自己破産と相続との関係について

2021年4月の終わりも見えてきましたね。

東京もだいぶ暖かくなってきて春を感じるようになってきました。

前回は、債務整理する場合の金融機関の口座の処理について書きましたが、今回は、自己破産と相続との関係について書いてみたいと思います。

 

自己破産すると相続ができなくなるのではないかとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、自己破産しても相続はできます。

相続には、「相続欠格」という制度があります。

相続欠格に当たる場合は民法で限定的に規定されており、該当する場合は相続権は永久に失われてしまいます。

具体的な例としては、故意に被相続人や他の相続人を死亡させた人や、詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を、作成、撤回、取消し、変更することを妨げた人などがこれに当たります。

自己破産はこれらに該当しませんので、相続欠格にはなりません。

 

また、相続には、「廃除」という制度もあります。

相続人の廃除とは、被相続人への虐待行為があるなどの事情によって被相続人が自身の遺産を相続させたくない推定相続人がある場合に、家庭裁判所に相続排除の申立てをして相続権をはく奪することができる制度です。

被相続人が遺言の中で廃除する相続人を指定することよって、遺言執行者が相続廃除の申立てを行うこともできます。

このように、自己破産をしたこと自体は原則として廃除事由には該当しません。

 

それでは、自己破産をする場合に、相続が発生するタイミングによって、自己破産を申し立てる債務者の方(破産者)にどのような影響があるのでしょうか。

相続が発生する時期によって、手元に相続財産がどれくらい残るかが変わってきます。

 

自己破産を申し立てる前に相続が発生した場合は、他の相続人と同じ状況にありありますので、遺産分割協議をして遺産を相続し、必要があれば相続税を支払うことになります。

そして、取得した相続財産で借金を返済することになります。

相続財産では借金を返済しきれない場合は、改めて債務整理をするかどうか検討することになります。

この場合、相続財産は手元に残らないことになります。

 

自己破産の申立て後、破産手続開始決定が出る前に相続が発生した場合も、申立て前に相続が発生した場合と同様に、申立人は遺産を取得したことになります。

したがって、自己破産の手続の中で、遺産は借金の返済に充てられることになります。

破産者は、破産手続開始時に有する財産の財産管理権を失いますので、破産手続開始決定前に発生した相続による相続財産は破産手続の中に組み込まれ、債権者への返済に充てなければならなくなります。

もし相続によって実家を取得した場合は、実家を失ってしまう可能性が高いため、そのまま自宅に住み続けたいのであれば、自己破産以外の手続、たとえば任意整理や個人再生などで借金を減額できないかを検討することになります。

 

破産手続開始決定後に相続が発生した場合、申立人が取得した相続財産は、自己破産の後に新たに取得した財産になりますので、すべて破産者の財産になります。

そうすると、借金は免責決定によって支払義務がなくなり、かつ、相続財産も取得することができますので、債務者にとっては最も有利になります。

 

相続がいつ発生するかの予測は難しいですが、病気等で入院しているなど事前に予測できる場合もあるかと思います。

そのような場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。