後遺障害

交通事故の賠償等で、後遺障害にかかわる損害が問題となる場合があります。

何らかの症状が残れば追加で賠償金を受け取れる、といった単純なものではなく、基本的には後遺障害として等級認定された場合に、その等級に応じて賠償を受けることができるものとなっています。

裁判等で争った場合には、後遺障害認定機関の認定を上回る判断がされる場合や、逆に後遺障害と認定されているのに後遺障害と認めないと判断されることもあるので、実務上は認定を受けているから結論も決まっている、とは言い切れません。

さらにいえば、同じ等級に認定されても、同一の判断とならない、ということもあります。

例えば、腕や脚等を骨折して一定程度以上関節を十分に曲げられなくなると、12級の後遺障害と認められる場合があります。

通常、12級の後遺障害に該当するとされた場合、将来の収入について、14%程度影響が出るものと考えられています(逸失利益といいます)。

12級には、顔面醜状という、傷跡が残った場合の後遺障害等級も定められていますが、裁判等で逸失利益を争われることがあります。

建設現場での作業等をイメージしていただくと、確かに腕足を痛めていたら重いものを持てないだろうな、傷跡があっても作業に支障はないのかな、ということになるのかもしれません。

とはいえ、傷跡があることで顔を隠すようになりうまく職場でコミュニケーションが取れなくなる等といった可能性は払しょくできません。

また、例えばモデル等のお仕事であれば、傷跡による影響はダイレクトに出てくると思われます。

この辺りは、弁護士としては、個々の事情を踏まえてしっかり争っていく必要があるところとなります。

自己破産後の生活

自己破産をした後の生活がどのようなものになるかについて不安があり、自己破産に踏み切れない方もいるかもしれません。

実際のところは、あまり影響がない方が多いかなと思います。

まず、自己破産の事実は官報という国の公報で公告されます。とはいえ、官報情報を逐一見ている方はあまりいません。官報自体、知らない方も少なくないといえます。官報に載る以上、誰にも知られずに自己破産できる、と断言することはできませんが、周囲に大々的に知られてしまうことは少ないといえます。

次に、一定期間信用情報機関に登録される、という問題です。いわゆる「ブラックリストに載る」と言われているものと考えていただいてよいと思います。この状態ですと、通常新規の借り入れ等は審査が通らなくなりますので、登録がなくなるまでは住宅やお車のローンは組めないといえるでしょう。

また、クレジットカード利用もできないことが通常です。

ただ、自己破産直後に住宅ローンを組む方は多くないでしょうし、ローンが組めないだけですので、貯金して安い車を一括購入すること等は可能です。

クレジットカード利用の制限も、最近は「○○ペイ」等の電子決済の普及が進んでいますし、デビットカードであれば使用可能ですので、日常生活ではあまり大きな支障にはならないともいえます。

もちろん、自己破産を積極的に進めているというわけではありませんが、不必要におびえる必要まではないのではないでしょうか?

より細かいお話などは弁護士にご相談ください。

尋問

「異議あり!」。

ドラマ等法廷でのワンシーンで見たことがある方もいるかもしれません。

人差し指を勢いよく突き出しているゲームのパッケージも目に浮かびます。

証人尋問は、裁判のイメージとしてかなり象徴的なものかもしれませんね。

ただ、実際のところ、特に民事裁判ではあまり見かけないことの方が多いかと思います。

紛争が生じたとしても、そこから話し合いでの解決ができずに訴訟(裁判)に発展する事案自体割合としてかなり少ないといえますが、さらに裁判手続が進む中で、比較的多くの案件が裁判上の和解等で終結するため、尋問手続きを行う事案の割合もかなり少ないといえます。

