整骨院セミナー質問②健康保険に切り替えるべき場合2

前回は、被害者の方に一切過失がない場合を考えましたが、今回は、被害者の方に過失があり、かつ、相手方保険会社が一括対応しているケースを考えていきます。

このケースを考えるときには、①そもそも過失がある場合の損害賠償がどのように計算されるか、ということと、②自賠責保険の仕組み、の両方を知っておく必要があります。

まずは、①過失がある場合の損害賠償の計算方法について、過失がない場合と比較して考えてみます。

交通事故で怪我をした場合の損害項目としては、治療費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料、といいった損害が発生することが多いです(後遺障害が認定されれば後遺障害慰謝料や逸失利益も損害として認められます)。

例えば、むちうちで治療期間5か月、通院実日数80日、治療費50万円、通院交通費3万円、休業損害7万円(日額1万円×休業日数7日)というケースを考えてみます。

この時、入通院慰謝料は、裁判基準(弁護士基準)で約70万円となります。

過失がない場合、相手方保険会社が治療費50万円を医療機関に、残りの通院交通費3万円・休業損害7万円・入通院慰謝料70万円の合計80万円を被害者に、それぞれ支払うことになります。

他方、被害者に過失が3割あったとすると、全損害額の3割は相手方保険会社が賠償する必要のないものであり、全損害額である130万円のうち7割にあたる91万円が、被害者に賠償されるべき金額となります。

さらに、治療費50万円は医療機関に支払われており賠償済みであるため、賠償されるべき金額91万円-支払済みの治療費50万円=41万円、が被害者の受け取ることのできる金額となります。

被害者が受け取ることのできる金額は、過失がない場合の80万円と比較して、大幅に少なくなってしまいます。

このように、過失がある場合の計算方法として、「全損害額のうち被害者の過失割合分は賠償されない」ということと、「賠償されるべき金額から支払済みの金額が引かれる」ということ、が重要になってきます。

次に、②自賠責保険の仕組みについて、見ていきます。

自賠責保険は、強制保険とも言われ、加害者からすると加入を義務付けられた保険であり、被害者からすると最低限の補償をしてくれる保険となります。

自賠責保険は、各損害項目の算定基準や上限額が決まっている一方、重過失(7割以上)でない限り過失による減額をされない、という特徴があります。

たとえば、上記と同じ、むちうちで治療期間5か月、通院実日数80日、治療費50万円、通院交通費3万円、休業損害7万円(日額1万円×休業日数7日)というケースを考えてみます。

この時、自賠責保険で計算する入通院慰謝料は、通院実日数×2>治療期間となるため、日額4300円×治療期間(約150日)=64万5000円となります。

損害の合計は、治療費50万円+通院交通費3万円+休業損害7万円+入通院慰謝料64万5000円となり、わずかに上限額120万円を超えてしまいますが、被害者の過失が7割以上にならない限り、過失相殺による減額をされることなく保険金が支払われます。

つまり、被害者が受け取ることのできる金額は、過失割合が3割であっても5割であっても、120万円-50万円=70万円となります。

上記①の事例で過失が3割ある場合、慰謝料は裁判基準で高くなるものの、過失相殺された結果被害者が受け取ることのできる金額は41万円になるため、このようなケースでは、自賠責保険で計算したほうが良い、ということになります。

裏を返すと、「すべての損額が自賠責保険の範囲内に収まるのであれば、被害者の重過失でない限り、自賠責保険120万円の枠から回収が可能」であり、「ケースによっては裁判基準で計算するよりも受け取ることができる金額が高いことがある」のです。

上記①、②の考え方を踏まえ、改めて、被害者の方に過失があり、かつ、相手方保険会社が一括対応しているケースで健康保険を利用すべき場合について検討すると、被害者が受け取ることのできる金額をできる限り減らさないという観点からは、全損害が自賠責保険の枠を大幅に超えそう(治療費がかさみそう、治療期間が長くなりそう、休業損害が大きくなりそう等)な場合で、被害者の過失も相応にある場合、ということになります。

実際の計算や比較については、個別具体的な検討が必要なこともありますし、治療内容を優先したいという方もいますので、対応に困った場合には、交通事故や整骨院の対応に慣れている弁護士に相談してみてください。

