個人再生後に一括返済や繰上げ返済はできるか

2021年5月もあと数日ですね。

東京では夏日の日もちらほら出てきてますね。

前回は、自己破産と相続との関係について書きましたが、今回は、個人再生後に一括返済や繰り上げ返済ができるかについて書いてみたいと思います。

個人再生は、債務整理の種類の内、裁判所に再生計画が認可されると借金の一部を免除してもらえる制度です。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

小規模個人再生では、①100万円、②借金総額の5分の1、③清算価値のうち最も高い金額まで借金を減額し、原則として3年、特別な事情がある場合には5年で返済をすることになります。

返済は、あくまで裁判所に認可された返済計画に従って行うのが原則です。

個人再生をした後に、給与が上がるなどして収入が大幅に増えた場合や、相続によって遺産分割を受けてまとまった財産を取得した場合に、裁判所の認可を受けた返済計画どおりに継続的に支払いをするのではなく、債務を繰り上げて返済したり、一括で返済したいと考える方もいるのではないでしょうか。

個人再生の場合は債務に利息が付きませんので、返済期間を短縮しても利息が少なくなるメリットはありませんが、早く債務の支払義務から解放されたいと考える方も多いと思います。

一括返済とは、文字どおり、債務全額を1回で支払うことをいいます。

繰り上げ返済とは、毎月の返済に加えて債務額の一部または全部を返済することをいいます。

個人再生の繰り上げ返済では、返済期間を短くする方法が用いられます。

個人再生後の繰り上げ返済は、法律上禁止されていませんので、結論としては一括返済や繰り上げ返済は可能です。

ただし、債務整理をする場合、原則として債権者を平等に扱うべきという「債権者平等の原則」という考え方があります。

特に個人再生は裁判所を介する法的債務整理手続のため、「債権者平等の原則」が厳格に適用されます。

個人再生後に一括返済や繰り上げ返済を行うのであれば、一部の債権者に対してのみ一括返済や繰り上げ返済をすると他の債権者に不公平になりますので、全ての債権者に平等に返済しなければなりません。

このように、全ての債権者に平等に一括返済する場合は、基本的には問題ないとされています。

ただし、あくまで債権者が同意することが前提となります。

また、個人再生後に、圧縮された債務には利息が付きません。

そのため、一括返済や繰り上げ返済で債務の返済が早まることで債権者側に生じるデメリットはありません。

したがって、一括返済や繰り上げ返済を拒否する債権者はほとんどないと考えられます。

ただし、個人再生の手続開始からあまり日が経っていない場合には注意した方が良いと思われます。

債務者が返済不可能な状態にあったからこそ、裁判所に個人再生の申立てをし、債権者が債務を圧縮することに同意したにもかかわらず、裁判所の認可が出てすぐに一括返済や繰り上げ返済をするとなると、最初から借金の減額を目的にして不正な方法により不当に債務を免れることが目的だったのではないかと疑われる可能性が高くなります。

特に再生計画認可から半年も経過していない場合は、債権者が不満に思ったり、財産隠しを疑われる可能性もあります。

そのため、一括返済や繰り上げ返済をするのであれば、そのタイミングや債権者との交渉については、弁護士などの専門家に事前によく相談することが大切です。

自己破産と相続との関係について

2021年4月の終わりも見えてきましたね。

東京もだいぶ暖かくなってきて春を感じるようになってきました。

前回は、債務整理する場合の金融機関の口座の処理について書きましたが、今回は、自己破産と相続との関係について書いてみたいと思います。

 

自己破産すると相続ができなくなるのではないかとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、自己破産しても相続はできます。

相続には、「相続欠格」という制度があります。

相続欠格に当たる場合は民法で限定的に規定されており、該当する場合は相続権は永久に失われてしまいます。

具体的な例としては、故意に被相続人や他の相続人を死亡させた人や、詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を、作成、撤回、取消し、変更することを妨げた人などがこれに当たります。

自己破産はこれらに該当しませんので、相続欠格にはなりません。

 

また、相続には、「廃除」という制度もあります。

相続人の廃除とは、被相続人への虐待行為があるなどの事情によって被相続人が自身の遺産を相続させたくない推定相続人がある場合に、家庭裁判所に相続排除の申立てをして相続権をはく奪することができる制度です。

被相続人が遺言の中で廃除する相続人を指定することよって、遺言執行者が相続廃除の申立てを行うこともできます。

このように、自己破産をしたこと自体は原則として廃除事由には該当しません。

 

それでは、自己破産をする場合に、相続が発生するタイミングによって、自己破産を申し立てる債務者の方(破産者)にどのような影響があるのでしょうか。

相続が発生する時期によって、手元に相続財産がどれくらい残るかが変わってきます。

 

自己破産を申し立てる前に相続が発生した場合は、他の相続人と同じ状況にありありますので、遺産分割協議をして遺産を相続し、必要があれば相続税を支払うことになります。

そして、取得した相続財産で借金を返済することになります。

相続財産では借金を返済しきれない場合は、改めて債務整理をするかどうか検討することになります。

この場合、相続財産は手元に残らないことになります。

 

自己破産の申立て後、破産手続開始決定が出る前に相続が発生した場合も、申立て前に相続が発生した場合と同様に、申立人は遺産を取得したことになります。

したがって、自己破産の手続の中で、遺産は借金の返済に充てられることになります。

破産者は、破産手続開始時に有する財産の財産管理権を失いますので、破産手続開始決定前に発生した相続による相続財産は破産手続の中に組み込まれ、債権者への返済に充てなければならなくなります。

もし相続によって実家を取得した場合は、実家を失ってしまう可能性が高いため、そのまま自宅に住み続けたいのであれば、自己破産以外の手続、たとえば任意整理や個人再生などで借金を減額できないかを検討することになります。

 