そのため、尋問を期待して民事の裁判傍聴に行く場合には期待を裏切られてしまうかもしれません。

また、実際に民事の証人尋問を傍聴する機会があったとしても、異議を出す場面は比較的限られていると思われます。

明らかに尋問のやり方に問題があるケースもあり、その場合には積極的に異議を出して正していく必要もあります。

他方で、裁判官に対してこちらに有利な印象が残るよう、不適切な尋問をあえて続けさせることもあります。

逆に、戦略的に積極的に異議を出して尋問をリズムを崩すようなこともないわけではありません。

数としては多くありませんが、実際に尋問が飛び交う場面に出くわすことがあったら、そのあたりの弁護士の駆け引きを傍聴することができるかもしれませんね。

なお、異議は、担当裁判官に対して意見をし、相手方に是正を求めるものですので、大声で相手を指さして「異議アリッ!!」とやるのはかえって裁判官からの印象が悪くなるかなと考えており、私個人としてはやることには躊躇を覚えます。

結果の請け合い

未来は誰にもわからない、というと大げさな表現になってしまいますが、ある意味では真実かと思います。

そのため、ご相談の際に、「勝てますか?」と聞かれて「絶対勝てます!」と断言することはできません。これはどの弁護士でも同じはずです。

ご相談いただいた方には、もしかすると頼りないという印象に映ってしまう可能性がありますが、これには理由があります。

「弁護士職務基本規程」という、弁護士が守るべきルールが定められており、そのなかに、有利な結果の保証をしてはならない、というものがあります。

事件のすべての事実が証拠からはっきりと明らかになっている、ということはまずありません。そして、未確定の状況を前提に結論が断定されることは不可能といえます。

仮にすべての証拠がそろっていると仮定しても、揉めた事件は最終的に裁判になり、裁判での最終決着は判決です。

判決を出す裁判官という他人の行動を完璧にコントロールすることはできませんので、やはり結果のお約束はそもそもできないこととなります。

そうなると、過去の経験や裁判の傾向等からある程度の見通しを立てることはできますが、1件1件の事実関係は異なりますので、やはり予測の域は出ないということになってきます。

もちろん、見通しが厳しい事件で裁判を選択し、結果としてこちらに有利な解決となることもあります。

ただ、弁護士の目からみて、勝ち目のない事件と思っているのに「勝てますよ」といって契約に誘導し、報酬を受け取ってしまうような場合が想定される典型的な問題と思われます。

そのため、はっきり勝てると言えないことが頼りないのではなく、安易に勝てますと言ってしまうことに問題がある、とご理解いただければと思います。

法定利率

利息って何%かご存知でしょうか?

通常は、契約時に当事者間の合意によって定められるものとなります。

ですので、「契約次第」というのが1つの回答です。

じゃあ問題ないんではないか?とも考えられますが、当事者間の契約で利息について定めない場合もありますし、そもそも契約がない場合については当事者間で利息を定めようもありません。

弁護士実務上は、損害賠償、不当利得等、案外契約ではない場合のご相談もありますので、契約で定めていない場合の利息についても関わり合いは少なくありません。

さて、大学の法学部等で何年も前に民法の勉強をされた方の中には「年5%」と回答される方がいるかもしれません。さらに、商法を学んだ方は、「商事法定利率は年6%」と答えるかもしれません。

ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、民法については比較的大きな改正があり、2020年4月1日付で施行されておりまして、利息もその改正の1つとなっています。ですので、上記の回答は正しくない可能性があります。

まず、商法で規定されていた商事法定利率というものは今回の改正に伴い廃止されましたので、現在は商法が適用される取引か否かで法定利率についての違いはなくなりました。

他方、民法上の法定利率については、改正時に年3%に引き下げられ、その後については、3年を1期とし、1期ごとに変動することとなりました。

正しくない「可能性がある」というのは、変動の結果によっては5%や6%になる可能性があるのと、改正前の適用となる案件については改正前の利率で計算されることになるためです。ここまでくるとやや複雑な話になってくるかもしれませんが。。。

なお、先月、法定利率は変わらず3%となることが法務省より告示されております。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00317.html