整骨院セミナー質問②健康保険に切り替えるべき場合1

先日の整骨院セミナーでの質問が多かった事項として、今回は、どのような場合に健康保険に切り替えるべきか、を取り上げます。

通常、交通事故被害者の方の施術については、相手方である加害者側の任意保険会社が支払対応をしてくれるため、いわゆる自賠責扱いとなり、自由診療にて施術を行います。

もっとも、交通事故被害者の方の場合であっても、相手方保険会社から健康保険で施術を行ってほしい、という連絡が入るケースも多々ありますし、そもそも相手方保険会社の対応にならないケースもありますので、このような場合にどう対応するか、というのが問題となります。

まず、被害者の方に一切過失がないケースを考えます。この場合、通常は自賠責扱いで対応いただけますが、怪我が非常に大きく入院や手術等で治療費が相当高額になる場合、交通事故直後から健康保険を使ってほしい、という依頼が相手方保険会社から入ることが多くあります。

理屈から言えばこれに従う必要はありませんが、すでに初診病院などで健康保険の第三者災害扱いになっていることが多いことから患者さんも健康保険で良いと考えていることが多く、かつ、治療が相当長期に必要になることも見込まれるため、結果的に一括対応の打切り時期なども考慮すると、健康保険に切り替えた方が患者さんにとって良いケースが多いと言えるかもしれません。

被害者の方に一切過失がなく、上記のような重傷事故でもない場合には、早く完治してもらうためにも、治療内容や治療効果の点から自由診療が望ましいということを患者さんにも相手方保険会社にもわかっていただき、しっかりと治療していくことが重要です。

整骨院セミナー質問①人身事故への切替

先日の整骨院セミナーにて多く質問があった事項から、いくつかピックアップさせていただきたいと思います。

交通事故の直後、患者さんが最初に来院されてまずよく聞かれるのが、「人身事故に切り替えた方がよいのか?」ということです。

交通事故で怪我をした場合、警察官に、「人身事故に切り替えますか?」といった確認をされるのが通常です。

そして、相手方本人からは「人身事故にしないでほしい」と言われたり、相手方保険会社からは「人身事故にしなくても補償はきちんと受けられます」、といった説明を受けたりするので、患者さんがより頭を悩ませることになります。

人身事故への切替は、あくまでも刑事手続の入口ですから、民事での賠償に即影響を与えるわけではありません。

ただし、事故そのものが争われたり、受傷したかどうかが争われるような場合には、人身事故への切替が重要となりますし、そうでないにしても、「人身事故に切り替えない=受傷の程度が小さい?」と推測される要因になる可能性はありますので、のちのち後遺症が残った場合の認定に関わる可能性も否定できず、被害者に過失がない場合には、基本的には人身事故に切り替えておいた方が無難です。

他方で、自身に過失がある場合には、その内容や程度にもよりますが、自身が刑事処分の対象となる可能性もありますし、行政処分として減点される可能性もあるので、慎重に検討する必要があります。

それと同時に、自身に過失がある場合、過失割合そのものが争点となっていることも多く、人身事故に切り替えた後に行われる実況見分や、その後の取り調べ、それを書面化した実況見分調書や供述調書に、どのような内容が書かれているかが重要となります。

最近では他のドライブレコーダー等の証拠も増えてきましたが、そのようなものがなければ刑事記録しか過失割合に関する証拠がないこともあり、依然刑事記録の重要性は残っていますので、自身に過失がある場合や過失割合が争点となっている場合は、その立証過程や自身への処分なども踏まえて、人身事故に切り替えるかどうかを検討することになります。

整骨院セミナーにて

先日、とある整骨院様よりご依頼を受けましてセミナーを開催させていただきました。

主催者様の、「患者さんも僕らもハッピーになるようにしたい」というお言葉には、大変感銘を受けました。

主催者様ご自身も、交通事故に遭われて大変な目に遭ったからこそ、医療従事者として患者さんと向き合うことはもちろん、被害者の不安や苦痛といった心情に向き合うことができるのだと痛感しました。

我々も、患者さんの治療がうまくいき完治し、かつ、適切な賠償が受けられるよう日頃より尽力しているため、そのようなご意見の先生方とお仕事を一緒にできるのはとてもありがたいことです。

多数の患者さんを扱っていると時に忘れてしまいがちですが、一人ひとりの患者さんと向き合うことをきちんと実践していらっしゃる整骨院様であり、私も改めてその大切さを感じる良い機会となりました。

セミナーの中では、交通事故対応の自賠責とは何ぞや、というところから始まり、日ごろより患者様の施術や、保険会社との対応において、よくわからないことや気になることなどをご質問いただきました。

