六法全書

「六法全書を全部暗記しているの?」

司法試験を受験していたころからこのような質問を受けることがあります。

司法試験に合格すると,裁判官,検察官,弁護士になることができますが,どの立場の方でも,六法全書をすべて暗記している,という方はほとんどいないのではないかと思います。

 

そもそも,司法試験受験の際には試験時間中,法令集を読んでよい(大学内部の試験での「持ち込み可」みたいなものです)ので,わざわざ暗記する必要がありません。

問われるのは条文をどのように事案の中で活用していくか,といえばよいでしょうか。

 

とはいえ,限られた試験時間の中で第1条から順番に関係する法律を探す時間はありませんので,大まかに何条くらいに問題に関係しそうな条文があるか,くらいは把握していたりします。

 

では実際に弁護士になったら法律を覚え始めるか,といえばそういうわけでもありません。読む必要があればいつでも六法開けますからね。

ではでは覚えることなんて何もないのか,ということになりますが,受験中はかなりの数の過去の裁判例と向き合ってきました(概要だけのものも含むと1000件くらいになってしまうかもしれません)。重要な最高裁判決に関しては判決文を何回も読みましたし,その最高裁判決には各裁判官の補足意見等もつきますのでそこまで読んだり,さらに判決についての解説を教授や実務家等がしているのでそれを読み込んだり。。

過去の判例について,「大切なことは覚えることではなく理解することだ!」などとよく言われますし,それはその通りです。ただ,理解しようとする過程で結局はかなりの部分を記憶することになりましたかね。結果的に。。

 

受験予定の方はそろそろ追い込みの時期に入ります。体に気をつけつつ,頑張ってください。

調停のお話~続き~

さて,先月に引き続いて調停のお話を。

 

調停の特徴として,「調停委員」の存在を挙げられると思います。

調停委員は,40歳以上70歳未満の方で,①弁護士,②民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する人③社会生活の上で豊富な知識経験を有する人が選ばれます。

そのため,調停委員は必ずしも弁護士に限られません。

調停委員は,調停手続において,双方当事者の意見を聞いたうえで,話し合い・和解のあっせんを行います。

通常は,裁判官よりも,調停委員と話を進めていくことが多いといえるでしょう。

調停委員の方とは円滑に話を進めていきたいところです。

 

さて,ここで,「どうせ裁判所を使って手続するなら普通の裁判でいいんじゃないの?」という疑問が出る方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん,そういう考え方もあります。

ただ,前回にもお話したとおり,双方の話合いでの決着となるという点にはメリットもあります。

かなり極端な事例をイメージしていただきますが,判決になったら0円になる確率が50%,100万円になる可能性が50%,話し合いの解決を前提に50万円でどうでしょう?という提案を受けた場合,皆さんは提案を受け入れますか?

価値観はそれぞれですので,判決を選ぶ方もいらっしゃるかと思いますが,調停による話し合いも悪くない結果ではないか,と考える方もいるのではないでしょうか。

選択,戦略の幅は多いに越したことはありません。

 

通常,裁判手続よりも期間が短いことが多いのも調停のメリットです。

調停のお話

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

令和最初の年越しですね。

ということで,今回は調停のお話です。

年越しにまったくちなんだお話になりませんがあらかじめご了承ください。

 

調停,というのは,簡単に言うと,裁判所を利用した話し合いの手続きとなります。

当事者同士で話し合いをしていてもらちがあかない,というときに,間に公平な立場の第三者を入れれば話し合いがまとまることがある,というのはイメージしやすいと思います。

その第三者の立場を裁判所が担う,というわけですね。

弁護士業務においては,お金の問題等と言った事案よりも,離婚や相続など,「家事事件」と呼ばれる分野で利用する機会が多い手続きと言えるかなと思います。

 

判決は,「一刀両断的判断」等と言われることがあります。

それは裁判官の責任ある判断で,重要なお仕事ということになるかと思いますが,適法な手続きを踏んでいるとはいえ,第三者によって「借りている部屋から出ていけ」であるとか,「○○円を払え」等と決められてしまうわけです。

家族の問題,親族の問題等は,そういう判断に必ずしもなじまない側面があります。

場合によっては最後まで話し合いがまとまらず,判決による判断に委ねざるを得ないことがありますが,できれば双方ある程度の譲歩,納得の上で合意できた方がいいことも少なくないように思います。