破産手続開始決定後に相続が発生した場合、申立人が取得した相続財産は、自己破産の後に新たに取得した財産になりますので、すべて破産者の財産になります。

そうすると、借金は免責決定によって支払義務がなくなり、かつ、相続財産も取得することができますので、債務者にとっては最も有利になります。

 

相続がいつ発生するかの予測は難しいですが、病気等で入院しているなど事前に予測できる場合もあるかと思います。

そのような場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。

債務整理する場合の金融機関の口座の処理について

2021年3月の終わりも見えてきましたね。

東京もだいぶ暖かくなってきて、桜も満開です。

前回は、過払い金の請求はいつすべきかについて書きましたが、今回は、債務整理する場合の金融機関の口座の処理について書いてみたいと思います。

 

弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士が債権者に対し、受任通知を発送します。

これにより、債務者に資力がないため、債務の支払をすることができないということが債権者に表示されることになります。

そうすると、借入のある金融機関の預金口座に残高がある場合、通常は、保証会社による代位弁済の直前に相殺がなされて残高が0円になります。

このように、弁護士から債権者に受任通知を発送する前に、自分の銀行口座の処理や、光熱費等の支払方法について検討して準備をしておく必要があります。

 

①債務整理をする債権者が銀行等の金融機関の場合、受任通知が到達した時点における預金が、借金と相殺されてしまいます。

また、債務整理をする銀行の系列の保証会社から代位弁済がされるまでは、口座が凍結されるため、入金、出金、口座振替(自動引落し)が原則としてできなくなります。

したがって、受任通知発送までには口座の残高を0円(もしくは限りなく0円に近づけておく)にしておく必要があります。

また、給与口座を変更したり、口座振替(自動引落し)にしている光熱費や携帯電話料金等の支払方法を振込みやコンビニ払いなどに変更する必要があります。

保証会社の代位弁済が終了すれば、借入のある金融機関であっても、法律上は、受任通知発送前と同じように預金取引ができます。

 

②債務整理をする債権者が消費者金融で、かつ、銀行等の金融機関の系列会社である場合、系列の金融機関の口座が凍結される可能性があります。

口座が凍結されてしまうと、系列の金融機関からの入金、出金、口座振替(自動引落し)ができなくなる可能性があります。

したがって、受任通知発送までには口座の残高を0円(もしくは限りなく0円に近づけておく)にしておいた方が無難です。

 

③債務整理をする債権者が銀行等の金融機関ではなく、銀行系列の消費者金融でもない場合、お持ちの金融機関の口座が凍結されることはありません。

しかし、債権者への支払方法が口座振替(自動引落し)になっている場合は、受任通知到達後も債権者のシステムの都合上、預金から引き落とされてしまうことがあります。

この場合、返金手続に時間がかかってしまったり、破産・再生手続においては偏頗弁済とされる可能性もあります。

このように、債務者側に不利益になる可能性がありますので、債権者への支払方法が口座振替(自動引落し)になっているかどうかをご確認いただきまして、債権者への支払方法が口座振替(自動引落し)になっている場合は、受任通知発送までにその口座の残高を0円(もしくは限りなく0円に近づけておく)にしておいた方が無難です。

 

④債務整理するクレジットカードで光熱費等の支払いをしている場合

債務整理するクレジットカードで光熱費等の支払いをしている場合、本来は、そのクレジットカードを使用してはいけません。

しかしながら、債権者のシステムの都合上、決済がされてしまう場合があります。

債務整理するクレジットカードで光熱費等が引き落とされた場合は、債権者が債権額を確定できなくなるため、手続の進行に支障が出ることがあります。

そのため、光熱費等の支払方法を振込みやコンビニ払いなどにする必要があります。

 

自分がどの口座で、どのように支払いをしているかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような場合は、債務整理に詳しい弁護士に相談して、整理してみるとよいでしょう。

過払い金の請求はいつすべきか

2021年2月も終盤です。

2月はあっという間に終わってしまいますね。

東京の緊急事態宣言もそろそろ終わるのでしょうか。

 

前回は、過払い金返還請求をしたいが資料がない場合について書きましたが、今回は、過払い金の請求はいつすべきかについて書いてみたいと思います。

 

過払い金請求は、払い過ぎた利息が戻ってくるというものです。

既に借金を完済している人も、今まさに借金を返済中の人も、どちらの人にもメリットは大きいといえます。

また、過払い金を返せという権利は、一定の期間が過ぎると時効によって消滅してしまいます。

早めに請求をしていれば過払い金を支払ってもらえる可能性があったにもか かわらず、迷っていて権利を消滅させてしまうことはできるだけ避けるべきです。

そのため、過払いの相談は、すぐにでも行うべきです。

 

もっとも、完済後に過払い金返還請求をするにあたり、注意すべき点もあります。

 

まず、過払い金はキャッシングでの借入れしか発生しませんが、過払い金の請求時に、もしショッピング枠に支払いが残っている場合は、キャッシング枠の過払い金が充てられます。

過払い金の充当してもショッピング枠の支払いが残ってしまった場合、債務整理扱いとなり、信用情報に登録される可能性があります。

そのため、過払い金を請求する前に、ショッピング枠の利用状況を確かめておくとよいでしょう。

 

次に、過払い金請求する業者が吸収合併した業者に対する債務がないかどうかを確認する必要があります。

もし、業者①に過払い金請求する場合、業者①が吸収合併した業者②にも借金がある場合、完済とは認められず、債務整理扱いになる可能性があります。

そのため、過払い金を請求する前に、業者①が吸収合併した業者②にも借金がないかどうかを確かめておくとよいでしょう。

 

最後に、過払い金請求する業者の保証会社のカードローンを利用しているかどうかを確認する必要があります。

もし、過払い金請求する業者の保証会社のカードローンを利用しているというように、関連する会社の借金がある場合、完済とは認められず、債務整理扱いになる可能性があります。