日ごろのちょっとした悩みを解決できる場となり、患者さんへの対応力につながり、患者さんの満足度にもつながれば、嬉しい限りです。

弁護士法人心では、整骨院の経営サポートや交通事故対応に関するマスター講座などを適時開催しておりますので、ご興味おありの整骨院様は、当法人のお知らせ等をご確認いただけましたら幸いです。

後遺障害診断書作成にあたっての医師面談

交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害申請を行うことになります。

その際、医師に作成してもらう後遺障害診断書の記載は、大変重要になります。

傷病名や自覚症状、他覚的所見などを記載するものですが、ただただ作成を依頼すれば適切な内容の診断書が出来上がるとは言い切れません。

医師が有益と考えていないことであっても、実は後遺障害の認定において有益なこともありますし、記載を省略されてしまえば存在する症状や所見さえもないものと扱われてしまうことがあります。

ですから、後遺障害申請にあたって必要な事項が漏れていないか、存在する症状や所見の記載が漏れていないか、後遺症を証明する適切な検査を受けているか、きちんと確認する必要があります。

その際、特に存在する所見の漏れがないか、適切な検査を受けているか、などについては、弁護士が行う医師面談が有益なことが多いです。

後遺障害に詳しい弁護士であれば、考えうる後遺障害の種類に応じて、必要な検査や項目が漏れていないか確認できますし、その結果についても医師に確認することができます。

過去にも、偽関節の存在を診断書に反映してもらえたケース、骨折後癒合していないことを面談で把握し診断書に反映してもらえたケース、必要な検査を依頼し他科に依頼してもらえたケース、新たに検査を増やしてその結果を診断書に反映してもらえたケースなどがあります。

難しい後遺障害になればなるほど、こうした医師への確認が重要になりますので、後遺障害申請を検討している方は、後遺障害診断書を作成してしまう前に、後遺障害に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

このほかにも、後遺障害診断書に限らず、外傷性の意見や因果関係に関する意見をもらうこともありますが、その際も医師面談は非常に有益です。

私の所属事務所は東京ですが、遠方のために面談が難しい場合でも、患者さんの同意があれば書面で確認できる病院がほとんどですので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。

休業が連続していない給与所得者の休業損害の計算の仕方について

交通事故によって受傷し、給与所得者の方が休業する場合、重傷の場合には長期にわたる連続休業を取ることもありますが、軽傷あるいは中等傷の場合には通院等のために連続せずに休業することが多くなります。
後者のように、休業が連続していない給与所得者の休業損害の計算の仕方について、通常、保険会社は被害者に不利な計算方法で提示してきます。
具体的には、事故前3か月分の給与額合計を3か月の歴日数である90日で割って日額給与を計算する方法です。
この計算方法では、本来休日に稼働することが想定されておらず、実際稼働していないにもかかわらず、休日が含まれて算定されてしまうことになり、日額が低くなるため、被害者にとって不利になります。
他方で、裁判所は、給与所得者が連続しない休業をした場合の休業損害の計算の仕方について、事故前3か月分の給与額合計を3か月の実稼働日数で割って日額給与を計算する方法が妥当であるとしています。
この計算方法では、休日が算定の基礎に含まれないので、日額給与が不当に低く算定することがなく、被害者にとってより適切な損害の填補が期待できます。

この計算方法は、いまだ保険会社には浸透していないため、被害者の方が自分で交渉しても、通常は90日割です、といった回答をされるケースが多くありますし、弁護士に依頼しないうちに休業損害のみ先払いを受けるケースでも90日割となっていることが多いです。

弁護士に依頼した場合には、裁判所の考え方を理論的に説明し、かつ、裁判例等も踏まえて、裁判所の考え方に従って計算し請求することができますので、お気軽にご相談ください。

3勤1休ダイエット

3勤1休ダイエットを開始しました。
3勤は頑張って、1休はチートデーのような感じでお休み、というダイエット方法です。
3勤の日は、食事をとる時間を8時間以内にし、それ以外の時間では水、水割りスムージーまたは水割りプロテインのみOK、NG30品目を食べない、というルールで、1休の日は、8時間の制限も、NG品目の制限もありません。
ただ、3勤の日にも、どうしても間食したくなってしまった場合には、干し芋や茎わかめなど、食べてよいものを挙げるなど、抜け道も用意されています。
また、毎日、体重と体脂肪、飲食の時間と内容、1日頑張ったことややり直したいことなどを記録していきます。
このダイエット法を考えた方の本にも書いてありましたが、ダイエットを非日常ではなく日常にすること、そのために厳しいルールを根性で守るのではなく、脳をだましながら徐々に慣れていく、という脳科学に倣った方針で作られているので、今のところ3週間目に入りましたが、まだ挫折していません。
そして、記録して振り返ることの重要性、記録を手書きですることで脳がダイエットモードになり思考も変わってくること、振り返ること(しかも前向きなワードで)でよりモチベーションが上がること、など、ダイエット以外のことにも役立ちそうな方法論が満載でした。
まずは3か月、頑張ってみます。

