代表者が破産せずに会社だけ破産することはできるのか

代表者個人だけが破産して会社をそのままにできるか、という問題について以前記載しましたが、反対に会社だけが破産して代表者個人が破産せずに済ませられるのかという問題もあります。

中小企業ですと、一般的に会社が借入れをする際に代表者個人が保証人になっていることが多いです。

そうすると、会社が破産した場合には保証人である代表者個人に請求がなされますので、破産せずにそれに対応できるのであれば…ということになりますが、現実的にはなかなか難しいかと思います。

自宅不動産があるなどどうしても破産を避けたいという場合には、会社は破産、代表者個人は個人再生という手段も考えられます。

他方で、代表者個人が一切保証人になっていないというケースもまれにあります。

そうすると、代表者個人には債務がない以上、個人については破産しなくてもよさそうです。

ただし、会社のみで破産申立てをすると、代表者個人は破産しないのかと裁判所から確認がされます。

裁判所としては、会社から代表者に資産を移したりしているのでは、という懸念があるためです。

また、中小企業の場合、個人の財産と会社の財産が多少なりとも混同してしまっていることが多く、その調査の観点からも個人について併せて破産申立てをすることを事実上推奨してきます。

このような考えが根底にあるため、代表者個人が破産せずに会社だけを破産するということはできないわけではないですが、細かな調査が行われ、慎重な判断がされることになります。

免責審尋や債権者集会に出頭する意義

東京地方裁判所で破産の申し立てを行うと、同時廃止手続の場合は免責審尋、管財手続の場合は債権者集会が、手続の最後に行われます。

この手続きは裁判所(中目黒庁舎)で行われ、申し立てた本人も出頭する必要があります。

裁判所へ行くということで緊張されるかもしれませんが、実際のところ免責審尋ではでは氏名等を確認されるくらいで、債権者集会に至っては発言をする機会すらないことも珍しくありません。

では、この手続きに出頭する意義はあるのか、という疑問が生じるかもしれません。

実際、他の裁判所では出頭不要としているところもありますし、東京地方裁判所でもコロナ禍の間は基本的に出頭不要で手続きを進めていましたので、制度上出頭を不要とすることは不可能ではないのかもしれません。

しかし、現在のところ、東京地方裁判所は出頭を求める運用となっています。

破産法上、破産手続に破産者が協力しない場合、免責不許可事由に該当するのですが、免責審尋や債権者集会へ出頭を求めることで、破産者の手続への協力姿勢を判断できるというのも、出頭を求める1つの理由といえます。

ですので、債権者集会や免責審尋を過度に恐れる必要はないですが、だからといって軽んじてしまうようなこと(例えば期日を忘れてしまい出頭できなくなってしまうなど)は絶対に避ける必要があります。

会社代表者が個人の債務だけを自己破産できるのか

会社経営をしている方から、会社についてはそのままで、個人の分だけを自己破産したいという相談を受けることがあります。

しかし、実際にはそれは困難とされています。

個人分だけの破産申し立てをしたとしても、裁判所から法人(会社)についても破産の申し立てをするように促されることになるでしょう。

それはなぜなのかというと、理由は複数あります。

まず、会社の借入れについて会社代表者が保証人になっているケースが多く、保証人である会社代表者が自己破産すると会社に対しても一括請求がされてしまい、事実上法人の経営も立ち行かなくなるという理由があります。

次に、会社代表者の財産と会社の財産は明確に分かれていないことも多いことから、どちらか一方だけを破産させるというのは適切でないという理由があります。

また、自己破産すると、会社と会社代表者との委任契約が解除されることになってしまうため、少なくとも一時的に会社の代表者が不在という状況が生じてしまい、そのまま会社が清算処理をしないまま放置されてしまうおそれがあるという理由もあります。

このような事情があるため、個人と会社を切り分けて破産手続を行えるケースというのは極めて稀になるでしょう。

債務整理と仕送りの問題

ご両親や親族に仕送りを行うことは、一般的・道義的に褒められるべきものであり、非難されるものではないでしょう。

しかし、債務整理を行おうという人が仕送りを行っていると問題が生じ得ます。

例えば、借金を返せなくなっている人が無償で物を人にあげているケースを想像してもらうと良いかと思いますが、この人の行為は不適切だと多くの人が考えるでしょう(人にあげるのではなく、借入先に返済することを優先すべきだ、ということですね。)。

