相続手続と必要な戸籍謄本

本日は,親子相続以外で必要な戸籍謄本について記載をします。

まず,直系尊属が相続人のケースでは,直系卑属(子,孫,ひ孫・・)がいないことを証明しなければ相続人になりませんので,子がいなければ被相続人の出生から死亡までの戸籍の他,相続人である親の現在戸籍で足りますが(既に死亡している直系尊属がいる場合にはその方の死亡がわかる戸籍も必要です),子がいたけども,既に子も死亡しているというケースでは,子についても出生から死亡までの戸籍を取得する必要があります。

兄弟相続のケースでは,直系卑属がいないことにくわえて,さらに,直系尊属が全て亡くなっていることをも示さなければなりませんので,取得する戸籍は多くなります。直系尊属については「120歳くらいまでであれば存命である」と推定されますので,生きているとすれば120歳程度の方についてまで,死亡について証明する戸籍が必要になります。

核家族化が進んでいる東京の相続ではあまりありませんが,地方の相続では今でも,相当な人数の兄弟相続について,膨大な戸籍を収集するというケースも珍しくはありません。

特に,相続を放っておいてしまい,相続の相続が発生しているケースでは,100回,200回と戸籍取得の郵送をするケースもありますので,相続人の確定作業につき,専門家でなくては手に負えない(専門家でも大変)というケースがままあります。

 

相続手続と必要な戸籍謄本②

前回の記事にて,親子相続のケースで親の出生から死亡までの戸籍を取得しなければならない理由まではご説明いたしました。

次は相続人の現在戸籍を取る理由ですが・・これは簡単で、相続人が現在生きていることを証明するためです。ただ、簡単と申し上げたのは、相続人である子が全て生きているケースで、子が亡くなっていると、代襲相続と数次相続の有無の確認が必要になってきます。

代襲相続はご存じの方が多いと思います。親より先に子が亡くなっていた場合には、子の代わりに孫が引き継ぐって制度のことですね(兄弟相続の場合も一度に限り、代襲相続がありますね)。もし、親より先に子が亡くなっていて孫がいる場合には・・もうお分かりいただけると思いますが、この子に、孫が何人いるかを確認しなければいけませんから、今度は子の出生から死亡までの戸籍も全て必要になりますね。

次に、数次相続というのは、相続が繰り返し発生している場合のことです。

数次相続となれば、今度はその子の相続が普通に発生していると考えるわけです。令和2年9月5日に親が亡くなったとして、同年9月3日に子が亡くなっていれば代襲相続の問題、同年9月7日に子が亡くなっていれば数次相続の問題です。

 

具体例で考えてみましょう。

⑴親Aが9月5日に死亡 子はBCの2人で、Bには妻Dと子Eがおり、Cの他に腹違いの兄弟FGがいるケース

⑵親Aが9月5日に死亡 子はBCの2人で、Bには妻Dがおり子は無く、Cの他に腹違いの兄弟FGがいるケース

 

さて、⑴で9月3日にBが亡くなっていれば、代襲相続の問題ですから、Aの相続人は、CとEの2人です。

⑵で9月3日にBが亡くなっていれば、Bに子がいないため、相続人はCだけです。

 

そして、⑴で9月7日にBが亡くなっていると、数次相続の問題ですから、Aの相続分の2分の1を持ったBが死亡して、相続人であるDとEがBの相続分を2分の1ずつ相続することになります。要するに、Aの相続人は2分の1相続分のCと、4分の1ずつの相続分を有するDとEですね。

 

⑵のケースで9月7日にBが亡くなっていると、なかなか計算が大変です。2分の1の相続分を有する相続人Bが亡くなり、Bの相続割合は、妻が4分の3、Cが8分の1、FGが16分の1ずつです(半血兄弟)。

そうすると、Aの相続割合はCが16分の9、Dが16分の6、FGが32分の1ずつとなります。

 

このように、相続の発生した日がいつかにより、大きく相続割合が変わることはご存じない方が多く、ご説明すると驚かれる方がおられます。

代襲相続、数次相続が発生しているケースでは、戸籍の取得は大変ですね。

 

次回は、親子相続以外のケースで必要な戸籍と、その理由についてお話していきます。

東京で相続に関してお悩みの方はこちらをご覧ください。

相続手続に必要な戸籍謄本①

 

