働は、それに対して給与の支払い等が発生しているわけではありません。

事故等による負傷で家事が思うようにいかなくなっているのに、「あなたは働いていないので損害はありません」というのもおかしな話です。

この問題に関し、家事従事者についても、実務上その損害は認められており、「主婦休損」等と呼ばれています。

交通事故で弁護士が介入していない事案について、休業損害の項目すらない示談案が保険会社から送られてくるようなこともありますので、家事従事者の方は覚えておかれるとよいかなと思います。

後遺障害認定手続と弁護士法人心

交通事故で負傷後、治療を続けたものの後遺症が残存した場合、後遺障害認定の手続きを行う流れになるのが一般的です。

交通事故における後遺障害の等級認定は、損害保険料率算出機構、下部組織の自賠責調査事務所という組織が担っており、認定された結果を踏まえてその後の交渉等が進みます。

後遺障害認定の調査にあたっては、治療中に撮影した画像資料等を病院から取り寄せる必要等もあるため、ある程度期間を要します。

後遺障害の内容、程度などにもよりますが、おおむね2~3か月程度で結果が出る場合が多いかなと思います。高次脳機能障害の場合には、複数等級の可能性があることや、審査それ自体の難易度が高いこと等から、結果が出るまで半年かかるようなこともありました。

後遺障害の認定結果に対しては、不服を申し立て、再度の審査を求めることが可能です。

一度出た決定をひっくり返すことになるため、やや難易度はあがりますが、不服申し立ての結果、一度は後遺障害ではないと判断されたものに対して後遺障害の等級認定を獲得できる場合や、既に認められた等級より上位の等級が認められる場合等もあります。

そもそもの等級認定の妥当性の判断や、異議申立て等になってくると、かなり専門性を要求されてくるかなと思います。このあたりについて、損害保険料率算出機構の元職員等の後遺障害認定の専門スタッフがいることは弁護士法人心としての強みかなあと実感しています。

証拠と論破

主人公に追い詰められた犯人が「俺が犯人だという証拠がどこにある!」というのは、よくある最後の悪あがきかなと思います。

そして証拠を突き付けられてくずおれる犯人、というのはクライマックスの重要なシーンでしょうが、犯人側の立場に立てば、なかなか非情なとどめの一撃でしょう。

決定的な証拠がある、というのは心強いものですね。

弁護士実務においては、結局争点となるのはそういった決定的な証拠がないところとなることが多いかなと思います。

例えば交通事故で幸い骨折がなかった事故でお怪我をされた場合、大事に至らなかった、という観点からはよいのですが、治療の場面で揉めることになったりします。

残っているのは「痛み」だけ、でも外からは何もわからない、つまり痛みを証明する決定的な証拠がない状態ですね。

仮に証拠がある場合でも、その評価で争いになる場合もあります。

同じく交通事故だとイメージしやすいですが、ドライブレコーダーが残っており衝突の瞬間はばっちり残っていたような場合が挙げられます。

ドライブレコーダーがあるなら結論は見えているんじゃないか、といえば、実際は画面に映る事実をどう法的に評価するか、という争いに進みます。証拠がない場合に比べれば、素材はあるので主張すべきことの方向性は見えやすくはなりますが。

 当事者としては鮮明な記憶があるのに、証拠に基づかない主張はいわば「それってあなたの感想ですよね」となってしまうのはなかなか辛いところです。また、証拠があるから「はい論破」ともならないところで、事件の見通しを立てるのは難しいですね。

雪道

雪道では安全運転を心がけましょう。

至極当たり前のお話かもしれませんが、通常の道路の場合よりもスリップ等による事故の発生があるためです。思いのほか大きな事故になってしまうこともあります。

雪がどの程度降るかはお住まいの地域によってだいぶ差があるかと思います。横浜含む関東圏ですと、年末年始にかけて雪が降ることはほとんどないかなという印象です。北関東の北部は積もることもあるかもしれませんが、、