そして、仕送りという行為も形式的にはこれと同じだということになってしまうのです。

もちろん、赤の他人に挙げている場合と違い、親子間では扶養義務があるため、その範囲内と言えればよいのですが、この判断はなかなか悩ましいところがあります。

例えば、親が施設に入居していたり長期間入院しているなどの状態にあり、その施設代や医療費を自分が支払うしかない、という状況であればそれはやむを得ない支出という方向になるでしょう。

他方で、年金だけだと生活が苦しいから仕送りをしている、という程度だと扶養義務の履行とは言いにくく、不適切な贈与だと考えられてしまうかもしれません。

不適切だと判断されてしまうと、自己破産手続の場合は破産管財人から仕送りを受けた人に対し、お金を戻すように連絡がされます。

仕送りを受けている人は自己破産するという状況にあることを知らないことも多く、また自己破産を申し立てる側としても知られたくないと考えていることが多いので、この点は悩ましい問題です。

債務整理手続が完了するまでは仕送りを止めておくことが一番無難ではありますが、事前によく弁護士に相談しておくことが大事になります。

給与所得者再生について

個人再生についてネットなどで調べてみると、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがあることがわかると思います。

前者の手続が一定以上の債権者が反対に回ると不成立になってしまう一方で、後者の場合には債権者の賛否にかかわらず成立させることができるというメリットがあるのですが、実際に利用される割合は圧倒的に前者が多いです。

その理由としては、まず前者の手続をとってもほとんどの債権者が反対しないということがあります。

そして、後者の手続をとると可処分所得の2年分以上の金額を返済する必要があるため、トータルの返済額が増えてしまう可能性があるというのが後者の手続があまり利用されない理由です。

可処分所得の金額は、その人の収入、家族構成(扶養に入っている家族が何人いるか等)、居住地域、家賃負担の有無等をもとにして決まりますので、一人暮らしの場合やご結婚されていても共働きの場合などは可処分所得が高くなる傾向にあります。

現代では夫婦ともにフルタイムで働くことも多いと思いますので、可処分所得が高くなってしまうことが多いというわけです。

また、お子さんがいらっしゃる場合父母どちらの扶養に入っているかも影響してきます。

実際には父母双方の収入でお子さんにかかる生活費を支出されることが多いかと思いますが、形式的にはどちらかの扶養に入っているはずですので、お子さんが個人再生を申し立てる人の扶養に入っていれば可処分所得が低くなり、入っていなければ可処分所得が高くなるということに形式的にはなっていきます。

このような次第なので、小規模個人再生で進めることが難しいという事情がある場合(債権者の反対が予想される場合等)、また、給与所得者等再生で進めても不利にならない場合(可処分所得の2年分が高額にならない場合等)に例外的に給与所得者等再生が選ばれるというのが実態です。

このあたりの判断は弁護士、とりわけ個人再生の手続に慣れた弁護士でないと難しいところだと思いますので、よく相談して手続を決めることをおすすめいたします。

自己破産した方がいいのか個人再生した方がいいのか

債務整理の相談に来られる方で、方針を明確に決めていない方は少なくありません。

任意整理は無理だけど、自己破産がいいのか個人再生がいいのかわからないという方も多いです。

免責不許可事由があったり、残したい財産がある場合は個人再生にした方がいいということになりますが、特にそういった事情がない場合はどうすべきなのでしょうか。

実際のところ、答えがあるわけではないので、それぞれのメリットデメリットを比較して決めていただくことになると思います。

自己破産の方が経済的メリットが大きいため、一般的に弁護士は自己破産を勧めることが多い印象はあります。

なお、ある程度収入があったり手元に財産が残っている方の場合、自己破産が認められないのではないか(個人再生や任意整理をするように言われるのではないか)と心配される方もいらっしゃいますが、よほどのことがない限りその心配は必要ありません。

ただ、東京地裁では経験がないものの、過去に地方の支部の裁判所では、自己破産の申立てをした際に個人再生や任意整理の方が適当ではないかという趣旨のことを言われたことがあります。

個人再生や任意整理で支払っていくことができないときでなければ自己破産ができない、といったルールはないため、この発言が妥当なのかは疑問がありますが、現にこのように考える裁判所も存在する以上、申し立てる裁判所によってはこの点も多少気にした方がよいかもしれません。

事業譲渡による債務整理

会社経営をしている方の債務整理の手段として、事業譲渡があります。

事業譲渡することによって会社を破産させずに済むという面があったり、会社の破産になると費用が高額になってしまうため、会社は事業譲渡して個人だけ破産する、といった形で事業譲渡を検討されることが多いようです。

