個人再生での生命保険の取り扱いについて

2021年9月も終わりが近づいてきました。

今年も残り3か月です。

東京も暑さがだいぶ落ち着いてきましたね。

前回は、自己破産と相続放棄の関係について書きましたが、今回は、個人再生と生命保険の関係について書いてみたいと思います。

個人再生は、債務整理の種類の内、裁判所に再生計画が認可されると借金の一部を免除してもらえる制度です。

個人再生をする場合、原則として生命保険を解約する必要はありません。

個人再生は、全財産を処分して、借金を返済するという制度ではないため、無理にこれらの保険を解約する必要はありません。

ただし、個人再生では、清算価値保障の原則といって、最低でも手持ちの財産額以上の金額を返済に充てなければならないという決まりがあります。

そのため、生命保険に加入していて、解約返戻金がある場合、解約した場合の解約返戻金の見込額は財産とみなされ清算価値に計上する必要があります。

もっとも、解約返戻金が多額の場合は最低返済額が大きくなるため、毎月の返済可能額を超えてしまう可能性があります。

そのような場合は、生命保険を解約して、解約返戻金を返済に充てなければならなくなる可能性があります。

生命保険の種類には、大きく分けて、掛け捨て型と貯蓄型があります。

掛け捨て型は、保険料を支払っている期間は保証を受けることができますが、解約返戻金はないため、保険を解約してもお金は戻ってきません。

これに対し、貯蓄型は、保険料の払込期間終了後に解約返戻金を受け取ることができます。

生命保険の解約返戻金とは、生命保険を解約した場合や保険料の払込期間終了後に保険会社から戻ってくるお金のことをいいます。

掛け捨て型の具体例としては、医療保険、がん保険などがあります。

貯蓄型の具体例としては、終身保険、養老保険、学資保険などがあります。

掛け捨て型の生命保険に加入している場合、個人再生の手続に影響はありません。

解約したとしても、解約返戻金がないわけですので、清算価値に含めるものがないからです。

他方、貯蓄型の場合は、今生命保険を解約したとして戻ってくる解約返戻金を財産として申告して、清算価値に含める必要があります。

低解約返戻金型保険のように、貯蓄型でありながら、通常の貯蓄型保険よりも保険料が安く設定されている代わりに、途中解約した場合の返戻率が低くなっている商品もあります。

このような低解約返戻金型保険に加入している場合は、清算価値に含める金額も小さくなりますので、個人再生後の返済額への影響は小さくなります。

しかし、通常の貯蓄型保険に加入されていて、もし既に10年以上保険料を払い続けている方は、おそらく今解約したとして戻ってくる解約返戻金は、支払った保険料の8割を超える可能性がありますので、このような場合は、注意が必要です。

また、生命保険の解約返戻金を担保として、生命保険会社からお金を借りている方もいるのではないでしょうか。

この制度のことを契約者貸付制度といいます。

解約返戻金の範囲でお金を借りることができ、利息も金融機関や消費者金融と比べるとかなり安く設定されているところが多いようです。

契約者貸付制度により借りている場合、もともと戻ってくる予定の解約返戻金の一部を先に受け取っているということになりますので、借金ということにはならないので、個人再生の対象にはなりません。

以上