依頼者さんからお礼のお菓子をいただきました

先日、依頼者さんから私のいる東京事務所にお礼のお菓子をいただきました。
言葉でいただくので十分ではあるもの、こうして形としていただくと、ふと本当に感謝していただけたのだな、と安心するときがあります。
交通事故の被害者側をメインに業務をしていると、事故直後から治療を経て賠償の話へと進み、その間に様々なドラマがあります。
事故直後は、ご相談を通して、とにかく身体的ダメージや不安や怒りを取り除けるよう努めています。
特に、事故直後の加害者の対応に誠意が見られないケースでは、その後も保険会社が適切な対応をしてくれたとしても、その時の被害者の思いが消えることはありませんし、気持ちを落ち着かせることができたとしても本当の意味で納得がいくということはありません。
中には、任意保険に加入していないので、あるいは任意保険を使いたくないので、被害者請求をしてほしい、といった加害者もいます。
こういうケースから、任意保険会社が動いてくれたが、休業や治療について納得いかない対応をされた、最終的な賠償案が提示されたが納得いかない、というケースまで様々ありますが、その方にとって納得のいく形にできるよう、できる限りサポートさせていただきたいと思い、日々業務を行っています。
いただいたお菓子は、そうした日々の成果として、また反省のきっかけとして、ありがたく頂戴いたしましたm(__)m

整骨院施術費に関する裁判所の考え方

交通事故訴訟において、裁判所は整骨院施術費について認められるためには、「必要かつ相当な治療行為」の費用であることを求めており、具体的な要件を挙げています(東京地方裁判所の交通専門部裁判官の講演録に記載されています)。
まず、当然の前提として、①施術が症状固定までに行われたものであること(症状固定とは治癒あるいはこれ以上しても治る見込みがない程度に至った状態をいい、賠償上の治療期間を区切る概念です)、②施術録に記載された施術が実際になされたこと、を挙げています。
次に、施術行為が「必要かつ相当な施術行為」といえるためには、5つの考慮要素を総合的に検討するとしており、その考慮要素は、Ⅰ施術の必要性、Ⅱ施術の有効性、Ⅲ施術内容の合理性、Ⅳ施術期間の正当性、Ⅴ施術費の相当性、とされています。
具体的には、Ⅰ身体の状態として施術の必要性が認められることが必要、Ⅱ施術によって症状の緩和が見られることが必要、Ⅲ受傷内容や症状から、適切な内容の施術(受傷部位に対する、過剰・濃厚でなく、適切な施術)が行われていることが必要、Ⅳ受傷内容や症状経過、治療経過及び効果の程度等から、施術を継続する期間が相当であることが必要、Ⅴ一般的な水準と比較して妥当な施術費であることが必要、となります。
また、医師が整骨院での施術を受けるよう指示している場合には、特段の事情のない限り、この5つの考慮要素のうち、Ⅰ施術の必要性、Ⅱ施術の有効性があることを強くうかがわせる事情になる、とされています。
交通事故の被害者が整骨院で施術を受ける場合には、こうした裁判所の考え方も踏まえて施術を受けていただくと安心です。

弁護士の中には、整骨院や接骨院での施術について、このような理解をせずにあるいは理解したうえでむやみに通院を控えるようアドバイスする方もいますが、上記内容をしっかりと理解・対応していけば、整骨院や接骨院で施術を受けつつ適切な補償を受けることもできますので、理解のある弁護士に相談することが重要です。

