不動産譲渡所得③

前回の続きで,不動産譲渡所得のお話です。

前回は,取得費としてどのようなものが引けるのか,お話をしましたが今回は,取得費とは別に,不動産譲渡所得から差し引ける

「特別控除」について説明します。

取得費は,「儲かった額」を算出するために取得にかかった費用を差し引くという話でしたが,特別控除とは儲かった額の算出とは

関係なく,政策上の配慮等から定められているものです。

 

例えば,①公共事業等のために土地建物を売った場合には,5000万円の特別控除が受けられますし,②マイホームを売った場合には,

3000万円の特別控除が受けられます。東京の都市部は別とすれば,3000万円という金額は,マイホーム売却額のかなりの割合を占めること

が多いですので,マイホームの売却の際は税金はとても安くなることになります。

さらに,③特定土地区画整理事業等で土地を売った場合には2000万円,④特定住宅地醸成事業等のために土地を売った場合には1000万円,

⑤農地保有の合理化のために土地を売却した場合には800万円の特別控除を受けることができます。

①③④⑤の特例は,公共事業等に協力しており,公共の利益のための不動産売却につき,税額を軽減するものです。

 

②のマイホーム特例は,なぜ定められているのでしょうか。

この制度は,マイホームの売却に高い税金がかかると,売却に消極的になり,中古不動産の流通阻害や,空き家が増加してしまう等の

問題が生じることから,定められている制度です。

このような制度の目的から,マイホームの売却として特例を受けるためには,⑴現在主として住んでいる自宅であり⑵居住しなくなってから3年を

経過する日の年末までに売却し⑶家屋を壊した場合には,家屋を壊してから1年以内にその敷地の売却の契約が締結されていること⑷単身赴任の場

合には,配偶者等が居住していること等の条件が定められているので,注意が必要です。

さらに,マイホーム売却を阻害させないために,10年を超えて所有した場合の軽減税率の特例をも併用できる場合があります。

マイホームの売却の際には,これらの要件を満たしているか否かを含め,よく税理士に相談することが必要です。

 

少し変わった特別控除の政策として,平成21年1月1日から平成22年12月31日までに取得した不動産の売却の際に,その年の1月1日にお

いて所有期間が5年を超える不動産を売却した場合には,1000万円の特別控除が受けられるというものがあります。

これは,リーマンショック直後という時代背景のもと,資産デフレ脱却等を目的として定められた不動産流通促進策です。

不動産譲渡所得税②

前回の続きで,相続で引き継いだ不動産を売却した場合の,不動産譲渡所得税の注意点についてお話します。

不動産譲渡所得税は,売却した金額自体にかかるのではなく,不動産を売却した金額から,当該不動産を入手した際の費用など(これを

取得費といいます)を差っ引いた金額にかかります。

要するに,不動産を売ったことで儲かった金額についてだけ,課税がされるという仕組みなのです。

取得費には,①土地を購入する時に収めた不動産取得税や登録免許税②立退料③土地の埋め立てや土盛り等にかかった費用④測量費

⑤購入してすぐに建物を取り壊した場合の取り壊し費用⑥土地などを購入するために借り入れたお金の利子のうち,土地などを実際に使用開始

する日までの利息等,不動産の取得に関して支払った費用が広く含まれますので,これらの金額がいくらであったのかをしっかりと説明できる資料

が準備できるかどうかが,正確な申告,ひいては節税につながることになります。

また,これらの取得費用が不明である場合には,取得費を売却額の5%とすることができますが,5%は非常に低い割合ですので,地価が二束三文

であった大昔に買った土地でもない限りは,きっちりと,取得費に関する資料を揃えた方が良いということになります。

資料を探しても見つからないという場合にも,まだあきらめる必要はありません。

合理的な手法により,取得時点での不動産の価額を推測することは認められており,例えば,建物を着工建築物構造別単価,土地を市街地価格指数

で算定することが認められた例もありますので,詳しい税理士へ相談することが重要です。

不動産譲渡所得税①

本日から数回は,相続で引き継いだ不動産を売却した場合にかかる税金の話をしようと思います。

相続で一定以上の財産を引き継いだ場合には,相続税がかかりますが,相続で引き継いだ不動産を売却した場合には,

相続税とは別に,譲渡所得税がかかることに注意が必要です。

不動産譲渡所得税は,不動産を売って利益が出たときに支払う税金です。

不動産を取得してから,売却するまでの期間が長い場合(5年をこえる場合)の税率は15%(住民税5%)で,売却するまでの期間

が短い場合(5年以下の場合)の税率は30%(住民税9%)です。

相続で引き継いだ不動産を売る場合には,亡くなられた方が不動産を取得した時点から,売却するまでにどれだけ期間が経っているかで

計算をしますので,ほとんどの場合が,長期譲渡所得の課税がされることになります。

平成25年から平成49年までは,復興特別所得税として,上記計算による所得税額の2.1%を支払う必要があります。

申告期限は,不動産を売却した年の翌年の3月15日までです。

相続税は意識していても,不動産譲渡所得税のことまで意識がまわらないことがありますし,不動産譲渡所得税は,翌年の住民税にも影響をあたえ

ますので,意識をしていないと,思わぬ高額の住民税に驚くことになってしまいますので,注意が必要です。