遺留分と相続税

今回は、弁護士・税理士の岩崎から遺留分侵害額請求をする際の相続税についてご説明いたします。

遺留分侵害額請求をして,金銭を取得する場合には,当然ながら相続税が発生します。ただ,一般的には,遺留分侵害額請求を請求してから解決をするまでに,相続発生から10か月が経過することが多いこともあり,①遺言書に従って相続税申告をしたうえで,②遺留分取得者は期限後申告(又は修正申告)して納税し,遺留分を請求された側は還付請求をして税金の返還を求めるというのが一般的です。

この②の申告の際に問題となるのが,相続税申告額と時価との差額をどうするのか という問題です。特に不動産や株式等,相続税評価と時価が乖離することが多い場合に重要です。

例えば,相続税評価額で1億6000万円,時価が2億4000万円のケースで,全遺産を遺言で取得したAさんに対し,遺留分割合4分の1のBさんが侵害額請求をし,2憶4000万円の4分の1である6000万円を取得したとします。

この場合,上述した遺言書どおりの申告は1億6000万円でなされていますから,1憶6000万円のうちBさんが6000万円を取得したとして申告することは誤りではありませんが,相続税は税法上取得額の割合で納税しますから,Bさんは4分の1の遺産しか受け取っていないにもかかわらず,相続税は16分の6を支払うことになり,納税額が過大になってしまいます。

ですので,この場合には,実際には6000万円の取得ですが,資料等を添付のうえ,税法上は税法上の遺産総額1億6000万円の4分の1である4000万円を遺留分として取得したと申告することができます。