秋めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

東京の交通量は、コロナ前と変わらない程に増えてきましたし、だいぶ以前の日常が戻ってきているように感じます。

 

今日は金融機関や不動産の登記手続等、相続手続に必要な戸籍について「なぜ、大量の戸籍が必要になるのか」「どのような戸籍が必要になるのか」について解説していきます。

ちなみに,金融機関や不動産登記手続で使用する戸籍は原本の提出が必要になりますので,金融機関や不動産の数が多いと,提出しては還付を受け,提出しては還付を受け の繰り返しとなり,手続に時間がかかります。

近年,法定相続情報証明制度といって,戸籍の束と相続人関係図を作成して法務局へ提出すると,何枚発行をしても発行料金のかからない,1枚紙の法定相続情報を取得することができるようになりましたので,とても便利になりました。

相続が始まると、最低限、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍、原戸籍等と、相続人の現在戸籍が必要となります。そしてこの最低限の戸籍類の取得で済むのは、親が亡くなり、子(又は子と配偶者)が相続人のケースです。

まず、なぜ出生から死亡までのすべての戸籍を求められるのかといえば、親子相続のケースでいえば、亡くなられた方に子供が何人いるかを確認するためです。

亡くなられた方はもしかしたら、過去に別の人と結婚をして、子供をもうけているかもしれませんし、どこかで養子縁組をしたり、認知をしているかもしれません。

「親の相続だから、子が何人いるかくらい知っているよ!なのに戸籍を全部揃えるなんて面倒!」とおっしゃるお子様もおられますが、金融機関からすれば、相続人の全員を確認しなければ、怖くて預金解約に応じる気にはなれません。もし、遺産分割協議書が相続人全員でなされたものではないにもかかわらず、預金を解約してしまったら責任問題だからです。登記も同じくで、間違った登記を信用した人が出てきてしまっては大変ですから、万に一つも間違えるわけにはいきません。

しかも、弁護士として相続事件を担当していると、「知らない間に夫が認知していて、実は夫に別の子供がいた」とか、「親が知らないうちに知らない人と養子縁組している」というケースはそれなりにあります。認知や養子縁組というのは、秘密裏に行われるケースがありますし、なにより、日本の戸籍制度において、認知や養子縁組というのは、認知等をしたときの戸籍にしか乗らず、後の戸籍には表記されないので、分かりにくいのです。要するに「親の相続だから子が何人かくらい知っている」というのは、実はそうでもないケースが多いので、銀行や法務局からすれば信用できない、ということですね。

続きは②で書いていきます。

 

 

 

相続と株式の評価

この度,近鉄四日市駅徒歩一分の場所に,弁護士法人心四日市法律事務所がオープンいたしました。

https://www.yokkaichi-bengoshi.com/

皆様により身近に,より親身に問題解決をすべく,今後も尽力してまいります。

コロナウイルスの影響で,一度は大きく下落した株価ですが,公的資金の流入もあり,大きく持ち直しています。

コロナウイルスと共に生きていくための社会構造の変化のため,再度大きな下落局面もあるとは思いますが,このような株価の乱高下の

状況において相続が発生すると,いろいろな問題が生じます。

まず,相続税については,相続が発生した日の最終価格の他,①課税時期の月の毎日の最終価格の平均額,②課税時期の月の前月の最終価格の平均額,③課税時期の月の前々月の最終価格の平均額のうち,一番低い価額により評価することとなっておりますので,納税者の不利にならないように調整されています。

遺産分割においては,代償分割をする場合の評価時点について,協議が成立する直前の時期の価額で合意するケースが多いですが,乱高下している時期ですと,価額でもめるケースもあります。大きな変動局面では,相続税評価の場合と同じく,月平均を利用して協議を進めることもあります。あくまで合意で評価を決定できますので,事態に即し柔軟に対応すべき場面です。

株価の乱高下により,最も理不尽な結果が生じやすいのは遺留分の算定においてでしょう。基本的に相続発生時で評価する考え方が採られていますので,亡くなった日がたまたま暴落,暴騰の日で,遺留分の実際の支払いの日と大きく金額が異なるケース等が考えられます。