そのため、過払い金を請求する前に、過払い金請求する業者の保証会社のカードローンを利用していないかどうかを確かめておくとよいでしょう。

以上

過払い金返還請求をしたいが資料がない場合

2021年1月ももう終わりですね。

今年もあっという間に終わってしまいそうな気がしてしまいます。

東京のコロナの人数が増えてきていますね。

早くワクチンや治療薬ができるといいですね。

 

前回は、過払い金返還請求における取引の分断について書きましたが、今回は,過払い金返還請求をしたいが資料がない場合について書いてみたいと思います。

過払い金とは、簡単にいうと、借主が貸金業者等の貸主に返済しすぎたお金です。

利息制限法に定める上限利率を超える高い利率でお金を借りていた場合に、利息が払いすぎになっていることがあります。

この払いすぎた分が過払い金です。

過払い金が発生するためには、通常、5~7年間以上取引を継続していることが必要となります。

したがって、長期間の返済を経て、借金を返済し、その後に過払い金返還請求をすることになりますので、その間に契約書や取引明細書を紛失している方が多いのではないでしょうか。

もっとも、貸金業者には、各債務者の帳簿を保管し、全ての取引履歴を開示する法的な義務があります。

そのため、取引履歴の開示請求をして、開示された取引履歴をもとに過払い金の返還を請求することは可能です。

また、どこの金融業者から借入れをしたか覚えていなくても、債務者本人が信用情報機関に問い合わせることで、どこの金融業者から借入れをしていたのか把握できる場合もあります。

取引期間が非常に長期に及ぶ場合や借金を完済している場合には、貸金業者から全部の取引履歴が開示されない場合もあります。

そのような場合に、全ての取引履歴が開示されているかどうかをチェックするためにも、契約書等の資料が残っている方が望ましいといえます。

また、預貯金の通帳や取引履歴から、貸金業者の入出金記録を調査できる場合もあります。

過払い金返還請求にあたっては、一番最初に借入れをした時期と最後に返済した時期は大変重要な情報になりますので、できる限り借入当時のことを思い出せるようにしておくといいでしょう。

 

もし過払い金が発生していそうな場合で、資料を紛失してしまった方は、過払い金の分断の問題に詳しい弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。

過払い金返還請求における取引の分断について

年末ですね。今年もあと4日になりました。

東京もかなり寒くなってきてますね。体を冷やすといいことがないので、気を付けたいところです。

前回は、過払い金について書きましたが、今回は,過払い金返還請求における取引の分断について書いてみたいと思います。

 

過払い金とは、簡単にいうと、借主が貸金業者等の貸主に返済しすぎたお金です。

過払い金返還請求において、債権者からよく争われる問題が、取引の分断の問題です。

取引の一連性の問題と言われることもあります。

この取引の分断の主張が認められると、過払い金が返還されないことになるため、最も重要な問題とも言えます。

 

借金をいったん完済した後、再び同じ貸金業者から借入れをして取引を再開するということはよくあると思います。

この場合、最初の取引と次の取引が一つの取引であれば、両方の取引が連続しているものとして、一連で引き直し計算をすることになります。

しかし、この最初の取引と次の取引とが、まったく別個の取引として扱われた場合は、どのように引き直し計算をすべきでしょうか。

一連で計算する場合は、取引中断前に発生した過払い金を、取引中断後の借入金に充当して計算することができるため、取引が分断されたものとして各取引を個別に引き直し計算をする場合よりも、過払い金の金額が増えることが多くなります。

そのため、借主側からすれば、当然、一連で引き直し計算した結果を主張することになり、他方、貸主側は、2つの取引が別々のものとして取り扱うべきであるという主張をすることになります。

これが、いわゆる取引の分断と呼ばれる問題です。

 

分断した複数の取引を一連のものとして計算できるのかどうかを判断するにあたっては、債権者と債務者との間に過払金充当合意があるかどうかという点が問題となります。

過払金充当合意とは、取引中断前の取引で発生した過払い金を、取引中断後の借入金に充当させる旨の当事者間の合意のことをいいます。

もっとも、貸金業者が、契約締結の際に、もし過払いが発生した場合、取引中断後の借入金に充当することを認めるといった内容の契約をすることはないため、この過払金充当合意とは、あくまで裁判所が考え出した法的なフィクションのようなものです。

裁判所の考え方の根底には、取引が分断している以上、本来的には別々に計算をすべきだという考えがあります。

これに対して、分断した取引を一連で計算させるための理由づけとして、この過払金充当合意という擬制的な考え方を用いているのです。

 

取引の分断の問題は、空白期間があれば、債権者がほとんどの場合主張してくるため、多くの裁判例が積み重ねられ、最高裁判所の判例によって、一定の基準が定まってきています。

 

もし過払い金が発生していそうであって、ご自身の取引が分断している方は、過払い金の分断の問題に詳しい弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。

過払い金が発生しているかどうかの確認の仕方について

もう11月も終わりが近づき、今年もあと1か月ほどになりました。

東京も寒くなってきてますので、インフルエンザや体調管理には気を付けたいところです。

前回は、年金担保貸付制度について書きましたが、今回は,過払い金について書いてみたいと思います。

 

過払い金とは、簡単にいうと、借主が貸金業者等の貸主に返済しすぎたお金です。

利息制限法1条は、元本10万円未満の場合は年20%、元本10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%を上限利率とし、この制限を超えた利息の支払いは無効と規定しています。

しかし、平成22年以前には、利息制限法と出資法で異なる上限利率が認められており、出資法には反しないが利息制限法に定める上限利率を超える高い利率でお金を借りていた場合に、利息が払いすぎになっていることがあります。

この払いすぎた分が過払い金です。

過払い金があるかは、正確には取引履歴を貸金業者に出してもらわなければ分かりませんが、ここでは簡単に過払い金があるかを大体で見分ける簡単な方法があります。

まず、過払い金があるためには、利息制限法の上限利率を超える高い利率で借入をしている必要があります。

平成18年の貸金業法の改正により、利息制限法所定の利息制限額を超えた契約が禁止され、この改正法が平成22年6月18日に完全に施行されました。

このように、法律で利息制限法と出資法の上限が統一されたのは平成22年ですが、それ以前でも、消費者金融やカード会社等の貸金業者で自主的に利息制限法の上限利率を超えない範囲内の利息で貸し出すようになったところもあります。