経済的全損

自動車事故、特にお車、バイク等の物的損害について、争いとなることが多いのが経済的全損と呼ばれるケースに該当する場合です。

例えば、追突事故に遭って車が壊れた、修理費として60万円かかる、という見積もりだったとします。他方、事故車両は何年も乗ってきた車で、現在は30万円程度しか価値がなかった場合、賠償されるのはいくらか、という問題です。

この場合、例外的な事例を除き、基本的には時価額での賠償となる、つまり被害者の方は30万円程度しか賠償を受け取れない、というのが裁判実務となっています。

特に上記のような被害者無過失の事故ですと、なかなか被害者に酷な結論のようにも思われますが、不法行為法の考え方がその理由となっています。

交通事故も基本的に不法行為に基づく損害賠償請求となりますが、損害賠償は、「不法行為に遭う前の状態への回復」のために行われるものとされています。

「車を修理してもらうのが事故前の状態だ」という考え、お気持ちはごもっともです。が、事故に遭う時点で、被害者の方の手元には時価30万円の車があるわけですので、30万円分の賠償を行えば、その損害は補填されてしまうといえます。時価の評価が妥当であれば、事故車と同程度の車は30万円で購入できてしまいますので。

そうなると、「時価30万円の車は30万円では購入できない」という意見が出てくるかと思いますが、これは「買替諸費用」といって、別途賠償される可能性があります。

弁護士が介入する場合には通常確認するところですが、介入前ですと、買替諸費用については考慮されていない場合や、交渉段階では買替諸費用については認めてもらえない場合がありますのでご注意ください。

なお、時価額30万円程度、という前提で話を進めてきましたが、そもそも時価額の査定は妥当か、という点もよくご確認いただくとよいと思います。

裁判の期間

裁判をしたらどれくらい時間がかかるのか、という疑問を持つ方もいるかと思います。

このあたりの見通しがあまりよくわからないため、裁判に進むことを躊躇される方もいるのではないでしょうか?

当事者間による話し合いの結果、交渉が決裂したために裁判に進む、というプロセスをたどることが多いので、話し合いでの解決よりは時間がかかるのはある種当然かな、というところになります。

では、具体的にどの程度の期間を要するかといえば、「事案による」としか言えないのですが、、ある程度事案ごとの傾向はあるといえます。

例えば、過払金請求訴訟の場合、事実関係についての争いはあまりなく、取引の経過等に対する評価が争われることが多いです。

そのため、他の案件と比較すると数回程度の期日で和解等による解決に至る場合が多いといえます。

期日はおおむね1か月程度ごとに1回入りますので、半年以内には解決のめどが立つ事案が多いかなと思います。

一方、相続等の争いになると、そもそもの事実関係から争われる場合があったり、複数の相続人との間で争いが生じる等、争いが複雑化する傾向にあるといえますので、数年単位となることも少なくありません。

それでも相続関係の調停等がそれなりにあるのは、比較的大きな金額の争いとなる場合が多いことや、法律ではない、感情的な側面も関わってくる傾向が強いところがあるからかと思います。

弁護士は通常裁判所に行く機会が多いのであまり気になりませんが、裁判所に出頭すること自体に抵抗を持たれる方もいるかもしれません。

事案によってはほとんど当事者が出頭せずに案件が終結する場合も多いです。

このあたりは分野によっても変わってきますので、裁判をされる前にご確認いただくとよいかと思います。

解決手続きあれこれ

交通事故についての解決手段は様々です。

実務上は、話し合いによる解決となっていることが割合としては多数になると思います。

話し合いによっての解決が難しい場合にはどのような手段があるでしょうか?

