個人再生後に一括返済や繰上げ返済はできるか

2021年5月もあと数日ですね。

東京では夏日の日もちらほら出てきてますね。

前回は、自己破産と相続との関係について書きましたが、今回は、個人再生後に一括返済や繰り上げ返済ができるかについて書いてみたいと思います。

個人再生は、債務整理の種類の内、裁判所に再生計画が認可されると借金の一部を免除してもらえる制度です。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

小規模個人再生では、①100万円、②借金総額の5分の1、③清算価値のうち最も高い金額まで借金を減額し、原則として3年、特別な事情がある場合には5年で返済をすることになります。

返済は、あくまで裁判所に認可された返済計画に従って行うのが原則です。

個人再生をした後に、給与が上がるなどして収入が大幅に増えた場合や、相続によって遺産分割を受けてまとまった財産を取得した場合に、裁判所の認可を受けた返済計画どおりに継続的に支払いをするのではなく、債務を繰り上げて返済したり、一括で返済したいと考える方もいるのではないでしょうか。

個人再生の場合は債務に利息が付きませんので、返済期間を短縮しても利息が少なくなるメリットはありませんが、早く債務の支払義務から解放されたいと考える方も多いと思います。

一括返済とは、文字どおり、債務全額を1回で支払うことをいいます。

繰り上げ返済とは、毎月の返済に加えて債務額の一部または全部を返済することをいいます。

個人再生の繰り上げ返済では、返済期間を短くする方法が用いられます。

個人再生後の繰り上げ返済は、法律上禁止されていませんので、結論としては一括返済や繰り上げ返済は可能です。

ただし、債務整理をする場合、原則として債権者を平等に扱うべきという「債権者平等の原則」という考え方があります。

特に個人再生は裁判所を介する法的債務整理手続のため、「債権者平等の原則」が厳格に適用されます。

個人再生後に一括返済や繰り上げ返済を行うのであれば、一部の債権者に対してのみ一括返済や繰り上げ返済をすると他の債権者に不公平になりますので、全ての債権者に平等に返済しなければなりません。

このように、全ての債権者に平等に一括返済する場合は、基本的には問題ないとされています。

ただし、あくまで債権者が同意することが前提となります。

また、個人再生後に、圧縮された債務には利息が付きません。

そのため、一括返済や繰り上げ返済で債務の返済が早まることで債権者側に生じるデメリットはありません。

したがって、一括返済や繰り上げ返済を拒否する債権者はほとんどないと考えられます。

ただし、個人再生の手続開始からあまり日が経っていない場合には注意した方が良いと思われます。

債務者が返済不可能な状態にあったからこそ、裁判所に個人再生の申立てをし、債権者が債務を圧縮することに同意したにもかかわらず、裁判所の認可が出てすぐに一括返済や繰り上げ返済をするとなると、最初から借金の減額を目的にして不正な方法により不当に債務を免れることが目的だったのではないかと疑われる可能性が高くなります。

特に再生計画認可から半年も経過していない場合は、債権者が不満に思ったり、財産隠しを疑われる可能性もあります。

そのため、一括返済や繰り上げ返済をするのであれば、そのタイミングや債権者との交渉については、弁護士などの専門家に事前によく相談することが大切です。