日経平均はコロナで最も下がった日(令和2年3月19日)の1万6552円と,本日時点の2万2512円とでは,わずか3か月で36%も変動していますので,影響は大きいと言えます(今回は大きな為替変動は起きていませんが,リーマンショックのように為替変動が起きると,投資信託や外貨預金にも同様の問題が生じます。)

株価の変動は上場株式のみならず,非上場株式の際も問題となります。

例えば,生前に非上場株式の価値が安い時点で子の一人に対して株式を贈与したケースにおいて,後日遺留分侵害額請求がされ(当該贈与が減殺対象となるケースの場合です),その時点で株価が大きく増加していた場合には遺留分侵害額も増加することになります。

このように,株価の変動は相続問題に様々な影響を及ぼします。

 

相続税の基礎控除(養子)

緊急事態宣言は解除されたものの,まだまだ東京駅の人通りは少なく,今後も影響は続きそうです。

リモートワークができる職種はそれが定着していきそうですが,飲食や観光業は難しい対応を迫られそうです。

宿泊施設等は営業を開始しているところでも,「東京等,緊急事態宣言が最初に出た地域の人はお断り」の施設がかなりみられますし,移動解禁ではあっても都道府県をまたぐな,とか,各知事ごとの対応の違いがTVで注目されるなど,「都道府県」という区分を非常に強く意識させられるなぁと感じています。まぁ昔は日本も多くの国に分かれてたわけですしね・・。

今日は相続税の基本である,基礎控除に関する,養子の扱いについてご説明します。

今の基礎控除(相続税がかからない範囲)は,3000万円+相続人の数×600万円,なわけですが,養子の数について制限があります。養子を10人や20人作って相続税をゼロにされては困るというわけですね。

この養子の制限は,基礎控除等につき,被相続人に実子がいない場合は2人まで,実子がいる場合には1人までカウントして良いというルールですが,例外が少しあります。

それは,①被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人②被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人③被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人,です。

①と③は特別養子縁組という幼少の頃のみ,特殊な事情がある場合に実子と同等の地位を与える制度なので,あまり出てくることはありませんが,②はよくありますので,注意が必要です。要は,再婚等で相手の連れ子を養子にした場合には,実際には実子みたいなものだから制限を設ける必要はないということですね。

 

コロナウイルスと相続税申告

コロナウイルスの影響で大きく時代が変化しています。

東京駅も終日人はまばらで,いままで見たことない事態が続いています。

弁護士業務・税理士業務につきましても,対面ではなく,TV電話のみで行うことが多くなりそうです。

相続税申告の期限につきましても,特別の措置が取られており,

①新型コロナウイルスの影響により相続人等が申告期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には,個別に申請することで期限の個別延長が認められる(相続税に係る各種申請や届出など,申告以外の手続についても個別延長可)。

ようで,「やむを得ない理由」というのは文言としては厳しそうですが,感染してしまった場合はもちろん,体調不良により外出を控えている場合や,在宅勤務要請をしている自治体に住んでいる場合も含まれると書かれていますので,緩やかに解されるようです。

ただ,「申請を行った方のみ」延長され,申請をしていない相続人等の期限は延長されないことに注意が必要です。

 

②個別延長の場合の申告,納付期限は,上記やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内を指定して,延長されるとのことで,「つきましては,相続税の申告書等を作成・提出することが可能となった時点で」申告をしてくださいとのことです。

 

③個別延長をする場合の手続は,「別途,申請書等を提出していただく必要はなく」申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記すれば良いようです。

 

 

配偶者居住権の評価額

東京でも感染者が増えており,世界はコロナ一色という感じですね。

今後収束に至るまで,どのような経過を辿るにせよ,一度陰性になった方が再発することもあるという現状のもとでは,

リモートでできる業務はリモートで行う という流れは定着していくように思います。

弁護士がリモートで仕事をできるかどうかは・・・裁判所次第でしょうか。

今日はついに来月4月から始まる,配偶者居住権の金額の評価方法について,確認をしておきましょう。

①建物の配偶者居住権の評価方法

建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)÷残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率=配偶者居住権の相続税評価額

で計算をします。

とてもややこしそうですが,要するに,配偶者居住権の存続年数が経過した後にいくらか価値が残るのであれば,その価値を残した残部が配偶者居住権だよね,という計算であり,重要なのは,実務的に大部分を占めるであろう,「長年住んでいた家に今後も配偶者が住みます」という経緯では,ほとんど「残耐用年数」が0ですので,0になにを掛けても0ですから,「建物の時価」自体が建物に関する配偶者居住権の価値とイコールになる件が多くなると思います。