交通事故勉強会

弁護士法人心では、ただいま接骨院・整骨院向けの交通事故勉強会を行っています。

集客から、治療に入るまでの初動対応、離患防止、保険会社対応の仕方や被害者請求についてなど、

被害者側弁護士だからこそわかる重要な点をお伝えしています。

すでに一通りの知識やノウハウをお持ちの先生も、改めて注意すべきポイントなどを思い出せますので、

ぜひご参加ください。

弁護士費用特約について

交通事故に遭って弁護士に相談や依頼をする場合、弁護士との相談料や依頼にかかる弁護士費用を払ってもらえる保険が弁護士費用特約です。

車両保険に附帯されていることが多いので、車両保険に加入している方は、相談前に弁護士費用特約が附帯されていないか、

保険証券を確認したり、保険会社に確認を行うとスムーズに相談や依頼ができます。

また、自分の車両保険がなくても、同居の家族の弁護士費用特約を使えることや、ご自身が未婚の場合、別居の両親の弁護士費用特約を使えることもありますので、家族の保険も含めて利用できる弁護士費用特約がないか、確認することが重要です。

その他、稀に火災保険や生命保険などに附帯されていることもあるので、まずは探してみることをおすすめします。

もし利用できる弁護士費用があれば、それだけで相談料や着手金、報酬金などの弁護士費用を賄うことができるので、加害者やその保険会社から回収した示談金から弁護士費用を払う必要はなく、回収した示談金がすべて手元に入ってくるのですから、大きな違いになります。

もちろん、弁護士費用がない場合でも相談や依頼ができないわけではなく、弁護士法人心では、交通事故被害者の場合の相談料は無料ですし、その後の依頼の費用もできる限り抑えて対応しています。

交通事故被害に遭ってお悩みの方は、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士費用特約や弁護士費用についても、無料相談の際にお伝えしていますので、お気軽にご相談ください。

顧問医の意見書作成について

当法人では、交通事故の被害者救済に力を入れており、その一環として、医師とも提携を行っています。

交通事故の被害を受け、加害者に損害賠償請求を行うにあたり、時に、医学的な知見が重要となることがあるためです。

 

たとえば、交通事故の被害に遭い、後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害申請を行います。

自賠責保険会社を通じて申請を行い、損害保険料率算出機構の調査事務所にて、

診断書や画像などの記録精査を経て、後遺障害等級の判断がなされます。

その際、等級が認定されるケースもあれば、非該当とされるケースもあり、

中には、医学的に見れば後遺障害等級が認定されるべきなのに、認定されなかった、ということもあります。

そういう場合には、再度の判断を申請する異議申立という手続がありますので、医学的意見が重要になるケースでは、

顧問医の意見書を添付資料として異議申立を行うことも可能です。

 

腱板損傷やTFCC損傷など外傷性について争われやすいケースや、

むちうちでも14級と12級の差を生み出す、画像上神経の圧排があるかどうかなど、

医学的に画像等の他覚所見が重要になるもの、事故態様や症状経過から医学的に外傷性の説明が重要になるものは、

医学的意見書の作成を検討した方が良いことが多いです。

 

また、後遺障害申請だけでなく、訴訟等になった場合でも、医学的な論点が争いとなることはありますので、

やはり医師の意見は重要です。

交通事故のご相談の際は、このような医学的な部分も含めてカバーできる弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 

株式会社武蔵野の小山社長来訪

先日、当法人に、株式会社武蔵野の小山社長が来訪されました。

私の所属する東京法律事務所のメンバーはオンラインでの参加でしたが、全従業員で大変貴重なお話を伺うことができました。

お話の中でもっとも印象に残ったのは、見える化についてです。

見せていただいた資料では、誰がいつどのような仕事をして、いつ空いているか、

やるべき研修についても誰が受けていて誰が受けていないか、などあらゆるものが見える化されていました。

見える化することで、どこに何が足りないかがわかるようになり、何をしたらより効果がでるかもわかるようになり、

より業務が効率化すると感じました。

従業員にとってはシビアな一面もあるのでしょうが、見える化することでやるべきことがさらに見えてくるのは

間違いないと思います。

また、内部の業務だけでなく、対外的にも同様のことが言えます。

小山社長が例に挙げていた、パンフレットを配るにしても、何部持って行って何部配って、

そのうち受け取ったのは何歳ぐらいの男性なのか女性なのか、そうしたデータをひとつひとつとって、

解析しなければ何も得られないというのは印象的でした。

時に、こうしたデータは担当者が分担されていることで一つに集まらなかったり、

データとして存在していても適切に分析されていなかったりすることが多くあります。

流れがどんどん早くなる今後の時代において、会社がやるべきこと、従業員がやるべきことは、

非常にたくさんあると感じました。

まずは、今あるものを把握しないことには、改善も図れない、というのは間違いなさそうです。

 