まずは裁判が浮かぶ方も多いと思います。

法廷で裁判所を間に向かい合って主張を展開する、いわゆる裁判のことですね。たいていの場合、双方ともに弁護士を依頼して行われているかと思いますが、本人訴訟といって、ご本人による裁判もあります。

同様に裁判所を利用した手続きとして「調停」というものもあります。

調停というのは、概要としては、裁判官を間に立って行われる話し合いの手続きです。「話し合いをして解決しなかったのに調停で解決できるのか」、という疑問もおありかと思いますが、必ずしも合意が成立しないわけではありません。

裁判所の方で和解内容の提案等を受けるため、ある程度双方の納得のいく解決が期待できるかなと思います。

もう少し柔軟な方法として、裁判外紛争解決手続きというものがあります。「ADR」等と呼称されることもありますが、この手続きは、主に弁護士等が双方の間に立って示談あっせん等を行う手続きです。

紛争処理センター、紛争解決センター等があります。

裁判手続きより相対的に早期解決が期待できます。

納得できなければ裁判に進むこともありますので、まずはADRで、ということもあります。

飲酒運転

飲酒運転はダメです、ということは皆さま言われなくともわかっていることかと思います。

悲惨な事故等が起きた経緯等から、刑事罰の厳罰化されたこと等についてご存知の方もいるかもしれません。

弁護士としては、刑事だけでなく民事でもかかわる可能性がありますが、民事の場面でも、飲酒の事実は過失割合等を決めるにあたり、当然不利な方向で影響を受けます。

さらに、慰謝料の増額といった不利益が生じることもあります。

そんな高額の支払いできないから自己破産するしかない、という状況になるかもしれませんが、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は、非免責債権といって、自己破産をしても支払義務がなくならないものとされています(破産法253条1項3号)。

意図的に飲酒運転をして暴走してやろう、ということはないかと思いますので、車両に関する損害等については支払義務が免除される可能性もないわけではありませんが、「人の生命又は身体を害する」ことにより生じた治療費、慰謝料等について、飲酒運転は「重大な過失」があると認定される可能性が高いため、支払義務がなくならない、という可能性が高いです。

時勢柄、大々的な忘年会等はないかもしれませんが、年の瀬はお酒を飲む機会が多くなる方もいるかと思います。

ただ、飲酒運転となると、「羽目を外す」といった言葉では済まされない事態となりますので、十分ご注意いただき、よいお年をお迎えください。

利益相反

四文字熟語になっていると難解な印象が出てきてしまう、というのは専門用語のよくないところなのかもしれません。

ただ、弁護士がご依頼をいただくにあたって、利益相反というのはとても重要な問題となってあらわれてきます。

利益、というのはご相談いただく方の利益であり、相反というのは文字通り「あいはんする」ということです。

どの範囲で相反になるのか、となるとやや踏み込んだ問題となってきますが、わかりやすいのは当事者双方から相談を受けてしまうようなケースです。

具体例として、離婚で揉めているご夫婦のうち、先に奥様から相談を受けてご依頼をいただくことになった後、相手方となる旦那様の方からも相談を受けてしまった、という場合が典型的かと思います。

弁護士というのは、ご依頼いただく方の利益のために行動をしなければならない立場にあるわけですので、まずはご相談いただいた奥様のために行動しなければ、という立場におかれます。

そこで旦那様からご相談を受けた弁護士は、旦那様からのご相談に対して、旦那様の利益のために行動できるでしょうか。

例えば、お子様がいて、双方親権を主張していたとします。

ここで旦那様に有利なアドバイスをすることは、ご依頼をいただく奥様にとっては不利になるということは明らかです。

まさに夫婦の利益が相反しているので、弁護士としては、旦那様からの相談をお受けできなくなってしまう、ということです。

また、ここで旦那様に対し、「奥様からご依頼をいただいていますお答えできません」ということもできません。

これは、対立当事者が弁護士に依頼をしている、という情報を与えること自体に問題が生じるからで、結果、旦那様からのご相談をお断りするうえ、お断りする理由の詳細もお伝えできない(お伝えすべきでない)ということになってしまいます。

上記の例では旦那様に対してずいぶん酷な対応となってしまうのですが、上記のような問題があるということで、ご理解いただけますと幸いです。

方針選択

借金問題と聞くと、自己破産手続きをイメージされる方もいるかと思います。

それも方針選択の1つではありますが、各社と交渉して分割弁済していく任意整理と呼ばれる方法や、自己破産と同じく裁判所を利用した手続きとして、個人再生というものもあります。