 

②敷地利用権の評価方法

土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率=敷地の利用に関する権利の相続税評価額

 

ですので,建物と異なり,シンプルに計算できます。

多くのケースでは,建物は時価,敷地は存続年数次第(平均余命次第)となりそうで,建物が鉄骨で新しいとか,配偶者居住権の存続年数を経過してもなお残耐用年数が残るケースでのみ,計算がややしこしくなりそうです。

 

相続法改正とよくあるご質問3

コロナウイルスの影響か,東京とは思えないくらい人出がまばらです。

はやめに収束すると良いですね。

相続法改正についてのお話の続きですが,遺留分制度はどう変わったのか,よくご質問を受けます。

令和元年7月の改正前に発生した相続については「遺留分請求権」という「形成権」だったものが

令和元年7月の改正後に発生した相続については「遺留分侵害額請求権」になったというのが大きな変更のひとつですが,

ややこしい言葉が続いていてわかりにくいと思います。

ごくごく簡単にいえば,「遺産を割合で取得する権利」だったものが「お金を請求する権利」に変わったということです。

ただ,この点については,実は実務上大きな影響はありません。

なぜなら,相続法改正前も,「遺産を割合で取得する権利」を請求された相続人は,相当するお金を払うことで解決してきたからです。

一番多いのは土地の紛争ですが,例えば遺留分が8分の1の相続人が,土地の全部を相続した相続人に対して遺留分を請求したとして,

8分の1と8分の7の共有状態となることを望むでしょうか。

請求された側からすれば,土地について売りたい時期になっても8分の1を所有している人が許可しなければ売れなくなってしまいますし,収益物件であれば,毎回清算をして8分の1の賃料を渡すのも嫌でしょう。

請求した側からしても,8分の1だけ共有していても,(通常8分の7を所有している側が使用,収益している物件でしょうからなおさら)意味がありません。

そこで,実務的には,改正前から金銭解決が常でしたので,それを実務に即し,分かりやすい請求権に変えたというのが,改正の実態なのです。

相続法改正でよくあるご質問2

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権の制度もまもなく施行されることとなり,問い合わせも増えています。

配偶者居住権は,おそらく,かなりの頻度で利用されることになると思います。

その理由は①税法上のメリットと②遺産分割の柔軟性への寄与です。

①については,相続税評価につき,所有権を,配偶者居住権負担付所有権 と 配偶者居住権 との価値に分け,それぞれ別の相続人が取得することができ,さらに,配偶者居住権が配偶者の死亡により消滅し,配偶者居住権負担付所有権が所有権になった際に,税金を納める必要がないというメリットがあります。

難しいのでたとえ話にします。

お父様が亡くなり,相続人は妻と子供1人だとし,遺産のうち一部は,土地と建物合わせて1億円の不動産だとします。

この不動産には妻が継続して住むため,妻が相続するとします。妻が相続する際は,配偶者控除等で税額は0となったとしても,妻が亡くなった際,子供は1億円の土地建物を取得したとして,1億円に対する相続税を支払うことになります。

しかし,お父様が亡くなった際,配偶者居住権(仮に5000万円とします)と配偶者居住権負担付所有権(1億円ー5000万円=5000万円とします)に分けて,配偶者居住権を妻が相続し,配偶者居住権負担付所有権を長男が相続すると,どうなるでしょうか。

まず,配偶者居住権については,妻は配偶者控除等で税額が0となり,長男が5000万円の配偶者居住権負担付所有権につき相続税を支払います。

次に,妻が亡くなり,長男が相続する際,長男の有する5000万円の価値の配偶者居住権負担付所有権は,配偶者居住権の負担がなくなり,1億円の価値に膨らみますが,この際,税金はかかりません。

そうすると,配偶者居住権の制度を利用していない場合には1億円に対する相続税を支払っていましたが,配偶者居住権を利用することで,5000万円に対する相続税の支払いで済むことになります。