妊婦さんが交通事故に遭った場合②

前回の続きで、妊婦さんが交通事故に遭ったケースについて、問題となりやすい点がいくつかあるので記載したいと思います。

・通院の間隔があきすぎてしまうことも、逆に、通院しすぎてしまうことも、問題です。

これは妊婦さんに限った話ではありませんが、特に妊婦さんの場合、体調がすぐれないためにこういったことが発生することが多いと思います。

時期によってはつわりなどで体調がすぐれないことや後期に入ると体も重く出かけるのも大変ということがあり、

通院の間隔があきすぎてしまうことがあるかもしれません。

しかし、通院の間隔があきすぎてしまうと、交通事故と治療との因果関係が証明できなくなってしまうため、

月1,2回の診察は最低でも受けていただきたいところです。

逆に、産休などで時間があるからと毎日のようにお散歩を兼ねて通院するというのも考えものです。

もちろん、痛みがあれば症状を改善するため通院をすべきですが、あまりに頻回な通院については、

治療の必要性などを争われる可能性もありますので、注意が必要です。

・症状について妊娠のせいでは?と言われてしまうこともあります

本当に悲しい話ですが、妊婦さんの中には妊娠によって体調がすぐれない方もいますし、

お腹が大きくなってくるとそれを支えようと腰痛が出る方もいます。

そのため、交通事故で首や腰をけがしているにもかかわらず、交通事故ではなく妊娠のせいではないか、

と言ってくる保険会社の担当者も中にはいます。

これについては、事実と異なる場合には毅然と事故前はなかった症状である旨を伝えていただき、

どうしても改善されない場合には、担当者の変更や保険会社全体の対応として指摘すべきケースもあると思われます。

また、事前の策として、診察時にもしっかりと事故前は何ともなかったが、交通事故で痛みが出たということを、

しっかりと医師に伝え、カルテや診断書に残してもらいましょう。

妊婦さんの場合、レントゲン撮影も難しいですし、MRI撮影についても勧められないことが多いため、

客観的な根拠を残すことが難しいですから、しっかりと医師とコミュニケーションをとり、証拠を残しておくことが重要です。

 

妊婦さんが交通事故に遭った場合①

相談を受けることが少なくない妊婦さんが交通事故に遭ったケースについて、問題となりやすい点がいくつかあるので記載したいと思います。

・整形外科でできる治療に限りがあること

月齢にもよりますが、基本的に妊婦さんの場合、痛み止めの処方を受けることは難しいですし、湿布薬も利用できるものが限られます。

そのため、通常交通事故の被害に遭った場合に整形外科に通院をしますが、診察で問診等を行うほかにできる治療は、かなり限られてしまいます。

物理療法、運動療法などのリハビリを取り入れているところであれば、できる治療が広がるようです。

・接骨院や整骨院での施術を保険会社に否定されやすいこと

整形外科ではリハビリが必ずしもあるわけではなく、そうすると接骨院や整骨院での治療を行おうとする被害者の方も多くいます。

ただし、接骨院や整骨院での施術については、妊婦さんの場合、特に相手方保険会社に否定されやすい傾向にあり、

事前に整形外科医からの同意をもらったり、産婦人科医から行ってよい施術内容についての指示をもらったり、

相手方保険会社とも医師からの同意を得ている旨を伝えて施術について事前了承をしっかりととっておかないと、

後日、接骨院や整骨院での施術を否定されてしまったり、その施術費の分を慰謝料から差し引くなどと言われてしまうこともあります。

特に、電気療法などについては、妊婦さんへの影響について解明されていない部分もあり、どのような施術なら行ってよいのか、

というのを産婦人科医からの許可をもらっておくのがもっとも安心です。

 

 

下肢の短縮障害

交通事故で足の骨折など大きな怪我をしてしまった場合、足が短縮してしまうなどの後遺障害が残ってしまうことがあります。

こうした下肢の短縮障害が残ってしまった場合、歩行に異常が出てしまったり、その結果背骨への影響が出るなど、

その後の生活に重大な支障が出ることもあります。

下肢の短縮障害の場合、短縮の程度によって認定される後遺障害の等級が異なり、

1下肢を1センチメートル以上短縮したもの=13級8号

1下肢を3センチメートル以上短縮したもの=10級7号

1下肢を5センチメートル以上短縮したもの=8級6号

の認定可能性があります。

また、短縮ではなく、逆に長くなってしまった場合にも、等級認定表に記載はないものの、

それぞれ長くなった長さに応じて、上記の等級相当、として扱われます。

 

