暦年贈与の廃止,相続と贈与の一体課税へ第2回

暦年贈与の廃止,相続と贈与の一体課税制度 第2回

前回お伝えした通り,令和4年税制大綱に記載されている内容は至極もっともであり,特に一般家庭における資金流動化に寄与する制度であれば,税法上は合理的であると考えられます

金額に限度額の無い相続時精算課税制度のような規定であれば(実質的な増税でなければ),特段納税者から不満は出ないように思われます。

どちらかというと問題が起きそうなのは,生前贈与による資金移動が増加することにより,相続紛争において,生前に贈与を受けた側と受けていない側の紛争(特別受益該当性,持ち戻し免除が激化することが容易に想定され(特に立証関係),相続時精算課税のようなものと仮定すると,一応毎年税務署に対して贈与を申告し,納税はせず,まとめて相続時に課税されるとすれば,相続時精算課税において問題となるように,一方が他方に対して当該贈与に関する資料等を開示しない場合等に立証の関係から不公平が生じる可能性があるという点です。

生前贈与を推奨していくのであれば,生前贈与に伴う特別受益,遺留分の紛争との交通整理をどのように図るのかが気になるところです。

時代の流れとして,金融機関の開示も10年間,生前贈与に対する遺留分侵害額請求も10年間の期間制限があるなかで,生前贈与を推奨していく(税制大綱の表現からすれば,長寿化による若年層への資産流動性の低下が問題だということなので,より若年の贈与を推奨していく)のであれば,亡くなる前10年以上前の贈与となり,遺産分割,遺留分の追及ができなくなるであろうと思われる。

10年以上前に贈与を行えば,どうやっても追及できない制度なのだ ということであればそれはそれで明確ではあるのですが,今以上に,贈与をしてもらった者勝ち にはなり,遺言書があって遺留分請求で最低限確保 という時代は終わり,亡くなる前10年以上前に可能な限り全力贈与 が流行るのかなぁ と推測をしているところです。