遺留分侵害額請求第3回

遺留分侵害額請求の第3回です。

前回に引き続き,遺留分の金銭債権化に伴う実務上の問題点をお伝えしていきます。

金銭債権化に伴う,(予想外の?)問題点は,金融機関が遺留分請求者からの被相続人の遺産開示を拒むことが出てきたということです。個人的にはおかしいと思うのですが・・。

どういうことかというと,従前は遺留分請求権は形成権であったため,前回,前々回の事例のとおり,1億円の預金があれば4分の1の遺留分権利者は2500万円の預金債権を有していました。

しかし,金銭債権化したことで,遺留分権利者は遺留分義務者(遺言で全てを取得する相続人等)に対して債権を有するにすぎず,直接銀行に対しては債権を持たなくなりました。

一部の銀行が,上記ロジックを理由に,遺留分権利者が亡くなった方の遺留分を請求するために遺産や取引履歴の開示を求めた際に,相続人ではあるが預金債権を有していない という理由で拒否をするという事例が起きています。

たしかに預金債権は有していないかもしれませんが,相続人には遺留分という最低限の権利があり,当該権利の行使のためには遺産及び取引履歴の確認が必要である以上,被相続人の預金情報を開示しないというのは誤った運用だと思います。

上記のような事態が生じた場合には,弁護士にご相談ください(遺留分侵害額請求権を根拠に,弁護士会照会にて開示を求めることになります。)