ETCカード

ETCカード,利用されていますか。

東京周辺だと電車移動を選択することが多いため,あまり高速道路を利用するタイミングがありません。

しかし,債務整理のご相談をいただく際に,ETCカードの利用についてご相談いただくことがけっこうあります。

 

多くの方は,クレジットカードの付帯機能としてETCカードを,利用されているかと思います。

ここで,債務整理を行った場合には,信用情報としてその事実が登録されます。

いわゆる「ブラックリストに載る」というヤツですね。

その結果,今まで使っていたクレジットカードがETCカードとして利用できなくなってしまう可能性があります。

別のカードを作ろうと思っても,すでにブラックリストに載っているため審査に通らない可能性が高いです。

そうすると,クレジットカードがなければETCが使えないのではないか,という問題にぶつかるわけです。

 

ここで登場するのが,「ETCパーソナルカード」です。

このカードは,高速道路会社が共同で発行しているカードで,一定額の保証金の用意と年会費の支払いが必要となりますが,審査なくETCカードとして利用することができます。

クレジットカードとしての機能のないETC専用のカードというわけですね。

 

デスクワーカーの方でETCカードの利用継続のためだけに債務整理を断念する,というケースは多くありませんが,トラックの長距離運転手の方だったりすると死活問題だったりします。

こういったサービスの情報を知っていることも,ときには事件処理の方針を決めるために役立つことがあります。

読書の秋

「ストレス社会」等という言葉も残念ながらすっかり定着してしまいましたね。

弁護士業務は,ストレスのかかりやすい仕事にあたるといわれたりしますので無縁ではありません。

紛争の間に立って仕事をするわけですので。。言い換えれば大変ですがやりがいのある仕事といえるかもしれません。

 

とはいえ根を詰めすぎるとやっぱりしんどいなあと思うことがあります。

ストレス解消はやはり大切ですね。

ゆっくり休む,適度に運動をする等,方法はいろいろあると思いますが,秋といえばやっぱり読書です。何となく去年も一昨年も読書をしていた記憶があります。

理由はよくわかりませんが,秋になると妙に活字に触れたくなるように思います。普段は全然読まないですが。。

10年以上新刊を待っていた本がようやく発刊されたというのも読書をしようと思った理由の1つではあります。

電車移動の合間等にせっせと読んでいます。久しぶりに読書をすると,やはり活字には映像作品や漫画等にはない魅力を感じます。

修習生時代にお世話になった元裁判官にも大変な読書家がいらっしゃいました。優れた文章に触れることも,業務の糧になるのかなと考えたりもします。

 

まあ,読んでいる間くらいは,細かいことを考えず作品を楽しむのがストレス解消という意味では一番よいのかもしれません。

裁判の大まかな流れについて

弁護士業務といえば裁判をイメージされる方は少なくないと思います。実際,ご依頼の案件の中には,裁判に移行する事案もあります。

今回は,裁判がどのように進んでいくのかなどについて書いていきたいと思います。

地位を確認する裁判などもあるため,今回は,相手方に対してお金を請求する裁判を起こすケースを念頭に置きます。

 

裁判への移行は,通常,「訴状」という書面の提出から始まります。訴状では,こちらの主張の述べ,あわせて主張を根拠づける資料として証拠を提出します。

訴状に不備がなければ,裁判が行われる期日が決められ,裁判所を通じて相手方に訴状が送付されます。

訴状に対して,相手方は,「答弁書」という,こちらの主張に対する最初の反論書面を提出します。

それ以降は,準備書面(第1準備書面,準備書面⑵などと題名をつけることが一般的です。)で,双方の主張反論,証拠提出が行われます。相手方から出された証拠や主張を精査し,反論書面を作成することになるので,だいたい1か月くらいずつ期日が設定されます。

双方の主張反論が複数回行われると,ある程度争点に対する主張,証拠が出そってきます。そうすると,裁判所の方から和解案の提案がされることが多いです。和解案について双方が応じれば終了,いずれか一方でも応じられないという回答を出せば,基本的には判決まで進みます。判決前には一度双方当事者や関係者に対する「証人尋問」を行うことが多いです。テレビドラマなどでは取り上げられがちなシーンですね。

 

