数次相続の諸問題2

前回に続いて,数次相続の問題を考えていきます。お父さんが先に亡くなり,お母さんが次に亡くなったというケースで,一次相続には遺言書がないが,二次相続において長男に全て相続させるという遺言書があるとします。

二次相続に対する遺留分侵害額請求は,お父さんの2分の1の財産を相続したお母さんの財産を計算しなければなりませんから,一次相続の遺産の評価をしなければ,二次相続の遺留分侵害額が確定しないという関係にあります。

旧民法で遺留分請求が形成権であった際には,理論上は各預金債権,不動産に対する持分権として構成することがあり得たので,理論的には遺産評価をせずとも解決が図れる可能性はありましたが,その場合でも,相続債務や特別受益の主張がなされると(要するに遺留分を侵害しているのか,していないのか,している場合にいくらかが問題となり,遺産の評価が必要になると),一次相続を含めて遺産評価をする必要が生じていました。

このような場合には,時系列的には最初に亡くなったお父さんの遺産分割の解決をして,次にお母さんの遺留分に関する解決をするように見えますが,お母さんの遺留分に関する問題が解決しないと,お父さんの遺産分割も解決しない,という関係になってしまうのです。

ややこしいので,裁判所も間違ってしまうことがあり,遺留分の問題が解決していないのに,お父さんの遺産分割審判を出してしまった等のトラブルに複数対応したことがあります。