特別寄与料第1回

特別寄与料 第1回

特別寄与料の制度は令和元年相続法改正で新設された制度です。

条文としては,民法1050条1項に定められており,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払いを請求することができる と定められています。

この条文が定められた主な制度趣旨は,いわゆる寄与分の制度では救済されない(相続人の寄与とみなすことでは救済されない)方について,寄与分を認めようというものです。

具体的には,例えば,父が亡くなり相続人は子が3名(A,B,,C)で,AとAの妻Dは仕事を辞め,寝たきりとなってしまった晩年の父の介護に尽くし,施設やヘルパーを利用せずに,24時間の間3時間に1回必ず痰廃除等を行う等,扶養義務の範囲を超える介護を尽くしたことで,本来支出されるはずの介護費を免れ,財産の維持に努めたとします。

この場合はAのみならず,Aの配偶者Dの介護寄与については,従前から判例が,DをAの履行補助者とみなすことにより,Aの寄与分として算定することを許容していましたので,このケースではDの救済は寄与分制度を利用すれば足り,特別寄与料などという制度は不要です。

しかし,上記の案件で,Aが父より先に死亡しており,AとDに子がいないケースでは,父の相続人はB,Cの2人となり,Dの介護寄与について相続人の寄与分として算定することは不可能であり,Dの救済が必要になります。

このDの救済を図る制度が,特別寄与料であるということです。