裁判というと,判決を下すところまで争うイメージが強いと思いますが,実は大多数が判決前の和解で終結しています。和解案というのが,ある程度判決を見越した裁判官の提案でもあるためです。案件にもよりますが,裁判をした場合の期間の目安は訴状を提出してから半年~1年くらいでしょうか。

 

裁判を検討されている方のご参考になれば。

過払金のイメージ

過払金。ピーク時に比べるとややご相談の数は減っているところですが,今でも過払に関するご相談があります。

お金が戻ってくればそれでよしっ!というところもあるかもしれませんが,過払金発生の仕組みについて簡単にまとめてみたいと思います。

かなり簡略化しているため正確なところからははずれてしまうところもあるかと思いますが,イメージをつかんでいただければなと思います。

 

「過払金」というのは,読んで字のごとく「払い過ぎたお金」です。

なぜ払い過ぎが生じるのかについては2つの法律がかかわってきます。

1つは改正前の出資法,もう1つは利息制限法です。

利息制限法では10万円未満で年20%,これをこえて100万円未満まで18%,100万円以上は15%が上限となっていますが,改正前の出資法では,29.2%まで利息が認められていました。これの利息制限法の利率の上限と改正前の出資法の上限の間の金利がいわゆるグレーゾーン金利というやつです。

 

計算が複雑になってしまうのでごくごく簡略化しますが,例えば100万円借りていて,毎月3万円払っていたとします。毎月払う3万円のうち,元々の契約では1万円が元本返済,2万円が利息の返済だったとしましょう。元本が1万円ずつ減りますので,完済まで100払いとなります。

ここで,実は利息制限法の利率に引き直して計算すると,本来利息は1万円までしか払う必要がなかったとします。利息名目で毎月1万円余分に払っていたということになりますね。そうすると,払い過ぎた分はすべて元本への返済に充てられるべきじゃないか,となるわけです。

 

さて,上記のケースで,返済を続けていたとすると,毎月3万円×100回=300万円返済しているはずです。

しかし,2万円は元本に対する返済であったならば,前半の50回,計150万円返済した時点で,2万円×50回=元本100万円の返済を終えていたはずです。

にもかかわらず,払い終わっていないと思って支払い続けていた後半50回分は,実は払い過ぎだった過払金,ということになります。

 

…なんとなくイメージはつかめたでしょうか?

実情はずっと複雑ですので,過払になっているか,請求できるのか,といった詳細は,あらためて弁護士にご相談ください。

 

事務所の集合写真更新されたようですので良ければご覧ください。

http://www.kokoro-tokyo.com/

個人再生のご検討にあたって~住宅との関係~

好評につき,,かどうかわかりませんが,個人再生手続きの誤解がある点について,前回に引き続きもう1つご紹介します。

住宅資金特別条項についてです。

 

…専門用語というものはなかなかとっつきにくいですね。個人再生手続きを調べれば割とすぐに出てくる話かなと思いますが,破産手続では家を手放さざるを得ない場合でも,個人再生手続きでは,ご自宅を残して,債務の圧縮ができる場合があります。

住宅資金特別条項というのは,返済計画に盛り込む住宅残存のための条項です。

厳しい条件というわけではないのですが,住宅を残すためにはそれなりの条件をクリアしなければなりません。住宅を残せると知って相談してみたら条件を満たしていなかった,という相談の経験があります

この点について,すぐにでも確認できる点として2つお示ししておきます。

 

①自分で居住しているかどうか

住宅資金特別条項で残せるのは自身が住んでいる住宅のみです。

例えば申立人の親や子供だけが住んでいるが,名義は申立人という住宅を残すことは個人再生手続きではできません。生活の本拠となっている住宅を残すわけではないためです。

 

②住宅に資産価値があるか否か

返済額を決めるにあたって,「清算価値」というものが問題となってきます。簡単に言うと,総財産以上は返済に充てる必要があります。

ローン完済済みの不動産を査定したら数千万円の価値があれば,債務の圧縮はまずできないでしょう。また,ローンが残っていても,ローンの残額と比較し,売却額がかなり高額になるのであれば,それは差額分の資産価値があるということになるため,同様の問題が生じます。

 

上記の2点は比較的すぐに確認できるため,弁護士にご相談される前に一度ご確認いただくとよいかと思います。

個人再生のご検討にあたって

今回は,個人再生について,よくある誤解についてまとめてみたいと思います。

インターネット上に情報があふれているご時世です。借金問題で悩んでいる方も,実際に弁護士に相談する前に,事前にご自身で情報収集されていらっしゃる方も少なくありません。