日本でも、北海道等地域によっては10月頃から雪が降り始めるところもありますし、そういった地域では12月にはしっかり降り積もっています。

環境だけでみると、積雪のある地域の方だけ注意していればよいのかと考えがちですが、実情はやや違ってきます。というのも、積雪が当然の地域にお住まいの方は、雪に対する対策がしっかりできているのに対し、積雪の少ない地域にお住まいの方の場合、対策が十分でなく、さらに慣れない環境下に置かれることで事故を起こしてしまうということがあるからです。

以前年始に北海道に行った際には、一面真っ白で、歩道と車道の境目もわからないことに驚きましたが、スタッドレスタイヤ等、すれ違う車の対策は万全だったと思います。

弁護士としては、天気にかかわらず、日々安全運転を、と呼びかけるべきかもしれませんが、雪道での運転には十分ご注意ください。

よいお年を。

後遺障害

交通事故の賠償等で、後遺障害にかかわる損害が問題となる場合があります。

何らかの症状が残れば追加で賠償金を受け取れる、といった単純なものではなく、基本的には後遺障害として等級認定された場合に、その等級に応じて賠償を受けることができるものとなっています。

裁判等で争った場合には、後遺障害認定機関の認定を上回る判断がされる場合や、逆に後遺障害と認定されているのに後遺障害と認めないと判断されることもあるので、実務上は認定を受けているから結論も決まっている、とは言い切れません。

さらにいえば、同じ等級に認定されても、同一の判断とならない、ということもあります。

例えば、腕や脚等を骨折して一定程度以上関節を十分に曲げられなくなると、12級の後遺障害と認められる場合があります。

通常、12級の後遺障害に該当するとされた場合、将来の収入について、14%程度影響が出るものと考えられています(逸失利益といいます)。

12級には、顔面醜状という、傷跡が残った場合の後遺障害等級も定められていますが、裁判等で逸失利益を争われることがあります。

建設現場での作業等をイメージしていただくと、確かに腕足を痛めていたら重いものを持てないだろうな、傷跡があっても作業に支障はないのかな、ということになるのかもしれません。

とはいえ、傷跡があることで顔を隠すようになりうまく職場でコミュニケーションが取れなくなる等といった可能性は払しょくできません。

また、例えばモデル等のお仕事であれば、傷跡による影響はダイレクトに出てくると思われます。

この辺りは、弁護士としては、個々の事情を踏まえてしっかり争っていく必要があるところとなります。

法定利率

利息って何%かご存知でしょうか?

通常は、契約時に当事者間の合意によって定められるものとなります。

ですので、「契約次第」というのが1つの回答です。

じゃあ問題ないんではないか?とも考えられますが、当事者間の契約で利息について定めない場合もありますし、そもそも契約がない場合については当事者間で利息を定めようもありません。

弁護士実務上は、損害賠償、不当利得等、案外契約ではない場合のご相談もありますので、契約で定めていない場合の利息についても関わり合いは少なくありません。

さて、大学の法学部等で何年も前に民法の勉強をされた方の中には「年5%」と回答される方がいるかもしれません。さらに、商法を学んだ方は、「商事法定利率は年6%」と答えるかもしれません。

ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、民法については比較的大きな改正があり、2020年4月1日付で施行されておりまして、利息もその改正の1つとなっています。ですので、上記の回答は正しくない可能性があります。

まず、商法で規定されていた商事法定利率というものは今回の改正に伴い廃止されましたので、現在は商法が適用される取引か否かで法定利率についての違いはなくなりました。

他方、民法上の法定利率については、改正時に年3%に引き下げられ、その後については、3年を1期とし、1期ごとに変動することとなりました。

正しくない「可能性がある」というのは、変動の結果によっては5%や6%になる可能性があるのと、改正前の適用となる案件については改正前の利率で計算されることになるためです。ここまでくるとやや複雑な話になってくるかもしれませんが。。。

なお、先月、法定利率は変わらず3%となることが法務省より告示されております。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00317.html

経済的全損

自動車事故、特にお車、バイク等の物的損害について、争いとなることが多いのが経済的全損と呼ばれるケースに該当する場合です。

例えば、追突事故に遭って車が壊れた、修理費として60万円かかる、という見積もりだったとします。他方、事故車両は何年も乗ってきた車で、現在は30万円程度しか価値がなかった場合、賠償されるのはいくらか、という問題です。