下肢の短縮障害が後遺障害として認定された場合、後遺障害に基づく慰謝料や逸失利益が賠償されることになります。

しかし、中には、加害者側から、短縮の有無そのものを争われるケースや、

短縮の程度が1センチメートルなどと小さい場合に生活への支障がないため逸失利益を減らすべきではないかと反論されるケースもあります。

ですが、短縮障害は一度短縮してしまった場合、時間とともに戻るとはいえない障害ですので、

きちんと賠償してもらえるよう、歩行への影響の程度や、日常生活や仕事上での支障があることを主張することが重要です。

 

また、下肢の短縮障害は、他の欠損障害、機能障害、変形障害、神経障害とも併存することが多いため、

これらも併せてきちんとした賠償がなされるよう、適切に後遺障害認定を受け、適切な請求をすることが重要です。

下肢の障害でご不安な方は、後遺障害申請の前に後遺障害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

自由診療と健康保険診療

交通事故の被害に遭った方が治療を受ける場合、多くは相手方である加害者の保険会社が治療費を支払ってくれるため、

実際にいくら治療費が支払われたかというのを知らずに通院している方がほとんどです。

そのため、示談のときに保険会社からの示談金提示が来て初めて治療費がいくらかかっていたかを知ることが多いです。

通常、こうしたケースでは、自由診療(保険が適用されない診療)で治療が行われています。

病院の場合は診療報酬について点数制で1点あたりいくらというのが決まっていますが、

自由診療の場合には、この1点あたりの単価が一律ではなく医療機関ごとに異なります。

病院によって定め方は異なりますが、1点あたりの単価が変われば当然かかってくる医療費総額が大きく変わるため、

自賠責から回収できるケース、自賠責から回収できないが加害者が賠償すべきケース、相手方がいない自損事故のケースなどによって

診療報酬を変えている病院もあります。

他方、交通事故であれば一律にいくら、という病院もあります。

 

上記のような自由診療での治療がなされるのは、被害者の方の過失がないか、あるいは少ないケースに限定されることが多いほか、

過失割合がなくても怪我が重傷で医療費が高額になることが見込まれる場合、保険会社からは健康保険を利用してほしい、

と言われることが多くあります。

この保険会社からの求めに応じて被害者の方が健康保険を利用しなければならないということはありませんが、

過失がどの程度あるのか、医療費がどの程度かかるのか、などを見越して健康保険を利用した方が良いケースもありますし、

この判断を誤ったために賠償額が減ってしまうというケースもありますので、

迷った場合には早めに交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

 

WEBでの裁判について

コロナや世の中の情勢もあり、裁判所もWEBでの裁判を徐々に導入してきています。

私が扱っているのは主に交通事故になりますが、東京地裁はじめ各地方の本庁でもどんどんWEBでの裁判を導入している印象です。

これまでは、電話会議システムはありましたが、どちらか一方は裁判所に出向く必要がありました。

しかし、WEBでの裁判では、双方がWEBで参加することもできます。

 

今のところ、期日についてWEBシステムを徐々に導入している段階ですが、

提訴や送達などについても数年後を目安に進めていくことが検討されています。

 

すでに導入されている内容でも、訴訟提起時の費用はかかるものの、弁護士の出頭回数が減れば、

当然出廷費用などがかからなくなるので、依頼者としても提訴に踏み切りやすい側面はあるかもしれません。

 

遠方の裁判などでは原告側が出頭しなければならず交通費や出廷費も低額ではないことがありましたが、

今後、口頭弁論期日の完全オンライン化が進めば、より提訴のハードルが下がるのではないかと思います。

 

交通事故の被害者の方でも。よく裁判になった場合の時間や費用を考慮して裁判はやめておこうと考える方は少なくなく、

こうしたハードルがなくなり、裁判手続がより身近に簡易に使えるようになることは、被害者の選択肢も増やす良い動きだと思います。

交通事故の後遺障害等級認定

最近,後遺障害等級の認定が下りなかったので相談に来た,という方が多くいらっしゃいます。

交通事故の治療を終えると,後遺障害診断書を医師に書いてもらい,後遺障害の申請をすることになります。

この後遺障害の申請方法は,保険会社に資料の提出などを任せて行う事前認定と,被害者側で資料の取り付け・収集を行う被害者請求とに分かれます。

後者の場合には,簡単ではありませんが自分で申請を行う場合と,弁護士などに申請を依頼する場合,に分かれます。

これらの保険会社や弁護士の立場は,あくまでも後遺障害申請の請求者ということになり,実際に認定等の判断をするのは,損害保険料率算出機構という機関の各損害調査事務所ですので,この担当者に,いかに事故が大きかったのか,いかに症状が重いのか,症状の原因や程度をいかにわかってもらえるか,というのが非常に重要になります。

