農地を相続する場合の注意点

もう10月も終わりますね。

台風被害に遭われた方々には,心よりお見舞い申しあげます。

さて,前回は,「相続させる」旨の遺言と相続法改正について書いてみました。

今回は,農地を相続する場合の注意点について書いてみたいと思います。

 

1 農地を相続する際の手続

⑴ 農業委員会への届出

土地を相続した場合,法務局で相続登記をする必要がありますが,農地を相続した場合は,相続登記に加えて農業委員会へ届け出る必要があります。

⑵ 農業委員会への届出の期限

相続登記には期限はありませんが,農業委員会への届出は相続を知った ときから10か月以内にしなければなりません。

期限内に届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は,10万円以下の過料が科されることがあります。

 

2 農地を売却するときの手続

相続人のうち誰かが農業を引き継ぐ場合は,農地を相続すればよいのですが,相続人の全員が農業を引き継ぐ意思がない場合,農地を売却することを検討する必要があります。

もっとも,農地は食料の生産に欠かせないものであることから,農地法によって,農地の売却は制限されています。

以下,農地の売却方法について説明します。

⑴ 農地のまま農家に売却する場合

農地を農地のまま売却する場合は,農業委員会の許可が必要です。

この場合の許可は,農地法第3条に基づく許可となります。

許可が下りるためには,買主が農業経営に関わるといった一定の要件を満たすことが必要です。

具体的には,土地の買主が農家であるか,もしくはこれから農業に参入しようとしていることが要件として定められています。

⑵ 農地以外に用途変更して売却する場合

ア 農地を宅地等農地以外に用途変更して売却する場合も,農業員会の許可が必要になります。

この場合の許可は,農地法第5条に基づく許可になります。

許可が下りるかどうかの判断基準としては,立地基準と一般基準があります。

農業委員会は,これらの基準に基づいて許可をするかどうか判断することになります。

イ 農業委員会の許可が下りて用途変更が認められたとしても,宅地としての利便性の有無により,買い手がつかないことなども考えられますので,用途変更をする際に検討しておく必要があります。

 

3 農地を相続放棄する場合

⑴ 相続人全員が農業を引き継ぐ意思がない場合は,相続人全員で相続放棄をすることも考えられます。

相続放棄をする場合は,相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

相続放棄をすると,相続人でなかったことになりますので,農地以外の遺産も受け取ることができなくなりますので,注意が必要です。

⑵ 相続人全員が相続放棄をすると,相続人がいないことになります。

この場合であっても,家庭裁判所が相続財産管理人を選任するまでは,相  続人であった者が農地を含めた遺産の管理をする義務があります。

相続財産管理人には遺産の中から報酬を支払う必要があります。

 

4 さいごに

農地を相続する場合は,さまざまな注意点があります。

生前から農地相続に詳しい弁護士に相談するなどして,相続を円滑にできるよう準備しておきたいものです。

以上

「相続させる」旨の遺言と相続法改正について

もう9月も終わりますね。

東京もだいぶ涼しくなって過ごしやすくなってきました。

 

さて,前回は,後見制度支援預金について書いてみました。

今回は,「相続させる」旨の遺言と相続法改正について書いてみたいと思います。

 

「相続させる」旨の遺言とは,「特定の遺産を,特定の相続人に,相続させる。」という内容の遺言のことをいいます。

その法的効果について,最高裁判所は,平成3年4月19日の判決で,「相続させる」旨の遺言について,権利移転効を伴う遺産分割方法の指定と解する判断を示しました。

この判例のポイントは以下のとおりです。

① 遺言者の意思は,遺言書に記載された遺産を,他の共同相続人とともにではなく,特定の相続人に単独で相続により承継させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な解釈である。

② 遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺贈と解すべきではない。

③ 「相続させる」趣旨の遺言は,民法908条にいう被相続人が遺産の分割の方法を定めた趣旨である。

④ したがって,他の共同相続人もこの遺言に拘束され,これと異なる遺産分割の協議や審判もなし得ない。

⑤ このような遺言にあっては,遺言者の意思に合致するものとして,特定の遺産を特定の相続人に帰属させる遺産の分割がなされたのと同様の承継関係が成立するので,原則として,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力が生じた時)に直ちに特定の遺産が特定の相続人に相続により承継される。

⑥ 結果として,当該遺産については,遺産分割協議又は審判を経る余地はない。

⑦ このような場合であっても,特定の相続人は相続の放棄の自由を有し,他の相続人の遺留分減殺請求権の行使を妨げない。

 

この判決により,以下のことがいえることになります。

① 相続させる遺言があれば,遺産分割の協議や家庭裁判所の審判を経ないで,指定された相続人が遺産を確定的に取得する。

② 相続させる遺言については,指定された相続人が単独で相続登記を申請すべきものとされる。

「相続させる」旨の遺言のメリットとしては,①登記手続が簡便であること,②農地法3条所定の許可が不要であること,③賃貸人の承諾が不要であることが挙げられます。

 