②については,上記のように相続人が妻と子であるケースにおいて,妻と子の間に紛争性があるケースで,今までは,妻が所有権を取得するためには1億円の価値の不動産を取得することになるため,5000万円の代償金を支払わなければならなかったケースにつき,配偶者居住権付所有権を子に相続させることで,支払う代償金を減らすことができるということです。

特に,妻が高齢であり,資産を手に入れるというよりも,継続して居住できれば良いというケースでは,代償金を支払って完全な所有権を入手するのか,それが無理であれば全てを売るしかない という2択の選択ではなく,第3の選択肢を生じさせる有用な制度です。

相続法改正とよくあるご質問

令和元年7月に改正された相続法について,周知されるようになり,よく質問を受けています。

今日は,特に質問,誤解の多い事項について,回答をしていきます。

1 特別寄与料

例えば地方在住お父様が亡くなり,子供が長男と長女の2人のケースで,お父様はご生前,一人では起居することができず,通常であれば24時間

介護施設に入るような状態でしたが,長女は東京に出てきている反面,お父様は長男夫婦と同居しており,長男の妻が,仕事を辞め,付きっきりで

介護をしていたことが原因で,遺産分割について長男と長女の意見が合わないとします。

このようなケースで,長男の奥様から「この7月から相続人以外でも介護等につき特別寄与料を請求できるようになると聞きましたので請求したい。長女よりも長男に多く渡して欲しいので。」というようなご相談を受けることがあります。

実は,ほとんどの場合,このようなケースで特別寄与料の制度を使う必要はありません。

相続人である長男の取り分を決める際に,長男の妻の寄与分を考慮して遺産分割をすることが制度上可能であり,長男が長女より多く遺産を受け取るという解決が可能であるからです。

特別寄与料の制度は,時効期間も短く,決して利用が容易い制度ではないため,このようなケースで使う必要はないのです。

では,特別寄与料はどのようなケースで使うのでしょうか。

それは,上記のケースで,お父様が亡くなる前に,既に長男が亡くなっており,相続人が長女一人であるようなケースです。

この場合には,長男の妻は,「相続人である長男の寄与とみなす」という扱いができないため,特別寄与料の請求をすることになります。

本制度の制定目的は,このように,相続による調整を図れない場合に利用するための制度なのです。

 

 

代襲相続と,数次相続

急に寒くなってきましたね。来週は東京で初雪?の可能性があるそうです。

今日は,兄弟相続の際の,代襲相続と数次相続の違いについて,ご説明します。

というのは,相続人が誰かというときに,相続人を誤解されているケースは,この違いを理解されていないことが多いからです。

①代襲相続は,被相続人が死亡したとき,本来の相続人が既に亡くなっている時に,その子が相続人になることです。

②数次相続は,被相続人が死亡したとき,本来の相続人は生きていましたが,その後その相続人が亡くなって次の相続が発生することです。

例えば,妻子も親も既に亡くなっている状態のAさんが亡くなり,兄弟がB,C,兄弟Bの子がD,Dの子をEとします。

Aが亡くなった時,BとCが共に生きていれば,BとCが相続人ですし,Bが既に亡くなっており,Dが生きていた場合には,

DとCが相続人です。

では,BもDも既に亡くなっており,Eが生きていた場合はどうでしょうか。

この場合,兄弟の代襲は1回までというルールがありますので,Eは相続人にはならず,Cのみが相続人になります。

これが代襲相続の場合のルールです。

これまでの話とは異なり,たとえば,Aが亡くなった時,Bは既に亡くなっており,Dが生きていて,DとCが相続人のケースで,

その後にDが亡くなると,EがAの相続財産を「Dの相続人として」取得することになります。

このように,Eが相続人となるか否かは,「Dが亡くなったのがAの死亡より前か,後か」により変わることになります。

兄弟相続の時は特に問題になりやすいですので,注意が必要です。

不動産譲渡所得③

前回の続きで,不動産譲渡所得のお話です。

前回は,取得費としてどのようなものが引けるのか,お話をしましたが今回は,取得費とは別に,不動産譲渡所得から差し引ける

「特別控除」について説明します。

取得費は,「儲かった額」を算出するために取得にかかった費用を差し引くという話でしたが,特別控除とは儲かった額の算出とは

関係なく,政策上の配慮等から定められているものです。

 