それぞれメリット・デメリットがありますので、ご相談の際にはよく弁護士とご相談されるとよいと思います。

必ずしも経済的に見てベスト、というだけでなく、ご相談者様のお気持ちの面を重視して方針を決める場合もあります。

例えば、自己破産と個人再生とでデメリットに大きな差がないように思われる場合、自己破産の場合には手続きが終わればたいていの債務の支払義務はなくなるわけですので、一定額の返済が残る個人再生より自己破産がよいのではないか、とご提案をすることがあります。

しかし、「自分で作った借金なので、いくらかでも返せるなら返していきたい」というご意向のもと、個人再生を選択される方もいらっしゃいます。

そういった場合には、お気持ちを優先して方針を決めることになります。

どう考えても客観的に見て返済を続けられるような状態ではない方の場合には、自己破産しか選択しようがないとご説明するしかないこともあります。

正解、というのは、必ずしも客観的に決まるものではないと思います。ご相談いただく状況により方針は様々ですので、まずはご相談ください。

相殺

「相殺」と書いて「そうさい」と読みます。

「相」という字は互いにという意味があり、そうなると「互いに殺す」というなかなかにおぞましい感じの言葉になってしまいます。

相殺についてインターネットで調べてみると、民法上の相殺のことを指す用語として説明されているようでしたが、ゲームやファンタジーの世界等でも出てくる用語だったりするので、なじみのある方も多いかもしれません。

お互いの効力を打ち消しあう、といった意味合いで使われていることが多いかなと思います。

弁護士実務では、わりと出番の多い言葉かもしれません。

例えば、過払金を100万円請求をする際、請求する相手の業者に対して別に30万円の債務が残っているとした場合、過払金返還請求権という債権と、貸金業者の有する30万円の貸金返還請求権という債権を相殺し、差引70万円を支払ってもらう、といった具合です。

これは民法上に規定されている相殺の場面ですね。

あとは、交通事故や労働災害等の損害賠償の場面で、過失相殺というものが問題となることもあります。

例えば、青信号を直進したA車と、青信号で右折しようとしたB車がぶつかって生じた交通事故で、2:8でそれぞれ落ち度(過失)があったとします。

A車の修理費が20万円、B車の修理費が10万円だったとすると、A車側は2割の過失があるので修理費の8割である16万円までしか請求が認められない、というのが過失相殺です。

同様に、B車側は8割の過失があるので2割の2万円を請求できます。

この際、実務上は、上で説明した債権同士の相殺により、差引14万円をB車側からA車側へ支払うことになる、という処理をすることが多いです。

裁判外の活動

弁護士といったら裁判所に行って判決が出るまで戦う、というイメージを持たれている方も少なくないのかと思います。

しかし、実際のところ、大多数はそれ以外での解決となっていることが多いといえます。

例えば、交通事故事件などでは、裁判になる事件より裁判前の交渉で解決する事件の方が多い傾向にありますし、さらに裁判になった後であっても、裁判上での和解で解決する方が、判決まで進む場合より多いです。

また、裁判外紛争解決手続(ADR)等と呼ばれている、裁判所ではない第三者機関を利用した話し合いなどもあります。

交通事故紛争処理センター等が一例です。

相続、離婚等の家事事件では、裁判ではなく、調停という手続きでの解決となることが多いです。

離婚事件においては、調停前置主義という、離婚裁判をする前に調停をしなければならないという原則が法律で定められています。

そして、比較的多くの場合には、離婚裁判(訴訟)に至る前に調停で

離婚等が成立していることが多いというわけです。

刑事事件については、裁判となることも少なくありませんが、そもそも「不起訴処分」といって、検察が裁判にしないで終わらせたり、略式起訴といって、罰金刑にする軽微な手続きで終わる場合もあります。

略式の場合は弁護士が立ち会うケースは通常ないため、通常の起訴をされる可能性がある事件につき、軽微な略式で終えることを目指した弁護活動等をすることがありますが、このケースも、裁判以外の弁護士の活動場面といえるかと思います。

