相続人がいないとき

相続人が存在しない場合に,被相続人と特別な縁故があって遺産の一部の取得をしたいと考えたり,被相続人に対して債権を有しており,遺産から回収したいと考える場合には,まず相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。

そして,相続財産管理人の選任が済んでも,そこから実際に特別縁故の主張について審理をしてもらうまでには,相当な時間を要します。

なぜなら,相続財産管理人は,相続人が不存在であることを確認し,相続人の方がいないかどうか呼びかけ,遺産を整理(不動産売却等)し,債権者等がいないか呼びかけを行い・・という各手続を行う必要があるため,これらが全て完了し,特別縁故者の申し出ができる期間が始まるのは,相続財産管理人が選任されてから約10か月後になるからです。

相続人が「行方不明」であるとか「疎遠で居場所がわからない」場合は,相続人は「いる」わけなので上記の手続を行うわけではありません。相続人が行方不明で,既に死亡している可能性が高いケースでは,失踪宣告をしたうえで相続財産管理人選任へと進む場合がありますが,失踪宣告についても1年近くかかる手続ですので,特別縁故者の主張の審理までには合計2年以上の時間がかかることを覚悟しなければなりません。

これらの手続にかかる時間の長さを回避する方法としては,特別な縁故をお持ちの方々は,被相続人が亡くなる前に遺言書を書いてもらう方法があります。

遺言書があれば,遺言書に従って財産を取得できますし,被相続人からしても,国庫に帰属するよりはご縁があった方たちが取得することを望まれることが多いように思います。

相続人多数案件で揉めてしまった場合

近年多い相談のパターンその1

相続人が10人以上存在するケースで,多くの相続人が合意を形成しているにもかかわらず,少数の方が判子を押してくれない というケースがあります。

お子様がいない方の相続で兄弟相続となった場合に起きがちです。

このようなケースは,少数の方から見れば争ったところで大きな経済的利益の変動があるわけではなく(もとの相続分も少なく,兄弟相続のケースで寄与等が問題となるケースは稀であるため),話し合いで解決したいところです。

仮に話し合いが決裂してしまっても多くの場合,少数の方の有している相続分は大きさでいえばたいしたことはないことが救いであり,審判にて問題となっている不動産の持ち分につき換価分割や代償分割を提案する等により解決を図ることができるため,解決はそこまで難しくはありません。

解決が困難となるのは,遺産である不動産が共有持ち分であり,ご存命の別の方も共有している,少数の争っている方々も共有持ち分を持っている というケースです。相続人間だけで完結しないため,換価の審判はでませんし,代償分割をしても結局他の持ち分を有する方との折衝が残ります。最悪,共有で遺産分割調停,審判を終わらせた後に共有物分割訴訟という第2の裁判を起こさなければ解決ができません。

不動産は可能な限り共有は避ける というのが基本ですが,このように相続においても,共有であることで解決に時間がかかるというケースも増えています。