そして、貸金業者が自主的に金利を引き下げ始めた時期は、おおむね平成18年~20年頃です。

貸金業者による金利引き下げの対応は、ほとんどが平成19年中に終了していますので、平成19年以前から借入れをしている場合でなければ、利息制限法の範囲内の利率であるため過払い金は発生していないと思われます。

利息制限法の上限利率を超える高い利息で貸していたのは、基本的に消費者金融とカード会社です。

銀行のカードローンや住宅ローン、車のローン等は、昔からこのような高い利息の商品はなかったことから、過払い金が発生していないと思われます。

過払い金があるためには、消費者金融又はカード会社のキャッシングでなければならないということになります。

また、過払い金は、最終取引から10年たつと、消滅時効の成立により返してもらえなくなるという最高裁判所の判例があります。

今もキャッシングでの借り入れがあり、返済し続けている方は、基本的に最後の取引は先月や先々月でしょうから、時効の問題はありません。  しかし、完済している方は、基本的に、完済日が最終取引日ですから、完済から10年たつと時効により過払い金を返してもらうことはできなくなります。

コロナ禍で収入が減ってお困りの方も多くいらっしゃると思います。

もし過払い金が発生していそうであれば、気になるとこだと思いますので時効にかかる前にお早めに弁護士等にご相談されるとよいのではないかと思います。

年金担保貸付について

10月も終わりが近づき,肌寒くなってまいりました。

急激に気温が下がってきておりますので,体調管理には気を付けたいところです。

 

前回は,個人再生について書きましたが,今回は,年金担保貸付制度について書いてみたいと思います。

年金担保貸付制度は,国民年金や厚生年金保険に基づく年金受給権を担保として融資を受けることが法律で唯一認められた制度です。

保健・医療,介護・福祉等の支出のために一時的に小口の資金が必要な場合に利用することができます。

だれでも融資することができるわけではなく,独立行政法人福祉医療機構のみが実施することができます。

年金担保貸付制度は,公的機関が行う公的年金を担保にした唯一の貸付事業ですが,令和4年3月末で申込は終了となり,年金担保貸付制度は廃止されることとなりました。

廃止の理由としては,そもそも年金担保貸付制度は,年金受給者が一時的に資金が足りなくなった場合に,年金を受け取る権利を担保として小口の資金の貸付けを行う制度として利用されていました。

しかし,生活に余裕がなくて借りた場合,生活費に充てるべき年金を返済に充てなければならなくなってしまうため,いざ返済が始まると生活が困窮してしまいます。

また,返済方法は,本来もらえる年金額から返済分が差し引かれて振り込まれます。

そのため,返済額を差し引いた残りの年金しか受け取れません。

さらに,自己破産しても免責の対象とならないため,年金担保の返済も引き続きしなければなりません。

そこで,利用者の困窮化を防ぐために,年金担保貸付制度が廃止されることとなりました。

自己破産を検討されている方で,年金担保貸付を利用されている方は,免責の対象とならないので注意が必要です。

弁護士に相談される際は,忘れずに申告するとよいでしょう。

以上

個人再生について

9月も終わりが近づき,気が付けば今年もあと3か月ほどになりました。

過ごしやすくなってきましたね。

前回は,自己破産のメリットとデメリットについて書きましたが,今回は,個人再生について書いてみたいと思います。

 

個人再生とは,端的に説明すると,現在の資産や今後の収入では,すべての債務の返済が困難という状態の方が,裁判所に,税金や養育費などの例外を除く,全ての債務の返済額を大幅に免除してもらい,分割で支払っていく手続です。

免除後の債権額がいくらになるかは債権額によって変わりますが,5分の1程度に圧縮されると説明されることが多いです。

支払期間は原則3年間,36回の分割払いで行い,特別な事情がある場合には,裁判所の許可をもらって最長5年,60回の分割払いとすることができます。

 

個人再生の手続は,大きく分けて2つあります。

個人再生には,小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続があります。

小規模個人再生が原則的な手続であり,給与所得者等再生が特則という関係になっています。

 

小規模個人再生では,裁判所に申し立てた後,債務を大幅に減額することについて,債権者の意見を聞くことになります。

そして,債権者の頭数で過半数,もしくは債権総額の過半数相当額を有する債権者が積極的に反対意見を出した場合は,小規模個人再生を続けることができなくなります。例えば,債権者が3社いて,債権の総額が500万円だった場合,債権者の内2社が反対するか,250万0001円以上分の債権を有する債権者が反対した場合は,小規模個人再生を続けられません。

 

給与所得者等再生においては,債権者の意見を聞くことなく手続を進めることができます。

ただし,債権者の意見を聞かない代わりに,もうひとつ条件が増えることになります。

返済すべき額が,可処分所得の2年分となります。

可処分所得の2年分を返済するというのは,簡潔に言うと,今の収入で2年間かなり切り詰めた生活をした場合に余る金額を返済するということです。

可処分所得の2年分の金額を計算してみると,最終的な返済額が,小規模個人再生の場合より高額となってしまう場合があります。

そのため,小規模個人再生が利用できそうなら,小規模個人再生を利用するのが一般的です。

 

債権者の数や各債権者の債権額によって,小規模個人再生か給与所得者等再生ののどちらになるかの見通しを立てやすいと思います。

どちらの手続になるか微妙な場合は,弁護士に相談することをおすすめします。

自己破産のメリットとデメリット

8月も終わりが近づいています。

やっと暑さも和らいできたように感じます。

前回は,任意整理のメリットとデメリットについて書きましたが,今回は,自己破産のメリットとデメリットについて書いてみたいと思います。

自己破産手続は任意整理手続とは違って裁判所を利用する手続であり,債務が多額となり,債務者の収入との関係で支払不能と判断される場合に利用を検討すべき手続です。

 