会社の元代表者の破産

過去会社の代表者だった方から破産のご依頼をいただくことがあります。

その際、「会社はもう動いていないから放置して、自分だけ破産できないか」といったご相談をいただくこともあります。

実際そのような方法がとれるかといえば、「不可能とはいえないが原則としてはできない」という回答になろうかと思います。

というのも、代表者が破産しようとすると、破産手続開始決定のタイミングで代表取締役としての地位が一時的にせよ失われることになります。

そうなると、では誰が会社を運営していくのか、という問題が出ます。

動いていない会社であっても、それを清算等するのであれば、そのための人員は必要になり、通常はその会社の代表者になります。

また、動いていない法人を放置されてしまうと、法人の債権者も困ってしまいます。

こういった理由から、裁判所によっては、元代表者の自己破産申立ては原則法人と一緒でないと受け付けていないという運用のところもあります。結果として、過去の会社についての倒産と合わせてでないと、現在給与所得者等で会社経営を行っていないとしても、個人だけの自己破産ができない、ということになる場合があります。

なお、法人にかかわる破産手続は、全件破産管財事件となり、破産管財人弁護士が選任されることになりますので、20万円以上の予納金等も用意する必要があります。

弁護士費用特約

トラブルに巻き込まれた!相手方の対応に納得がいかない!でも弁護士に依頼するとお金がかかるし。。でも大丈夫!

…ということで、保険の宣伝みたいになってしまいましたが、要するにそういうときに使える保険の特約が、弁護士費用特約です。

もっとも普及しているのが交通事故に関する損害保険に付帯された特約といえるかなと思いますが、火災保険等についていることもあります。

また、少しずつですが、離婚事件や刑事事件等にも適用対象が広がってきているものでもあります。

実際のところ、メリットはそれなりに大きいと思っています。

慈善事業ではない以上、ご依頼いただくにあたっては弁護士報酬等をいただかなければなりません。

例えば、ご依頼いただくと損害額が増額する可能性があるけれど、弁護士費用まで考えるとメリットはそこまで大きくならないかもしれない、という事案のご相談をいただくことはそれなりに多いといえます。

そんなとき、弁護士費用特約があれば、増えた分はまるまるご依頼者様にプラスになるわけで、弁護士費用分、という負担を考えなくてよくなります。

もちろん、少額とはいえ保険料はかかりますが、まずはご自分の自動車保険の特約の有無を確認されてみてはいかがでしょうか?

裁判傍聴

裁判傍聴をしたことはあるでしょうか?

裁判期日は、公開の法廷で行うとされています。

憲法82条1項に「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と明記されています。

裁判所での手続きが公平・適正に行われていることを国民にも確認できるように、というのがその趣旨だったりします。

とはいえ、例えば民事裁判における裁判期日の大半は、極めて短時間で終わってしまっているのが実情です。

というのも、双方の主張は書面で整理され、期日当日はその確認程度で終わってしまうためです。

もちろん、尋問手続等もありますが、多くの裁判では、尋問までに進む前に和解成立等によって終結しています。

テレビドラマ等でイメージするような尋問の場面は、刑事事件の方が多いかなと思いますので、もし膨張されるのであれば、まずは刑事事件からの方がよいかもしれません。

刑事事件では、たいていの場合被告人質問を行います。

さらに、事件の内容によっては、目撃者や被害者等の尋問が行われることもありますので、ドラマのイメージに近いものを傍聴できるかなと思います。

なお、たまにドラマ内でヒートアップした弁護士等の登場人物が証言台に立っている人の近くまで行って怒鳴りつけるような描写がありますが、威嚇的な尋問は認められていませんから、実務でそういった場面に遭遇する可能性は少ないと思います。

蝶々

法律用語として「相当因果関係」というものがあります。

ニュアンスが異なってはきますが、民事事件でも刑事事件でも出てくる用語で、基本的には、単に因果関係というよりも、「相当」といえる範囲に限定するもの、ということができます。