この場合、例外的な事例を除き、基本的には時価額での賠償となる、つまり被害者の方は30万円程度しか賠償を受け取れない、というのが裁判実務となっています。

特に上記のような被害者無過失の事故ですと、なかなか被害者に酷な結論のようにも思われますが、不法行為法の考え方がその理由となっています。

交通事故も基本的に不法行為に基づく損害賠償請求となりますが、損害賠償は、「不法行為に遭う前の状態への回復」のために行われるものとされています。

「車を修理してもらうのが事故前の状態だ」という考え、お気持ちはごもっともです。が、事故に遭う時点で、被害者の方の手元には時価30万円の車があるわけですので、30万円分の賠償を行えば、その損害は補填されてしまうといえます。時価の評価が妥当であれば、事故車と同程度の車は30万円で購入できてしまいますので。

そうなると、「時価30万円の車は30万円では購入できない」という意見が出てくるかと思いますが、これは「買替諸費用」といって、別途賠償される可能性があります。

弁護士が介入する場合には通常確認するところですが、介入前ですと、買替諸費用については考慮されていない場合や、交渉段階では買替諸費用については認めてもらえない場合がありますのでご注意ください。

なお、時価額30万円程度、という前提で話を進めてきましたが、そもそも時価額の査定は妥当か、という点もよくご確認いただくとよいと思います。

解決手続きあれこれ

交通事故についての解決手段は様々です。

実務上は、話し合いによる解決となっていることが割合としては多数になると思います。

話し合いによっての解決が難しい場合にはどのような手段があるでしょうか?

まずは裁判が浮かぶ方も多いと思います。

法廷で裁判所を間に向かい合って主張を展開する、いわゆる裁判のことですね。たいていの場合、双方ともに弁護士を依頼して行われているかと思いますが、本人訴訟といって、ご本人による裁判もあります。

同様に裁判所を利用した手続きとして「調停」というものもあります。

調停というのは、概要としては、裁判官を間に立って行われる話し合いの手続きです。「話し合いをして解決しなかったのに調停で解決できるのか」、という疑問もおありかと思いますが、必ずしも合意が成立しないわけではありません。

裁判所の方で和解内容の提案等を受けるため、ある程度双方の納得のいく解決が期待できるかなと思います。

もう少し柔軟な方法として、裁判外紛争解決手続きというものがあります。「ADR」等と呼称されることもありますが、この手続きは、主に弁護士等が双方の間に立って示談あっせん等を行う手続きです。

紛争処理センター、紛争解決センター等があります。

裁判手続きより相対的に早期解決が期待できます。

納得できなければ裁判に進むこともありますので、まずはADRで、ということもあります。

飲酒運転

飲酒運転はダメです、ということは皆さま言われなくともわかっていることかと思います。

悲惨な事故等が起きた経緯等から、刑事罰の厳罰化されたこと等についてご存知の方もいるかもしれません。

弁護士としては、刑事だけでなく民事でもかかわる可能性がありますが、民事の場面でも、飲酒の事実は過失割合等を決めるにあたり、当然不利な方向で影響を受けます。

さらに、慰謝料の増額といった不利益が生じることもあります。

そんな高額の支払いできないから自己破産するしかない、という状況になるかもしれませんが、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は、非免責債権といって、自己破産をしても支払義務がなくならないものとされています(破産法253条1項3号)。

意図的に飲酒運転をして暴走してやろう、ということはないかと思いますので、車両に関する損害等については支払義務が免除される可能性もないわけではありませんが、「人の生命又は身体を害する」ことにより生じた治療費、慰謝料等について、飲酒運転は「重大な過失」があると認定される可能性が高いため、支払義務がなくならない、という可能性が高いです。

時勢柄、大々的な忘年会等はないかもしれませんが、年の瀬はお酒を飲む機会が多くなる方もいるかと思います。

ただ、飲酒運転となると、「羽目を外す」といった言葉では済まされない事態となりますので、十分ご注意いただき、よいお年をお迎えください。

弁護士費用特約

トラブルに巻き込まれた!相手方の対応に納得がいかない!でも弁護士に依頼するとお金がかかるし。。でも大丈夫!