事業譲渡したうえで個人だけが破産するという場合、適切な対価で譲渡しているかどうかは注意が必要な点です。

もっと高額で譲渡できたにもかかわらず安い値段で引き渡してしまった、と見られてしまうと、裁判所からその差額分を補填するように求められないとも限りません。

しかし、適切な対価がいくらなのかを判断するのはなかなか悩ましい問題です。

決算書上負債が資産を上回っているからといってお金を出して買う人がいないかというとそうとも限りませんし、逆にある程度資産がある状態でも買い手がつかないこともあるかもしれません。

この辺りはその業界の事情、例えば新規で事業を起こすことの難易度がどの程度高いのか等にもよってきます。

新たに事業所を開く場合に高額なコストがかかる場合、多少負債を抱えている会社であっても、買収する方が新たに事業所を開くより低廉であれば、お金を出す価値がある(その事業に価値がある)といったことですね。

こうした業界事情については裁判所も弁護士も必ずしも詳しいわけではないので、最も手堅いやり方は相見積もりをとって一番高い金額をつけてくれたところに売るというやり方です。

これであれば、ある程度その事業の客観的な評価が担保されることになりますので、裁判所としても譲渡金額が妥当なものだととらえやすいでしょう。

再生計画変更の申立て

個人再生手続で無事認可決定を受けて返済していたけれども、また返済が苦しくなってしまった、という状況になってしまうと、現実的にとり得る手段は少ないです。

多くの場合、そのまま支払えなくなってしまい再生計画は取り消され、自己破産手続に移行することになるでしょう。

しかし、自己破産を避けたいがために個人再生を選んでいる方も多いでしょうから、何とかして個人再生を継続できないかと考えるのは当然です。

こうした再生計画どおりの返済が途中で苦しくなってしまった方のための手続に、再生計画変更というものがあります。

その名のとおり、再生計画を途中で変更するのですが、具体的には最大2年間返済計画を延長することができます。

例えば、当初の再生計画が最長の5年返済で計画されていたとして、すでに2年間返済していたとすると、残りの返済期間は3年になるわけですが、これを5年(つまりトータルで7年)まで伸ばすことができるのです。

これだけ見るとかなり有効な救済策にも見えますが、実際にはほとんど使われていない手続です。

その理由としては、①再生計画変更が認められるまでの間(事案にもよりますがおおむね半年程度)は従来の計画どおりに返済を続けなければならないこと、②弁護士に依頼して行う場合、①の従来通りの返済に加えて弁護士費用の準備もしなければならないこと、などがあるようです。

つまり、もう来月から返済ができない、という状況まで来てしまってからではなかなか難しい手続だということになります。

例えば、向こう1年間の収入がこれまでよりも下がることがあらかじめわかっているなど、前もって収支の計算ができる方であれば、早め早めに対応することで再生計画変更の手続を行うことができる可能性があります。

法人破産における費用の準備

個人の破産を申し立てる場合の費用(破産手続に要する費用や弁護士費用など)については、一括で準備することができなくても分割払いで準備することが珍しくありません。

勤務先から毎月給与を受け取っている方は、破産するからといってそれ以後給与の支払いを受けられなくなるわけではありませんから、給与の中から分割で費用の支払いをしていけばいいわけです。

他方で、法人破産の場合は同じような費用の準備の仕方をすることが難しいです。

なぜなら、法人が破産することを対外的に表明した後は、基本的に事業をすることができないため、分割で支払うための収入が入る見込みが立たないからです。

したがって、完全にお金が尽きた状態になってから法人破産をしようと決意した場合、個人の破産以上に諸々の費用の準備が難しくなってしまうことがあります(個人の破産と比べて法人の破産は一般的に費用が高いということも念頭に入れないといけません。)。