改正前の民法では,「相続させる」旨の遺言に基づいて相続した財産については,登記などの対抗要件を備えなくとも,第三者に対して権利を主張することができました。

「相続させる」旨の遺言は,原則として,特定の遺産が特定の相続人に相続により承継され,法定相続分を超える場合には相続分の指定を伴うのであるから,法定相続分及び指定相続分による権利の取得について,登記しなくても第三者に対抗することができる以上,「相続させる」旨の遺言による権利の取得についても登記せずとも第三者に対抗することができるというわけです。

つまり,「相続させる」旨の遺言によって財産を取得する場合も同様に,「相続」による権利の承継の一種として,不動産についての権利を主張するために登記は不要とされてきました。

 

他方,改正法により,「相続させる」旨の遺言で相続した財産について,法定相続分を超える権利の承継があったとき,対抗要件が必要となりました。

対抗要件とは,第三者に対し,財産についての権利を主張するために具備しなければならない手続をいいます。

対抗要件の具体例としては,不動産の場合は登記,自動車の場合は登録,債権の場合は債務者への通知等,動産の場合は引渡など様々です。

このように,「相続させる」旨の遺言によって財産を取得した場合は,できるだけ早めに,不動産であれば登記申請,預貯金債権であれば金融機関での手続をすることをおすすめいたします。

 

どのタイミングで登記をすべきかなど不安な点もあると思いますので,相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

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金融機関での相続手続について

2019年も半分が終わってしまいましたね。

今年もあっという間に残り半分になってしまいました。

東京は梅雨でむしむししますね。

体調には気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,相続法改正と特別寄与制度の創設について書いてみました。

今回は,金融機関での相続手続で必要になる書類について書いてみたいと思います。

 

まず,相続が発生した場合,被相続人名義の口座がある金融機関に被相続人が死亡したことの届出が必要です。

死亡したことの届出をしないと,原則として口座は凍結されません。

他の相続人が勝手に引き出すおそれがある場合,これを防止するために速やかに届出をしたほうがよいと思われます。

死亡したことの届出と併せて残高証明書の発行を依頼すると,二度手間にならずよいと思います。

また,被相続人が死亡したことの届出をすると,口座が凍結されるため,公共料金等の引き落としができなくなるので,先に引き落とし口座を変えておいた方がよいと思います。

 

届け出た際,金融機関から相続届の書式を受け取ります。

相続届には,原則として,相続人全員の署名・押印が必要です。

相続届の添付書類としては,被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本,相続人の戸籍謄本,相続人の印鑑登録証明書が必要です。

 

相続届を提出した後は,金融機関にもよりますが,約2週間から3週間ほどで入金がされることが多いです。

受取方法としては,相続人代表者が全額を一括して受け取る方法や,各相続人に金額を指定して振り込んでもらう方法もあります。

 

相続手続についてお悩みの方は,相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

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相続法改正 特別寄与制度の創設

元号が令和に変わってもう1か月が経とうとしています。

時間は本当にあっという間に過ぎていきますね。

東京は夏日が多くなってきましたね。

さて,前回は相続法改正と遺留分について書いてみました。

今回は,相続法改正と特別寄与制度の創設について書いてみたいと思います。

 

今回の相続法改正によって,特別寄与制度が創設されました。

施行日は,今年の7月1日となっています。

 

被相続人の子どもの配偶者のように,相続人ではない親族が被相続人の介護や看病をするケースが多くあると思います。

場合によっては,常時介護が必要なこともあり,お仕事をしながら介護をしている方もいらっしゃると思います。

改正前だと,相続人ではないことから遺産の分配を受けることができず,不公平であるとの指摘がありました。

しかしながら,今回の改正では,このような不公平を解消するために,相続人ではない親族でも,無償で被相続人の介護や看病をするなどの貢献をし,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には,相続人に対し,金銭の請求をすることができるようになりました。

 

施行後,特別寄与料を請求する事件が増えるかどうかはまだ分かりませんが,気になる方やお悩みの方は相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

遺留分の計算方法が変わります。

新元号は令和になりましたね。

5月から令和になるので,間違わないように注意したいと思います。

東京は暑く感じる日も多くなってきましたね。

さて,前回は成年後見制度について書いてみました。

今回は,相続法改正と遺留分について書いてみたいと思います。

 

平成30年に民法の相続に関する法律が大きく改正されました。

約40年ぶりの民法大改正になります。

改正された項目は複数あり,平成31年から順次施行されていくことになります。

この改正のポイントはいくつかありますが,今回は遺留分制度に関する見直しについてご説明します。

 

1 遺留分について

遺留分とは,相続人のうちの一部の方について,相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

兄弟姉妹を除く法定相続人は,遺留分減殺請求できる場合がありますが,この遺留分減殺請求ができる期間は法律によって決められています。

 

2 遺留分侵害額の算定方法について

改正民法では,遺留分を算定するための財産の価額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に,その贈与財産の価額を加算し,その合計額から債務の全額を控除して算出します。

なお,贈与財産の価額には,遺贈は含みません。

 

改正民法では,遺留分を算定するための財産の価額に算入する生前贈与の範囲等について見直しをしています。

また,相続人に対する生前贈与の範囲に関する規定の見直しもなされました。

 