 

等級が下りなかったので相談に来ました,という方の場合は,多くは事前認定で保険会社に申請をしてもらったが後遺障害等級が認定されず,弁護士に相談に来た,という状況にあります。

こういう場合,もちろん不服申し立ての手続である異議申立を行うことができるのですが,初回の申請の際にすでに提出済みの資料がありますので,万が一提出済みの資料が不利なものであった場合には,そのリカバリーは容易ではありません。ただ,異議申立の時点で通院を継続している場合には,新たな診断書の作成などでリカバリーできるケースもあります。

また,初回申請で提出済みの資料に問題がなくても等級が認定されないということはありえますので,そうした場合には,初回申請では提出していない資料(車両の損傷に関する資料,カルテや画像検査報告書などの医療記録,症状固定後の治療に関する資料など)を提出することが考えられます。

 

後遺障害の等級認定の基準については,労災基準に準じてはいますが,公表されていない部分も多くありますので,後遺障害申請の経験が豊富な弁護士に初めからご相談された方が安心かもしれません。

 

交通事故と受傷の因果関係(ミラー接触)

先日ご相談をいただいたので,ミラー接触で交通事故と怪我の因果関係が否定された件について記載したいと思います。

ミラー接触事故の場合,文字どおりミラー同士が接触する事故のため,ミラー自体が衝撃を吸収し車両本体には衝撃が及ばないと考えられ,事故と怪我の因果関係はまず否定されてしまいます。

これは,自賠責保険でも任意保険でも裁判でも,同様の結論になることが通常です。

実際にこうした事故で怪我をされた方の相談を受けたことは複数ありますし,現実として怪我をしていないとは思えませんが,因果関係が認められない以上,「交通事故で怪我をした」と言えないため,治療費も払ってもらえなければ,慰謝料も払ってもらえません。

交通事故で車両を損傷した,ということが認められれば,車両の修理費等は支払ってもらえます。

 

交通事故で被害者側としては,できるだけ早く加害者に保険会社に連絡を取ってもらい,治療を受けられるよう段取りを組みますが,ミラー接触の場合などは,この時点で医療機関に連絡を取ってもらえず,事故調査を行う,自賠責保険に確認する,といった流れになってしまいます。

事故調査を行ったところで裁判でもミラー接触の事故と怪我の因果関係は否定されていますし,自賠責保険も事故状況や車両損傷の大小で事故と怪我の因果関係を判断しますから,この流れに乗ってしまえば,時間だけかかって結局賠償してもらえない,となってしまいます。

もし,自分の任意保険に人身傷害保険などをつけているのであれば,この時点で加害者に請求することは諦め,自分の人身傷害保険を利用するのが無難です。

もちろん,自分の保険会社も,最終的には加害者の自賠責保険から回収できるに越したことはないのですが,自賠責保険ですでに因果関係なしと判断されているわけではないため,任意保険会社が認められる範囲で治療費などを支払ってもらい,任意保険会社が自賠責から後日頑張って回収する,という流れに乗せることができるかもしれません。

人身傷害特約を利用することで等級が上がるということは通常ありませんので,誰からも治療費等を回収できないより,この時点で潔く自分の保険を利用しましょう。

 

こうしたミラー接触事案では,裁判所でも受傷を否定されてしまうのが落ちですので,弁護士の出番はあまりありませんが,交通事故に詳しい弁護士にご相談いただければ,適切な初動対応についてアドバイスできることもあります。

人身傷害特約がない,利用できない場合には,労災利用や被害者請求での自賠責保険請求を考えますが,いずれも通らない覚悟で治療をせざるを得ないのが実状です。

回収できなかったときは治療費が自腹になることを考慮にいれ,医療機関には請求の保留や認められなかったときの健康保険価格への変更などを依頼しておくと,自己負担が最小限になるでしょう。

怪我はしたのに因果関係が認められない,治療費も認められない,というのはなかなか納得がいきませんが,自己負担額が大きくなるのも困りものですから,こういったケースでは諦め時も重要ですね。