ただ,誤解があって思っていたとおりにならない,ということもあります。今回はそんなポイントについてご紹介いたします。

 

個人再生手続きについて調べると,今ある借金が圧縮され,それを返済すれば残りの返済を免れることができる,という大枠の説明が出てくるかと思います。

これは大枠としては間違っていません。しかし,「最低弁済額100万円」というもう1つのルールを見落とされている方がけっこういらっしゃいます。

細かく整理すると,総債務額500万円までは100万円,500万円以上1500万円までは1/5,1500万円以上3000万円までは300万円,3000万円以上5000万円までは1/5となっています。

 

例えば,300万円の1/5は60万円ですが,上記の個人再生のルールに従うと,少なくとも100万円以上は返済しなければならないこととなります。

 

弁済額については,他に清算価値(財産のことです)も検討しなければなりませんが,そのあたりになると個別のご相談の際に確認する必要があるかなと。

個人再生をするかご検討中の方のご参考になれば。

バレー・リュー症候群

前回頚椎捻挫,ムチウチのお話だったので,続きというか,今回は関連するお話です。

「バレー・リュー症候群」という言葉をご存じでしょうか。

交通事故等で頚部を受傷後,事故前にはなかった慢性的な頭痛やめまい,吐き気,などの症状を訴えるようになることがあります。

このバレー・リュー症候群も,ムチウチ同様,主に14級の等級認定で問題となることがあります。

 

後遺障害の等級は全部で14等級あり,手や足,目,耳など様々な後遺障害が規定されていますが,個人的な経験では,ムチウチで14級の等級を獲得することが最も難しいのではないか,と感じています。

 

当法人には保険料率算出機構出身の後遺障害専門スタッフが在籍しているため,手前みそではありますが,後遺障害等級認定のサポートについては数ある弁護士事務所の中でもトップクラスであると思っています。

しかし,細部を詰めて認定の可能性を少しでも上げようと尽力しても,後遺障害に該当しないこともあり,そういった結果が出ると悔しい思いをすることがあります。

 

特に,追突事故は,被害者の方に何の落ち度もありません。もちろん,痛みが残るよりは完全に治ってしまうことが一番です。

他方,一定程度症状が残ってしまうケースは存在します。

その場合に,どのように対応すべきか,ご相談の際に見通しなどお話しできればと思います。

 

なお,余談ですが,バレー・リュー症候群という名前はバレーさんとリュー(ルー)さんというお医者さんが由来だそうで。。

 

むち打ち損傷

頚椎捻挫,頸椎症,頚椎症候群。いわゆるムチウチです。

特に追突事故で受傷される方が多いと思います。

これまで弁護士として少なからず交通事故の案件にも関わってきましたが,世の中の追突事故の多さに驚かされました。あくまで体感ではありますが,3割くらいは追突事故の相談を受けてきたように思います。

 

無事に治療を終え,完治してしまえば後は慰謝料などの賠償の問題だけですが,症状が残存した場合には後遺障害の問題が出てきます。後遺障害は,通常,保険料率算出機構(下部組織となる自賠責保険調査事務所)に後遺障害の等級認定申請をし,後遺障害といえるかどうかを審査してもらいます。その結果を基本に交渉が進むのが一般的です。

後遺障害が認定された場合とされない場合とで賠償額は大きく変わってくるため,ムチウチの事案では重要なポイントとなってくるといっていいでしょう。

しかし,このムチウチの後遺障害の獲得というのが難問で,なかなか簡単にはいきません。

ムチウチに限った話ではありませんが,痛みやしびれといった症状自体が後遺障害認定の対象となっている場合(14級には「局部に神経症状を残すもの」という認定があります),基本的にその原因を直接的に証明できる物的証拠がありません。患者本人の訴えや症状の推移等から判断せざるを得ないわけです。この点が,ムチウチの後遺障害等級の獲得の難しいところです。

弁護士法人心のムチウチに関するサイトはこちら

当番弁護

当番弁護制度というものがあります。

刑事事件で身柄を拘束されてしまった方が早期に弁護士による弁護を受けられるよう,初回の接見を無料で行っている制度です。

弁護士には当番日が割り当てられており,その日に逮捕され身柄の拘束を受けた方のところへ出動します。

 