…ということで、保険の宣伝みたいになってしまいましたが、要するにそういうときに使える保険の特約が、弁護士費用特約です。

もっとも普及しているのが交通事故に関する損害保険に付帯された特約といえるかなと思いますが、火災保険等についていることもあります。

また、少しずつですが、離婚事件や刑事事件等にも適用対象が広がってきているものでもあります。

実際のところ、メリットはそれなりに大きいと思っています。

慈善事業ではない以上、ご依頼いただくにあたっては弁護士報酬等をいただかなければなりません。

例えば、ご依頼いただくと損害額が増額する可能性があるけれど、弁護士費用まで考えるとメリットはそこまで大きくならないかもしれない、という事案のご相談をいただくことはそれなりに多いといえます。

そんなとき、弁護士費用特約があれば、増えた分はまるまるご依頼者様にプラスになるわけで、弁護士費用分、という負担を考えなくてよくなります。

もちろん、少額とはいえ保険料はかかりますが、まずはご自分の自動車保険の特約の有無を確認されてみてはいかがでしょうか?

強制執行

皆様は「強制執行」という言葉を聞いてどのような印象を持たれるでしょうか。

個人的にはそれなりに物騒な印象を受けます。

実際には適法な法的手続なわけですが。。

「強制」といっても,民事執行法に基づく手続きです。

 

弁護士の仕事というと,法廷で裁判,というイメージが強いかもしれません。

そして,状況により最終的に判決まで進みますが,何となく「判決まで出れば紛争が終結する」とイメージされる方のほうが多いようにも思います。

しかし,実際には,裁判所から判決が出ても,相手方がこの判決に従わない場合もあります。その場合には,強制的に金銭等支払わせること,立ち退きをさせること等が必要となってきます。そのような場合に行われるのが強制執行です。

 

例えば,金銭賠償等の強制執行については,通常「差押え」をすることが多いと思います。

差押えの対象は,不動産であったり,給与口座であったり,給料の差押えといったものもあります。

 

交通事故等であれば,多くの案件は加害者が任意保険に加入しているため,あまり強制執行に至ることは多くありませんが,任意保険の加入をしておらず,かつ加害者側に支払いを拒否される場合もあります。そうなると被害者の方が泣き寝入りせず,被った損害の賠償を受けるため,差押えまで行って賠償を求める場合があります。

 

赤い本

今日は「赤い本」のお話です。

 

「赤い」という枕詞から「彗星」等々思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、赤い本というのは、日弁連交通事故相談センター東京支部で発行されている交通事故実務の書籍です。

交通事故に携わる弁護士で持っていない方はまずいないのではないでしょうか。

その名のとおり、毎年若干の色合いの変化はあるものの、基本的に真っ赤な表紙に覆われた本です。

上巻(基準編)と、下巻(講演録編)の2冊組となっていますが、いずれも真っ赤です。

大きさはB4サイズ、厚さは上下巻合わせて3センチくらいです。2冊合わせてハリーポッター1冊分と同じくらい、といえばイメージがつかめる方もいらっしゃるでしょうか。

 

特に、毎年東京地裁の交通部である27部の裁判官による講演をまとめた下巻の講演録編は、最近の裁判の動向や争いになる点に関する貴重な資料となっています。

各事件の個別事情によって当然幅はありますが、おおむね関東では慰謝料の算定などについても、この赤い本の算定基準が参考にされることが多いといえます。

 

裁判例等も多数掲載されており、判例検索等に利用することができるほか、後遺障害案件の場合に生じる逸失利益の算定等にも利用しています。

 

「赤い本」というだけで業界では話が通じると思うとかなりの知名度だと思います。

1つのブランディングといえるかもしれませんね。

異議申立

今回は交通事故のお話です。

 

交通事故,労災などで後遺症が残ってしまった場合,後遺障害申請を行いますが,その結果に納得できない場合には,再度認定結果に対する判断を求めることができます。

これを異議申立といいます。

 