例えば,①公共事業等のために土地建物を売った場合には,5000万円の特別控除が受けられますし,②マイホームを売った場合には,

3000万円の特別控除が受けられます。東京の都市部は別とすれば,3000万円という金額は,マイホーム売却額のかなりの割合を占めること

が多いですので,マイホームの売却の際は税金はとても安くなることになります。

さらに,③特定土地区画整理事業等で土地を売った場合には2000万円,④特定住宅地醸成事業等のために土地を売った場合には1000万円,

⑤農地保有の合理化のために土地を売却した場合には800万円の特別控除を受けることができます。

①③④⑤の特例は,公共事業等に協力しており,公共の利益のための不動産売却につき,税額を軽減するものです。

 

②のマイホーム特例は,なぜ定められているのでしょうか。

この制度は,マイホームの売却に高い税金がかかると,売却に消極的になり,中古不動産の流通阻害や,空き家が増加してしまう等の

問題が生じることから,定められている制度です。

このような制度の目的から,マイホームの売却として特例を受けるためには,⑴現在主として住んでいる自宅であり⑵居住しなくなってから3年を

経過する日の年末までに売却し⑶家屋を壊した場合には,家屋を壊してから1年以内にその敷地の売却の契約が締結されていること⑷単身赴任の場

合には,配偶者等が居住していること等の条件が定められているので,注意が必要です。

さらに,マイホーム売却を阻害させないために,10年を超えて所有した場合の軽減税率の特例をも併用できる場合があります。

マイホームの売却の際には,これらの要件を満たしているか否かを含め,よく税理士に相談することが必要です。

 

少し変わった特別控除の政策として,平成21年1月1日から平成22年12月31日までに取得した不動産の売却の際に,その年の1月1日にお

いて所有期間が5年を超える不動産を売却した場合には,1000万円の特別控除が受けられるというものがあります。

これは,リーマンショック直後という時代背景のもと,資産デフレ脱却等を目的として定められた不動産流通促進策です。

不動産譲渡所得税②

前回の続きで,相続で引き継いだ不動産を売却した場合の,不動産譲渡所得税の注意点についてお話します。

不動産譲渡所得税は,売却した金額自体にかかるのではなく,不動産を売却した金額から,当該不動産を入手した際の費用など(これを

取得費といいます)を差っ引いた金額にかかります。

要するに,不動産を売ったことで儲かった金額についてだけ,課税がされるという仕組みなのです。

取得費には,①土地を購入する時に収めた不動産取得税や登録免許税②立退料③土地の埋め立てや土盛り等にかかった費用④測量費

⑤購入してすぐに建物を取り壊した場合の取り壊し費用⑥土地などを購入するために借り入れたお金の利子のうち,土地などを実際に使用開始

する日までの利息等,不動産の取得に関して支払った費用が広く含まれますので,これらの金額がいくらであったのかをしっかりと説明できる資料

が準備できるかどうかが,正確な申告,ひいては節税につながることになります。

また,これらの取得費用が不明である場合には,取得費を売却額の5%とすることができますが,5%は非常に低い割合ですので,地価が二束三文

であった大昔に買った土地でもない限りは,きっちりと,取得費に関する資料を揃えた方が良いということになります。

資料を探しても見つからないという場合にも,まだあきらめる必要はありません。

合理的な手法により,取得時点での不動産の価額を推測することは認められており,例えば,建物を着工建築物構造別単価,土地を市街地価格指数

で算定することが認められた例もありますので,詳しい税理士へ相談することが重要です。

不動産譲渡所得税①

本日から数回は,相続で引き継いだ不動産を売却した場合にかかる税金の話をしようと思います。

相続で一定以上の財産を引き継いだ場合には,相続税がかかりますが,相続で引き継いだ不動産を売却した場合には,

相続税とは別に,譲渡所得税がかかることに注意が必要です。

不動産譲渡所得税は,不動産を売って利益が出たときに支払う税金です。

不動産を取得してから,売却するまでの期間が長い場合(5年をこえる場合)の税率は15%(住民税5%)で,売却するまでの期間

が短い場合(5年以下の場合)の税率は30%(住民税9%)です。

相続で引き継いだ不動産を売る場合には,亡くなられた方が不動産を取得した時点から,売却するまでにどれだけ期間が経っているかで

計算をしますので,ほとんどの場合が,長期譲渡所得の課税がされることになります。

平成25年から平成49年までは,復興特別所得税として,上記計算による所得税額の2.1%を支払う必要があります。

申告期限は,不動産を売却した年の翌年の3月15日までです。

相続税は意識していても,不動産譲渡所得税のことまで意識がまわらないことがありますし,不動産譲渡所得税は,翌年の住民税にも影響をあたえ

ますので,意識をしていないと,思わぬ高額の住民税に驚くことになってしまいますので,注意が必要です。

 