刑事事件では,基本的に早期の弁護活動が重要になってきます。

例えば,黙秘戦略といって,一切取り調べの際の質問に答えないような方針をとることがあります。その戦略をとる前に取り調べで黙っておくべきことを話してしまうかもしれませんし,そもそも捕まっている方はどういった方針をとるべきか否かの判断を仰ぐ必要があるでしょう。

当番弁護士として出動した後,そのまま勾留されて身柄拘束期間が延びる場合には,国選弁護人ないし私選の弁護人として引き続き刑事弁護を継続する場合もあります。

 

たしかに,逮捕されて身柄拘束を受ける場合にはそれ相応の理由があることが少なくありません。しかし,例えばお酒に酔って周囲のものを壊してしまった,痴漢に疑われたといった理由などで身柄拘束をされる可能性もあります。こういったことは,日常生活の中でいきなり降りかかってくる場合があります。

当番弁護制度という制度の存在については,頭の片隅に置いておいてもよいかもしれません。

組織力

企業で働く方も,公務員等と同じく,弁護士も,複数の取引先との間で仕事をしたり,何百人もの契約者の問題を扱ったりと,複数の業務を同時進行で行っています。

そうすると,各業務の進行管理も重要になってきます。しっかりとした現状把握と,状況に応じた対応をしていかなければなりません。

資料をコピーして郵便を出して,裁判用の書面を作って裁判所で尋問をして。個人事務所の先生の中には,事務員さんを雇わず,すべてを自分だけで行っていらっしゃる弁護士の先生もいらっしゃいます。

当法人はそれなりの規模になってきて,弁護士も,他の資格者も,サポートしてくれる事務員さんの数も随分と増えてきました。当法人では,基本的に受任してから案件終了まで各弁護士が最初から最後まで担当していますが,問題にぶつかったときに他の弁護士の意見を聞き,複数の視点から案件を見ることができることは刺激にもなりますし,得られる経験も大きくなるように思います。

基本的な業務の進行は弁護士ごとに多少異なりますが,自分自身,事務員さんに支えられ,弁護士にしかできない問題の処理や相談対応などに注力することができるので助かっています。

「マンパワー」なんて言葉もありますが,人数がいれば業務の効率化を図ることができますので,ある程度の件数を抱えることになっても,協力して進めていけるのは大きなメリットですね。組織力というのは本当に力強いものだなぁと実感します。

 

いつもありがとうございます。

元号

元号の変更が話題になっていますね。

さて,「元号法」というものをご存じでしょうか?

…弁護士の職務上法律とのかかわりが深いため,どうしても法律に関する話題となってしまうことはご容赦ください。

 

以下,元号法の内容です。

元号法

1 元号は,政令で定める。

2 元号は,皇位の継承があつた場合に限り改める。

附 則

1 この法律は,公布の日から施行する。

2 昭和の元号は,本則第一項の規定に基づき定められたものとする。

 

…附則も含めてたった4項しかありません。法律といえば何百条,ものによっては千条を超える膨大な法律条項をイメージされる方が少なくないと思います。

しかし,元号法をみれば,「何事にも例外はある」ということがよくわかりますね。

 

元号法の附則2項には,「昭和の元号は,本則第一項の規定に基づき定められたものとする。」と書かれています。つまりこの法律で初めて定められた元号は昭和である,ということになります。この法律はまだ2回しか出番がなかったようです。

そう考えると,新元号への改元は元号法上3度目の歴史的な瞬間,という見方もできます。

 

過去には2000年問題でパソコンに支障が出る,ということがあったので,元号の変更も業務上何らかの支障となるかもしれません。パソコンは今やデスクワークにおいて必須の存在となっていますから,あらかじめ十分準備しておきたいところです。

 

法律という側面からアプローチすると,少し違った見え方をすることがあります。

なお,弁護士だからといって公私問わず24時間何でもかんでも法的側面から物事を捉えている,という方はさすがにいらっしゃらない,と思います。。

公正証書

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

今回は公正証書について。

公正証書というものをご存知でしょうか。

合意等についてより確実なものとするために,所定の手続を経て作成する書面です。

 

