遺留分侵害額請求第2回

前回は遺留分が形成権から金銭債権となったことを説明しました。

遺留分が金銭債権になったということは,前回の事例(遺産が不動産A(評価5000万円),不動産B(評価3000万円),預貯金1億円)であった時に,遺留分権利者Xさん(遺留分割合4分の1)が遺言で全部の遺産を取得するYさんに対して遺留分を請求するケース)において,XさんがYさんに請求できるのは1億8000万円の4分の1である4500万円である という結論になります。

新法はいかにもシンプルでわかりやすい構成ですが,いくつか問題点があります。

まず,Yさんが不動産Aが不要であり,Xさんが不動産Aが欲しいという場合に,従前の形成権の場合とは異なり,Xさんは不動産に持分を有さず,金銭債権しか持っていませんから,遺留分の解決として不動産で解決するためには,代物弁済によらざるをえないということになります。

この場合,Yさんが不動産Aを取得し,その後に代物弁済としてXに譲渡し,Yさんは譲渡所得課税が課税されるということになります(当然相続税も課税されます)。多くのケースが遺言に基づく相続税申告後に上記処理がされることを考えると,金銭債権であると明確にされたことにより,課税関係が複雑になることがあります。