不動産相続の豆知識③生産緑地制度2

生産緑地制度の再指定と宅地化について

私は,急激に,ではないですが,暫時都市農地は2022年以降宅地化が進む可能性が高いと考えています。

宅地化抑制(生産緑地再指定)を求める理由 と宅地化を希望する(生産緑地再指定を求めない)理由に分けて記載していきます。

まず,宅地化抑制に働く大きな項目は,生産緑地制度が相続税の納税猶予(免除)とリンクしているという点です。

農地として一定の年月使用することで,相続税が免除される制度を使用している割合は,東京等大都市で約50パーセント強となっています。

宅地化することで,利子税等がかかったうえで納税をしなければならなくなりますので,上記一定の年月 が経過するまでの間は宅地化は事実上

難しいことになります。そうすると,これらの方々は,実際農業継続を望むか望まないかにかかわらず,10年間の再指定を検討することになりま

す。

宅地化希望(買い取り希望)をする大きな理由は,農家に後継ぎがいないことです。

都市農家の90%以上に後継ぎがいないという現状においては,上記相続税免除の制度を利用していない多くの農家は,再指定は望まないはずです。

実際に都市農家へ向けたアンケート結果等でも,再指定を望む方は数パーセントしかいませんので,相続税の免除の制度を利用していない等,特に壁が無い方は,宅地化(買い取り)を希望することになります。

農家に後継ぎがいないという現状に手を打たない限りは,上記傾向は顕著であろうと思いますので,相続税の免除が受けられる年数まで農家をしたうえで,クリアしたら買取を希望する,という方が増えていくものと思われます。

不動産相続の豆知識②生産緑地制度1

今回と次回は,生産緑地制度についてお話します。

生産緑地制度は,1992年に始まった制度で,要するに都市部の農地につき,生産緑地として指定を受け,農業を継続的に行うことで,本来は宅地並みの税金がかかるところを,農地並みの税金に下げることができる制度です。

30年間の期間を定めての立法であり,また,1万3000ヘクタールもの都市農地が指定されていることから,30年が経過する2022年を期に,一気に宅地化が進むのではないか という問題が2022年問題です。2022年を前に,現在都市農家の方々は,再度生産緑地制度の指定を受けるか(10年間の更新),買い取り請求をするか(生産緑地としての指定を解除し,市区町村に買い取ってもらいたいという請求。市区町村は自ら買い取るか,別の農家に渡すか,宅地化を認めることになる)の選択をしなければなりません。

2018年になり,2つの改正が行われ,農地としての維持はしやすくなっています。

1つは,生産緑地法の改正により,最低面積が500から300平方メートルに変更されたほか。農地レストラン等,一部の建築物についても建築ができるようになりました。

2つ目は,都市農地の賃借の円滑化に関する法律により,自動更新なしの賃貸が可能,かつ,貸していても相続税納税猶予が受けられるという制度が始まり,農地として利用できない際に,貸すことがしやすくなりました。

このような状況のもとで,はたして生産緑地の解除はどれほど進むのか,が次回のテーマです。

不動産を相続する時の豆知識①細分化規制

相続の際,必ずといっていいほど問題になるのが不動産です。

今回から数回は,相続にからむ不動産豆知識をお伝えします。

まず 最低敷地面積についてお伝えします。

最低敷地面積とは,不動産の細分化規制です。

現在では,コストを抑えて小さな住宅を購入したいというニーズは大きいですが,市区町村としては,不動産が細分化されて社会的経済的効能が下がるのを避けたいという考えがあります。

そこで規制されているのが,細分化規制であり,東京都23区のうち,世田谷区,練馬区,江東区は70平方メートル,目黒区,杉並区,中野区,板橋区では60平方メートル以下に細分化してしまうと,建物が建築できなくなってしまいます。

相続の際,1つの土地を2つに分けて,不動産会社に売ろう と考えても,この規制にひっかかってしまうと,建物が建築できなくなってしまいます。相続でもめてしまった場合にも,1つの土地を複数に分けることがありますが,上記区においては,慎重に面積を検討しないと,建物が建てることができない,無価値の土地が生じてしまいます。

上記規制は,所有権を制約する程度がかなり強い規制だと思いますので,市区町村側は,安易にこのような規制をしないでいただきたいとも思います。現在の核家族化した社会,景気等からすると,大きな土地の処分の難易度はあがっていますので,2つに割ることのできる145平方メートルの土地と,割ることのできない139平方メートルの土地では数平方メートルの差で,数千万円という価値の差が出てしまいかねないからです。