相続した不動産の所有権放棄 第1回

今回は,法改正が予定されている相続不動産の所有権放棄の制度に関する第1回です。

前提として,上記のような制度が予定されている理由として,①相続放棄が硬直的な制度であること,相続放棄をしても不動産の管理義務は残ること②負の不動産,放置不動産の増加 が実務上の問題として挙げられます。

①まず,相続放棄は,全ての財産を放棄するか否か という制度であり,特定の遺産を選別して取得したり放棄したりすることはできません。相続債権者を害することも考えられるので,当然といえば当然ですが,引き継ぐか引き継がないかの2択です。さらに相続放棄をしても不動産に関して「自己物と同様の注意義務」が存在しており,放棄をした後に,土地の崩落等により責任を追及されるケースが存在しています。

②相続放棄をしない場合には,不要な負の不動産が含まれる場合であっても相続人が引き継がざるをえないため,一応相続はするものの,登記する費用が面倒であるため登記をせず,また,管理もしないという状況が生じています。

この点は次々回以降説明をする相続登記の義務化 にも関わる話です。

これらの問題点から,相続の際に土地を放棄する制度を新設することで,所有者,管理者が不明であるという不動産を減少させ,また,放棄をしても責任追及をされるというリスクから解放する という制度が求められることになりました。