【自己破産のメリット】

①免責により債務を免れることができます(ただし,例外もあります。)。

②債務者の支払能力の有無を心配する必要がありません。

③免責許可申立て後の破産手続廃止決定によって,給与差押えなどの強制執行手続が中止されます。

 

【自己破産のデメリット】

①債務者の名前が官報に掲載されます。

②破産手続開始決定により資格が制限される職業があります。

③原則として,住宅,自動車,保険などの資産を処分しなければなりません。

④免責不許可事由が法定されています。

もし,免責不許可事由に該当する場合は,個人再生手続の検討をする必要があります。

 

自己破産をするにも,申立てに係る費用がかかりますので,現在債務がある方で,従前の計画だと返済が難しくなってしまった方は,収入がゼロになったり預貯金がゼロになる前に,早めに弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。

任意整理のメリットとデメリット

もう7月も終わり,8月に入りますね。

やっと梅雨が明けましたが,コロナの問題はまだまだ続いています。

 

前回は,任意整理手続,自己破産手続及び個人再生手続といった債務整理手続について書きましたが,今回は,任意整理のメリットとデメリットについて書いてみたいと思います。

 

前回のおさらいになりますが,任意整理手続は自己破産や個人再生とは違って裁判所を利用しない手続であり,各債権者と個別に利息制限法の引直し計算後の債務残高について,分割払い等の支払交渉を行う手続です。

 

【任意整理のメリット】

①法的手続ではないので,簡易かつ柔軟な交渉と和解契約が可能です。

②あくまで各債権者と個別に交渉するのが原則ですので,裁判費用がかかりません(ただし,債権者が訴えを提起してきた場合はその対応のための費用が必要にはなります。)。

③引直し計算の結果,過払金があった場合は,任意整理手続と並行して,過払金を裁判上または裁判外のどちらでも請求できます。

④自己破産手続と異なり,資格制限が問題となりません。

⑤自己破産手続における免責不許可事由があっても,任意整理を行うことができます。

 

【任意整理のデメリット】

①あくまで返済することが前提となりますので,債務が残ってしまいます。

②引直し計算による金額までは元本を減額できることが多いですが,それ以上の減額は困難です。

③貸金業者によっては分割払いを一切認めないところがあったり,1年以内や数回での分割払いなど短期間の和解契約しか応じないところがあります。

④通常は,支払期間が3年から5年(場合によってはそれ以上)に及ぶので,途中で挫折する事案もあります。

その場合は自己破産手続に移行せざるを得ませんが,2度手間になってしまうことになります。

 

任意整理を検討する際は,現在の収支を確認して,返済可能額を算出し,無理のない返済計画を立てるのがよいと思います。

現在債務がある方で,従前の計画だと返済が難しくなってしまった方は,収入がゼロになったり預貯金がゼロになる前に,返済計画の見直しという観点からも弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。

債務整理の種類について

もう6月も終わりに近づいてまいりました。。

東京も緊急事態宣言が解除されましたが,コロナにり患した方の人数が増加傾向にあるようです。

他方,感染の危険もさることながら,経済的な負担も大きくなっている方も多いのではないでしょうか。

前回は,不動産売買等に関する大手不動産会社の研修内容について書きましたが,今回は,債務整理の方法に関して整理してみたいと思います。

 

債務整理手続には,主に①任意整理手続,②自己破産手続及び③個人再生手続の3つの手続があります。

①任意整理手続

裁判所を利用しない手続であり,各債権者と個別に利息制限法の引直し計算後の債務残高について,分割払い等の支払交渉を行う手続です。

②自己破産手続

裁判所を利用する手続であり,清算型の手続です。

個人の破産であれば,裁判所の免責決定を得ることを最終の目的とします。

③個人再生手続

裁判所を利用する手続であり,債務の一部免除を受けた上で,残額について分割払いをしていく手続です。

住宅を残したい方がこの手続を選択し,住宅ローンの支払いを継続する住宅資金特別条項を利用する場合が多いです。

 

コロナの影響で収入が減少した,または全くなくなってしまったという方も多いのではないかと思います。

現在債務がある方で,従前の計画だと返済が難しくなってしまった方は,収入がゼロになったり預貯金がゼロになる前に,返済計画の見直しという観点からも弁護士にご相談されるとよいのではないかと思います。

 

四日市市にも支店ができました。

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不動産実務研修

もう5月も終わり6月に入りました。

東京も緊急事態宣言が解除され,八重洲も人手が戻りつつあります。

まだ油断はできないので,やれることを一つずつやっていきたいと思っています。

前回は,国税庁が取りまとめた新型コロナウイルス感染症の影響により期限までに相続税の申告等が困難な方々のためのFAQをご紹介いたしました。

今回は,先日,不動産売買等に関して,大手不動産会社の研修を受けましたのでその内容について触れてみたいと思います。

 

相続,後見や債務整理案件を取り扱っていると,不動産の査定や売買は避けて通れません。

通常は,お付き合いのある不動産業者様に物件調査をしていただいたり,査定をしていただいております。

不動産を売却するにあたって,買主様を探していただくことも多々あります。

 

今回は,より具体的に重要事項説明書や売買契約書を作成するための物件調査の方法を学びました。

現地調査,法令上の制限の有無の調査,生活関連施設の調査等不動産取引の安全を図るためにしなければならないことが非常に多いことを改めて実感いたしました。

今回の研修で学んだことを,今後の相続や債務整理業務に生かせるよう日々精進していきたいと思います。

以上

 

新型コロナウイルス感染症と相続税の申告期限について

もう4月も終わりですね。

東京でのコロナウイルスの問題も深刻化しており,未曽有の不況がきているように感じます。

弁護士として,何かできることはないか考えて行動していきたいと思います。

 