弁護士への相談は早めの方がいいというのは、破産に限らずあらゆる分野で謳われていますが、法人破産の場合はより一層その要請が強いと思います。

弁護士に相談する=破産する ではないので、この先どのような選択肢があるのかを確認するためにも、あらゆる可能性を想定して早め早めのご相談をおすすめいたします。

1,2か月だけ返済を待ってほしいとき

今後一切返済ができないわけではなく、1,2か月だけ待ってくれれば返済を再開できるので、少しだけ待ってほしいという意向をお持ちの方から相談を受けることがあります。

体調不良などで勤務日数が極端に減ってしまったなどの理由でこのような状況に陥ってしまうことは珍しくない印象です。

1,2か月遅れても借入先がそれでいいと言ってくれるなら構わないわけですが、なかなかそう簡単にはいかないのが実情でしょう。

そこで弁護士に依頼して交渉するということになるのですが、このような場合でも弁護士が介入して返済条件を変更する以上は任意整理という手続を行うことになります。

任意整理をする場合、ひとまず返済は待ってもらって、一定期間弁護士費用の積立の期間があります。

例えば4か月かけて弁護士費用を積み立てて、着手金分がたまったら任意整理の交渉に移るという形です。

すると、任意整理をする場合はいずれにしても着手金の準備をしている期間は返済を待ってもらうことになりますので、今回の例でいうとわざわざ“1,2か月待ってください”と言う必要もないことになります。

余裕をもって弁護士費用の積立を行い、返済に充てるお金もある程度余裕をもって確保できる状況になってから返済を再開する内容にすれば、その後また同じ状況に陥ることを防ぐことにもなります。

もちろん、利息のことなどを考えれば早めに返済を再開した方がいい面もありますが、返済を継続していくという観点から考えれば、返済の再開時期はよく考えて決めるべきでしょう。

自己破産と財産隠しの問題

自己破産すると原則として財産を残すことができません。

しかし、これは例えば自宅に人が押しかけてきて財産を強制的に取り上げるということではありません。

基本的には保有している財産に何があるのかを自己申告し、その中から破産管財人が処分する必要があるものについて財産を引き渡すという形で行われます。

つまり、どのような財産を保有しているのかは自己申告による確認が原則ということになるので、“言わなければバレないのではないか”と考える人もいるようです。

しかし、自己破産の申立てでは源泉徴収票や確定申告書等の収入に関する書類、銀行通帳なども提出する必要があります。

たとえば銀行通帳の取引履歴の中に内容のよくわからないものがあれば説明を求められますし、収入に対応する支出が通帳からわからなければやはり説明を求められます。

財産隠しをしようとしても、これら提出資料を精査する中で隠し財産があることは露見します。

財産隠しは免責不許可事由に該当するため、借金の返済義務がなくならないという結果になることもあり得ます。

自己破産すると決めたのであれば、弁護士に対して包み隠さずすべての情報を伝え、真摯に手続を行う姿勢が求められます。

2回目の任意整理

一度任意整理したものの、再度支払いが難しくなってしまったというご相談を受けることがあります。

自己破産や個人再生に切り替えることも多いのですが、1,2か月だけ返済が難しく、それ以降はまた返済できる見込みがあるといった状況の方もしばしばおられるので、その場合は2回目の任意整理をすることになります。

最初の任意整理はいいけど2回目の任意整理は応じない、といった対応をされた経験はないですが、同じ弁護士からの再度の任意整理には応じないとする会社はあります。

しかし、この場合も別の弁護士からの任意整理の求めであれば応じるはずですので、1度任意整理しているからといって2回目の任意整理ができないと考える必要はありません。

任意整理はあくまで債権者へのお願いの手続ですので、初回の任意整理よりもこちらに有利な条件を相手が受け入れてくれることは期待しない方がいいでしょう。

しかし、初回と同等の条件であれば応じてくれることが多い印象です。

完済できる見込みが立たないにもかかわらず何度も任意整理することは避けるべきですが、任意整理で途中まで頑張ってきたのできちんと払いたいという意向をお持ちの方も多く見受けられます。

どの選択をしたらいいか、考えるお手伝いができればと思いますので、お困りの方はご相談ください。

裁判所へ行くことについて

弁護士=裁判というイメージがあるためか、弁護士に依頼すると裁判所に行かなければいけないのかという質問を受けることがあります。

裁判所に対する畏怖があるからこその質問かもしれませんが、まず裁判所は恐れを抱くような場所ではないのでその点はご安心いただきたいところです。

また、そもそも弁護士に依頼したとして裁判所に行くことは稀です。

債務整理手続の中でも自己破産や個人再生といった手続は、裁判所を利用した法的手続と呼ばれますが、法的手続であっても個人再生で裁判所に行くケースはほとんどないです。

東京地裁で個人再生を申し立てる場合は、再生委員が選任されるため、再生委員との面談に行く必要はあるものの、裁判所に行く機会は通常ないのです。

他方で、自己破産の場合は同時廃止であっても管財手続であっても1度は裁判所に行くことになります。

この点は裁判所ごとに運用が違うこともありますが、東京地裁では同時廃止の場合免責審尋期日、管財手続の場合債権者集会にあたって裁判所へ行くことが求められます。

もっとも、裁判所に行くといっても何か難しい対応をしなければならないわけではなく、聞かれたことに対して回答すれば大丈夫ですし、場合によっては発言の機会自体がないこともあります。

個人事業主の自己破産は同時廃止にならない?