公正証書遺言作成に必要なもの

例年,12月はあっという間に過ぎてしまいます。

特に,弁護士業界は,12月半ばに新人弁護士の一斉登録が行われますので,新しい職場の仲間が増え,歓迎会や指導等をしているうちに,

いつのまにか年末になってしまいます。

今年一年も充実して過ごせたことに感謝し,来年に繋げていきたいと思います。

本日は公正証書遺言の必要書類のお話をします。

公正証書遺言の作成のためには,大きく分けて,本人確認関係資料と,財産関係資料があります。

①本人確認関係資料

公正証書遺言を作成する際には,本人確認のうえ,実印を押しますので,身分証明書のほか,印鑑証明書と実印が必要となります。

そして,遺言により遺産を受け取る者と,遺言者との関係を示すため,戸籍謄本の取得も必要です(相続人ではない方へ遺贈する場合には,

その方の住民票が必要です)。

また,公正証書遺言の作成には,証人が2人必要なので,証人2人の名前、住所、生年月日及び職業が分かるものが必要です。

②財産関係資料

遺言書の内容に不動産が入る場合には,不動産の登記事項証明書が必要です。

また,公証役場に支払う手数料は,現時点での財産総額で決まりますので,固定資産税評価証明書や,預貯金通帳の写し等,

ある程度,資産額が分かる資料が必要です(正確に資産額を算出する必要まではありません)。

 

公正証書遺言を作成する際には,これらの資料を前もって準備しておくと,スムーズです。

東京で遺言をお考えの方はこちら

年末へ向けて

おはようございます,弁護士法人心,東京駅法律事務所の岩崎です。

今年は東京で,「木枯らし一号」が観測されなかったそうです。

観測されない ということもあるのですね。

調べてみたところ,「木枯らし一号」は,10月半ばから11月末までの間で,冬型の気圧配置で西北西から北の風,最大風速8メートル以上の風を

観測すると発表されるそうで,東京で「木枯らし一号」が観測されなかったのは,39年ぶり(1951年以降5度目の出来事)だそうです。

今年は,北日本で観測史上最も遅い初雪を観測する等,冬型の気圧配置になること自体が少ないですので,その影響かもしれませんね。

 

さて,弁護士の業界では,司法研修所での研修を終えて弁護士となるのが12月ですので,12月が1つの大きな区切りです。

今年も,東京駅法律事務所に新しい弁護士が増えますし,相続チームに所属する後輩の弁護士も増える予定ですので,とても楽しみにしています。

例年あっという間に過ぎ去る12月ですが,今年は後輩指導という役割もありますし,新年1月に開設予定の税理士法人心東京駅税理士事務所の開業準備もありますので,今年は特にあっという間に過ぎ去ってしまいそうです。

1日1日を大切に,12月を過ごしたいと思います。

 

 

東京の10月の月間雨量

台風が続き,10月の東京は雨ばかり。

今年の10月の東京の月間雨量は531・5ミリでした。

10月としては,1890年からの128年間で歴代3位の記録です。

特に土日の雨が多かったのでうんざりしてる人も多いと思います。

来月からは良い天気が続くと良いですね。

 

内定者研修

今日は,来年の4月から入社する内定者の方々の研修に参加してきました。

その中の1人は,来年から一緒のチームで働くことになるので,誰になるのか

今から楽しみです。

後遺障害の研修

今日は事務所内部で,後遺障害に関する研修がありました。

交通事故を扱う弁護士が多く,後遺障害についても多くの経験を共有できることが

弊社の強みだと感じています。

環境整備振り返り(その2)

2年目の環境整備を行う前に,(株)武蔵野のパクリWalkerに12月に参加することになりました。

どのような試みがされているのか,しっかりと目に焼き付けて,2年目の環境整備につなげていきたいです。