前回は,新型コロナウイルス感染症に関する対応について書いてみましたが,今回は,国税庁が,新型コロナウイルス感染症の影響により,期限までに相続税の申告等が困難な方々のためにFAQを取りまとめているようですのでご紹介いたします。

 

国税庁から,「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ」が公表されております。

この題名で検索していただければ出てくると思います。

 

具体的には,以下の4点について説明がされております。

①相続税申告の個別的な延長が認められる場合

②個別延長が認められた場合の申告期限及び納付期限

③相続税申告に係る各種申請や届出なども個別延長の対象になるか

④個別延長する場合に必要な手続

 

特に上記④について,個別延長する場合には,別途,申請書等を提出する必要はなく,相続税申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記するだけでよいようです。

当初の申告期限以降に,申告書を提出する場合には,新型コロナウイルス感染症の影響による申告期限及び納付期限を延長する旨をこのFAQに記載されている方法で作成するようです。

この場合,申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となります。

 

詳細については,相続税申告をされる税務署等に確認されるとよいと思います。

 

みなさま,お体ご自愛ください。

以上

 

 

新型コロナウイルス感染症に関する対応について

もう3月も終わりが見えてきました。

年度末ですが,東京でのコロナウイルスの問題も深刻化しているように感じます。

特に,飲食業の方や個人事業主,音楽関連のイベント関係者やアーティストのみなさまへの影響が大きいようです。

前回は,民事信託・家族信託について書いてみましたが,今回は,新型コロナウイルス感染症に関する対応について現在わかっている範囲で整理しておきたいと思います。

情報は随時更新される可能性がございますので,ご注意ください。

 

 

・首相官邸

新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

 

・東京都

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tosei/news/2019-ncov.html

新型コロナウイルスに関する中小企業者等特別相談窓口の設置について

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/30/15.html

事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html

 

・東京弁護士会

新型コロナウイルスに関する生活トラブルQ&Aを公開しました

https://www.toben.or.jp/news/2020/03/post-542.html

 

・経済産業省,中小企業庁関係

新型コロナウイルス感染症に関する中小企業・小規模事業者の資金繰りについて中小企業金融相談窓口を開設します

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200311003/20200311003.html

 

・日本政策金融公庫

相談窓口・セーフティネット貸付 (経営環境変化対応資金)、新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付

新型コロナウイルスに関する相談窓口

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

 

 

上記の他,東京23区でも新型コロナウイルス感染症に関する中小企業支援のページがあるようです。

また,各区によって,オリジナルの融資制度がある場合もあるので,更新情報にご注意ください。

以上

 

 

 

 

民事信託・家族信託の可能性について

もう2月も終わりですね。

いよいよ花粉症の時期がやってまいりました。

ニュースを見ていると,東京でのコロナウイルスの問題もかなり身近に迫っているように感じます。

 

さて,前回は,これだけはしておくべき相続の準備について書いてみました。

今回は,民事信託・家族信託について書いてみたいと思います。

 

民事信託や家族信託という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

最近では,クローズアップ現代などのテレビでも取り上げられたこともあり,興味をお持ちの方も多いのではないかと思います。

実際にも,民事信託・家族信託についてのご相談が増えてきているなと感じています。

 

弁護士に何かを依頼するとしたらどのような場合だろうかと考えてみてください。

どちらかというと事故や紛争が起きてから,自分ではどうにもできないトラブルが発生したら,という場合に相談するものだというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。

しかしながら,相続における生前対策の中で特に民事信託や家族信託というのは,何かが起きる前の対策です。

今後高い確率で起きるであろう事象に備えて事前に対策をする,そのために弁護士を利用する。

最近,多くの相続事件に携わるようになって,生前対策の重要性が身に染みて分かるようになってきました。

 

自分が亡くなった場合に備えて,あらかじめ相続の準備をしておくことは,残された相続人のためにも必要です。

自分のご家族と話し合うタイミングというのは,あるようでなかなかないものです。

民事信託や家族信託をきっかけにして,今後のことについて話し合っておくというのもよいと思います。

 

民事信託や家族信託は,成年後見と対比して話題に上がることが多いと思います。

成年後見は,判断能力がなくなってしまったことを公に宣言するものであり,裁判所に申立てをし,弁護士や司法書士が後見人になった場合はその費用もかかります。

後見人が財産管理を行うため,後見人との意思疎通が難しくなる場面もでてくるかもしれません。

 

これに対し,民事信託・家族信託は,そのほとんどが認知症対策として利用されています。

信託契約を結びますので,契約内容に柔軟性を持たせることが可能ですし,遺言や任意後見契約と併用することも可能です。

個人の方で,自ら民事信託・家族信託契約書を組成するのは非常に難しいと思います。

また,遺留分に配慮していない内容にしてしまった場合,自分の意思とは反対に,紛争の原因になってしまうこともあります。

 

このように,上記で述べたような配慮をした上で相続の準備をするためには,民事信託・家族信託契約書の作成について深い知識が必要になることが多いです。

民事信託・家族信託に興味をお持ちの方は,詳しい弁護士にご相談されてみるとよいと思います。

民事信託・家族信託に関して東京で弁護士をお探しの方はこちら

以上

これだけはしておくべき相続の準備

年が明けてもうすぐ2月になってしまいますね。

1月はあっという間でした。

暖冬とはいえ,東京も夜は冬の寒さを感じます。

コロナウイルスはこわいですね。

マスクをするなどして気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,遺留分を生前に放棄してもらうことができるかどうかについて書いてみました。

今回は,これだけはしておくべき相続の準備について書いてみたいと思います。

 

 