自己破産をしたときに同時廃止となるのか管財手続となるのかは、費用の面からも気にされる方が多いです。

両手続の区分けは諸々の事情を考慮して行われますが、事業をされている方の場合だと管財手続になるのが原則です。

もっとも、事業をしているといっても、人を雇用するなどして手広く事業を取り扱っているケースもあれば、特定の会社からのみ受注しているだけで実質的には雇用されているのと変わらない形で事業をしているケースもあります。

この例でいうと、前者のような事業者が自己破産する場合は管財手続になるでしょう。

他方で、後者のような個人事業主で、事業に利用している事務所や什器、在庫商品などがないということであれば、同時廃止手続になる可能性もあります。

最近では東京などの都市部では、ウーバーイーツなどフードデリバリーで生計を立てている方も多いですが、この場合在庫商品などもないでしょうし、事業におけるお金の流れもシンプルですので同時廃止手続で進められる可能性もあると考えられます。

また、会社の都合で雇用ではなく業務委託契約で働いている方もいるかと思いますが、実質的には給与所得者と変わらないということで同時廃止手続となる可能性があると考えられます。

破産管財事件について

自己破産を考えたことがあれば、おそらく「同時廃止」と「管財事件」という言葉について早い段階で目にすることになると思います。

比較的簡明な事案については同時廃止手続で進み、複雑な事案については管財事件になるということや、管財事件となったときには別途予納金がかかるため同時廃止になった方が有利といったことが書かれていることが多いと思います。

おそらくそうした説明を事前に調べているために、「同時廃止で手続きが進むようにしてほしい」という希望を述べられる方もいらっしゃいます。

ただ、勘違いしてはいけないのは、決して同時廃止が善で管財事件が悪というようなものではないということです。

本来は破産管財手続が破産手続の基本的な形であり、例外的に簡略な事案について同時廃止という手続が存在しているといったものなので、破産管財手続になったからといって免責が認められない可能性が高まることにはなりません。

東京地裁では全体の60~70%が管財手続で進められるため、ある意味原則と例外の位置づけについて本来の形が維持されているともいえるのですが、その他の地域の多くにおいて原則と例外の割合が逆転している状態にあります。

それもあり、管財手続に対する拒絶反応のようなものが醸成されてしまっているのかもしれません。

もちろん、管財手続の方が費用面で有利なのはその通りですが、必要以上に畏怖するようなものではないのでご安心ください。

保険会社の対応は会社によって違うのか

交通事故の被害に遭うと、事故の加害者が加入している保険会社の担当者とやりとりしていくこととなります。

自分の保険会社であれば会社を選べますが、加害者の加入している保険会社ですから、どの保険会社が相手になるかは完全にランダムということになります。

では、保険会社ごとに良し悪しなどはあるのでしょうか。

そもそも何をもって良い・悪いを決めるのかというのが難しいのですが、弁護士として交通事故被害者の声を聞いていると、賠償金額などの保障の内容というよりは担当者の人柄に対する評価の方を口にする方が多いように思います。

そうなってくると、会社の違いというよりは担当者レベルでの対応の違いの方が重要ということになりそうです。

つまり、「A社の対応が良かった」「B社の対応が悪かった」という人がいたとしても、それは「A社の良い担当者にあたった」「B社の悪い担当者にあたった」ということである可能性が高い気がします。

ちなみに、保障内容に関して保険会社ごとの良し悪しはあるのかという点ですが、全くないわけではないかもしれませんが、これもどちらかというと担当者であったりサービスセンターごとの違いの方が大きいような印象です。

もちろん、これはあくまで任意の交渉で解決する場合の話ですので、理不尽な内容を相手が提示してくるような場合には裁判手続をとることでよりよい解決ができる可能性が高まります。

相続放棄の期限

相続放棄の期限は、相続人となったことを知ってから3か月以内ですので、弁護士の行う手続の中でもかなりタイトな時間制限がある手続です。

上記期限は、一般的に被相続人が亡くなった日から3か月と同じ意味であるとされることが多いですが、必ずしも被相続人が亡くなった日にその事実を相続人が知るとは限りません。