「公証人」という立場の方が書面作成に関与し内容を厳正に確認の上,原本は公証役場に保管されることになります。

このようにある程度厳格な手続きを経て作成されるものであることから,個人が作成した書面と異なる効果があります。

例えば,相続事件では,亡くなった方の作成した遺言が問題となることがありますが,ご自身で作成した通常の遺言(自筆証書遺言)と,公正証書としての遺言(公正証書遺言)では,法律上の取扱いが異なっていたりします。遺言について詳しくはこちら

ちなみに,民法上は,秘密証書遺言,という種類もあるにはあるのですが,あまり利用されていないようですね。

 

また,「執行認諾文言」のある公正証書を作成した場合,裁判を起こして判決を得ることなく強制執行等をすることができます。

 

弁護士の仕事というと,やはり裁判をイメージされる方が多いのかもしれませんが,案件の内容や状況により色々な方策を検討しています。公正証書の作成もその選択肢の1つとなることがあります。

年末年始

今年も終わりが近づいてきましたね。

年末年始はお仕事で忙しい方が少なくないのではないでしょうか。

また,忘年会等,飲み会の数も多くなる季節でもあります。

もしかしたら去年も話題にしたかもしれませんが,年末年始は交通事故のご相談が他の時期よりも多くなる傾向があるように思います。

年末年始の忙しい時期に,企業法務関係であればともかく,交通事故やら刑事事件やらで弁護士に相談しなければならない事態に陥る,というのはあまり気持ちの良い年越しではないのかな,思います。

飲酒運転は絶対にやめましょう。

 

ちなみに,飲酒運転については,酒気帯び運転と酒酔い運転が問題となることがあります。

「酒気帯び」というのは,体内に一定量以上のアルコールが入っている状態での運転を意味しますので,一定量を越えればどんなにお酒の強い方でも酒気帯び運転の罪に問われます。

他方,「酒酔い」というのは,酒に酔って正常に運転できない「状態」を指し,必ずしもアルコールの量に左右されるものではありません。

あまりないかと思いますが,お酒を1滴でも飲んで足元がふらつくほどに酔ってしまう体質の方がその状態で運転したとすると,酒気帯び運転ではないが酒酔い運転になる,というケースが一応考えられます。

 

なお,単に刑事罰だけでなく,行政罰(免許の違反点数などです)も当然付随します。

あまり羽目を外し過ぎることなく,良いお年をお迎えください。

確定拠出年金

確定拠出型年金というものをご存知でしょうか。

お勤め先の退職金について,一部ないし全部が確定拠出年金となっている方もいらっしゃるかと思います。

個人型確定拠出年金(iDeCoと聞けば「知ってる」,という方もいるかもしれません。)というものも少しずつ認知されてきているようですね。

この確定拠出年金ですが,基本的に差押禁止財産とされています。

差押禁止財産は,本来的自由財産とされます。

 

…さて,日常用語が少なくなってきましたね。破産手続等債務整理にまつわるお話となるのですが,少し説明を加えていきたいと思います。

破産手続において,自由財産というのは,簡単に言うと破産手続後も手元に残せる財産,といえます。

「本来的」自由財産というのは,手続を要せず当然に残る財産です。

確定拠出年金はその本来的自由財産ですので,破産手続の影響を受けずに残すことができます。そのため,車や家等々,色々なものを手放す覚悟をしていたところ,確定拠出年金のおかげで思ったより財産を残すことができた,ということもあります。

 

もっとも,「基本的に」と書いたように,確定拠出年金にはいくつか種類があり,規律する法律も異なります。差押禁止財産とならない確定拠出年金もありますのでご留意ください。このあたりは弁護士にご相談の上ご確認いただく必要があるかなと思います。

 

確定拠出年金はそれ自体税制優遇等メリットもあるみたいです。60歳までは積み立てた分は引き出せない,というデメリットもあるようですが。。

 

老後のご準備は計画的に。

非免責債権(ひめんせきさいけん)

自己破産が認められると,裁判所が,債務を支払いをしなくてよいですよ,という決定を出します。

これを免責決定といいますが,免責決定を受けても,支払いの義務を逃れることができない債務があります。

非免責債権と呼ばれるものです。

簡略化していますが,概ね以下のものが非免責債権となっています。

 