「ある行為が結果につながっているのは当たり前ではないか」と思うかもしれません。

ただ、なんでもかんでも因果関係があるとするのであれば、「風が吹けば桶屋が儲かる」ではありませんが、際限がなくなってしまいます。

そのため、これを妥当な範囲に絞ろうというのが、相当因果関係の考え方といえます。

今のところ弁護士実務、裁判実務などで基本的に取られている考え方といってよいかと思います。

では、「相当」とされる因果関係はどこまでか。

結局はここが評価、解釈の問題となり、紛争の場面においては争点となっていきます。

責任を問う側(賠償請求等する側)からすれば、その範囲は広い方が望ましく、責任を問われる側(罪等に問われる側)からすれば、その範囲は限定的である、と主張したいわけですね。

「風が吹けば桶屋が儲かる」と似たようなものとして、「バタフライエフェクト」というものがあります。

ブラジルにいる蝶々の羽ばたきが本当に竜巻を起こすのかはわかりませんが、もしテキサス州で起きた竜巻被害の責任を問われるとすれば、さすがに酷だろうな、と思うところです。

不動産担保切替

不動産担保切替という過払いの争点があります。

 過去には貸金業者が借主の不動産を担保にすることで追加の借入れをしていたことがあります。

通常は不動産を担保にしてまとまったお金を借入れる契約をしますが、借入額の一部を従前の契約の債務への返済に充て、実際には差引額の金銭を受け取る、という処理をしていることが多いようですが、これも事案ごとに異なります。

 平成24年の最高裁判決で、不動産を担保に入れた際に一括で借入れをし、その後一度も追加の借入れをすることなく取引を終えた、という事案については、不動産を担保にする前後の取引は別物と判断しています。

 不動産を担保にした後の取引経過がそれ以前と大きく異なり、返済だけしていた、という点も、考慮要素とされていると読める内容です。

 しかし、不動産を担保にする際も、他の借入れと変わらない、何度も借入れが可能でいわゆるリボ払いで返済していく契約となっていることがあり、現時点でこの場合についての最高裁判決は出ていません。

 最高裁以下の下級審レベルでは、結論が分かれている状況にあります。

 難しい争点といえるかと思いますので、過去不動産を担保に借入れをした方で過払金返還請求についてご検討の際には、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

和解と過払

過払金請求をする中で、過去の合意が問題となることがあります。

合意にいたる典型的な流れとしては、借入れ返済を繰り返すなかで、途中で返済が滞ってしまったところ、貸金業者からの提案を受け、その時点で残っている債務につき、あらためて毎月いくらずつ返済します、という合意をするケースです。

ところが、この合意をした時点で計算し直すと、そもそも借金はもうなくなっており、むしろ過払金の返還を求められる状態だった、という場合があります。

その場合、過払金の請求にどういった支障が出るのか、という点が問題となってきます。

この争点は、大きく分けると、民法でいうところの「和解」にあたるのか、当たるとしてもその合意の範囲に過払金請求はなお可能なのか、和解が無効(取消)とならないか、という3つに分けられるといえます。

民法上、和解というのは、「当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめること」をいいます(民法上695条)。

要素としては、互いに譲ること、争いをやめることに分けられるかと思います。

ここからは事案によりけりですが、よくある事例では、その当時残っている債務を確認したうえで、その返済を合意します。

さて、この場合、債務者側は譲歩しているといえるでしょうか?

また、債務額について双方認めていた通りだったとするならば、やめるという前提の「争い」自体あったといえるでしょうか?

過払金請求と過去の合意に関する事件では、まずどういう合意だったのか、という法的評価から争われることが多く、貸金業者側にも弁護士がい選任されることが多い印象です。

過去の和解が争点となる過払請求については弁護士に相談することをお勧めします。

年末

年の瀬ですね。

ワクチンの普及はある程度進みましたが、結局コロナ収束とはなりませんでした。

こればかりはどうなっていくのかわかりません。

ウィズコロナ、難しい時代です。