特に、きょうだいや甥姪の立場にある方の場合などは、被相続人とすでに疎遠となっていて、死後しばらく経ってから亡くなったことを知るということも珍しくありませんし、場合によってはほとんど会ったことがないというケースも散見されます。

そうした場合は、亡くなった日ではなく亡くなったことを知った日がいつなのかが大事になってくることになります。

ただし、本当に亡くなったことを知ったのが後になってからなのか、後になって争いになることもないとは限りません。

ですので、例えば郵便等で被相続人が亡くなったことを知らされたのであれば、その郵便がいつ届いたものなのかは大事な証拠になる可能性があります。

郵便が届いたのであれば、書類や封筒自体もきちんと保管しておくようにしましょう。

そうした裏付け資料がない場合であっても、被相続人の死後すぐに亡くなったことを知ることができるような関係になかった(疎遠であった)ということをきちんとわかるようにしておくと、より万全かと思います。

ビジネス・コート

令和4年10月から東京地裁のビジネス・コートが開庁します。

要はこれまで霞が関の裁判所にあった東京地裁の機能のうち、一部をビジネス・コートに移転するということになります。

ビジネス・コートがあるのは中目黒ですので、霞が関の近所への引っ越しというわけでもなく、わりと大規模な移転という感じですね。

ビジネスという名前である以上、一般の個人の方からすればあまり関係ないと思われるかもしれませんが、倒産部全体が中目黒に移転するため、個人の破産や再生手続もこのビジネス・コートで行われることになります。

特に破産手続では、免責審尋や債権者集会といった手続で裁判所に行く必要がありますので、場所を間違えないように注意が必要ですね(裁判所といえば霞が関というイメージがあるかもしれませんし、従来の霞が関庁舎がなくなるわけではないため、単に「東京地裁」と検索してしまうと霞が関へ案内されてしまうでしょうから。)。

弁護士としても、霞が関庁舎へ行くのと中目黒の庁舎に行くのとでは所要時間がだいぶ変わってきますので、これまでの感覚で前後の日程を入れてしまうと予定の時間に間に合わないということになりかねないので、注意しないといけないなと感じています。

債権者集会には債権者が来る?

東京地裁では、コロナ禍以降、特に必要がなければ債権者集会に破産者や破産者代理人の出頭を求めないという運用がとられてきました。

最近になって、通常通り出頭を求める運用に戻ってきているのですが、債権者集会とは何なのか、そこで債権者から問い詰められたりするのか、といったことが気になる方も多いようです。

債権者集会は、その名前のとおり債権者が出席することのできる手続ではあるものの、個人の方が破産する場合にわざわざ貸金業者が債権者集会に参加するということは通常ありません。

ですので、貸金業者以外から借入れがある場合や、事業資金の借入れがある場合は別として、個人の自己破産手続の場合の債権者集会は、債権者が誰も出席していないというのがむしろ普通です。
裁判官と破産管財人、破産者、破産者代理人が出席して淡々と手続が行われます。
特に問題となる点がないケースだと、簡単な確認をするだけで、ほんの数分で債権者集会が終わることも珍しくありません。

債権者に対する申し訳なさの気持ちを持たなくていいとは言いませんが、債権者集会という言葉の印象から受けるイメージと実際の手続はだいぶ異なっていると思いますので、これを過度に恐れる必要はないです。

遺言書を書いたら相続人が揉めることになる?

遺言書を書いた方がいいのか書かない方がいいのか、どちらの方が相続人は揉めないのだろうか、という観点で悩まれることがあるかもしれません。

人間関係の問題ですので、弁護士の立場からもどちらが絶対にいいということは言えないものの、基本的には遺言書を書いておいた方がスムーズに相続手続きを行えるといえるかと思います。

遺言書がない場合、相続人は遺産分割協議を行って、誰が何を相続するのかを決めていかなければなりません。

相続人間の仲が良いか悪いかというのもありますが、そもそも相続人同士であまり関わりがなくなっていたりはしないでしょうか。

険悪な関係の人と協議するのも困難ですが、疎遠な人と協議をするというのもストレスがかかるものです。

遺言書を書いた場合であっても、遺留分の問題などが生じる可能性は否定できないものの、基本的に遺言書の内容に沿って相続手続を進めていけばいいということになるので、相続人からすれば遺言書がない場合と比べてやりやすい場合が多いかと思います。

遺言書の内容で相続人が揉めるのではないか、と危惧されている方は、ぜひ遺言書がない場合に揉めずに済むのかという観点から考えていただくとよいかと思います。