健康保険で治療をすると,多くの人は治療費が3割負担すればよくなります。
残りの7割は,協会健保または国保係(国民健康保険の場合)が支払ったのち,
加害者に請求がいきます。
しかし,本来は通勤中の事故などで,労災が使えたのに,健康保険を使って
治療をしてしまったというケースが多く見受けられます。
法律上,労災が使える場合には健康保険治療はできないため,
労災治療に切り替える必要があります。
ここで問題になるのが,すでに支払いを終えている部分を遡及的に労災に切り替える
ことができるかどうかです。
遡及的切り替えが可能かどうかは,医療機関によって異なるため,窓口での確認が必要です。
遡及的切り替えが可能な場合には,労災指定か労災指定でないかによって書式は異なりますが,
通常の労災請求の際に必要となる書式を会社に用意してもらい,病院から労基署に請求してもらいます。
遡及的切り替えができない場合には,いったん健康保険で治療していた部分の返還を経て労災に
切り替えることになります。
具体的には,健保組合または国保係へ労災事故であったことを連絡します。
そうすると,これまで健保組合または国保係が負担していた7割部分の返還を求める書類が届きます。
そして,7割部分の返還を行うと,領収書が届きます。
この際,レセプトだけ健保組合または国保係に残っている状態だと,後から開示手続等の問題が出てくるため,
領収書と一緒に,レセプトも送ってくれるように依頼をしておくとよいです。
そして,この7割部分の領収書,自分が支払っていた3割部分の領収書,レセプト,
本来労災で治療をした場合に必要となる書式(労災指定か否かで異なる)を労基署に提出します。
これにより,健康保険で治療をしていた部分の治療費を労災での治療に遡及的に切り替えることができます。
なお,接骨院,整骨院の場合は,多くの院が労災指定になっており,
基本的には遡及的切り替えに応じてくれるか否かが問題ですので,
その点を確認する必要があります。
遡及的切り替えができない場合には,いったん7割分の支払いもすることになり,
長期間にわたって健康保険で治療を続けていて,労災であったことが発覚すると,
7割部分の返還が事実上難しい場合も出てきます。
最初の段階でどのように治療を受けるのが適切なのか,よく確認しておく必要があります。
弁護士によっては,このようなことまで考えてアドバイスしてくれるかわからないため,
ご相談の際は,治療についてのアドバイスも含め交通事故に詳しい弁護士に相談されることを
お勧めいたします。
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