相続の準備や相続対策と一概に言われても何をすればよいのか分からないという方は多いのではないでしょうか。

自分が亡くなった場合に備えて,あらかじめ相続の準備をしておくことは,残された相続人のためにも必要です。

日本では,4人に1人が高齢者という高齢社会になっていますが,いわゆる,「終活」などというように,自分の相続に関して準備や対策をする方が増えているように感じます

まず,準備に当たって,相続税の対策のための財産の把握や整理,遺産分割協議をもめないようにするという視点をもつとよいと思います。

そのためには,まず,自分の財産の把握をすることが重要です。

現時点で,不動産,預貯金・現金,株式,投資信託,生命保険金等,自分がどのくらいの財産を持っているか調査してみてください。

財産が把握できたら,誰に,何を,どのくらいあげるか検討してみるとよいでしょう。

 

次に,相続について準備・対策をする上で必要なのは,遺言書の作成です。

遺言書を作成しないまま亡くなった場合,相続人間で,亡くなった方の財産を分割するための話し合いをしなければなりません。

この話し合いの過程で,相続人間で争いが生じるおそれがあります。

亡くなった方の全ての財産について,それぞれ誰に何をどれくらい相続されるかを遺言書で定めておくことで,相続人間で話し合う必要がなくなり,争いを避けることができます。

また,相続財産の中に不動産がある場合には,遺言書で相続する方を定めておけば,その不動産の名義変更をする際にも遺言書によってスムーズに名義変更の手続を進めることができます。

遺言書を作成するということには,たとえ各相続人に法定相続分どおりで相続させるという内容であっても,相続人間での紛争を回避することや相続税申告上のメリットがあります。

もっとも,その記載内容に誤りがあった場合や遺留分に配慮していない内容にしてしまった場合,自分の意思とは反対に,紛争の原因になってしまうこともあります。

また,相続税について,支払う額をできるだけ抑える工夫や相続人が相続税を支払う原資を用意しておくなどの配慮をしておけば,相続人はより有利で安心して相続をすることができます。

このように,上記で述べたような配慮をした上で相続の準備をするためには,相続や遺言書の作成について深い知識が必要になることが多いです。

 

以上ご説明してきたように,相続対策は複雑であり,多岐にわたっています。

相続に関する手続に不安をお持ちの方は,相続に詳しい弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

以上

遺留分の生前放棄

もう12月も終わりますね。

今年もあっという間に終わってしまいました。

東京も冬の寒さを感じます。

インフルエンザが流行っているようですので,気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,相続における香典や弔慰金の扱いについて書いてみました。

今回は,遺留分を生前に放棄してもらうことができるかどうかについて書いてみたいと思います。

 

遺留分とは,相続人のうちの一部の方について,相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺留分は,これまで被相続人の財産を頼りにして生活していた遺族に対する生活保障と,被相続人の財産形成に貢献した遺族には潜在的持分があるという考えから認められています。

 

このように,遺留分は,相続人に一定の割合を認めるものですが,相続人なら誰でも認められているものではありません。

遺留分を有する方は,兄弟姉妹以外の相続人です。

具体的には,子(その代襲相続人を含む),直系尊属(父母,祖父母等),配偶者です。

ただし,相続欠格,廃除,相続放棄により相続権を失った者には遺留分はありません。

相続開始時点で胎児だった子は,生きて生まれてきた場合には,子として遺留分減殺請求もしくは遺留分侵害額請求をすることができます。

兄弟姉妹には遺留分はないことに,特に注意が必要です。

 

遺留分の割合は,以下のように定められています。

① 配偶者だけが相続人であるときは,2分の1

② 直系卑属だけが相続人であるときは,2分の1

③ 配偶者と直系卑属が相続人であるときは,2分の1

④ 直系尊属だけが相続人であるときは,3分の1

⑤ 直系尊属と配偶者が相続人であるときは,2分の1

⑥ 配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者は2分の1,兄弟姉妹には遺留分がない

 

実際に,それぞれの遺留分減殺請求権者もしくは遺留分侵害額請求権者が取得する遺留分は,上記の遺留分の割合に,それぞれの相続人の相続分を掛けたものとなります。

例えば,配偶者と子ども3人が遺留分減殺請求権者である場合では,

① 配偶者の相続分は,2分の1

② 子ども一人ひとりの相続分は,6分の1

となります。

よって,それぞれの相続人の遺留分は,

① 配偶者 2分の1×2分の1=4分の1

② 子ども一人ひとりの相続分 2分の1×6分の1=12分の1

となります。

 

相続人に一定の割合で認められる遺留分を放棄することを遺留分放棄といいます。

通常,遺留分放棄は,法定相続分どおりに均等に相続することによって,農業や自営業の方の資産が細分化されるのを防ぐなど,相続財産の多くを事業の後継者に残す必要があるため,事前に遺留分を放棄することが認められています。

もっとも,遺留分放棄は,放棄するタイミングの違い,すなわち,相続開始前か相続開始後かで手続が変わってきます。

 

 

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には,被相続人となる方の住所地を管轄する家庭裁判所に,遺留分の放棄についての許可審判の申立てをし,家庭裁判所の許可が必要となります。

家庭裁判所の許可が必要な理由としては,仮に無制限に遺留分放棄を認めると,被相続人が威圧したり脅すなどして遺留分権利者に放棄を強要し,本人は放棄したくないと思っているのに,無理やり放棄させられる可能性があることから,これを防止するためになります。

 

家庭裁判所は,①遺留分の放棄が本人の自由意思に基づくものであるかどうか,②遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるかどうか,③遺留分放棄と引き換えの代償の有無などを考慮して遺留分放棄を許可するかどうかを判断し,相当と認めるときは,許可の審判をします。

許可された事例としては,

① 死後に遺産争いが起きることを懸念して,婚外子に財産を贈与する代わりに遺留分を放棄させる場合

② 高齢な親を扶養するために,その親と同居する子以外が遺留分を放棄する場合

などがあります。

 

相続開始後は,自由に遺留分を放棄することができます。

生前の遺留分放棄と異なり,家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分放棄の意思表示は,遺留分減殺請求の相手方に対してするとよいでしょう。

 

