家族に秘密で個人再生や自己破産は可能?

家族に知られることなく債務整理を行えるか、という質問は非常に多く、

また、ネット上にある情報でもこの点に関心が高いということがうかがわれます。

債務整理手続の中でも任意整理については、秘密で行うことができるという答えでほぼ固まっていると思いますが、

個人再生や自己破産については、どちらの見解も存在するように思えます。

個人再生や自己破産の場合に回答が難しいのは、まず裁判所によって必要な書類が微妙に異なることが原因としてあります。

例えば、裁判所への申立ての際に、申し立てる本人の収入や財産状況について資料を提出するのはもちろんなのですが、配偶者についてどの程度資料を求めるかは裁判所によって異なるのです。

比較的多くの資料を求める裁判所の場合だと、配偶者に秘密で進めることは事実上難しくなってきますし、逆の場合は秘密で進めることも可能な場合があります。

東京地裁の場合、申立て時点で求められる資料はそこまで細かくないため、実際にご家族に秘密で手続を進められたケースもあります。

もっとも、結果的に秘密で進められることはあるかもしれないですが、申立後に追加で配偶者に関する資料を提出するよう求められることもありますし、今後の生活の再建ということを考えるとそもそもご家族の協力があった方がいいのではないかという考え方もあります。

そのため、家族に秘密で個人再生や自己破産をすることもできるかもしれないですが、秘密で進めることを条件として弁護士に依頼することは難しいのではないかという感覚があります。

「事件」という言葉について

弁護士が依頼を受けるにあたっては、依頼の内容を明らかにする必要があります。

例えば、被った損害について誰かに賠償を求めるのであれば、それは損害賠償請求の依頼ということになり、弁護士の側では「損害賠償請求事件」として分類することになるでしょう。

この「事件」という言葉について、しばしば抵抗を覚える方がいらっしゃるようです。
おそらく「事件」というと、テレビや新聞で報道されるような重大な刑事事件・トラブルを想起してしまうのだと思います。

しかし、「事件」という言葉にそれほどの意味はなく、「事案」や「案件」といった程度の意味しかありません。
離婚の依頼であれば離婚事件ですし、相続の依頼であれば相続事件といった形で表現しているにすぎません。

契約書等に「事件」という記載があると、「先生、私のケースは『事件』になってしまうんですか!?」といった質問を受けることもあり、その都度上述のような説明を行うのですが、それでもやはり「事件」を気にされる方もいるのは事実です。

専門家の使う用語と日常の用語のニュアンスに違いがあるというのは、必ずしも法曹の世界だけに限られないことだと思いますが、今一度一般的な感覚とのずれを意識して、普段から丁寧な説明を心がけたいなと感じます。