後遺障害と認められなかった場合に等級獲得を目指して,あるいはいったん認定された等級よりも上位の等級を目指して行われます。

当法人では,特に交通事故について,認定機関内部で内部基準の作成にも携わっていた専門スタッフ等が在籍しているため,強みといえるところかとは思います。

手前みそではありますが,扱った事件の中には,「うちじゃなかったら結果を覆せなかったんじゃないか」と思うようなケースもないわけではありません。

 

とはいえ,一度出た判断を覆すことはやはり簡単ではありません。

異議申立書の作成はもとより,異議の根拠となる資料収集も重要です。

そもそも,異議申立まで進む可能性まで見据えた準備が必要な場合もあります。

かなり手間も時間もかかりますので,もともと可能性が低い場合には,案件の早期解決を重視し,あえてやらない場合もあります。

 

もとより簡単なことではありませんが,やはり結果を覆すことができると,賠償額も変わってきますし,結果が変わってよかったなと思います。

後遺障害の認定結果が保険会社から通知されたとしても,すぐに鵜呑みにしないで,弁護士に見てもらうことをご検討いただくとよいかと思います。

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可動域制限

さて,今回は後遺障害の話です。

取り扱っている後遺障害案件の中で,頚椎捻挫(むちうち),腰椎捻挫に次いで多い印象があるのが,腕や肘などの骨折の後遺障害です。

腕や肘が以前よりも曲がらなくなってしまった,という場合に,曲がらなくなった角度に応じて等級が認定されます。

可動域制限の後遺障害というものです。

ヒトの身体には個体差があるので,けがをしていない方の腕や脚がどのくらい曲げ伸ばしできるかを測り,それと比較してけがをした方の腕や脚がどれくらい曲がらなくなったのかを計測します。

腕であれば,手首,肘,肩が三大関節となりますが,このうち1つについて,3/4以下となれば12級,1/2以下となれば10級とされています。

角度は後遺障害診断書を作成する際にお医者様が測定します。

角度の測定について,もしかしたら「ごまかしがきくのではないか」と考えられる方がいるかもしれませんが,そう簡単にはいきません。

というのも,測定する際には,「自動」ではなく「他動」での可動域が基本的な判断材料とされます。言い換えると,「自分でどこまで曲げられるか」ではなく,「医師が手を添えてどこまで曲げられるか」で後遺障害が決まってくるということですね。

 

そのほか,変形障害などが絡むと併合等級といって,等級が上がるようなこともあります。

詳しいことは個別の案件について弁護士にご相談いただいた際にということになってしまいますが。。

ドラレコ

車を乗っていらっしゃる方,ドライブレコーダーは搭載しているでしょうか?

もしかしたらそもそも「ドライブレコーダーって何?」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

たまに交通事故のニュースなどで衝突の瞬間を捉えた映像が流れることがあるかと思います。この衝突前後の様子を映像として記録している装置がドライブレコーダーです。

 

弁護士のブログでなぜそんな話が出てくるかといえば,交通事故の事件で証拠として出てくることがあるからです。

証拠として出てくると,何十回も,場合によっては100回以上かもしれませんが,問題となる場面を停止して再生して確認します。少しでもこちら側に有利なものが映っていないかくまなく確認する必要があるためですね。

 

ドライブレコーダーは,良くも悪くも事故当時の状況を映像として記録しています。

一見すると不利に見えた事故状況と思われたものが,ドライブレコーダーの映像により,実は相手方の方に重大な交通ルール違反があったことがわかったりすることがあります。

逆に,こちら側にとって不利な映像として映ってしまっていることもないわけではありません。

映像が鮮明でなかったり,見たいところが運悪く映っていなかったりということも少なくないのですが,ドライブレコーダーの映像が結論に決定的な影響を与えることもあります。

 

ドライブレコーダーに映像が残ることから,普段の運転でも安全運転を心がけるようになる,といった心理的な効果もあるようです。安全運転のためにご自身のお車に搭載するのもありかもしれません。