①租税債権

簡単に言えば税金です。支払いは国民の義務ですね。

②悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権

相手をだましてお金を借りたような場合,その借金の返済についてまで免責を認めるのは騙された被害者にとっては酷だといえるでしょう。

③故意または重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく債権

例えば飲酒運転で交通事故を起こして大けがをさせてしまったが,お金を払うことができないので破産します,という自己破産は許されるものではないと思います。

④親族関係の債権

養育費や別居中の婚費の支払いなどです。

保護すべき権利と考えられているため,これも非免責債権となっています。

⑤雇用関係の債権

勤め先が破産した場合,未払いの給料が払われなければ困ってしまいます。

養育費等と同様,要保護性の高さから非免責債権とされているものです。

⑥債権者名簿に載せなかった債権

手続的な話となってしまいますが,債権者は破産を認めるか否かについて意見を出す機会が保障されなければなりません。債権者は事実上返済を受けられなくなるという大きな不利益を被るからです。この機会を奪われた債権者の権利は保護するという趣旨です。

⑦罰金等

本人に負担させるべきものとの考えから,これも非免責債権です。

 

主に政策的な理由から免責を認められていないものです。微妙に理由は異なってきますが,羅列してみると,免責されないこととされているのもうなずける部分はあるのではないかと思います。

ちょっと踏み込んだ内容になってしまったのですが,ざっくりいえば,「破産してしまえば何もかも支払わなくてよくなる,というわけではありませんよ」ということになるでしょうか。細かい話は弁護士から直接聞いたほうがよいと思いますが,ざっくりまとめてみました。

何かの参考になれば幸いです。

法的整理の資料収集

自己破産や個人再生などの裁判所を利用した法的整理の申立を行うにあたっては,いろいろと資料を集めなければなりません。

 

裁判所ごとに微妙に運用が異なり,必要書類も多少変わってきますが,主なものとして,申立前直近の家計表2か月分ないし3か月分(家計簿のようなもの),申立人名義の預金通帳の写し2年分,住民票,退職金規定(退職金の額がわかるもの),登記簿,不動産の査定書,給与明細,源泉徴収票等々があります。

…羅列しただけでも量が多いのがわかると思います。さらに,職務経歴や借入の経緯などについて等を記載した申立書,財産目録なども作成しなければなりません。

…なかなか骨が折れるかと思いますが,これらの資料は申立人自らそろえていただく必要があります(家計表の作成などはご本人にやっていただかなければなりませんし,個人情報に関わる書類は代理人を介するより本人による方がはるかに簡単に取り付けられます)。

そのあと大量の資料に目を通し,問題点がないか精査するのも簡単ではありませんが,手続きを終えた後には,多額の債務の支払いを免れることができたり(自己破産で免責された場合),返済額を大幅に圧縮できたり(個人再生で認可決定を受けた場合)と,得られる結果も大きいです。

 

手続の主役は申立人である,という言葉もあります。

以上のとおり,法的整理を選択された場合には大変なところもありますが,代理人弁護士として精一杯サポートさせていただきます。

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容疑者

「容疑者Xの献身」。少し前に映画の方で観ましたが,名作でした。

 

この「容疑者」という言葉,弁護士等法曹関係者は基本的に使いません。

起訴される前は刑事訴訟法では「被疑者」という用語が使われています。たしか大学時代にも,「容疑者というのはメディア用語だ」と教わった記憶があります。

いろいろ調べてみると,容疑者という言葉を使う背景は,マスメディアが「被疑者」と「被害者」とが紛らわしいという点を配慮してということのようです。たしかに一文字違いなので紛らわしいようにも思います。

ただ,さらに調べていくと,犯罪捜査規範等で「容疑者」という言葉は被疑者と別に使われているようです。そうなると,「容疑者という言葉は法律用語ではない!」と断言することはできないみたいです。

 

もう1つ,マスメディアでは,起訴された後は,「被告」と呼んでいますが,刑事訴訟法上は,被告「人」です。民事訴訟では訴えた方を「原告」,訴えられた方を「被告」と呼んでおり,「被告」と「被告人」とは明確に区別されています。

民事裁判を起こされた方は,原告側から「被告」と呼ばれることになり,普段テレビなどで聞いている用語であるために気分を害される方もいらっしゃるようですが,刑事法違反を争うわけではありませんのでご安心ください。

 

とはいえ「被疑者Xの献身」だと語呂が悪い気がします。「容疑者X」なんですねやっぱり。