現行民法によれば,遺留分の計算上算入される贈与は,①相続開始前の1年間にしたものと,②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は,特段の事情がない限り全ての期間の贈与が算入されます。

また,現行民法における特別受益の扱いは,1年以上前の贈与も含めて原則として全て加算されます。

特別受益とは,被相続人の生前に,共同相続人の中の一人が婚姻,養子縁組のためや生計の資本として受けた贈与のことをいいます。

 

他方,改正法では,相続人に対する贈与は,特別受益に該当する贈与で,かつ,原則として相続開始前の10年間にされたものに限り,遺留分を算定するための財産の価額に算入することになりました。

ただし,遺留侵害額を求める計算式においては,遺留分権利者の特別受益の額を相続開始前の10年間にされたものに限定せず,加算することになりました。

 

3 遺留分に関する規定の施行日

遺留分に関する規定の施行日は,平成31年7月1日です。

4 さいごに

以上のように,相続に関する法改正があったことにより,遺留分の計算方法についても様々な影響が生じます。

そのため,相続案件に集中的に取り組み,遺留分制度に詳しい弁護士に相談するのがよいと思います。

成年後見人について

もう3月も終わり,4月に入ると新元号が発表されますね。

東京は桜の季節がやってきて,事務所近くの桜通りはほぼ満開です。

少し肌寒いですが,よい季節になってきました。

 

さて,前回は,相続が開始したときに,相続財産を見落とさないようにするためのチェックリストについてまとめてみました。

今回は,成年後見制度について書いてみたいと思います。

 

成年後見制度とは,精神上の障害(認知症,知的障害,精神障害など)により判断能力が不十分な方を保護し支援するものです。

たとえば,財産管理,福祉サービス契約の締結,遺産分割協議,不動産の売買などを行う場合に問題となります。

 

今までは,成年後見人等に就任した者のうち,親族よりも弁護士や司法書士などの専門職が選任される割合が高かったようです。

しかしながら,最高裁判所は,本年3月18日に,後見人には身近な親族を選任することが望ましいとの考え方を示しました。

これにより,今後は,後見人にふさわしいご親族など身近な支援者がいる場合には,そのご親族が後見人に選任される可能性が高くなると思われます。

認知症などで判断能力が十分でない方のご親族が亡くなられた場合などで,遺産分割協議をすることができない状態の方については成年後見の申立ても検討されるとよいと思います。

相続に関連して,成年後見申立手続をご検討されておられる方も多いのではないかと思います。

 

相続でお困りの方は相続に精通している弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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相続財産のチェックリスト

2月は本当にあっという間ですね。

東京でも花粉が飛び始めていて,症状が出て大変です。

 

前回は,相続法の改正についてまとめてみました。

今回は,相続が開始したときに,相続財産を見落とさないようにするためのチェックリストを書いてみたいと思います。

もし,相続財産を見落としたまま遺産分割協議が終了した場合は,新しく見つかった財産の分割協議を行わなければならないため,負担が増えてしまうことになります。

そのようなことのないように,以下のチェックリストを参考にしていただければと思います。

 

1 自筆証書遺言書があるかどうか

2 公正証書遺言があるかどうか

3 預貯金があるかどうか

4 現金や小切手があるかどうか

5 公開・非公開の株式や社債などの有価証券があるかどうか

6 不動産があるかどうか

7 借家権があるかどうか

8 賃借権があるかどうか

9 敷金があるかどうか

10 未収家賃があるかどうか

11 ゴルフ会員権があるかどうか

12 自動車があるかどうか

13 貴金属や絵画などの動産があるかどうか

14 貸金庫があるかどうか

15 貸付金や売掛金があるかどうか

16 買掛金があるかどうか

17 未払いの税金があるかどうか

18 金融機関や個人からの借入金があるかどうか

 

これらの点を確認いただいて,方針をお決めいただくとスムーズかと思います。

相続でお困りの方は相続に精通している弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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相続法改正について

平成31年に入って,もう1か月が経過しようとしています。

本当にあっという間ですね。

東京でもインフルエンザが流行しているそうなので,こまめに緑茶を飲むなどして気を付けています。

 

前回は,消滅時効と自賠責保険の請求権との関係について書きましたが,今回はがらっと内容を変えて,相続法の改正についてまとめてみたいと思います。

40年ぶりの大改正ということで,最近ではニュースやワイドショーでも取り上げられていますね。

改正の大きな目玉としては,以下の点になるのかなと考えています。

①配偶者居住権の新設

②義理の両親を介護した際,金銭で報われる場合がある

③自筆証書遺言の形式と保管方法が変わる

 

相続法改正に関する施行期日は以下のとおりになります。

①下記を除く原則的な施行期日:平成31年7月1日

②自筆証書遺言の方式を緩和する方策:平成31年1月13日

③配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等:平成32年4月1日

法務局における遺言書の保管等に関する法律:平成32年7月10日

 

 

相続は転換点を迎えておりますので,今後は,相続に関する運用等も変わってくることが予想されます。

相続でお困りの方は相続に精通している弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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