以上のとおり,遺留分を生前に放棄する場合は,家庭裁判所に許可の審判を申し立てる必要があります。

各ご家庭の事情によって主張する内容や提出する書類は変わってきます。

相続に関する手続に不安をお持ちの方は,相続に詳しい弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

以上

相続における香典や弔慰金の扱いについて

もう11月も終わりますね。

北海道は吹雪いているところもあるようですが,東京もぐっと寒くなってきました。

風邪が流行っているようですので,体を冷やさないように気を付けたいところです。

 

さて,前回は,農地を相続する場合の注意点について書いてみました。

今回は,相続における香典や弔慰金の扱いについて書いてみたいと思います。

亡くなられた方のお通夜や葬儀で参列者からいただく香典や,亡くなられた方の勤務先からいただいた弔慰金は相続財産に当たるのでしょうか。

相続財産に当たるのであれば,遺贈や遺産分割の対象になりますし,相続税の課税対象にもなるため問題となります。

 

【香典について】

香典とは,故人の霊前に供える金品のことをいい,お香や花の代わりとしたものをいいます。

急な不幸で出費があることへの,ご親族等への助け合いの意味も込められています。

 

香典は,お通夜や葬儀の参列者から遺族への贈与と考えられています。

被相続人が生前に有していた財産ではないため,相続財産には当たらず,また,相続税の課税対象にも当たりません。

もっとも,香典の金額が社会通念上考えられないような高額な場合は,贈与税の課税対象になる可能性があります。

なお,お通夜や葬儀費用は,相続税を計算する際に控除されますが,香典返しにかかった費用は相続税の計算において控除されません。

 

【弔慰金について】

弔慰金とは,死者を弔い,遺族を慰める気持ちを表すために贈る金銭をいいます。

香典とは異なり宗教的な意味合いはないため,葬儀以外の場で送られることが多いと思われます。

一般的には,個人が送るものではなく,公的機関や企業が贈るものです。

 

弔慰金も被相続人が生前に有していた財産ではないため,相続財産には当たりません。

したがって,相続税の問題は原則生じないことになります。

しかし,弔慰金が高額になる場合には,死亡退職金と同様に,みなし相続財産とされ,相続税が課される可能性があります。

 

弔慰金がみなし相続財産に当たる場合としては,以下の2つのパターンがあります。

①被相続人が業務上死亡した場合,被相続人の死亡当時の給与の3年分に相当する金額を超える弔慰金が贈られた場合は,この弔慰金はみなし相続財産に当たります。

②被相続人が業務上死亡した場合以外の場合,被相続人の死亡当時の給与の半年分に相当する金額を超える弔慰金が贈られた場合は,みなし相続財産とみなされます。

 

以上のとおり,香典や弔慰金は,原則として相続財産には当たりません。

しかし,弔慰金のように金額の大きさによっては,みなし相続財産とされ相続税が課税される場合があります。

何が相続財産に当たり,何が当たらないのか,相続税が課税される可能性のあるものは何があるのかなどについては,相続に詳しい弁護士に相談するなどして,押さえておいた方がよいと思われます。

農地を相続する場合の注意点

もう10月も終わりますね。

台風被害に遭われた方々には,心よりお見舞い申しあげます。

さて,前回は,「相続させる」旨の遺言と相続法改正について書いてみました。

今回は,農地を相続する場合の注意点について書いてみたいと思います。

 

1 農地を相続する際の手続

⑴ 農業委員会への届出

土地を相続した場合,法務局で相続登記をする必要がありますが,農地を相続した場合は,相続登記に加えて農業委員会へ届け出る必要があります。

⑵ 農業委員会への届出の期限

相続登記には期限はありませんが,農業委員会への届出は相続を知った ときから10か月以内にしなければなりません。

期限内に届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は,10万円以下の過料が科されることがあります。

 

2 農地を売却するときの手続

相続人のうち誰かが農業を引き継ぐ場合は,農地を相続すればよいのですが,相続人の全員が農業を引き継ぐ意思がない場合,農地を売却することを検討する必要があります。

もっとも,農地は食料の生産に欠かせないものであることから,農地法によって,農地の売却は制限されています。

以下,農地の売却方法について説明します。

⑴ 農地のまま農家に売却する場合

農地を農地のまま売却する場合は,農業委員会の許可が必要です。

この場合の許可は,農地法第3条に基づく許可となります。

許可が下りるためには,買主が農業経営に関わるといった一定の要件を満たすことが必要です。

具体的には,土地の買主が農家であるか,もしくはこれから農業に参入しようとしていることが要件として定められています。

⑵ 農地以外に用途変更して売却する場合

ア 農地を宅地等農地以外に用途変更して売却する場合も,農業員会の許可が必要になります。

この場合の許可は,農地法第5条に基づく許可になります。

許可が下りるかどうかの判断基準としては,立地基準と一般基準があります。

農業委員会は,これらの基準に基づいて許可をするかどうか判断することになります。

イ 農業委員会の許可が下りて用途変更が認められたとしても,宅地としての利便性の有無により,買い手がつかないことなども考えられますので,用途変更をする際に検討しておく必要があります。

 

3 農地を相続放棄する場合

⑴ 相続人全員が農業を引き継ぐ意思がない場合は,相続人全員で相続放棄をすることも考えられます。

相続放棄をする場合は,相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

相続放棄をすると,相続人でなかったことになりますので,農地以外の遺産も受け取ることができなくなりますので,注意が必要です。

⑵ 相続人全員が相続放棄をすると,相続人がいないことになります。

この場合であっても,家庭裁判所が相続財産管理人を選任するまでは,相  続人であった者が農地を含めた遺産の管理をする義務があります。

相続財産管理人には遺産の中から報酬を支払う必要があります。

 

4 さいごに

農地を相続する場合は,さまざまな注意点があります。

生前から農地相続に詳しい弁護士に相談するなどして,相続を円滑にできるよう準備しておきたいものです。

以上